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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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「来たネ!!」

神楽はそう叫ぶと、勢いよく体をソファから起こした。
それに和室で洗濯物を畳んでいた新八が小首を傾げる。

「どうしたの、神楽ちゃん」

「どうしたもこうしたも高架下もないネ!
来たアルヨ、新八!」

新八に詰め寄りながら興奮気味にそういい募る神楽に、
暫しの間耳を澄ませたりしてみたが、気になる音等何もしない。

「えっと・・・何にも聞こえないんだけど・・・」

「あぁ!ちょっと遠くなったアル!
急ぐネ、新八!!」

一体何が聞こえたのか。それを神楽に聞こうとした新八だったが、
全てを言い終える前に神楽に腕を取られ、そのまま
引っ張り上げられてしまう。

「ちょ、神楽ちゃん!?」

「追いかけるネ、新八!!行くよ、定春!!」

そのまま走り出す神楽の声に わん。 と吼えると、
定春も大きな体をのそりと上げ、続くように万事屋を飛び出したのだった。

「ぁぁあああ!!洗濯物がぁぁ!!!」

・・・と言う悲痛な叫びを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、何なの、一体・・・」

どれだけ走ったのか、漸く立ち止まった神楽に何とか腕を離してもらい、
その場に力なく蹲った新八は、どうにかそれだけを言葉に出した。

ってかどんだけ遠くの物音まで聞こえてんだよ。

本当はそんなツッコミも、心底入れたかったのだが。

だが、神楽は聞こえていないのか、手を翳してキョロキョロと
周囲を見渡している。

「・・・ちっ!もういないネ。
全く、新八がグズグズしてるから逃がしたヨ!」

本当、使えねぇヤツアル。小さく舌打ちをし、冷たい視線を送る神楽に、
新八の頬がヒクリと動く。

「いや、だからさ、何を・・・」

「あ、今度はあっちから聞こえて来るネ!」

行くヨ、新八!!新八が言い切る前に、神楽は何かに弾かれるように
顔を上げると、また新八の腕を取り、そのまま走り出した。

「だから人の話を聞けぇぇぇぇ!!!」

・・・そんな切実な叫び声を再び残して。

 

 

 

 

 

 


「ちょ・・・本気で待って・・・」

あれからどれだけ同じ事を繰り返したのか。
既に残りのライフゲージが点滅しかかってる新八が、
息も絶え絶えそう呟く。

「何アルカ、新八。
ちょっと走ったぐらいで情けないネ」

「いや・・・ちょっとって・・・」

呆れた顔で見返してくる神楽に、新八はガクリと肩を落とした。

はっきり言うがちょっと所ではないし、何より自分は走っていない上
強制的に引きずりまくられていたのだ。

人々の好奇な視線も痛かったが、
そこら辺にぶつけまくった体全体が非常に痛い。
心臓なんか、悲鳴所か絶叫を上げ続けている。

だが、今回はまた直ぐに出発・・・と言う事はないようだ。

新八は深く息を吸い込みながら、目の前でキョロキョロと辺りを
見回し、首を傾げている神楽へと視線を向けた。

「・・・で?本当どうしたの、神楽ちゃん」

来たって言ってたけど、追いかけてるし。新八が問い掛けると、
神楽はきょとんとし、次にニンマリと口元を緩めた。

「焼き芋屋ネ!今年初めての焼き芋屋ヨ。
さっき聞こえて来たアル」

神楽の言葉に、新八は頬が引き攣るのを感じながらも
成る程・・・と納得してしまった。

そう言えばお妙も、どんなに離れていてもその声にだけは
敏感だった・・・と思い出しながら。

お陰で何度、走りに出された事か・・・

いや、それでもこんなに長距離を走らされた事はないけれど。
・・・多分。

・・・と言うか、これだけ執拗な神楽の追跡を
振り切っているとは、一体どれだけのスピードで走っているのだろう。
商売する気あんのか、焼き芋屋。

そんな疑問が沸くが、その前に一つ、神楽に言っておかなければ
いけない事に気付いた。

・・・非常に言いづらいのだけれど。

新八は未だ耳を澄ませている神楽に一つ大きく深呼吸をすると、
重い口をそろそろと開いた。

「あのさ、神楽ちゃん。
それを追いかけるのはいいんだけど、
僕・・・お財布持ってないよ?」

そう、自分は何も知らされず連れ出されたのだ。
辛うじて草履は定春が咥えて来てくれたけど、その他は
何も持っていない。

と、言う事は・・・だ。
例え神楽の希望通り焼き芋屋を見つけられたとしても、
ただそれだけで買う事は出来ない・・・と言う事だ。

そう告げると、神楽は驚愕の表情を浮かべながら
口をパクパクと動かした。

そしてプルプルと震えていたかと思うと、突然

「何やってるアルカァァァ!!!」

と叫んだのであった。

その大声に、思わず耳を塞ぐ新八。

「何って、何にも言わずに連れ出したのは神楽ちゃんでしょ?」

僕に文句を言わないでよ。呆れた様に告げる新八に、神楽は
ズイッと近寄ると、勢い良くその肩を掴んで揺さぶり始めた。

「そんなんだからオマエは何時までたっても新一にはなれないんだよぉぉ!
もっと先を読めヨ!
秋に乙女と来たら焼き芋に決まってるだろうがぁ!
真実は何時も一つネ!!」

「そんな真実知らねぇよ!
あ~、もういいでしょ、また今度買ってあげるから」

「イヤアル!今日欲しいネ!
今欲しいネェェ!!!」

「そんな事言っても無理なものは無理・・・」

と、駄々を捏ねる神楽をなんとか宥めようとした新八の動きが
ピタリと止まり、キョロリと辺りを伺った。

それに一瞬きょとんとした神楽だったが、直ぐに
新八と同じように首を回す。

そして耳をピクピクと動かしていた定春が一声吼えたその時、
道端に座り込んでいた二人に聞きなれた声が掛けられた。

「・・・オマエ等、そんなトコで何やってんの?」

見れば其処には呆れたような顔で二人に近付いてくる
銀時の姿が。

しかもその手には・・・

「「焼き芋!!」」

「・・・おいちょっと待てオマエ等。
そこは普通銀さんの名前呼ぶとこじゃね?
ってか紙袋見ただけでなんで判んだ??」

「そんなの乙女の勘ヨ!」

キャッホーイ!!と両手を挙げて喜ぶ神楽に、銀時は首を傾げる。

「・・・ってかそんなに焼き芋好きだったっけか?」

「秋の乙女は焼き芋で出来てるらしいんで」

苦笑してそう答える新八に、なんだそりゃ。と
銀時は益々首を傾げた。

「まぁまぁいいじゃないですか。
それよりも早く帰りましょ?お芋、冷めちゃいますよ?」

「あ?あぁ、そうだな。
おら、神楽。とっとと帰るぞ」

「はいヨ~」

銀時の言葉に、定春と共に周辺を駆け巡っていた神楽が
戻ってくるのを確認して、新八達も歩き出した。

「そう言やぁオマエ等、ここで何してたんだ?本当」

スーパーは反対だろ?と、不思議そうに問い掛けてくる銀時に、
神楽と新八は一瞬視線を交わした後、ニンマリと頬を緩ませて
こう告げたのだった。

 

 

「「勿論、迎えにっ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


その日、坂田家の夕食当番は急遽銀時に変更となり、
何時もより少し豪華だったと言う。


**********
主語をあえて言わないのが勝利の鍵です(笑)

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