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「え、何これ」
日も暮れ始めた頃、万事屋から帰宅すると家の門前が
殺人現場になってました。
わぁ、今が夕方で良かったや。
だって夕陽のお陰で血の色がそんなに目立ってないもん。
あ、て言うかこれ違うんじゃね?
夕日のお陰で赤く見えてるだけで、実は違う液体じゃね?
・・・なら何の液体なんだって話に
なるんだけどね、それ。
「・・・久しぶりの仕事で疲れてるんだけどな」
とりあえず現実逃避はこれくらいにして・・・と、新八は一つ息を吐くと
門に凭れるように座り込んでいる・・・と言うか意識を手放している
近藤へと手を伸ばした。
「近藤さん、大丈夫ですか~?
僕の声、聞こえてますか~?」
軽く揺すって声を掛けるが、全く反応はない。
反応はないが・・・意識がないだけだと思う事にする。
だってまだ温かいし。
ちょっと肌が冷たい気がするけど、それは冬のせいだと思おう、僕。
・・・と言うか、何時頃からここに放置されていたんだろう。
さっと周囲に視線をやるが、しんとした静けさが広がっているだけで、
人の気配はなかった。
とりあえず長時間ここに放置されている訳ではないようだ。
流石に誰かこれを見たら、一騒動になってるだろうしね。
新八はほっと胸を撫で下ろし、近藤の脇に手を入れ、そのままズリズリと
門の中へと引き入れ始めた。
疲れてはいるが、流石にこのままにはしておけない。
こんな光景見られて、ご近所さんの噂になるのは嫌だ。
そう思い、一生懸命近藤を運ぶ新八なのだが、
実はもう遅く、『志村家門前、プチ殺人事件』はご近所さんに
ばっちり目撃されていたりする。
・・・まぁいつもの光景だと認識もされているのだが。
そしてお子様達には『肝試し・勇気試し』の場所として
認定されている訳だが。
だがそんな事は知らない新八は、健気によいしょよいしょと頑張っている。
「・・・なんでこれだけ血が流れてるのに
軽くなってないんだろう」
普通流れた分だけ軽くなるもんなんじゃないんだろうか。
そう思い、少しだけ近藤を恨めしく思う新八。
とりあえず、軽く感じるほど血が流れていたら、
最早それは残念な事になっている・・・と言う事にまで
頭が回っていないようだ。
「寧ろ血が流れ出るのと比例して、執念が増してるんじゃねぇかィ?」
「あぁ、成る程。だからこんなにこの場所にしがみ付いて
あ、でもそれだと執念ってより執着の方が正解のような・・・」
って、え!?突然聞こえてきた声にビクリとしながら新八が
振り向くと同時に、パシャリと眩しい光が視界を埋めた。
「は~い、死体遺棄の犯行写真ゲット~」
「ちょ、沖田さん!!?」
見れば沖田がにんまりと口元を緩ませて、新八の方へと
携帯を向けていた。
「って、まだ死んでませんからね?
まだ大丈夫な筈ですっ!」
でもとりあえず・・・と、新八は力説しながらも
火事場の馬鹿力でもって近藤を門の中へと放り投げた。
この場合、死体遺棄では無いにしても、
ある意味証拠隠滅だ。
「で?近藤さんを引き取りに来て下さったんですか?」
ならもう少し待ってて欲しい。
せめて治療と言う誠意を示してから。
あ、でもこの場合近藤さんにも非があるだろうから、
別にいいんだろうか?
出来ればそう言う事にしておいて欲しい。
最悪50:50でもいいから。
切実に願いながらも、とりあえず新八は一応沖田の目に付かないよう
門を閉める。
だが・・・
「あ~、こりゃまた派手にやりやしたねェ」
門にもばっちり証拠と言う血痕があったりする訳で。
「・・・夕日のせいです」
こちらもバシャリと携帯で写真を撮る沖田に、新八は
そっと視線を逸らす。
「それにしちゃぁ一部限定のようだけどねィ」
「・・・ってかその一部限定が段々広がってる気がするんですけど」
誰のせいですか、誰の。と、少し開き直った新八が
じっとりと門の前にしゃがみ込んだ沖田へと視線を向けた。
「・・・ま、俺のせいじゃねぇのは確かだねィ」
「ですね。ちなみに僕のせいでもないですよ」
肩を竦め、飄々と答える沖田に、新八は一つ息を吐くと
同じように沖田の隣へとしゃがみ込んだ。
「・・・僕ね、今日仕事があったんでよ。
しかも力仕事」
「おぉ、そりゃおめでとうさん。
何日振りだっけ?」
「『日』と言う単位で言うには
無理がある日数です。
だから疲れてるんですよね~」
なのに心安らぐ筈の家に帰ってきたらコレって・・・。と、
新八はもう一度ため息を零した。
「・・・俺は睡眠学習ならぬ睡眠仕事してた最中でねィ。
なのに土方のヤローが押し付けてきやがって、
自分は書類が山積みになってるからとか何とか。
ま、大抵は苦情やら始末書やらなんだけどねィ、
主に俺の」
「いや、そりゃ押し付けるでしょ、普通。
ってか睡眠仕事って何?単なる昼寝じゃないですか」
「昼寝じゃねぇ、夕寝でさァ」
「どっちも一緒ですよね、それ。
まぁこっちに被害がないんで別にいいんですけど。
それにしても・・・これアレですよ。
今から門の掃除決定ですよ、疲れてるのに。」
血って中々取れないのに・・・と新八はカクリと頭を垂れた。
「証拠隠滅も大変だねィ」
「や、掃除ですからね、掃除。
そこは大事なんで間違えないで下さい」
「ってかいっその事塗り替えちまったらどうでィ」
これだけ着いてたら、ふき取るよりもそちらの方が楽だろう。
沖田は今日増えたであろう血痕ではなく、薄っすらとシミになっている
部分にそっと手を当てた。
よくよく見ればそれはあちこちにある。
きっと新八は、新しく着けられる度に生真面目に落としていたのだろう。
・・・まぁ自分の家の門が血に塗れてるなんてのは、
生真面目な性分ではなくても遠慮願いたい所だが。
そう思い告げた言葉だったが、新八としては思いも掛けない言葉だったらしい。
驚いたように目を真ん丸くしている。
そして・・・
「え?でもそうしたら近藤さん、
確実に死にますよね?」
ってか人の血に彩られた門なんて僕、嫌なんですけど。
そう真顔で告げてくる新八。
どうやら彼の中では、
血の跡を塗り替える=血、そのもので塗りつぶす。
と言う結果に直結したらしい。
そんな門は誰でも嫌だ。
ってかその前に大事な事が吹き飛んでいる。
「新八・・・流石にそれは止めときなせぇ。」
沖田は一つ息を吐くと、新八の頭をぽんぽんと叩いて
言い聞かせるように言葉を吐き出した。
「そこまでしなくても、
土方さん合わせりゃ多分いけっから」
寧ろそっち優先で。と言う沖田は、多分大事な事等
最初っから持ち合わせていない。
「あ~、そっか。二人なら死ぬまで血を出さなくても
ギリギリいけますよね、きっと」
しかし疲労の為か、思考回路の低下した新八が
それに気づく筈も無く、なるほどとばかりに沖田の言葉に
大きく頷いて・・・
その後、志村家の門の色が本当に変わったのかどうか・・・
とりあえず志村家周辺に、また一つ恐ろしい噂が一つ増えたのは
言うまでもない。
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近藤さんに八つ当たり(笑)