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住み込み一人におまけの一匹、そして通いの従業員一人。
それが万事屋の構成員であるのは周知の事実・・・だが。
「・・・どうしよう」
「あ?何がだい?」
ポソリと呟く神楽に不思議顔で答えたのは、万事屋の大家である
お登勢だ。
場所はお登勢の店のカウンター。
今夜の仕込みをしている最中に、神楽がヒョコリと店に現れたのだ。
お登勢は最初、こんな昼間にしかも飯時でもない時間に現れた神楽に
少し驚いたものの、直ぐに上の喧騒に気付き、深い溜息と共に
迎え入れたのだった。
勿論、仕込み中の料理はきちんと隔離して。
それでも・・・と、馴染みの客から貰ったお菓子を神楽に出しながら
今回の騒ぎの原因を聞いてみると、最初の言葉が返ってきたのだった。
どうせまた銀時が遊び呆けてたり、仕事しなかったり、
呑んだくれてたり・・・そんな事が原因なんだろうとお登勢は
思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
なら何だろうか?新八が原因と言う事はほぼないだろう。
と言うかもし原因が新八だとしても、お登勢は味方になる気
満々だ。
何にしろ、大本は絶対銀時に決まっているのだから。
そんな事を思っていると、神楽はチビリと出されたウーロン茶を
舐めながらポツリと小さな声で呟いた。
「・・・私が原因ネ」
神楽の言葉に、お登勢の目が丸く見開かれる。
いや、別に神楽が原因での喧嘩が珍しい訳ではないのだが、
それだと大抵三人での大騒ぎへと発展する。
・・・大家としてはいい迷惑だが。
だが、今回は原因だと言っている本人がここに居て、
後の二人が大騒ぎだ。
これは・・・珍しいだろう。
と言うか、神楽が原因とは何だろうか?
一番思い当たるのは、神楽の食べる量だが・・・と、聞いてみると、
フルフルと首を振られた。
「好き嫌いや偏った食べ方してると怒られるけど、それはないネ。
寧ろ成長期だから我慢しちゃ駄目だって言われるヨ」
いや、それはそうだが、限度があるだろう。
お登勢は何時もの神楽の食べっぷりを思い出して、少しげんなりした。
・・・が、何だかんだ言ってお菓子をサカサカ出してしまう
自分も居るのだから仕方が無い。
・・・まぁこれはアレだけど。
食べる人がいないから仕方なくなのだけれど。
って事でこれもお食べ。言いながら、神楽の前に
饅頭の山を出す。
うん、腐らせるのも勿体無いからねぇ。
でも、冷静に考えて見るとアソコのエンゲル係数はとんでもない事に
なってやしないか。
ただでさえ切羽詰っているように見えるのに・・・と不思議に
思っていると、積み上げられた饅頭を攻略しながら
神楽が口を開いた。
「新八が、銀ちゃんの呑み代少なくするからいいよって。
で、銀ちゃんは家賃踏み倒すから気にすんなって。」
「さすが新八だねぇ。その通りだよ神楽、アンタは気にしなくて良い。
あのバカは家賃分ちゃんと払える程度に踏み潰して
引きずり倒しとく事にするさ」
ってかここらの飲み屋に戒厳令を布いておくかね、徹底的に。
ヒクリと頬を引き攣らせながら固く決意し、なら何が原因なんだろう。
と改めて神楽に問い掛けた。
すると・・・
「さっきまで寝巻きでダラダラしてたぁ?」
告げられた言葉を繰り返すと、神楽はムッと唇を尖らしてコクンと頷いた。
「そしたら新八に怒られたヨ」
洗濯できないでしょっ!・・・て。新八の真似だろう、腰に手を当て、
確り眉間に皺を寄せて言う神楽に、まぁそうだろうな。とお登勢は思った。
生来の性格か、それとも今までの生活で培われたのか。
まぁどっちもだろうけど、新八はあの年齢にしては家事が完璧だ。
そして、何もしない銀時達に代わって、万事屋の家事を一手に引き受けている。
そんな新八にしてみれば、今日のような良い天気の日に
洗濯をパーッと済ませてしまいたいのだろう。
なのに、神楽は寝巻きのままで・・・
「そりゃまぁ・・・怒るだろうねぇ」
