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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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やる気がない、生気がない、おまけに仕事もない。
それらの言葉を思いっきり体現した銀さんは、
只今絶賛お昼寝中だ。腹が立つ。

で、仕事がなくてもやる気も生気もある僕としては、
何もしないと言う状況は我慢できなくて、
現在お掃除真っ最中。

・・・自分で自分の性分がイヤになる。

いやいや、でもホコリっぽいのとかイヤだし。
部屋が綺麗になるのって嬉しいし。

それにほら、仕事がないなら自分で見つけなさいって
よく言うし。

・・・ま、掃除よりも目の前で寝ている人物を
叩き起こすのが一番最初にしなきゃいけない
仕事の様な気がしないでもないけれど。

そう思い、僕はハタキを持ったままじっとりとソファと
一体化している人物に目を向ける。

が、掃除よりも体力と気力を使いそうなので、
その考えはなかった事にする。

だって態々近くで掃除機掛けても
丸っきり無視だったしねっ!

全くっ!!と苛立ちそのままにパタパタとハタキを掛けていたら、
不意に目に痛みが走った。

「っぃた!」

慌てて目を閉じるが、微かな痛みは治まらない。
どうやら落ちてきたホコリが目に入ったようだ。

ってか何でメガネしてるのにホコリ!?
いや、別にホコリ避けじゃないけどさぁ!?

あぁ、本当ついてない・・・と、僕は手にしていたハタキを
窓枠に置き、役に立たなかったメガネを外した。

「あ~、何かゴロゴロする・・・」

目の下を引き、空いてる方の手でそっと目のふちをなぞる。
だがゴミは取れなかったようで、代わりに涙がじんわり出てくる。
こうなったら涙で流れ出てしまえっ!とばかりに軽く瞬きをしながら
下を向いてみる。

が、それでも目の中の異物感はなくならない。

どうやらこの家はホコリでさえも家主に似て、
人を甚振るのが好きらしい。

「あ~もうっ!!」

中々取れないゴミに苛立った僕は、つい目蓋をごしごしと
擦ってしまったのだけれど、その手が不意に誰かに掴まれた。

って誰かも何も、ここには僕以外一人しか居ないんだけどね。

未だゴロゴロする目をそちらに向けると、案の定何処か
呆れたような顔をした銀さんが居た。

「・・・何やってんの、オマエ」

あ~あ、こんなに目ぇ真っ赤にしちまって。そう言いながら、
銀さんは優しく僕の目元を拭ってくれた。

「ったく、ゴミ入った時に擦ったりすんなよ。
傷付いちまうだろうが」

子供に言い聞かせる様に言葉を吐き出しながら、銀さんは
僕の目を覗き込んだ。

それがちょっとムカついて、自然と僕の唇が尖る。

「だって取れなかったんですよ」

「だってじゃねぇの。例えオマエ自身であったとしても、
新八を傷付けるのは許しません」

お、これか。そう言うと、銀さんは僕の目に口を寄せると、
やんわりと僕の目を舌で舐め上げた。

その何ともいえない感触に僕の肩はピクリと跳ねるが、
銀さんは気にしないまま序とばかりに、目尻に軽いリップ音を落とす。

そしてゆっくりと顔を離すと、緩く口元を上げたまま、
もう大丈夫だろ。と聞いてきた。

銀さんの言葉に、僕はパチパチと瞬きをする。
確かに先程の異物感は消えていて、すっきりしている。

・・・が、何とも素直にお礼が言えない気分だ。
だって舌ってっ!!舐めるってっ!!

