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午前中お休みを貰って、午後から万事屋へと行ったら、
未だ甚平姿でだらけている銀さんが居た。
・・・この場合、起きてただけいいと思わなきゃいけないのかな?
「お~、漸く来たか遅刻者」
「いや、遅刻も何も、今日は午後からっていいましたよね?」
ってか神楽ちゃんは?と聞けば、飯食って遊びに行った。と
ダルそうに頭を掻きながら銀さんが答えてくれた。
あ、一応ご飯は作ってくれたんだ。
朝御飯は昨日の夜に用意しといたけど、お昼はしてなかったんだよね。
あればあるだけ食べちゃうから、この人達。
と、安心した僕が馬鹿だった。
「・・・お昼って、もしかしてカップラーメンですか?」
見ればテーブルの脇に、山と重ねられたカップラーメンの
器が・・・
「馬っ鹿、オマエ銀さん舐めんなよ?
ちゃんとうどんと蕎麦も食った」
「どっちにしろインスタントじゃねぇかっ!
おまけに着替えてもないしっ!!」
全身でソファに凭れかかっている銀さんの前に立ち、腰に手を当てて
睨みつけると、銀さんは目を逸らしながら少しだけ口を
尖らした。
「・・・だって新ちゃん、着替え出しといてくれなかったんだもん」
うわ~・・・ウザッ。
え、何この人。なんか『もん』とか付けちゃってるんですけど。
しかも着替えが出てなかったからとか言ってんですけど。
実年齢突き付けてもいいかな、もう。
でもそれを言って拗ねられるとウザイ事この上ないので、
僕は一つ息を吐くだけに留める事にした。
大体幾ら注意しても、全然直らないしね、この人。
寧ろ開き直る勢いだから。
諦め半分で、僕は銀さんの頭をそっと撫でた。
「・・・それでこの格好ですか・・・
全く、ならせめて寝癖ぐらい直して下さいよ・・・ってあぁ、すみません。
元からでしたね、これ」
「ちょ、何言ってんのぉぉ!!?
言っとくけど今銀さん、寝癖大絶賛中だからね?
本当、シャレにならないぐらい撥ねまくってるからっ!!」
いや、塵ほども判らねぇよ、その違い。
ギャーギャーと文句を言い出す銀さんに、再び吐きそうになる
溜息を押し殺して、僕はある事を思い出していた。
・・・うん、どうせ何言っても同じなんだから、
試してみてもいいかも。
僕は思わず篭められそうになっていた手の力を抜くと、
もう一度やんわりと銀さん曰くの寝癖を撫でた。
「あぁ、もういいから少しはきちんとして下さいよ。
折角の良い男が台無しですよ?」
その言葉に、文句を吐き続けていた銀さんの口がポカリと開いた。
見れば目も大きく開けられていて、こっちもびっくりだ。
・・・あれ?もしかして効果あり?
この褒めて伸ばそう作戦。
そう思っていると、ポカリとしていた銀さんが
オズオズと僕に問い掛けてきた。
「・・・いい男?銀さん」
銀さんの言葉に、僕は慌てて首を縦に振る。
「そっか~、いい男か~」
すると銀さんは嬉しそうに笑い、ちょっと着替えてくらぁ。と言って
ソファから立ち上がり、和室へと消えていった。
それを見送る僕は、ちょっと呆然だ。
だって銀さんの事だから、あんな事言っても
当たり前だろ?みたいな感じで流されると思ってたのだ。
それがまさか、こんなに効果的面だったとは・・・
「・・・よし、今度からは褒めていこう」
和室から聞こえてくる銀さんの鼻歌を耳に、
そう心に決めた僕だった。
・・・が、世の中そう上手くいく筈がない訳で。
「ちょっと、銀さん!またそんなにだらしない格好して!
いい男が台無しでしょっ!!」
「ん~・・・んふふ。だねぇ、台無しだねぇ、いい男が」
「・・・その妙な顔の緩み具合も台無し要素ですよ」
「ダメネ、新八。
銀ちゃんは良い男って言われたいだけネ。
言ってやるだけ無駄ヨ」
「・・・・・だね」
やっぱり躾は厳しくしよう。
僕はそう心を改めると、大きく息を吸い込んだ。
*******************
この後暫く呼び名は『マダオ』で
銀さんは掴み所がない人らしい。
・・・そうかな?
