[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ふっと浮上した意識の中、心地よい音が耳へと流れ込んできた。
・・・あぁ、雨振ってんのか。
ぼんやりと目を開ければ、部屋の中は薄暗く、けれど
夜とは違う暗さで、今がもう朝だと言う事を告げていた。
そのままボーッとしていると、再び睡魔が襲ってきて
俺はごろりと寝返りを打った。
暖かくなったと言っても、まだ朝方は肌寒い。
そんな中の布団はまさに天国だ。
おまけにしとしとと程よい音量の雨音。
迫ってくる睡魔に抗いもせず、俺はゆっくりと瞼を
閉じていった。
・・・っつうか何で雨音ってこんなに眠りを誘うかね。
ぼんやりとしてきた意識の中、そんな事をふと考える。
静かな方が眠るにはいいだろうに、何故だか雨音と言うのは
子守唄の様に心地良い。
そういや昔っからそうだったっけ。
・・・まぁそん時はこな暖かい布団に包まっていなかったが。
それでも、やっぱり雨の降る夜は何時もより
寝心地が良かった気がする。
しとしとと降る雨音が、とても耳に心地よくて・・・
あぁ、幸せだな~。なんて眠る寸前の頭で考え、
あれ?と一瞬思考が止まる。
ってか昔もこんなに幸せな感じしてたっけ?
突然沸いた思わぬ疑問に、少しだけ睡魔が遠ざかる。
確かに昔も心地よいとは思ってた。
まるで子守唄のようだとは思ってた。
だが、幸せだな~なんて事は思ってたか?
自分の今の気分を不思議に思い、布団の中をごそごそと動いて
暫し考える。
・・・暖ぇ布団のせいか?それとも足を伸ばして
横になれてる事に対してか?
色々と考えてみるが、どうにも納得がいかない。
この幸せな気分は一体なんでだ?
一人、布団の中で悶々と考えていると、不意に雨音しか
入ってこなかった耳に、違う音が入ってくる。
これは・・・洗濯機の音か?
低く、床を揺するように響いてくる音に少しだけ耳を澄ます。
すると、続いて入ってくる、パタパタと歩く軽い足音。
あぁ、新八がもう来てんのか。
っつうか雨の日でも洗濯すんのかよ。
部屋干しはそんなに好きじゃねぇって言ってたのに。
・・・あ、それ以上に洗濯が溜まるのが許せねぇって言ってたっけ。
以前、新八が休みの日に洗濯をせずに居た時の事を
思い出し、ブルリと体が震えた。
まさか洗濯の為に命の選択を迫られるとは思ってなかった。
怖い、オカン新八、怖い。
思い出した恐怖に身を震わせていると、
新八の足音にもう一つ、音が加わってくる。
『新八~、顔洗ってきたネ~』
『はいはい・・・って神楽ちゃん、前髪びしょ濡れじゃない。
どんな洗い方したのさ』
『序に寝癖も直せる画期的な洗い方ヨ』
『あ~、もうこんなに濡れて。寝癖は後で直してあげるから
ちゃんと拭いてきて』
『序に髪の毛も縛るヨロシ』
『はいはい。あ、序に定春にご飯上げてくれる?』
『了解ネ。いくよ定春』
神楽の言葉と共に、今度はノシノシと重い足音が加わる。
それと、食器が重なり合う音。
どうやら新八は朝食の準備をしているらしい。
耳を澄ませば澄ませるほど、加わっていく音達。
それが酷く心地よくて、幸せで。
あぁ・・・・これか。
雨音よりも、布団よりも。
俺を心地よく、暖かく幸せにしてくれる音の正体は。
緩む頬をそのままに、俺は幸せな音に包まれて
今度こそ素直に睡魔の誘いへと落ちていった。
********
この後、幸せの原因に叩き起こされます。