僕のそんな心境が判ったのか、銀さんは苦笑しながら
手に持っていたメガネを取り、僕へと掛けてくれた。

「あれが一番傷付かなくて済むんだよ。
・・・ま、俺の好みってのもあるんだけどな」

「そんな好みは永遠に秘密にしといて下さい」

「んじゃ銀さんとオマエだけの永遠の秘密って事で」

「やっぱ秘密はいけませんね、何事もオープンでいきましょう」

「え?まさかの公開プレイ希望?」

「ちげぇよ。
ちょ、何なんですか、この会話!素で泣きたくなるんですけど!!」

全く、お礼を言う気が余計なくなったよっ!
そんな思いを込めて睨み付ければ、銀さんは 判った判った。と
少し肩を竦めて、僕の頭を軽く叩いた。

「お詫びに残りの掃除、してやっから。
だから泣かないで下さ~い。
オマエに泣かれるとキツイのよ、本当。
あ、鳴かれるのはいいんだけどね。
寧ろ鳴かしたいんだけどね、昼夜問わず」

「・・・泣きながら姉上に色々訴えて良いですか?」

そう言えば、銀さんは心底心の篭った謝罪をくれた。
滅多に謝らない人なのにっ!

・・・と言うか銀さんて余計な発言で色々損していると思う。

そんな事をぼんやり考えながら、パタパタとハタキをかけている
銀さんを見詰める。

時折、

「俺より先に新八を泣かせやがってっ!!」

なんて声が聞こえてきて笑える。
だって真剣だし、声も顔も。

本当、ホコリ相手に何言ってんだ。とか、
それなら毎日掃除ぐらいしろよ。とか思うけど。

頬を緩めるこの笑みは、そう言うものに対してでは
ないような気がする。

 

 

だってさっきから、胸の辺りが凄くくすぐったいもんっ!

 

 

 








 

「そう言えば寝たふりしてたんですね、さっき。」

「いや普通に寝てたけど?」

「じゃあ何時起きたんです?」

「新八が痛いっ!って言った時」

「・・・掃除機を掛けてた時は?」

「あ、もうかけたのか?ってか普通反対じゃね?
ハタキかけてから掃除機だろ」

「や、何かイラッと来てたんで、銀さんの周りだけ
かけました」

「ちょ、何その地味な嫌がらせっ!!」
 

**********
八万打企画第十一弾・Mag.様からのリクで
「坂田に愛されて幸せを感じてる新八」と言う事でしたが
・・・如何ですかね?幸せ感じてますかね、これι
もっとうっかりしようと思ったんですが、今回は
これが限界だったようです、すみません~(土下座)

こんな感じになりましたが、少しでも気に入って頂けたら
嬉しい限りですv

企画参加、本当に有難うございましたvv

拍手[15回]

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住み込み一人におまけの一匹、そして通いの従業員一人。
それが万事屋の構成員であるのは周知の事実・・・だが。



「・・・どうしよう」

「あ?何がだい?」

ポソリと呟く神楽に不思議顔で答えたのは、万事屋の大家である
お登勢だ。

場所はお登勢の店のカウンター。
今夜の仕込みをしている最中に、神楽がヒョコリと店に現れたのだ。

お登勢は最初、こんな昼間にしかも飯時でもない時間に現れた神楽に
少し驚いたものの、直ぐに上の喧騒に気付き、深い溜息と共に
迎え入れたのだった。

勿論、仕込み中の料理はきちんと隔離して。

それでも・・・と、馴染みの客から貰ったお菓子を神楽に出しながら
今回の騒ぎの原因を聞いてみると、最初の言葉が返ってきたのだった。

どうせまた銀時が遊び呆けてたり、仕事しなかったり、
呑んだくれてたり
・・・そんな事が原因なんだろうとお登勢は
思っていたのだが、どうやら違ったらしい。

なら何だろうか?新八が原因と言う事はほぼないだろう。
と言うかもし原因が新八だとしても、お登勢は味方になる気
満々だ。

何にしろ、大本は絶対銀時に決まっているのだから。

そんな事を思っていると、神楽はチビリと出されたウーロン茶を
舐めながらポツリと小さな声で呟いた。

「・・・私が原因ネ」

神楽の言葉に、お登勢の目が丸く見開かれる。

いや、別に神楽が原因での喧嘩が珍しい訳ではないのだが、
それだと大抵三人での大騒ぎへと発展する。

・・・大家としてはいい迷惑だが。

だが、今回は原因だと言っている本人がここに居て、
後の二人が大騒ぎだ。

これは・・・珍しいだろう。
と言うか、神楽が原因とは何だろうか?