「いや、そうかな?って言われてもなぁ」
ってか本人に聞くかな、それ。呆れた顔で僕を見る銀さん。
あぁ、こう言う表情は読みやすいな。
僕は向いのソファに座っている銀さんを見詰めながら、
少し冷めたお茶を口にした。
「だってそう言われたんですもん。
なんか何考えてるか判んないって」
「んなの誰のでも判んねぇだろうが。
あ、でも安心しろ、オマエのはちゃんと判ってるから。
銀さんの事しか考えてないのは丸判りだから」
「やっぱりその死んだ目がいけないんですかね?」
「え、スルー?
ってか違うからね?あくまで死んだような目だから、銀さんのは。
それよりもその『死ねばいいのに』みたいな目を止めてくなんい?
本気で哀しくなるから、銀さん!!?」
アホな事を言い出す銀さんをじっとりと睨みつけていると、
必死な感じで訴えてきた。
あ、本当だ。
僕の考えてる事、ちゃんと判ってるや。
「・・・ね、なんでそんなに驚いた顔してんの?
え、何?本当にそう思ってたりした訳ぇぇ!!?」
「じゃあどこら辺が判りにくいんですかね?」
「いや、だから銀さんの言葉無視しないでくれる?
本当にそうだったのかな?とか思っちゃうからっ!
何か涙出てきそうになるからっ!!」
「ならあえて深く突っ込まないで下さいよ。
折角人が止めを刺さないように
気を使ってんですから」
「・・・既に遅くね?その気遣い」
カクリと項垂れる銀さんを放っといて、僕は再び銀さんを
観察する事にした。
確かに死んだ目からは、何を考えているかは判らない。
態度だって飄々としてるし、表情もそんなに豊かではない方だと思う。
それだけ見れば、やっぱり何考えているか
判らない・・・って感じになるのかな?
僕も最初はそう思ってたし。
でも・・・と、目の前でいじけ始めた銀さんを見詰める。
今では結構判りやすい人だと思うんだよね、僕。
糖分を目にすれば頬が緩むし、ジャ○プを読む目は
意外と真剣だ。
僕と神楽ちゃんが喧嘩してれば、困ったような仕方ないなぁみたいな
暖かい視線をくれるし、
反対に二人で仲良くしてれば、嬉しそうな顔をしてるし、
時に入れて欲しげな顔もする。
甘えたい時はそっと寄って来るし、
僕等を甘えさせたい時は、何かウズウズしてる。
ちなみに全然読めない時は、大抵僕等に関わらせたくない
事がある時だ。
こう言う所は本当頑固だから、絶対僕等にそれを気づかせたりはしない。
・・・ま、それでも何かあるな・・・とは気付くので、
無理矢理関わるんだけどね。
そう言う時の銀さんは、ちょっと怒ってるような顔をする。
・・・多分心配からそうなるんだろうけど。
「ま、アレだ。銀さんはミステリアスな所が売りだから?
そこから掴み所がないって言われるんじゃね?」
別に死んだような目のせいじゃねぇし。
そうブチブチ言う銀さんは、未だ絶賛イジケ中だ。
こうなると面倒臭い・・・いやいや、ウザイんだよねぇ。
顔を逸らしている銀さんを見て、ちょっと笑う。
うん、やっばり銀さんは・・・
「ね、銀さん」
「あ?」
「大好きですよ」
そう言ってにっこり笑えば、銀さんは一瞬目を丸くしてこっちを見、
だけどすぐに慌てて思いっきり顔を逸らせた。
「あ~っ!うっせぇうっせぇ!!
さっきから訳判んない事ばっかり言いやがって。
銀さんからかうのがそんなに面白いですかコンチキショー!!」
そう怒鳴るが、赤く染まった耳はちゃんと見えてるわけで。
他の人には掴み所がない人でも、
僕にとってはやっぱり判りやすい人です。
****************
どんなに隠そうとしても、身内にはモロバレ。
原稿しなければいけなかったのに、うっかり戦/国/B/A/S/A/R/Aにはまってましたι
元々某小説と漫画のせいでKGが大好きな上、
最近パチンコでそればかり打ってたせいなんですが・・・
・・・予想以上に面白かったっ!!!
なんだ、アレ。色々と本当に予想以上なんですけどぉぉ!!?
