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一緒に巡察していた筈の総悟がいなくなった。
いや本当、どんな技よ、ソレ。
こんな時だけ本気だしやがって。
苛々しながらも、一応携帯で山崎に連絡し、探すように命じる。
ほっといてもいいんだかな。
寧ろほって置きたいんだがな。
一応これも仕事だ。蔑ろにする訳にはいかない。
けれど、苛々は増すばかりで、土方はフィルターギリギリまで吸っていた
タバコを持っていた携帯用灰皿に押し付け、新しいものを取り出した。
そして火をつけようとした所で、不意に視界に見慣れた姿が入ったのを
感じ、視線を上げる。
するとそこには、気に入らない野郎が居る万事屋の眼鏡の少年が。
どうやら買い物帰りらしく、膨らんだビニール袋を片手に持っている。
・・・違和感ねーな、アイツ。
それまであまり接点を持っていなかったが、数日前の柳生との一件で、
少しだけあの少年の事を知る事となった。
剣の腕はまだまだだが、それは身近にいる存在と比べてだ。
未熟ではあるが、筋はいい方だと思う。
何より細いながらもキッチリと真っ直ぐな筋を持っている事が判る。
その燐とした姿は、中々好ましい・・・
・・・だが、チラシ片手にそんな凛々しいツラしてどうすんだよ。
視線の先の新八を眺め、土方は笑いを噛み殺す。
すると、歩いていた新八がこちらに気付いたようで、一瞬呆けた顔になり、
次に笑って軽く頭を下げてきた。
それに答えるように片手を上げると、新八は足早に土方の下へと
やって来る。
「こんにちは、お仕事中ですか?」
「あぁ、まぁな。オマエは・・・まぁ見りゃ~判るか」
「はい」
土方の言葉に新八は苦笑し、持っていた袋を上げた。
「でも今日はちょっとお店に行く時間が遅くなっちゃって、
狙ってた特売品を買えなかったんですよ」
そう言って小さく息を吐く新八に、土方は それであのツラか・・・
と思わず納得していた。
あのどうしようもない野郎が上司なのだ。
それはある意味死活問題なんだろう。
「オマエも大変だな・・・」
「はは・・・いい加減もう慣れました」
乾いた笑いを零す新八だったが、そう言えば!・・・と、突然姿勢を正し、
キリッとした視線を土方へと向けてきた。
そして、
「先日は本当に有難うございました」
と、丁寧に頭を下げた。
その言葉に、土方は直ぐに柳生との一件かと当たりをつけると、
「別にいい。あれは俺の喧嘩でもあったんだしな」
そう言って視線を逸らし、軽く腕を組む。
けれど新八は頭を上げると、ニコリと笑い、それでも有難うございました。
と再度礼を告げた。
素直に向けられる感謝の念に、土方は少し照れ臭いものを感じる。
日頃鬼の副長と恐れられているのだ、そういったモノには慣れていない。
とりあえずこの慣れない雰囲気をどうにかしようと、先程から手に持った
ままのタバコを口元へと運んだ。
そして火を着けようとライターを探している所で、
「あ、そうだ」
ちょっと待って下さいね。と言う新八の声に止められた。
まさか目の前で吸うなとか言うんじゃねぇだろうな。
副流煙がどうとか・・・あ、そりゃ拙いか。
まだコイツちっこいし。
微妙に酷い事を考えている土方の前で、新八はビニール袋を肘に掛け、
ゴソゴソと自分の風呂敷を漁って、小さな紙袋を取り出した。
そしてその紙袋を はい とばかりに両手で土方へと差し出す。
「・・・なんだ?」
「あの時言ってたじゃないですか。今度マヨ、奢りますって」
忘れちゃったんですか?と、小さく首を傾げながら聞いてくる新八に、
いや、覚えているが・・・と答えつつ、目の前の紙袋を見詰める。
「これ・・・か?」
幾ら懐具合が悪かろうが、こんな小さいのはないだろう。
と言うか、こんなミニサイズのマヨがあったのか?