一番思い当たるのは、神楽の食べる量だが・・・と、聞いてみると、
フルフルと首を振られた。

「好き嫌いや偏った食べ方してると怒られるけど、それはないネ。
寧ろ成長期だから我慢しちゃ駄目だって言われるヨ」

いや、それはそうだが、限度があるだろう。

お登勢は何時もの神楽の食べっぷりを思い出して、少しげんなりした。
・・・が、何だかんだ言ってお菓子をサカサカ出してしまう
自分も居るのだから仕方が無い。

・・・まぁこれはアレだけど。
食べる人がいないから仕方なくなのだけれど。

って事でこれもお食べ。言いながら、神楽の前に
饅頭の山を出す。

うん、腐らせるのも勿体無いからねぇ。

でも、冷静に考えて見るとアソコのエンゲル係数はとんでもない事に
なってやしないか。

ただでさえ切羽詰っているように見えるのに・・・と不思議に
思っていると、積み上げられた饅頭を攻略しながら
神楽が口を開いた。

「新八が、銀ちゃんの呑み代少なくするからいいよって。
で、銀ちゃんは家賃踏み倒すから気にすんなって。」

「さすが新八だねぇ。その通りだよ神楽、アンタは気にしなくて良い。
あのバカは家賃分ちゃんと払える程度に踏み潰して
引きずり倒しとく事にするさ」

ってかここらの飲み屋に戒厳令を布いておくかね、徹底的に。

ヒクリと頬を引き攣らせながら固く決意し、なら何が原因なんだろう。
と改めて神楽に問い掛けた。
すると・・・

「さっきまで寝巻きでダラダラしてたぁ?」

告げられた言葉を繰り返すと、神楽はムッと唇を尖らしてコクンと頷いた。

「そしたら新八に怒られたヨ」

洗濯できないでしょっ!・・・て。新八の真似だろう、腰に手を当て、
確り眉間に皺を寄せて言う神楽に、まぁそうだろうな。とお登勢は思った。

生来の性格か、それとも今までの生活で培われたのか。
まぁどっちもだろうけど、新八はあの年齢にしては家事が完璧だ。

そして、何もしない銀時達に代わって、万事屋の家事を一手に引き受けている。

そんな新八にしてみれば、今日のような良い天気の日に
洗濯をパーッと済ませてしまいたいのだろう。

なのに、神楽は寝巻きのままで・・・

「そりゃまぁ・・・怒るだろうねぇ」

その時の光景が目に浮かぶようで、お登勢は軽く息を吐いた。
まぁお登勢としてみれば、そんなものは本人の勝手なんだから、
好きなようにさせたらいいと思うのだが。

で、新八はもう少し休んだらいい・・・と。

まぁそれが新八か。と苦笑しつつ、だがそれでなんで
銀時との喧嘩になるのか・・・と疑問が沸く。

そこら辺が判らなくて聞けば、神楽は至って簡単な答えを返してきた。

曰く、銀時もまだ寝巻きのままゴロゴロしていたらしい。

「で、銀ちゃんが別に仕事もねぇんだからいいだろって言って、
新八が、アンタがそんなんだから神楽ちゃんが真似するんですって。
別に私、真似なんかしてないネ。ただ、銀ちゃんが許されるなら
私だって許される筈ネ」

