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「あれ?チャイナじゃねぇか」
道の向こうから聞き慣れたくない声が聞こえてきて、
神楽は一瞬足を止めた。
が、直ぐにその場を走り出そうとし、ガシリと肩を捕まれる。
嫌々振り向いてみれば、ソコには予想通りの人物が居て。
「触るんじゃないネ、このセクハラ野郎」
「はっ、そんな事は排卵出きる様になってから言いやがれ」
「ちょっ!総悟ぉぉ!!?お前こんな往来で何ほざいてんのぉぉ!」
神楽の言葉を鼻で笑い飛ばす沖田に、傍に居た土方が
慌てて口を挟む。
全く、急いでるって言うのに、碌でもない連中に捕まったネ。
神楽は肩を掴んでいる沖田の手を振り払うと、何か用か。
と簡潔に問い質した。
新八に買い物を頼まれたものの、途中で友達と会ってしまい、
少し寄り道してしまったのだ。
すぐ帰ると言った手前、こんな所で時間を食うのは遠慮したい。
すると沖田は払われた手を軽く振りながら、少しだけ
表情を改めた。
「いや、別にテメーに用はねぇが・・・新八の調子はどうでィ」
その口調と視線に、沖田も心配している事が判り、神楽は
少しだけ口元を引き締めた。
勿論、隣で神楽の答えを待っている土方も同じ表情だ。
少しの無言の後、神楽は閉ざしていた口を小さく開いた。
「・・・まだヨ」
万事屋へと帰って来た新八。
だが、彼の記憶は未だ戻ってはいない。
銀時と神楽がどんなに今までの話をしても。
実際にその場所に足を運んでみたとしても。
新八はただ、それを聞き、眺めるばかりで。
それでも・・・と神楽は思う。
それでも、新八は帰って来てくれたのだ。
ちゃんと生きて、元気に神楽達の傍に居てくれているのだ・・・と。
大体銀ちゃんだって、ちゃんと記憶を取り戻せたのだ。
新八だって、その内ひょっこりと記憶が戻るに決まっているヨ。
ならば、自分はまた待つだけだ。
銀ちゃんの時のように、信じて待っているだけだ・・・と。
そう思っていた。・・・けれど、
「えっと・・・みりんって何処にあるのかな?」
「あ、洗剤がもうないや。買って来なきゃ・・・え?買い置きがあるの?」
そんな新八の言葉に、ズキリズキリと胸が痛むのも事実で。
だって、今までは自分達が聞いていたのだ。
爪きりでも判子でも、新八に聞けば直ぐに取り出してくれた。
家主である銀ちゃんよりも、余程万事屋の事を知っていたのだ。
自分達の好きなオカズ、生活習慣。
慣れ親しんだ自分達との会話、癖、その全てが今の新八にはない。
『神楽ちゃん』
そう呼ぶ声も、前とは違って聞こえてしまう程だ。
呼ぶ声も、人も、記憶以外は変わっていない筈なのに。
「・・・でも、大丈夫ネ。きっともうすぐ戻るアル」
神楽は緩く頭を振ると、ニカリと笑って沖田達を見た。
だが、それは上手くいかなかったようだ。
目の前の憎たらしい顔が、辛そうに歪められる。
・・・今の新八がよくするような表情に。
違うのだ、別に今の新八が気にするような事じゃないのだ。
記憶がないんだから、何が何処にあるかなんて判らなくていいのだ。
自分達の我が侭な胸の痛みなんて、気にしなくていいのだ。
でも、新八は申し訳なさそうに顔を歪める。
新八は新八なのに。
例え記憶がなくっても、新八には変わりないのに。
何時だって、笑っていて欲しい事に変わりはないのに。
神楽はそれ以上目の前の表情を見て居たくなくて、すっと視線を
下に向けた。
「・・・なら、テメーも何時もらしくしたらどうでィ」
お使いの帰りだろ、それ。そう言って神楽の持っていた買い物袋を、
沖田は膝で指した。
「何時もならそんな事、しやぁしねぇだろ」
「・・・しないけど、それじゃダメネ」
頭の上からかかるぶっきら棒な声に、神楽は緩々と首を振った。
だってあの日、新八が言ったネ。
ダラダラしてる私達に、『もう知らない』・・・と。
話はいっぱいしたヨ。
色んな場所にも連れてったヨ。
今だって、ちゃんと待ってるネ。
でも、何にも記憶、戻らなかったヨ。
なら、もうこれぐらいしか出来る事がないネ。
いっぱい手伝って、もう知らないなんて言われないように。
たくさん手伝って、前のような笑顔で居て貰えるように。
あぁ、でも。
遠くから、自分の名を呼ぶ新八の声が聞こえる。
多分遅い自分を心配して迎えに来てくれたのだろう。
けれど、その呼び方はやはり少し違うように聞こえて。
・・・どれくらい良い子になれば、あの日の言葉を撤回して貰えるのだろう。
俯いた視線の先で、じんわりと地面が歪んでいくのが見えた。
****************
・・・終わりが見えません(泣)
「どうやらここ数年の事を忘れているようですね」
不思議そうに俺達を見る新八に対して、医者が言った言葉がコレだ。
なんだ、ソレ。
じゃあ何時戻るんだよ。
襟首を掴み上げそう聞くと、医者は緩く首を振った。
突然戻るかもしれないし、ずっと戻らないかもしれない・・・と。
何だ、ソレ。
医者がそんな適当な事でいいのかよ。
違うだろうが、もっとちゃんと見ろよ。
ちゃんと見て、きっちり治せよっ!