マヨの事で俺の知らない事があったって言うのかぁぁぁ!!?
幾分違った方向に思考が行くも、とりあえず再度問い掛けてみると、
「はい、これです」
と言うにこやかな笑顔と返事が返ってきた。
「とりあえず開けて見て下さいよ」
戸惑う土方の手に紙袋を乗せると、新八はニコニコとソレを開ける様に
促す。
それに押され、恐る恐る袋を開けてみると、
「これは・・・」
「はい、マヨネーズ型ライターです」
確かに形は愛しのマヨだ。けれどその中身は違う。
・・・が、その中身も愛煙家の土方には無くてはならないもので。
「本当は、ちゃんとしたマヨネーズを贈ろうと思ったんですが、
土方さんてほぼ一本を一食に費やしちゃうじゃないですか。」
確かに、それが自分のスタイルだ。
寧ろそうでないと気が治まらない。
「幾ら好物だとしても、お礼に体を悪くするものを態々贈るのも
どうかと思いまして。
これならタバコを吸う度に見れて、少しはマヨネーズの方を
我慢出来るかな~と」
駄目ですかね? 心配そうに問い掛ける新八に、土方は
ポンとその頭に手を乗せる。
そして袋からマヨ型のライターを取り出すと、カチャリと火を着け、
咥えているタバコへと火を着けた。
「我慢出来るかどうかは判らねぇが・・・気に入ったぜ」
有難く使わせてもらう。そう言って口元を緩く上げ、新八の頭を
緩くかき回した。
その後、マヨネーズの摂取量は減らないまま、タバコの量が格段に
増えた土方が居たという。
***********************
・・・寧ろ見る度にマヨが欲しくなると思う(笑)
巡察のルートに、ムカツク場所がある。
と言うより、嫌な野郎がいる場所がある。
・・・ま、滅多に会う事もねーけどな。
そう、どう言う訳か滅多に会わない。
寧ろ他の場所で会う方が多い気がする。
特に非番の日とか、休みの日とか、休日とか。
だからいつか叩っ斬ってやろうと思います。
え、何コレ、作文?
・・・等と考えていたら、その滅多に会う筈の無い野郎が居やがった。
って言うかなんでそんな陰に潜んでんだ?
・・・よし、挙動不審で捕まえよう。
「何してんでェ、旦那ァ」
土方がそう思ってる間に、隣を歩いていた筈の沖田が声を掛けていた。
「っ!!!!お、おぉ~沖田君じゃないか~」
別に何にもしてないよ~。と、変な笑いを浮かべながら手を振る銀時。
その顔には大量の汗が流れていて。
「そんな事言って、今滅茶苦茶ビビッてませんでしたかィ?」
「いやいやいやいや、そんな事ないって!本当もう何でもないんで
さっさと通り過ぎてください~。と言うか税金払ってる人達の為に
馬車馬の如く働いてこいや、コノヤロー」
「よーし、じゃあとりあえず目の前の不審者を
ひっ捕まえろ、総悟」
「了解でさァ~」
「冤罪以外の何物でもねぇぇぇ!!
ちょっ、誰かお巡りさん呼んで、お巡りさん!!」
物陰から銀時を引っ張り出そうとすると、物凄く慌てた様子で
抵抗し始めた。
なんだ、コイツ。何時もと勝手が・・・・
そう思い、ふと少し先にある万事屋へと目をやると、そこには見慣れない
人影が・・・
いや、そこに居る人物は見慣れてるのだが、ソイツがしている行動が
見慣れないと言うか・・・
思わず凝視してしまった土方に、必死になって物陰から出ようとしない
銀時をつついて遊んでいた沖田も気付き、その視線の先に目をやって
少し首を傾げた。
「・・・・おい」
「・・・・なんだよ」
「テメーんトコは大掃除かなんかやってんのか?」
「・・・・・・・・・・」
問い掛けても答えは返ってこない。
「って言うかすげーなァ。ここからでも物凄い気迫が伝わってきますぜィ。
なんか恨みでもあんですかィ、あの看板に」
そう、この寒空の下、どうした訳か物凄い勢いで万事屋の看板を
磨いているのである。
万事屋のメンバーである、志村新八が。
「違うネ、新八が恨んでるのは看板じゃなくて、そのマダオネ」
ボーッとその姿を見ていると、不意に後ろから声が掛けられた。
振り返れば其処には大きな犬を連れた少女、神楽が呆れ顔で立っていた。
「おう、チャイナ。相変わらず暇が寄り集まった集合体のようなツラしてんな」
「オマエの全世界の腹黒さが集まったツラよりマシネ」
「そりゃ~褒め言葉だねィ、気分わりィや」
「こっちこそネ。吐き気がするヨ」
「って待てこらチャイナ娘。無理矢理吐こうとすんじゃねーよ!!