ムスッとしたまま呟く神楽に、お登勢は新八の気苦労が垣間見えて
深々と溜息吐いた。

案の定、そこから新八は神楽に真似をして欲しくないから
銀時に確りしろと言い、銀時は真似して欲しくないなら
オマエがちゃんと言やぁいいと反撃。

そして今の有様になったと言う。

新八の言い分は判るし、銀時の言い分は頭を叩きたい。
あいつは大人としての自覚があるんだろうか。

だが、その前に・・・

「あんた達さぁ・・・」

と、お登勢が口を開いたとほぼ同時に、上から勢い良く玄関を
開ける音がした。
そして聞こえてくるドスドスと階段を下りてくる音。

思わず神楽と二人で店の入り口へと目を向けると、
すぐさまこちらも勢い良く開かれ、そこには怒りでだろう、
頬を赤く染めた新八が仁王立ちしていた。

新八はちらりとお登勢に目を向けると、お騒がせしてすみません。と
軽く頭を下げ、次に神楽へと手を伸ばした。

そして神楽の手を掴むと、椅子から立ち上がらせて再びお登勢に
お邪魔しました。と軽く頭を下げる。

そして連れ立って店から出ると、グイッと頭を上に向け、
大きく口を開いた。

「アンタの不精が治るまで、帰って来ませんからねっ!!」

「あ~そうかいそうかい。そりゃ気が楽にならぁ。
言っとくけど俺は悪くねぇし、門限は六時だからなっ!
遅れたら承知しねぇぞっ!!」

どうやら銀時も外に出ていたらしい。すぐさま声が返ってくる。

「だから治るまで帰らないって言ってんでしょうがぁぁ!!!」

新八は最後にそう叫ぶと、そのまま神楽の手を引っ張ってズカズカと足取り荒く
去っていってしまった。

「どうしよう、新八。私銀ちゃんみたいになっちゃうアルカ?
イヤヨ、マダオの仲間にはなりたくないネ」

「大丈夫だよ、僕がそんな事させないからね?」

だから、これからはあんまりダラダラしちゃ駄目だよ?
なんて会話をしながら。

ってか神楽が最初心配してたのは、自分が原因の喧嘩ではなく、
そっちかい。

お登勢は呆れた顔で溜息を吐きつつ、開けっ放しの扉を
閉めにカウンターから体を出した。

そして上から聞こえてくる、苛立ちの込められた玄関を
閉める音に、ふっと苦笑を漏らす。

多分、暫くしたらブチブチ言いながら銀時がここに来るだろう。

そしたらしたり顔で説教をし、迎えに行けと背を押してやるのだ。
誰かに言われたから・・・と言う理由がなければ
素直に迎えにもいけないヤツなのだから、あいつは。

「ったく、何時の間に私は子持ち夫婦に部屋を
貸したんだっけねぇ」

とりあえず、あの分じゃ今晩の夕食の準備をする暇もないだろうと、
銀時を待つ間、お登勢は仕込み途中の料理を一品、
増やす事にしたのであった。

*********
八万打企画第十弾・団子様からのリクで
『ナチュラルに夫婦の会話をして お姑さん(お登勢さん)か
 娘wにあきれられるお話』と言う事でしたが、如何だったでしょうか?
なんだか夫婦の会話でも、全く甘くないものになってしまいましたがι
多分、この後迎えに行ってからが呆れられるのを通り越して
ウザイ程の夫婦会話がなされるのだと思いますv(いやそれが大事だろι)

こんなか感じになりましたが、
少しでも楽しんで頂けたら嬉しい限りですv

企画参加、本当に有難うございましたvv

拍手[13回]




『衝動』 
↑こちらの続きになります。






 


「っ!?」

新八の口から小さな声が漏れ、俺は一瞬体が固まる。
見れば新八は驚いたのだろう、ただでさえでかい目を丸くし、
次に視線を落として緩々と口元をあげた。

本人としては笑ったつもりなんだろうが、俺にはきつくて。
俺も素早く視線を逸らした。

新八はそんな俺に向け、気まずそうに少しだけ赤くなった掌を、
もう一つの手で包み込み、 すみません。 と小さく
謝罪を口にする。

別に新八が悪いわけじゃない。
ただ、出掛けようとしていた俺の肩に、糸くずがあったのを
見つけて取ってくれようとしただけだ。


普段通りに『いってらっしゃい』と声を掛けられ。

『夕飯までには帰ってきて下さいよ』と注意され。

そして、『あ、ちょっと待って下さい』と手を伸ばされただけだ。


 

なのに、俺が普段通りではなかった。




掛けられた声に胸を鷲掴みにされ、伸ばされた手に恐怖し、

 