その時の光景が目に浮かぶようで、お登勢は軽く息を吐いた。
まぁお登勢としてみれば、そんなものは本人の勝手なんだから、
好きなようにさせたらいいと思うのだが。
で、新八はもう少し休んだらいい・・・と。
まぁそれが新八か。と苦笑しつつ、だがそれでなんで
銀時との喧嘩になるのか・・・と疑問が沸く。
そこら辺が判らなくて聞けば、神楽は至って簡単な答えを返してきた。
曰く、銀時もまだ寝巻きのままゴロゴロしていたらしい。
「で、銀ちゃんが別に仕事もねぇんだからいいだろって言って、
新八が、アンタがそんなんだから神楽ちゃんが真似するんですって。
別に私、真似なんかしてないネ。ただ、銀ちゃんが許されるなら
私だって許される筈ネ」
ムスッとしたまま呟く神楽に、お登勢は新八の気苦労が垣間見えて
深々と溜息吐いた。
案の定、そこから新八は神楽に真似をして欲しくないから
銀時に確りしろと言い、銀時は真似して欲しくないなら
オマエがちゃんと言やぁいいと反撃。
そして今の有様になったと言う。
新八の言い分は判るし、銀時の言い分は頭を叩きたい。
あいつは大人としての自覚があるんだろうか。
だが、その前に・・・
「あんた達さぁ・・・」
と、お登勢が口を開いたとほぼ同時に、上から勢い良く玄関を
開ける音がした。
そして聞こえてくるドスドスと階段を下りてくる音。
思わず神楽と二人で店の入り口へと目を向けると、
すぐさまこちらも勢い良く開かれ、そこには怒りでだろう、
頬を赤く染めた新八が仁王立ちしていた。
新八はちらりとお登勢に目を向けると、お騒がせしてすみません。と
軽く頭を下げ、次に神楽へと手を伸ばした。
そして神楽の手を掴むと、椅子から立ち上がらせて再びお登勢に
お邪魔しました。と軽く頭を下げる。
そして連れ立って店から出ると、グイッと頭を上に向け、
大きく口を開いた。
「アンタの不精が治るまで、帰って来ませんからねっ!!」
「あ~そうかいそうかい。そりゃ気が楽にならぁ。
言っとくけど俺は悪くねぇし、門限は六時だからなっ!
遅れたら承知しねぇぞっ!!」
どうやら銀時も外に出ていたらしい。すぐさま声が返ってくる。
「だから治るまで帰らないって言ってんでしょうがぁぁ!!!」
新八は最後にそう叫ぶと、そのまま神楽の手を引っ張ってズカズカと足取り荒く
去っていってしまった。
「どうしよう、新八。私銀ちゃんみたいになっちゃうアルカ?
イヤヨ、マダオの仲間にはなりたくないネ」
「大丈夫だよ、僕がそんな事させないからね?」
だから、これからはあんまりダラダラしちゃ駄目だよ?
なんて会話をしながら。
ってか神楽が最初心配してたのは、自分が原因の喧嘩ではなく、
そっちかい。
お登勢は呆れた顔で溜息を吐きつつ、開けっ放しの扉を
閉めにカウンターから体を出した。
そして上から聞こえてくる、苛立ちの込められた玄関を
閉める音に、ふっと苦笑を漏らす。
多分、暫くしたらブチブチ言いながら銀時がここに来るだろう。
そしたらしたり顔で説教をし、迎えに行けと背を押してやるのだ。
誰かに言われたから・・・と言う理由がなければ
素直に迎えにもいけないヤツなのだから、あいつは。
「ったく、何時の間に私は子持ち夫婦に部屋を
貸したんだっけねぇ」
とりあえず、あの分じゃ今晩の夕食の準備をする暇もないだろうと、
銀時を待つ間、お登勢は仕込み途中の料理を一品、
増やす事にしたのであった。
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八万打企画第十弾・団子様からのリクで
『ナチュラルに夫婦の会話をして お姑さん(お登勢さん)か
娘wにあきれられるお話』と言う事でしたが、如何だったでしょうか?
なんだか夫婦の会話でも、全く甘くないものになってしまいましたがι
多分、この後迎えに行ってからが呆れられるのを通り越して
ウザイ程の夫婦会話がなされるのだと思いますv(いやそれが大事だろι)
こんなか感じになりましたが、
少しでも楽しんで頂けたら嬉しい限りですv