ギリギリと襟首を締め上げていると、横から小さな声で名前を呼ばれた。
そしてそっと触れてくる、小さな手。
見れば神楽が眉を顰めて、緩々と首を振っていた。
大丈夫だ、神楽。
今銀さんがきっちり話をつけてやるから。
新八をちゃんと治してやるから。
だってこいつは曲がりなりにも医者なのだ。
治せない筈がないんだから。
「ダメヨ、銀ちゃん。」
けれど神楽は首を振るばかりで、俺の提案に乗ってこない。
なんでだよ、新八が変になってんだぞ?
そう言うと、神楽は振っていた首を止め、すいっと視線を動かした。
その先では、見慣れた大きな目が、見慣れない色で俺を見ていて。
「・・・気長に待つしかありません」
思わず力が抜け落ちた手から、漸く開放された医者が
襟元を正しながらそんな事を俺に告げてきた。
・・・なぁ、本当に待ってたら記憶は戻るのか?
数日後、記憶以外は大した事ないと判断された新八が
病院から退院してきた。
その間毎日見舞いに行ったモノの、新八は俺達の事を
思い出すことはなく、忘れたままだ。
「全部忘れたアンタに比べれば、可愛いもんさね」
当然、俺達の事を忘れているのだから、お登勢達の事も
忘れていたのだが、理由を聞いたお登勢は気丈にもそう言って笑い、
改めて自己紹介をしていた。
お妙も、最初は動揺していたものの、体に異常がないと
判ると
「暫く銀さん達のトコに居させて貰えるかしら?
その方が何か思い出すかもしれないし」
と言って、退院した新八を万事屋へと寄越してくれた。
例え自分の事を覚えていたとしても、共に過ごした時間を
忘れられたのだから辛くない筈がねぇってのに。
そして神楽も・・・
「ここネ!ここで新八は家事の一切を取り仕切っていたヨ」
そう言って不思議そうに万事屋を見上げる新八の手を取り、
ニコニコと笑っていた。
本当、女ってヤツは年に関係なく強い生き物だ。
俺なんざ、『坂田さん』と呼ばれただけで
泣きそうになったってぇのによ。
「・・・いや、僕の仕事場だよね?ここ。」
「最優先の仕事が家事だったヨ」
いいから入るネ。そう言って戸惑う新八の背を押し、神楽が階段を
上がっていく。
それをぼんやりと見詰めていると、クルリと振り返った神楽が
大きな声で俺を呼んだ。
その目には、先程までの笑顔なんか一切なく、
何かを必死に耐えている色をしていて。
あぁ、判ってるって。
幾ら強かったって、辛くない訳じゃねぇんだよな。
大丈夫、俺だって何時までも凹んでるつもりはねぇし、
ただ待ってるだけってぇのも性に合わねぇ。
新八は無事だったんだ。
ならまずその事に感謝して、後は記憶を戻す事だけを
考えりゃいい話さ。
たかが一度の事故で、俺達の今までを
無くしてたまるかよ。
・・・あぁ、でもとりあえずは。
「えっと・・・お邪魔しま・・・」
開けた玄関から、軽く頭を下げて入ろうとする新八の口を
さっと自分の手で押さえ込む。
突然の事に、目を大きく開いて見上げてくる新八に、
俺はやんわりと口元を緩ませた。
「ただいま・・・だ。新八」
言い聞かせるように告げれば、新八は驚いたように目を瞬かせた。
