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「・・・何してるんだろ、僕」
新八はそう呟くと深々と息を吐き出した。
その日、新八は何時ものように取り込んだ洗濯を和室で畳んでいた。
まだまだ昼間の日差しは厳しいので、洗濯物がよく乾く。
それは喜ばしい事なのだが、微妙に暑い。
扇風機を回そうか・・・だがそれだと洗濯物が・・・
いやいや、微風なら大丈夫か!?
等と悩んでいると、玄関の開く音がし、次にドタドタと足音が聞こえてきた。
「あ~、あっち~」
見ればパタパタと上着を仰ぎながら歩いてくる銀時の姿が。
「お帰りなさい、銀さん。早かったですね」
「おぅ、思ったより仕事が早くすんでな。
って言うかこんな暑い中、長々と仕事なんかしてたくねぇよ。
寧ろ仕事自体したくねぇ」
「社会人として失格な発言を真面目な顔で言わないで下さい。
ちょ、こっちに向けないで下さいよ」
ドカリと新八の隣に腰を下ろし、扇風機の電源を入れる銀時に、
折角畳んだタオルが微妙に崩れてしまう・・・と、新八が
慌てて告げる。
「んだよ、折角銀さんが気を使ってやったってのによぉ」
そう言うと銀時は渋々扇風機の首を回し始めた。
風量も強風から微風に。
「・・・や、離れた所だったら別にいいんですけど・・・」
「オマエが居るのに離れるとか
意味判んないんだけど」
「いや、こっちの台詞だよ、それ」
心底不思議そうにそんな事を告げてくる銀時に、新八から
思わず呆れた声が出る。
大体扇風機の風がくるのはいいが、隣に銀時が来たせいで
なんとなく暑苦しくなった気がする。
正直にそう言ったら、オマエは何時まで反抗期を引き摺っているんだ・・・と
渋い顔をされた。
・・・あれ?僕反抗期真っ只中の年齢でいいんだよね?
引き摺るも何も、まだ真っ最中で居ていい年だよね?
「ちなみに銀さんは発情期真っ只中です」
「今すぐ枯れて下さい」
と言うか離れろぉぉぉぉ!!!と、全力で隣に居る銀時を押し離そうとしたが、
それこそ全力で無駄だった。
軽く交わされ、序とばかりに頭を軽く叩かれる。
「あ~、うるせぇうるせぇ。
判ったからちょ、寝かせろ。」
そう言うと銀時は新八の髪を軽く掻き混ぜ、ゴロリとそのまま
寝転び、新八の膝の上へと頭を乗せてしまった。
「・・・っ!ちょ、何やってんですか、アンタ!!」
「何って膝枕だよ、膝枕。
青少年から中高年、果てはご老体までが夢見る膝枕だよ。
夢見すぎてて枕に『新八の膝v』なんて名付けたくなるほどの代物だよ。
ってか抱き枕シリーズ出ねぇかなぁ、おい。
他のグッズはもう諦めるから、それぐらい出ねぇかなぁ、
新八の」
「出ねぇよ!?ってかそもそも諦めてませんからね!?
っつうか誰の願望ぉぉぉぉ!!?」
と、そんな馬鹿げたやり取りをしてる間に、
銀時は本格的に寝てしまったようだ。
現に先程まで新八の尻を触っていた手が止まっている。
・・・まぁ止まっていても、場所は未だに尻部分なのだが。
「え、何この執念深さ」
軽く息を吐き、新八は残りの洗濯物を苦労して畳む羽目になったのであった。
そして文頭の台詞となるのである。
「・・・本当、何やってんだろ、僕」
新八はボーっと銀時の寝顔を見ながら再度、ポツリと呟いた。
まだ夕飯の支度まで間があると言っても、やる事はたくさんあるのだ。
ちょっと買い物にも行きたいし、畳んでいる内に見つけた解れを繕いたい。
けれど今の状態では何も出来ない。
別に銀時を起こせばいいだけの話なのだが・・・
「こんな顔で寝られちゃぁね・・・」
起こすに起こせないや。と、新八は苦笑し、
銀時の頭にそっと手を乗せてゆっくりと撫でる。
そうしている内に、再び玄関の開く音が耳に飛び込んできた。
先程と同じようにドカドカと言う音と、ノシノシと言う音が聞こえてくる。
「おぅ、神楽様のお帰りネ。
三つ指突いてお出迎えしやがれ、コノヤロー」
「神楽ちゃん、口悪すぎ。
と言うか帰ったらすぐ手洗いウガイって言ってるでしょ」
見れば外に遊びに行っていた神楽と定春の姿が。
とりあえず何時ものように神楽へと声を掛けると、チッチッチ・・・と
小さく指を振った。
「甘いネ、新八。私を誰だと思っているネ。
ちゃんと言われる前に洗ってきたヨ、公園で」
「いや、それ意味あるの!?」
「ほんの数分の差ネ、変わりないヨ。
って言うか何イチャコラしてるアルカ」
暑苦しい・・・と、非常に冷めた目で見てくる神楽に、新八は慌てて
手を振った。
「違う違う!これはただ単に銀さんが疲れて眠っちゃって・・・」
「膝枕に手は新八の尻アル」
「・・・イチャコラじゃなくてセクハラされ中です」
「叩き起こせ」
指を鳴らしながら近付いてくる神楽に、再び新八は手を振った。
「あ、ちょっと待って神楽ちゃん。
疲れてたのは本当だし、ほら見てよ」
そう言って新八は未だ眠っている銀時の顔を指差した。
それを不思議そうに神楽が覗き込む。
そこにはゆるりと口元を上げ、まるで笑っているように寝ている銀時が。
「ね、なんかこれだけ幸せそうに寝ちゃってると
起こすに起こせなくない?」
そう言って笑う新八に、神楽は呆れたように息を零した。
「何言ってるアルカ。そんなの関係ないネ」
「え?」
「起きてても寝てても、銀ちゃんは幸せそうじゃなくて
幸せネ。私等が居る限りずっとナ、ね、銀ちゃん」
ちなみにオマエも私も同じ顔ヨ。と、神楽は体を起こしてペシリと銀時の頭を
叩くと、さっさと和室を出て行ってしまった。
残されたのは顔を赤くしたの新八と、未だ幸せそうに・・・幸せに
眠っている銀時。
その銀時の頬も、ほんの少しだけ赤く染まっていたりするのだが、
新八がそれに気付くのはまだ先のことである。
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リハビリがてらちょっとうっかり。