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我が家には『コタツムリ』が居る。
・・・あ、正式には万事屋に・・・だ。
僕の家に居るのは『不滅のゴリラ』だった。
で、このコタツムリ。所謂コタツから頭だけを出し、
そこから微動だにしないとてもウザイ生物だ。
喉が渇けばお茶を、お腹が空いたらお菓子を、
仕舞いにはトイレまで代わりに行けと言ってくる。
・・・や、別に行ってもいいんですけどね。
でもそうしたら本当、
人としての何かを失う結果になりますよ?
そう言ったら渋々ではあるが、コタツムリは動き出した。
そのままコタツごと。
勿論、僕が唯一出ている白い毛玉目掛けて
華麗なる蹴りを繰り出したのは言うまでもない。
お腹踏まれなかっただけ有難く思えコノヤロー。
で、そんなウザイ生物を視界の隅に入れながらも
家事をこなして数日・・・コタツムリは突然増殖した。
しかも二体。
「神楽ちゃん、今日は遊びに行かないの?」
「はっ、こんな寒い中外で遊ぶなんてガキのする事ネ。
大人は黙ってコタツの住人ヨ。
寧ろ出たら負けネ」
新たにコタツムリとなった神楽ちゃんに言ってみるが、
鼻で笑い飛ばされてしまった。
「や、それ普通にダメな世界の住人になってるからね?
ってか昨日まで寒いからこそ外で遊ぶのが粋だって
言ってなかったっけ?」
「・・・それは寒い中、暖かい場所で冷たいものを食べるの
間違いだったネ。
って事で新八、アイス~」
「あ、銀さんも~」
「・・・それはちゃんとした大人だけに許された、
リッチなイベントです」
だから却下だコノヤロー。
そう言うと、途端にコタツムリ達からブーイングが起こった。
全く、そんな余分なものを買うぐらいなら、
ちゃんと身になるものを買うってぇの!
中々ブーイングが止まなかったので、僕は黙って窓を全開にした。
途端、ヒョイッとコタツムリ達の頭が消える。
残っているのはコタツとほぼ同化している、大きな定春の頭のみ。
・・・ってかあの巨体が入っているのに、
どうやって銀さん達はコタツの中に
収納されているのだろう。
コタツムリの構造は、ちょっと不思議だ。
そして本日、またもやコタツムリは増殖した。
「・・・何やってんですか、桂さん」
呆れた視線の下で、長い髪の毛がモゾッと動く。
「いや、気にしないでくれ、新八君」
・・・や、気にするよ、普通。
ってかちょっとしたホラーだよ、これ。
長い髪に前面を覆われているので、まるで呪いのビデオだ。
出てくるのはテレビからじゃなくて
コタツからだけど。
しかも本人、煩いのだろうけど手を出すのがイヤらしく、
そのままの状態でこちらを見上げている。
・・・って見てるんだよね、コレ。
僕は恐る恐るしゃがみ込んで、そっとその髪をかき上げてみた。
「あぁ、すまない。有難う、新八君」
「・・・いえ」
どうやら予想は当たったらしく、見慣れた顔が出てきた。
・・・が、今度はとてもシュールな感じになってしまった。
だって黙っていれば整っているその顔が。
口さえ閉じていれば真面目そうに見えるその顔が。
コタツからニョキッと・・・
とりあえず見続けていると夢に出てきそうだったのでそっと視線を逸らす。
「おいおい新八、そんなヤツに優しくする事ねぇぞ。
懐かれたらどうする、ウチじゃ飼えませんよ?
元に居た所に捨ててきなさい」
「ってかエリーはどうしたネ、エリーは」
それぞれの場所から出てきた言葉に、そう言えば・・・と桂さんに
目をやれば・・・
「元に居た所も何も・・・アソコには俺の場所などないのだ。
エリザベスがコタツに入っているからな」
と、とても哀愁の篭められた顔で呟かれた。
どうやら桂さんはエリザベスにコタツを乗っ取られたらしい。
うん、確かにエリザベス、体大きいですもんね。
でも同じくらいウチの定春も大きいと思うんですけど!?
本当、中は一体どんな事になってんのぉぉ!!?
で、桂さん。その無駄にシリアスな顔、止めてください。
本気で夢に出そうです。
と言う事で、現在万事屋にはコタツムリが四体生息している。
お陰でウザさも四倍だ。
「・・・僕が入る場所もないし」
それぞれの場所から出ている頭を眺めながらポツリと呟けば、
ピクリと白い毛玉が動いた。
そしてとても珍しい事に、モゾモゾとコタツから脱皮をしてくる。
なんだろ、トイレかな?
だがコタツムリから脱皮した銀さんは、完全に出る事はなく、
そのまま足を突っ込んだ状態で僕の方へと半身を向けた。
そしてチョイチョイと手招きをしてくる。
お茶の催促か、それともお菓子か。
だったら全力で脱皮させてやる。
心に固く誓い近付くと、グイッと腕を引かれた。
そしてそのまま銀さんの膝に抱え込まれると、さっさと僕の足を
コタツの中へと入れてしまった。
「え?ちょ、銀さん?」
所謂膝抱っこに近い状態に、僕が慌てて後ろにいる銀さんに
顔を向けると、ギュッとお腹に回った腕に力を篭められた。
そして序にポテリと銀さんの頭が僕の肩へと落ちてきて、
首以外身動きが取れなくなる。
「・・・オマエの場所」
「は?」
ボソリと呟かれた言葉に首を傾げると、グリグリと肩口に
埋められた頭を動かされた。
「だ~か~ら!ここが、オマエの場所」
ちなみに銀さんの入る場所はここ。と言って腰を密着させてきたので、
それには素早く頭突きでお答えすることにした。
全く、ちょっとうっかりキュンってなったのに
すぐにぶち壊すんだから。
や、ぶち壊されていいんだけどね、別に。
まぁ・・・と、聞こえてきた呻き声を背に、僕はゆったりと体の
力を抜いた。
それに気付いたのか、復活した銀さんが嬉しそうに
擦り寄ってくる。
いつの間にか寝てしまったのだろう、神楽ちゃんの方から
気持ち良さ気な寝息が聞こえてくる。
テーブルから見える定春の耳は、時折ピクリと動いていて。
桂さんは、髪は気にしなかった癖にミカンは気になるのか、
時々手が出てきてはミカンを奪っていく。
そして僕はと言えば、足も背中もポカポカだ。
と言う事で、今日のコタツムリは全部で五体。
・・・ま、偶にはね。
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寒いのでうっかりポカポカ話に(笑)