――――思い切り振り払ってしまった。

 

違うんだ。俺オマエの笑顔を守りたいだけなんだ。
これはオマエを守る為なんだ。

だって触れられたら、もう。
その体温を感じたら、もう。


オマエの望む『俺』でいられなくなっちまう。




まだ最初の頃は良かった。
触れられても我慢できたし、触れるのも我慢できた。

けど、それが段々と出来なくなってきてるのが現状だ。

触れられたら、もっと触れていて欲しい。
触れる事が出来るなら、ずっと触れていたい。

そんな欲求は治まることを知らず、それ所か増すばかりで。

本当、大人だから我慢出来るもんでもねぇし、
大人だからこそ、我慢出来ねぇもんなんだな。

自分の愚かさ加減に、心底呆れちまう。

でもまだオマエは子供だから。
守るべき愛しい子供だから。

だから頑張って頑張って、

俺からオマエを守っていたのだけれど。

 



浮かべられたその笑みは、俺が守りたいと思っていたものではなくて。

 



・・・何やってんだろうな、俺。

 

「・・・悪ぃ」

少しでも何時もの笑顔に戻って欲しくて、気合を入れなおし
そっと手を伸ばせば、ビクリと微かに震える体。

・・・そりゃそうだ。
ここの所、ずっとこんな感じだったもんな。

自分の所業を思い出し、苦く笑う。

でもな、全てオマエの為だったんだよ。
それだけは本当なんだ。

俺も、オマエのくれた空間を愛していたし、
『家族』と言う言葉がとても大切だったんだ。


けれど今はそんな空間とは正反対の空間で。
俺は深々と溜息を吐いた。
 


・・・あぁ、でもこれで良かったのかもしれねぇな。

気まずい空気の中、ぼんやりとそんな事を思う。


だってオマエから逃げてくれれば、きっとこの空間は守られる。

俺は、俺からオマエを守ってやれる。

だからそう、逃げて、逃げて・・・

 













・・・逃がすのか?

 

 


「っ銀さん!?」

気が付けば、俺は伸ばした手をそのままに、
勢い良く新八を自分の下へと引き寄せていた。

突然の事に腕の中で新八が慌てふためくが、
今の俺にとっちゃそんな事問題じゃねぇ。

だって逃がしてどうすんだよ。

こんな空間を守ってどうすんだよ。

俺が守りたかったのは、あの暖かく、甘い空間だ。
決して今のこんなピリピリした空間じゃねぇ。

しかも笑顔なんて、ここ最近見てねぇ。
見たのはさっきのような、辛そうな悲しそうな、そんな笑顔だ。

守りたかったもんなんて、もうとっくに壊れてんじゃねぇか。


なら・・・と、俺は抱き締めている腕に力を込めた。
新八の体が強張るのを感じるが、もういい。

 

 

このまま逃がすより、よっぽどいい。

 

 


「・・・新八」

俺は小さく形の良い新八の耳元に口を寄せ、そっと名を呼ぶ。

ピクリと肩を震わし、そろそろとこちらを見ようと顔を
動かす新八だが、俺がギュッと抱き締めているせいで
上手くいかないようだ。

「・・・銀さん?」

戸惑うような声で、俺の名を呼んでくる。

あぁ、そう言えばここ最近はずっとそんな感じだったな。
口調は変わらないけど、何処か伺うようなその声色。

きっとオマエも必死だったんだな、あの空間を守る為に。

 

 

でもな?もう無理だわ。

 

 

だってあの空間は壊れてしまっただろ?