総悟!テメーもすんじゃねーよ!!こっちが吐くわァァァ!!!」
会って早々バトルのゴングを鳴らし始める二人に少し待ったを掛け、
先ほどの言葉の意味を問い掛ける。
「・・・で、なんだ、アレ。それとコレ」
土方が視線を万事屋に、そして未だに物陰に身を潜めている銀髪頭に向ける。
すると神楽は白けた顔で腕を組み、答え始めた。
「何時もの事ネ。銀ちゃんが新八を怒らせたヨ。で、喧嘩してアレネ」
「いやだから、それでなんであの行動に繋がるんだ?」
喧嘩してなんで看板磨きなのか判らない。
土方は再度神楽に問い掛けた。
「なんでも何もないネ。新八、最初は普通に怒るネ。でも凄く凄く怒ると
あぁやって掃除しまくるネ、無言で。呆れたマダオアル。」
お陰でトイレも台所も鍋もピカピカネ。そう言う神楽に、しゃがみ込んでいた
銀時が
「・・・鍋はオマエの時じゃん」
ボソリと声を挟んだ。その言葉にウッと声を呑む神楽。
どうやらその時の状況を思い出したらしい。
「・・・でもちゃんと謝ったネ。銀ちゃんはまだ謝ってないアル」
「いや、だってホラ・・・まだ磨いてる最中だから・・・」
全部磨いてからの方がいいかな~・・・なんて。と、ヘラッと力なく笑う
銀時に、土方達は大きく溜息を吐いた。
「なんだよ!テメーらは知らねーかもしんねぇがなぁ、あぁ言う時の新ちゃんは
本当、もうマジでこえぇんだぞ!!」
更に情けない事を力説する銀時にますます脱力する。
「アホか。大体にしてテメーが悪いんだろうが、さっさと行って魂込めて
謝罪してきやがれ」
「そうでさぁ、ついでに土方さんは魂飛ばして逝ってくだせぇ」
「よぉし、総悟。とりあえず首を出せ、叩っ斬ってやらぁ」
そんな事を言いつつ、どうにか銀時を物陰から引っ張り出し、万事屋へと
向かわせる。
見れば看板磨きも終盤だ。
「見捨てられんのも近いな」
「全くでェ。そん時はウチに来いって伝えといてくだせェ」
笑ってそう言葉を投げると、背を向けていた二人がクルリと振り返り、
「それはないネ」
「そうそう。新ちゃんはどんなに怒ってそれを鍋とか磨くのに向けても、
キチンと家に居てくれるからね~。」
と言って、ニッと笑った。
「確信犯・・・てヤツですかねィ」
「だろーな。」
なんとなく面白くなくて、二人その場に佇んだまま、去っていく二つの背中を
眺める。
多分あの白髪頭は謝るのだろう。そしてあの少年は怒りながらも許すに
違いない。
この先もきっとあの少年は何かある度に、何かを磨くのだろう。
けれど、彼等の言った通り、アソコからは出て行かないのだ。
やっぱりあの銀髪はヤな野郎だ。
そして無性にムカツク場所だ、アソコは。
土方は口にしていたタバコをギュッと噛み締めた。