お陰で今更ながらゲームも買ってプレイ中です。
ただひたすらにKGのレベルを上げてます。
空気だけど大好きです(ちょ、待てι)
・・・うん、大丈夫。
グッズとか少ないのは新ちゃんで慣れてるから(泣)
以下メルフォお返事。
リミル様
態々のご感想、有難うございますv
気に入って頂けた様で安心しました~vv
これからも、こんな調子でダラダラ続ける予定なんで、
また良かったらお気軽にお声なんぞ掛けて下さいませvv
嬉しいお言葉の数々、本当に有難うございましたv
それは久し振りに入った仕事の後の事。
「新八~、早くお茶お茶~」
万事屋へと帰って来た途端、銀時はイソイソと居間のソファへと
座り、仕事先で貰ってきた箱を丁寧にテーブルの上へと置いた。
「銀さん、まずは手洗いウガイでしょ!」
早速箱を開けようとする銀時に、新八は一言注意を告げると
そのまま言われたお茶を淹れる為、台所へと足を進めた。
言われた銀時は、相当機嫌がいいのか、文句も言わずに
ヘイヘイと手洗い場へと姿を消していく。
その気配を背後で感じながら、新八は一つ、柔らかい笑みを浮かべた。
本日の仕事は蔵の大掃除だった。
大きな物もあったが、そこは力自慢の二人が居る万事屋。
さして問題もなかったのだが、何分二人の内一人は
力自慢過ぎる部分がある。
そしてもう一人は、力意外に怠け具合も自慢だ。
不器用ながらも、その二人を上手に操り、掃除をこなしていく
新八は、まさにオカンと言えよう。
・・・あまり嬉しくはないのだが。
けれど思ったよりも早く掃除が終わり、依頼主は気分良く
依頼料とお土産まで持たせてくれた。
その土産と言うのが、先程丁寧にテーブルに置かれた箱。
つまりお饅頭だったりする。
「いや~、最初あんな馬鹿デカイ蔵ぁ掃除させるなんて
とんでもねぇ事させやがる野郎だって思ったが・・・中々どうして。
いい依頼主だったよなぁ」
新八がお茶の用意をして居間へと戻ると、既に銀時が手洗いから
帰ってきており、箱を前に両手を擦っていた。
「・・・銀さん、糖分くれるからって言われたからって
知らない人についてっちゃダメですよ?」
思わずそんな事が口から飛び出るが、流石にそれはないようだ。
呆れた顔で見返してくる。
「おいおいばっつぁん、銀さんを何歳だと思ってんの?
別に言わなくていいけど。
でもアレだよ?幾らなんでもそれはないよ?
ちゃんとついてく前に分捕るからね、糖分」
「いや、その方がダメですからね?
何その微妙なカツアゲ」
真面目な顔でそう告げる銀時に、今度は新八が呆れた顔を返した。
そして銀時へとお茶を淹れた湯呑みを渡すと、向かいに居る
非常に嬉しそうな顔で箱の蓋を開けている銀時を見詰めた。
その顔は幸せそうに緩みきってて、少し笑える。
「あ、ちゃんと神楽ちゃんの分、取っといてくださいよ?」
帰り際、友達と会ってそのまま遊びに行った神楽を思い出し、
既に食べ始めている銀時に向ってそう告げる。
「判ってるって。・・・箱と包み紙の二つでいいよな?」
「いや、それ取ってるって言いませんから。
普通に嫌がらせになってますからね、それ。」
食べ物の恨みは怖いですよ、神楽ちゃんの場合は特に。
そう告げれば、銀時は一瞬言葉に詰まったものの、ちゃんと
数を数えて人数分に分け始めた。
どうやら丁度三人で割り切れる数だったらしい。
だが、銀時としては割り切れない部分もあるようで。
自分の分・・・と手元に取り出した饅頭を前に、久し振りの甘味に
嬉しい反面、数に満足いかない・・・と言う不満な表情を顕わしていた。
「全く・・・神楽ちゃんには内緒ですからね?」
僕も食べ物の恨みは怖いですから。と言って、新八が
自分の分から一つ、饅頭を銀時の前へと置いた。
「・・・へ?いいの??」
「今日はちゃんと仕事してくれましたからね、特別です」
ポカンとした顔で見返してくる銀時に、新八は苦笑を
浮かべてそう告げた。
「マジでか!?ぅわ、新ちゃん本当に愛してる。
何時の事だけど」
「はいはい、何時も有難うございます。」