俺が守ろうとすればするほどに。

オマエが守ろうとすればするほどに。


どんどん、どんどんあの愛しく大切な空間は遠くなっていって。

オマエもどんどん、どんどん遠くなってしまって。

 


なら。と俺は思う。

壊れてしまったのなら、無くなってしまったのなら。



なら、もういい。



笑顔なら、もうアレでいい。
笑っていてくれるなら、もうそれでいい。

暖かく、優しい空間はもういい。

オマエが遠くなるくらいなら、もういい。

 

とんでもねぇ醜い感情に自分でも吐き気がする。
しかもそれに安堵してるってんだから、よっぽどだ。

未だ固くなっている新八の肩に額を当てて、
口元をゆるりと上げる。

「本当、悪い大人でごめんなぁ」

ってか寧ろ最悪な大人だな。出てくるのは謝罪の言葉だが、
小さすぎたのか、新八からはなんのリアクションもない。

っつうか意味が伝わってねぇのか?

ま、いいけどな。
そんな心も篭ってねぇし。

俺は小さく笑って、見える白く細い首筋に唇を寄せた。

途端、大きく震えた体と驚きの声に、また笑いが漏れる。

 

非難するならすればいい。

嫌悪するならすればいい。

 


俺はさ、もうオマエの望む『俺』じゃねぇかもしれねぇけど。

俺は『オマエ』なら、もうなんでもいいんだよ。

 

あぁ、でも逃がす事だけはもう出来ねぇな。

 

抱き締める腕にもう一度力を込めると、俺は薄く笑ったまま
とても大切で愛しかった空間へと別れを告げた。

それでまた一層清々しい気分になれた俺は、
本当に最悪だ。

 

**********
八万打企画・第九弾。kentan様からのリクで、
『衝動』の続き・・・と言う事でしたが、如何だったでしょうか?
以前のものも読んで下さって、本当に有難うございますvv
当時、ドS方向で考えていたと思うんですが、書いてみたら
単なる最悪人間になってました~っ!!(土下座)
・・・こんな続編でも良かったですかね?(ドキドキ)

こんな感じになりましたが、少しでも気に入って頂ければ
嬉しい限りです。

企画参加、本当に有難うございましたvv

拍手[17回]




何時もの巡察の途中、前方から多分人生におけるアンラッキーカラー
である銀色がヒョコヒョコ歩いてきた。

どうやら向こうもこちらに気付いたようで、一瞬にして
間抜けな顔が歪にゆがむ。

そのまま次元も歪めて何処かに消えてしまえ。

だがそんな願いが叶う筈もなく、隣を歩いていた総悟が
飄々と声を掛ける。

「おや旦那じゃないですかィ。
どうしやした?まるで惨殺、いや寧ろ瞬殺してこの世から
速攻で消し去りたいと常々思っている土方に会った
ような顔をしてますぜィ?」

「名前思いっきり出ちゃってるんだけどぉぉ!!?
普通濁すとこだよねぇ、そこぉぉ!!
ってかそんな事思ってるのはテメーもだろうがぁぁ!!」

「やれやれ、被害妄想が過ぎますぜィ、土方さん。
俺は思ってるだけの男じゃありやせん」

「完全なる被害になってるじゃねぇか、
それ。」

頭にきてニヤリと笑う総悟の頭を叩く。・・・が、憎らしい事に
サラリと避けられて、代わりに山崎の頭にヒットした。

あぁもうムカつくなぁ、コイツ。
っつうかギャーギャー文句言うな、山崎。
今のは俺が悪いんじゃねぇ、避けた総悟が悪ぃんだよ。
んで避けられなかったテメェも悪い。

まぁ避けたら避けたでぶん殴るがな。

「おいおい、人を捕まえといて漫才しないでくれる?
何?新ネタ見て欲しいの?
言っとくけどウチには最強のツッコミが居るからね?
そん所そこらのツッコミなんて屁でもねぇよ?」

って事でテメーはつまんねぇから腹召して来い。何時もの
だるそうな顔でそう告げてくるヤツに、俺の頬がヒクリと引き攣る。

・・・いや、別に漫才してる訳でもねぇけどな?
つまんねぇと思われたって、こっちこそ屁でもねぇけどな?

とりあえずテメェの全てがムカつくわぁぁ!!!