そしてゆっくりと、俺から神楽へと視線を移す。
同じように俺も視線を移せば、ソコには祈るように新八を見上げ、
袖にギュッとしがみ付いている神楽が居て。
一瞬、新八の目が戸惑うように揺れたが、直ぐに柔らかく緩み、
「・・・ただいま」
と、少しだけ照れ臭そうな顔で、俺の手の下の唇が動いた。
うん、お帰り、新八。
まだ記憶は戻っていないけど、まずはこの言葉でオマエを迎えさせてくれ。
*****************
すみません、もう少し続きますι
その日、万事屋では何時もの光景が繰り広げられていた。
銀時はダラダラとジャ○プタワーを積み上げ、神楽は
ソファに寝転び、同じようにダラダラと酢昆布を齧りながら
週刊誌チェック。
そして一人家事に勤しむ新八は・・・
「アンタ等、少しは手伝うって気にならないんですかっ!」
箒を片手に怒っていた。
その様子に、チラリと視線を向けた銀時だったが、
すぐに視線を戻し、ヒラヒラと片手を振る。
「いやいや、気持ちはあるんだよ?気持ちは。
でもさ~ジャ○プが俺を呼んでる訳よ、うん。
これってさ、しょうがなくね?」
「私は気持ちもないけどナ」
「ちょ、神楽っ!オマエソコはあるって言っとけって。
言うだけならタダなんだからよぉ」
「いやアル。私は自分に素直な女ネ。
心にもない事は口にしないアル」
「それが言えるのが大人ってもんなんだよ。
あ、新八イチゴ牛乳持ってきて~」
「そんな腐った大人にはなりたくないネ。
あ、新八酢昆布がもうないアル。買って来てヨ」
二人の全く悪びれない態度に、新八は持っていた箒を
勢い良く床に叩きつけた。
「それぐらい自分でやれやっ!
もうあんた達なんて知りませんからねっ!!」
・・・とは言うものの、ついやってしまうのが新八な訳で。
新八は怒りながらも台所に行き、それでもせめてもの抵抗・・・と
二人にお茶を入れると、買出しに行ってきますっ!と肩を
怒らせたまま外へと出て行った。
「・・・イチゴ牛乳って言ったのに・・・」
「私の方はきっと大丈夫ネ。」
物凄い音を立てて閉められた玄関の音に、ノソリと二人は起き上がり、
銀時は目の前のお茶を見詰めて肩を落とし、神楽はニシシと笑みを
浮かべる。
それを見て、銀時が器用に片方だけ眉を上げた。
「判んねぇぞ?新八、結構怒ってたからな。
無理矢理にでも忘れてくるかもしんねぇぞ」
「そんな事ないネ。私は酢昆布の存在感を信じてるヨ!」
「・・・いや、ソコは新八を信じてやれよ」
それより今日の夕飯なんだろうな~。そう言って銀時は再びジャ○プへと戻り、
神楽も週刊誌へと意識を戻していった。
隅の方では、定春が大きな欠伸をしている。
それは全く何時もの万事屋の光景で。
ほんの少しの変化も見られない、ある訳がないと誰もが信じていた
光景であった。
そんな光景から二時間後、銀時と神楽は病院の廊下を走っていた。
目指すは受付で教えてもらった一室。
そこには、先程まで何時もの様に帰ってくるのを待っていた少年が居る筈で。
って、何で帰って来ずにこんな所に居るんだ?
