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・・・なんで物って探してもない時があるんだろう。
「新八~、ハンカチどこアルカ?」
ごそごそと棚の中を漁っていると、神楽ちゃんの暢気な声が
背後から掛けられる。
・・・訂正、なんで人って自分で探そうとしないんだろう。
・・・いや、ここの家の人達だけか・・・
僕はヒクリと頬を引き攣らせながらも、背後に向かって
少し大きめに返事をする。
「箪笥の引き出しの中だよっ!
何時も其処に入れてるでしょ!!」
少しは自分で探しなさいっ!・・・と言って見るが、多分無理だろう。
第一・・・
「お~い、新八~。爪きりまだぁ?」
一番の大人からしてこうだからね、ここっ!!
ダラダラとした雰囲気がこちらまで漂って来そうな銀時の声に、
新八の頬はまたヒクリと動く。
「まだですよっ!ってか最後に使ったの、銀さんでしょ!?」
ちゃんと元に戻しました!?そう聞き返すと、ん~?と曖昧な声が
返ってきた。
あぁ、チキショウ。絶対元に戻してないよ、あの人。
カクリと肩を落とし、僕は銀さんが爪を切っていた場所を
思い出しながら、爪切りの居場所を予想する。
あの調子だと、切った場所から然程離れていない所に放置
したのだろう。
そう思い、デスクの周りを見てみると・・・案の定、爪切りは
ジャン○タワーの狭間に鎮座していらっしゃった。
ちなみに今の銀さんの居る所は、その直ぐ横。ソファだ。
「・・・銀さん・・・」
「お、あんがとさん。」
「どう致しまして・・・じゃなくて、もう少し自分で探そうとか、
ちゃんと元に戻しておこうとか・・・」
「新八~」
呆れた顔で銀時に爪きりを渡す新八に、再び神楽の声が
かかる。
「私のハンカチはまだカ?」
「・・・箪笥の引き出しだって言ったでしょ?」
「甘いネ、新八。何時も同じだとつまらないから、
この間色々と入れ替えてやったネ」
「え、ちょ・・・はぁ!?」
とんでもない発言に、勢い良く振り返ればとてつもなく満足気な
笑顔の神楽が酢昆布片手にこちらを見ていた。
え?なんでこんな満足気なの、この娘。
ってか何してくれてんの、この娘ぉぉぉ!!!!!
慌てて箪笥を見てみれば、僕の記憶していたものがウソだと言うように
・・・いや、この場合神楽ちゃんの言葉が本当だと言っているように、
それまでと全く違うものがそれぞれ入っていて・・・
「ちょ、本当に何してんのぉぉ!!
しかも微妙にグチャグチャになってるしっ!!」
とりあえず引き出しを開けては中のものを取り出していく。
うわ・・・本当に色々と入れ替わってるよ。
普段洗濯物を箪笥にしまってくれって言っても動かないくせに、
なんでこう言う所だけはちゃんと動くかな!?
「な~、新八ぃ~。ハンカチまだカ?」
「あ、新八ぃ、古新聞どこ?」
そんなサカサカイライラと手を動かす僕に、またもや暢気な声が掛けられた訳で。
「アンタ等、少しは自分で動けぇぇぇぇ!!!」
次の瞬間、僕の怒鳴り声が万事屋に響いたのは言うまでもない。
「で、あの騒ぎだったって事かい」
カウンターの向こうでお登勢さんが呆れ顔で呟き、僕は申し訳なさそうに
肩を小さくした。
「ご迷惑をお掛けしまして・・・」
その言葉に、お登勢さんは深々と溜息を吐き出した。
「まぁう慣れたけどね、あの程度の騒音は。
しかし・・・どうしようもないねぇ、あの二人は」
「本当ですよ。」
お登勢さんの言葉に、今度は僕が深々と溜息を吐いた。
あの後どんなに怒っても、結局僕が全部探し出したのだ。
本当、なんであんなに人任せなんだろう・・・
・・・まぁ僕がつい手を出してしまうのが悪いんだろうけど。
だからと言って、あの二人も任せすぎだと思う。
「少しは自分で動こうって気にならないんですかね」
もう一つ溜息を吐いて、出してもらったお茶を一口飲み込む。
それと同じタイミングで、勢い良く店の扉が開かれ、
一瞬ビクリと体が震えてしまった。
あまりの勢いに何事だ?と振り返れば、そこにはちょっとだけムスッとした
顔の銀さんが。
「や~っぱりここに居やがったか・・・
お~い、神楽ぁ。新八見付けたぞ~」
銀さんが外に向けてそう言うと、大きな足音と共に神楽ちゃんの
マジでカ!?なんて声が聞こえてくる。
あれ?定春も一緒なのかな?
そう言えば散歩に行くって言ってたっけ。
でも、何で戻ってくるんだろ。
「どうかしたんですか?」
不思議に思って聞くと、銀さんは後頭部をかきつつ小さく息を零した。
「どうしたじゃねぇだろ。ったく、黙って居なくなるんじゃねぇよ。
探しちまっただろうが」
「え、探したってなんで・・・」
「あのよ・・・トイレットペーパーの替え、どこだっけ?」
「・・・・・・は?」
真剣な顔で言うもんだから、急用なのかと思ったのに・・・
今、何て言いやがった、この天パ。
「あ、本当に居たネ、新八!!
私のお財布、どっか行ったアル、早く探すネ!!」
このままじゃ酢昆布が買えねぇんだよぅ!!
銀さんの発言に頬を引きつらせていると、今度は神楽ちゃんが
飛び込んできてそんな事を言う。
いや、そんな泣きそうな顔しても知らないから。
って言うか昨日も同じような事言ってて、結局自分のポケットに
入ってたじゃん!!
・・・っつうか・・・
「僕を探す前に自分等で探せぇぇ!!」
なんて怒鳴り声が響き、再びお登勢さんに迷惑を掛けてしまったのは・・・
言うまでもない。
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でも新八だけは自力で探す旦那と娘です。