思わず腰にある刀に手を伸ばしていると、山崎から暢気な声が
聞こえてきた。

「あれ?旦那、今日は一人なんですか?」

新八君達は?そう問い掛けている山崎に、そう言えば・・と視線を
周囲に飛ばす。

確かに、何時もヤツの隣に居るガキ共の姿が見えない。

「パチンコ帰り・・・って訳でもなさそうですし・・・」

山崎の言うとおり、今のヤツは意気消沈もしていないし、
何より両手に見慣れたスーパーの袋を提げている。

本来、こう言う格好をしているのはヤツ曰く最強のツッコミである
新八だ。
もしくは二人、偶に三人並んで袋を提げて歩いている。

コイツ一人で・・・なんて言うのはかなり珍しい。

総悟もそう思ったのか、イヤに楽しげな顔で天パに近づいていった。
そしてチョイチョイと肘でヤツのわき腹をつつく。

「なんでィ、とうとう見捨てられたんですかィ?
だから俺が言ったじゃねぇですかィ、あいつ等はまだガキなんですぜィ?
特殊な趣味には着いていけやせんて。」

「・・・沖田君、人聞きの悪い事言うのやめてくなんい?
違うからね?見捨てられてもないし、特殊な趣味もないから」

「自覚ねぇんですかィ?そりゃヤベェや」

「おいぃぃぃっ!!ちょ、マジやめてくなんい?
ないから、本当にないから、そんなのっ!
今日も買出しするのが重いもんばっかだから
変わりに行ってやるぐらい優しさ丸出しだからぁぁ!!」

ったく、原チャがありゃ話は別だったのによぉ。なんて叫びに、
ふと視線を下げて見れば確かに。
米やら味噌やら重量のあるモンがチラチラ袋から見えている。
だが・・・

「なら尚更、新八君達と一緒に来れば良かったじゃないですか」

俺の疑問を山崎も思ったらしい。
不思議そうに首を傾げて問い掛けていた。

「そうそう。何時も何かしら理由つけて・・・
まぁ理由なくても一緒にいるじゃねぇですかィ。

なんで今日は一人なんで?」

そう言うプレイですかィ?そう問い掛けた総悟に、ヤツは
だから違ぇよっ!と声を張り上げた。

「つうか今日は天気が怪しいだろうが。
もし一緒に来て、帰りに降られたらどうすんだよ。
風邪なんか引いたら可哀想だろ」

その言葉に、一瞬ポカリと口が開く。

それは総悟達も同じだったらしい。一瞬間が空くが、
直ぐに山崎が我に返り、言葉を発した。

「いや・・・でもそんな事になったら旦那の事だ。
口では何だかんだ言いつつも、甲斐甲斐しく世話して
熱で顔を赤く染めた新八君とかを嬉々として
眺めてそうなんですけど・・・」

だな。最低だけど普通に目に浮かぶな、それ。
しかもその方が先程の発言よりも
納得できるし。

そう思っていると、ヤツは嫌そうに眉を顰め、
緩々と首を振った。

「そりゃ元気な時に見れたらそうなるけどな。
でも実際そうなったら可哀想以外ねぇだろ、もう。
新八なんかオマエ、本当苦しそうなんだぞ?
しかも世話かけるのが心苦しいのか謝ってばっかでよぉ。
神楽だってあんな大食らいが普通の人レベル
落ちるからね?見てらんねぇって、もう。
あ、でもアレだけどな。それが少し良くなると
滅茶苦茶甘えてくんだけどな。
こう布団からちょこっと顔出してよ、氷枕だの
頭が痛いから撫でてくれだの洒落になんねぇぞ、もう。
しかも新八なんか普段甘えねぇじゃん?
だから神楽の見て自分も真似しようとするんだけどよ、
やっぱりどっか恥ずかしいみてぇでチラチラ
こっち見ちゃってな。もうな、アレな。

なんでもしたくなっちまうな、アレ。

あ、いやでもやっぱ元気な方がいいな、うん。
まぁ元気過ぎて毎日煩いんだけどよ。
今日だってよ、俺一人で行くっつってんのに着いて来るって
聞かなくてよ~。もう銀さん参っちゃうよ、本当。
で、何とか言い聞かせて出てきたんだけどよ、
早く帰って来いって言われちまってさぁ。

寄り道や余分な糖分買って来たら
首へし折ったる。

・・・なんて言われちまってよ。
照れ隠しにも程があんだろ。

もう銀さんいないと寂しいっ!
みたいな?
あぁもうトイレも気軽に行けねぇなぁ、おい。

ま、変わりに新八が行く時は
着いてってやるんだけどな?