オマエの帰ってくるのはウチで、こんな所じゃねぇ筈だろうが。
忙しなく前へ前へと進む足とは別に、そんな疑問が銀時の頭を
駆け巡っていた。
隣を走っている神楽も同じだろう。
看護士の静止の声も聞かず、ただただ、走っている。
それは今より少し前。
新八の帰りをダラダラとしたまま待っていた銀時の元に、
一本の電話が入ってきた。
相手は新八の姉であるお妙で、何時も気丈に振舞っている彼女には
珍しく、その声は震えていた。
「あ?何かあったのか」
そう聞くと、お妙は消えそうな声で、
「新ちゃんは・・・居る?」
と聞いてきた。
「いや、今買い物に出掛けてっけど・・・何か用か?」
「ううん、用って訳じゃないんだけど・・・どうしましょう」
困った様に呟き、黙り込んでしまったお妙に、銀時は
ザワリと胸が騒ぐのを感じた。
それはとても不快な感触で。
今直ぐにでも受話器を置いてしまいたい程の衝動で。
けれど、続きは聞かなければいけないような気がして。
「・・・どうしようって、何が?」
固い声で、そう問い返す。
銀時の雰囲気の変化が判ったのか、神楽が訝しげな視線を送ってくるのを
感じたが、今はそれ所ではない。
ただ、受話器の向こうへと神経を集中させていた。
その耳に、小さな、けれど確りとお妙の声が入り込んできた。
「さっき、病院から電話があったの。
新ちゃんが事故にあって運ばれてきたって」
ねぇ、本当にソコに新ちゃんは居ないの?
問われた言葉に、銀時は先程の自分の言葉も忘れて、
キョロリと室内を見渡した。
ソコには、いつもの光景があって。
何時もの様に、新八の帰りを待っている自分達が居て。
・・・あれ?なんで居ないんだっけ?
視線の先で、勢い良く閉めたせいでほんの少しだけ開いている玄関が、
未だ新八が帰っていない事を告げていた。
その後、偶々家賃を回収に来たお登勢にお妙共々正気に戻され、
銀時は神楽は病院へと急いだ。
「後で私も行くからね。あっ!そんな状態で運転なんかすんじゃないよっ!」
そう言われ、ならば・・・と、銀時と神楽は定春へと跨った。
もう、頭の中は疑問符の嵐だ。
だって新八は買い物に行ったのだ。
それがなんで病院なんかに運ばれているんだ?
車に撥ねられたって、どうして?
だって新八は買い物に行っただけなのだ。
自分達の夕飯を買いに出かけただけなのだ。
なのになんでそんな事になっているんだろう。
なんでなんでなんで?
だが、それは新八に会えば直ぐに判る事だろう。
だから早く、少しでも早く、新八の所へ。
「新八っ!!」
やっと辿り着いた病院の一室。
その扉を開け、呼びかけてみれば、ソコには真っ白い空間と、白衣を着た塊。
そして戸惑ったような顔のお妙と、
「・・・どなたですか?」
頭に白い包帯を巻き、不思議そうにこちらを見ている新八の姿があって。
あぁ、本当。何だよ、コレ。
俺は疑問符所か、全てが体から抜け落ちていくのを感じた。
********************
四万打お礼企画第二段。
リミル様からのリクエストですが・・・すみません。
長くなりそうなのでちょっと切らせて貰いますっ!
「なんでキスする時って目を閉じるんですかね?」
・・・や、その前になんでそんな事聞くんですかね?
目の鼻の先で、新八の目が不思議そうにキョロリと動くのが見ながら、
俺は心底そう問い返したかった。
神楽が居ない昼間、新八もある程度家事を終えて、俺と二人、
まったりと肩を並べて座ってテレビを眺めていた。
だが、流れているテレビの内容は、俺にとっては興味のない
話題ばかりのニュースで。
しかも、隣に新八が居たりするものだから、自然と手が新八の
肩へと回るわけだ、うん。
それでついついその細っこい首筋を撫でてみたり?
やわっこい耳たぶを指先で遊んでみたり?
片手に掴めるほどの小さな顎をじっくりと堪能したりした訳よ。
そしたら新八のヤツ、止めてくださいって言いつつも、クスクス笑って。
お返しですって言って、俺の横腹なんて擽ってきたりして。
まぁ、ぶっちゃけイチャコラしてた訳だ、うん。
で、そんな事してたらチューの一つもしたくなるって訳で。
寧ろお付き合いしてるんだから、そうなるのが当たり前な訳で。
クスクスと肩を竦めて笑う新八の顎を取り、
そっと顔を近づけた所で・・・さっきの言葉だ。
本当さ~、なんでこの雰囲気でその台詞ぅぅ!!?
違うよね?ここはもっとチューかまして、甘々なイチャコラ続行。
出来ればその後のニャンニャン的な
ものまでお願いしますっ!!
って状況だったよねぇ!?
銀さん、読み間違えてないよねぇ!?
だが、先程まで漂っていた甘い空気が粉砕した中、
新八は俺と向き合ったまま不思議そうに首を傾げている。
・・・や、その仕草も可愛いけどね?