「お返しに銀さんあげちゃう。」
「恩を仇で返さないで下さいよ。」
ってかもうアンタは僕のもんでしょ。そう告げれば、
幸せそうに饅頭を頬張っていた銀時が一瞬目を丸くし、
次にヘラリとだらしなく顔を緩めた。
「やっべ、銀さん超幸せじゃね?」
「好物の糖分がありますからね。」
「ん~、でもそれ以上に好物なのが目の前にあるからかな?」
ね、新ちゃん。そう言って銀時は身を乗り出し、新八の
唇へと軽く口付けた。
「・・・甘い」
銀時の行動に恥ずかしそうに口元を押さえ、顔を赤らめたまま
上目遣いに睨みつける新八に、銀時はニヤリと笑う。
「銀さんの好物だからね?」
だから甘くて当然なのです。
新ちゃんは色々甘いと思います(ちょ、待てι)
万事屋へと登る階段。
ある日、そこに一つの鉢植えが姿を現した。
お登勢がそれに気付いたのは、ちょっとした用事があり、
午前中に起き出した日の事だった。
「あ、お登勢さん、お早うございます」
店の扉を開けて出てきた所で、礼儀正しく挨拶をされる。
見れば階段横に新八が居て、何故だか如雨露を持っていた。
お登勢は挨拶を返しながら、何をしているのかと問えば、
新八は笑って階段の方へと少し屈み、小さな鉢植えを手にとって
お登勢へと差し出した。
「なんだい、こりゃ」
「プチトマトです。昨日種を貰ったんで植えてみたんですよ」
そう言われ、あぁ、それで水をやっていたのか・・・と先程の
如雨露の意味を知った。
「家の中だと・・・ちょっとアレなんで、ここに置かして
貰っていいですかね?」
申し訳なさそうに言う新八に、お登勢は軽く頷きながら
タバコを取り出して火をつけ、深く息を吸う。
「別にいいさね。邪魔になるような大きさでもなし。」
それに・・・と、バタバタと大きな足音がし始めた二階を見上げた。
「確かにあの調子じゃ家の中は危険だしねぇ」
呆れた口調で言うお登勢に、新八が乾いた笑いを上げる。
「ま、せいぜい大事に育てな」
「はい!あ、ちゃんと出来たらおすそ分けしますね」
お登勢はそれに片手を軽く挙げ答えると、外へと出てきた本来の
目的を果たすべく、その場から足を動かした。
その背後に、盛大に玄関が開けられる音が追っかけてくる。
「新八~!もう芽が出たアルカ!?」
「神楽ちゃん!静かにしなきゃダメでしょ。
ってか昨日植えたばっかじゃん、出るわけないでしょ!」
「新八の声だって煩いネ!
ってか最初っから諦めてんじゃねぇヨ。もうグラさんに任せるヨロシ。
何時まで経ってもメが出ないダメガネに任せといたら、
プチトマトまで同じになるヨ」
「諦めとかそんな問題じゃないから。
自然的問題だからね、これ。
ってかメが出ないってどう言う事だぁぁぁぁ!!!!」
背後で騒ぐ声に、お登勢は大きく煙を吐いた。
ちらりと見れば、小さな如雨露を取り合いしている二人が見える。
「・・・あの分じゃアソコも危ないねぇ」
と言うかあんな小さい鉢植えから、
お裾分け出来るほど採れるものだろうか。
「ま、どっちにしろあまり期待しないでおくかね」
お登勢はやれやれと肩を竦めると、聞き慣れた喧騒に背を向け歩き始めた。
だが、お登勢の心配を余所に鉢植えは無事なままだった。
現に今もちょこんと階段脇へと佇んでいる。
「そろそろ芽が出てきてもいい頃なんですけどね~」
そう言う新八の横では、楽しそうに神楽が水をくれている。
どうやら水遣りは神楽に決まったものの、任せっきりにすると
際限なく水を与えてしまう・・・と言うので、お目付け役として
新八が共に居るらしい。
「なんだい、そんなに早く芽が出るものなのかい?」
「えぇ、大体一週間ぐらいで芽が出るらしいんですよ」
「でも今日でその一週間ヨ。まだ出てこないなんて変アル」
水をやり終え、鉢植えの前でしゃがみ込んでムスッと口を
尖らす神楽に、新八がクスリと苦笑する。
「そんなにきっかりとは出てこないよ」
多分そろそろだとは思うけどね。そう言い、新八も神楽の隣へと
腰を降ろす。
「なら今日は一緒に寝ていいアルカ?