や、流石に神楽のは着いてかねぇよ?
一回死に掛けたし。
でもさ、やっぱ家の中だって言っても怖いじゃん?

ほら、足がなかったり体が透けてたりするヤツとかさ。
まぁそんなのなくても、何処でも
着いていくけどな、俺は。

いや、俺は平気だよ?だけどほら、新ちゃんは素直に言えねぇからさ。
だからついてってやってんだけど、もう恥ずかしがっちまってなぁ。
照れ隠しに怒るんだけど、それがまた可愛くて・・・
思わず鼻血が出そうになるから。
・・・や、実際出したけどよ

顔面にいいの貰って。

ってそうだよ、早く帰ってやんねぇと」

こんなトコで油売ってる場合じゃなかった。と、今まで
だらしない顔でダラダラと語っていたのを止め、
こちらに背を向けると足取りも軽くこの場から去っていった。

「・・・あれ、捕まえた方が良くないですか?」

ポツリと呟かれた山崎の言葉に、少しだけ悩む。

「・・・なんの理由でだ?
あり過ぎて迷うだろ、あれ」

遠くなっていく背中を見ながら、ぼんやりと呟く。

・・・って言うかよ。

 

「・・・まず新八達を保護した方が良くねぇか?」

思わず出た言葉に、珍しくも総悟達が深く頷いたのだった。

*********
八万打企画第八弾・蒼さんからのリクで
「坂田が新八と神楽が好きで大事過ぎて。
周りから、ショタ&ロリコン疑惑浮上」との事でしたが
如何だったでしょうか?
疑惑どころじゃないですね、これ(笑)
とりあえず真性そうな坂田が悪いと思います(コラ)

こんな感じになりましたが、坂田のあまりの熱弁に、思いっきり
引いていただければ嬉しいですv(え?)

何時も構って頂けてる上に、ナイスリク有難うございましたっ!

 

拍手[17回]



何時も拍手パチパチ有難うございますv





以下メルフォ&拍手お返事


箸様

こちらこそ、今回もご参加して頂き有難うございました~v
と言うか猫を銀猫に変換ですかvナイスですvv
でも本当、そのメンバーでいくと、銀さんの勝率は
0に近いですね(笑)
多分、気がつけば猫&神楽vs銀になっていると思われますv
しかも肝心な新八は猫&神楽の味方になっていそうな・・・(笑)
あんな感じになりましたが、楽しんで頂けたようで安心しましたvv
これからもどうぞ、よろしくお願いしますv
企画参加、本当に有難うございましたvv



狸御殿様

いつも拍手&ご感想、有難うございますv
神楽ちゃん、気に入って頂けたようで嬉しいです~vv
そして通りすがりの猫vやっぱりそう言うイメージですよね~v
お陰で残りの二人の怒りが更にヒートアップしてそうな(笑)
と言うかお日様新ちゃんvvですよね~。まさにあの二人にとっては
そうなんだと思いますv
しかもポカポカお日様vずっと傍に居たくて仕方ないんですよねv
楽しんで頂けたようで本当に嬉しいですv
これからもお日様新ちゃん目指して頑張りますねv


椎羅様

拍手&ご感想有難うございますv
こちらこそ企画に参加して頂き、有難うございましたv
今回は不審がられなかったんですね(笑)
お褒めの言葉の数々に、今度は私の方が
ニヤニヤしっぱなしで不審がられそうです(笑)
あんな感じになりましたが、楽しんで頂けたようで
嬉しい限りですv
これからもどうぞ、地道に頑張りますので
よろしくお願いしますv
企画参加、本当に有難うございましたvv


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