銀さんとしては、もっと他の
可愛い新八君が見たかったですっ!
カクリと肩を落とすが、いや、まだ今なら戻れるかもしれないっ!
と、再度新八の頬へと手を添えてみた。
「・・・なら、開けたままでもいいぜ?」
そう囁くように告げ、俺は新八へと顔を寄せる。
うん、そうだよ。まだあの甘い空気は残ってるって!
ほら、見えるだろう、銀時。
微かに漂う甘い空気の残滓がっ!!
アレを手に入れられなくて、何が糖分王だコノヤロー!!
「やですよ、そんなの。
あ、もしかして目の前の現実から逃避する為ですかね?」
「って、どう言う意味だコノヤロー!!!」
何この子、本当は銀さんの事が嫌いなんですか!?
それとも手の上で転がして遊ぶ、小悪魔ちゃん気取りですかぁぁ!!?
そんな勢いのまま、つい添えていた手でミョーンと
頬を引っ張ってしまった訳で。
あ、完全に消えたわ、甘い空間。
最終的に消したのは俺かもしれないが、
何事も過程と言うものが大事だ。
なので俺は悪くない。
痛い痛いと新八が喚くが知るもんか。
絶対今の俺の胸のほうが痛いからね、コレ。
結構繊細な作りしてんだから、取り扱いには注意して下さいっ!
そうは思っても、もう先程の空気は取り戻せないわけで。
で、俺はと言うと、実は結構雰囲気を大切にする方だったりする訳で。
こりゃ~仕切りなおしは無理だな。と、大人気なくも臍を曲げて
俺はソファにダラリと体を預けた。
「で、何?新八は銀さんとチューすんの、現実逃避したく
なるぐらい嫌ってぇ事?」
あ~、そりゃ悪い事しましたね。ケッと言葉を吐き出すと、
突然新八の顔が間近へと寄せられた。
「違いますよっ!そうじゃなくて・・・」
そう言ってますます近付く新八の顔と、微かに触れる柔らかい感触。
驚いて目を見開く俺の目の前には、やっぱり目を閉じた
頬の赤い新八が居て・・・
「・・・恥ずかしすぎて、逃避したくなるってだけです」
そう言った新八に、俺は幸せすぎて逃避しそうになった。
ま、絶対しないけどな、そんな勿体無い事。
「で、何であんな事言ったのよ?」
あの後、甘い空気も元に戻り、思う存分唇を交わした後・・・と言うか
今も現在進行形で新八の頬や目蓋に唇を落としながら
先程の疑問を投げかけてみた。
「・・・だって銀さん、時々目、開けてるでしょ」
僕は絶対閉じちゃうから、不思議で。と頬を赤く染め、
恥ずかしそうに言う新八に、あ、バレてたか。と、誤魔化しも兼ねて
一つ、唇を落とす。
「ね、なんで閉じちゃうんですかね?」
「さっき新八が言ったような理由じゃね?」
ちなみに俺が時々目を開けたままなのは、先程の理由だ。
目の前にある幸せを、ちゃんと確認しておきたいのよ、銀さんは。
・・・ま、恥ずかしそうにしている新ちゃんの顔を見てたい
ってのもあるけど。
「じゃあ恥ずかしいのがなくなるくらい慣れれば、
僕も閉じずに居られますかね?」
そう言って擽ったそうに竦める首筋にも、一つ唇を落とす。
で、おまけにペロリ。
「何、そんなに銀さんの顔を見てたいの?」
からかい混じりにそう言えば、はいそうですよ。と直ぐに答えが
返ってきて、序に鼻先にも唇が返って来た。
「だって銀さんの事は全部知っておきたいですもん」
ニコリと笑い、俺の額へと可愛らしい音を立てて唇を
落としてくる新八に、今度は迂闊にも俺が目を閉じてしまった。
あぁ、チキショー、勿体ねぇっ!
**********************
四万打お礼企画・第一弾。
姫りんご様からのリクで
「今までで最大にあま~い銀新」と言う事でしたが・・・
どんな感じでしょう?甘くなりましたかね?(ドキドキ)
最近、うっかりしなければ甘いものを書けなくなってた
ものですから・・・(おいι)
こんな感じになりましたが、少しでも
気に入って頂けたら嬉しい限りですv
企画参加、本当に有難うございましたv