私、芽が出るトコ見てみたいヨ」
「や、そんな事したらお布団土塗れになっちゃうからね?」
「なら起きて見てるアル」
「そんな事したらもっと出てこないかもよ?」
「んだよぉ、一丁前に恥かしがり屋かコノヤロー。」
ツンと鉢植えを突く神楽に、かもね。と笑う新八。
そんな二人を見て、お登勢はこの調子で、例え無事実がなったとして、
ちゃんと食べる事が出来るのかねぇ。と呆れながらも、
ゆるりと口元を緩めた。
その次の日・・・と言ってもまだ朝と言うのにも早い時間。
お登勢がそろそろ寝ようとしていた所に、不意に外から
大きな物音がした。
「・・・ったく、あのガキャァ!」
ヒクリと額に青筋を浮かべ、文句を言う為に店の外へと出てみれば、
そこには思った通りの人物が転がっていた。
どうやら相当呑んできたらしく、階段へと身を預けながら
ヘラヘラと笑っている。
「おいこら腐れ天パ。今一体何時だと思ってやがる。」
「ん~?妖怪が居るって事ぁ百鬼夜行タイム?
おいおい勘弁してくれよ、俺には帰りを待つ可愛い嫁さんと娘が
居るんだぜ?あ、後存在感アリアリなペットな。
あ、ちょっとこれヤバクね?なんかホームドラマの如き
家族じゃね?自慢していいレベルじゃね?」
「寧ろ自爆していいレベルだろうよ。
ってかツッコミ所アリアリな戯言言ってんじゃないよっ!」
大体誰が妖怪だ、誰が!と銀時の頭をベシリと叩き、
凭れかかっている階段へと視線を走らせた。
そこには見慣れた鉢植えがちゃんとあり、お登勢はホッと
胸を撫で下ろす。
お登勢の視線に釣られるように銀時も鉢植えへと移し、
あぁ、これな。とニヘラと顔を緩ませた。
「可愛いだろ~。なんか二人して一生懸命世話してやんの。
この間なんてアレよ?『早く芽を出せプチトマト~♪』なんて
二人して歌ってんだよ?ヤバクね?マジヤバクね?
俺本気でビデオ購入考えちゃったんだけど」
「その前に家賃支払いを考えな。
ビデオの方は知り合いに中古がないか聞いといてやるから。」
「マジでか!?
じゃあなるべく小型で性能がいいヤツを頼まぁ。
出来ればボタンぐらいの大きさで
映像を飛ばせるヤツ」
「テメーは盗撮でもするつもりかい!?」
「馬っ鹿、違ぇよ。あぁ見えて二人とも思春期じゃん?
カメラ向けて素直に映させてくれる訳ねぇだろうが。
ならこっそり映すしかねぇだろう?」
「それを盗撮ってんだよ」
それにしても無事で良かった。とお登勢が改めて鉢植えに
視線をやった。
と、そこで昼間見た時とは違うものを見付ける。
「これは・・・」
「あ?・・・ってなんだよ、草生えてんじゃねぇか」
お登勢が何かを言う前に、同じように鉢植えに目をやっていた銀時が、
中に生えていた小さな緑色の芽をプチプチと引っこ抜いてしまう。
「ちょっ!!!」
「あ~もう仕方ねぇなぁ。確り面倒見ろって言ってんのによぉ。
最終的に銀さんが全部面倒見る羽目になんだよな。」
そう言いながら手をパンパンと払う銀時の顔はゆるりと緩んでいて、
・・・反対にお登勢の顔は固まってしまっていた。
「これでよしっと。早く芽ぇ出せよなぁ。」
そしたらプチトマトパーチーだぁぁ。
そう言って最後に鉢植えを優しく撫で、
銀時は腰を上げ階段をフラフラとした足取りで上がっていった。
残されたのはお登勢と物言わぬ鉢植え。
お登勢はちらりと鉢植えに視線をやり、深々と溜息を落とした。
「・・・芽を出せって・・・ねぇ?」
たった今摘み取られたんだけど。
日が上がり始めた中、お登勢はもう一つ、大きな溜息を吐いた。
その後、奇跡的に残っていたらしい種が芽を出し、
一番ホッとしたのは誰かは・・・言うまでもない。
「でも、なんで一つしか芽が出なかったんだろう」
もう少し植えた筈なんですけど・・・と不思議そうな新八に、
お登勢はすっと視線を逸らして煙を吐き出す。
「・・・鳥が食ったんだろ。・・・ほら阿呆鳥とか」
「え?居るんですか、こんなトコに!?」
「あぁ、千鳥足の阿呆鳥がね。」
お登勢の言葉に不思議顔で首を傾げる新八の向こうで、
眠そうな顔をしている銀時が一つ、盛大なくしゃみをした。
****************
どうしようもない大きな親切(笑)