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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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「あ、やっぱりこっちにあった。」

夜遅く、再び万事屋に来た・・・と言うか強制連行された
新八は、ここに来る羽目になった原因を見つけ、満足げに頷いた。
その背後に、のっそりと銀時が近付いてきて、箪笥の前に
座り込んでいる新八の後ろへとしゃがみ込む。

「あ、あったの?良かったな~。これでちゃんと寝れるじゃねぇか、
銀さんと」

「えぇ、安心し過ぎて横になったら三秒ほどで夢の中に
行けそうです。
一人で」

「いやいや、あれよ?一人でそんな所に行ったら寂しいから。
絶対寂しくて泣けてくるからね、
銀さんが」

「アンタがかよっ!
あ~、もういいですから、もう一回お風呂に入ってきて下さいよ。
冷たくなってますよ?体」

そう言うと、新八は後ろから伸びてきた銀時の手を叩き落とし、
着替えを手渡した。
そんな新八に、銀時は一瞬口を尖らすも、直ぐにニヤリと口元を上げる。

「別に風呂じゃなくても温まる事は出来ると思うんですけど?」

新ちゃんも冷たくなってるみてぇだし、どうよ?と、ニヤニヤと笑う
銀時の顔面に着替えを叩き付ける。

「・・・どうです?少しは暖かくなりました?
叩くと暖かくなるって言いますもんね。
なんなら全身隈なく暖めてやりましょうか?」

それなら僕も体を動かせて丁度暖かくなりますし。にっこりと笑って
言う新八だったが、目が怖いし、発言も怖い。
銀時はフルフルと頭を振ると、せめてこれだけは・・・と、
新八に先に寝ないように告げ、風呂場へと向っていった。


それを溜息混じりに見送った新八は、先程取り出した箪笥の中身を
再び入れていく。

本来は万事屋の箪笥なのだし、ここに住んでいる銀時や神楽の
モノしか詰まっていなかった箪笥。
だが、今入れている一段には新八のものばかりが詰まっている。

最初はなかったんだけどね。

自分の為に空けてもらった箪笥の一段を閉め、新八はくすりと笑みを零した。

 

 

 

最初の頃、まだ新八の私物はこの万事屋には無かった。
一応職場でもあるのだから、何かで持って来たにせよ、きちんと
持って帰っていたのだ。

「オマエさ、それ一々持ってくんの面倒じゃね?」

銀時にそう指摘されたのは、家から持ってきていた割烹着だった。

「毎日ここで使ってんだからさ、もう置いときゃいいじゃん」

そう言われ、確かにその割烹着は万事屋でしか使ってないし・・・
と置いていったのが最初だったと思う。

けれど・・・

 

「なんで毎回持ち帰ってるネ」

ある日、昼食後に神楽と並んで歯を磨いていると、
不意にそんな事を言われた。

「あれカ?普段もきっちり持ち歩いて、
清潔感でもアピールしてるアルカ?」

みみっちい男ネ。そう言われた先には、磨き終えてケースに仕舞った
自分の歯ブラシが。

「いや、そんなのアピールしてないからね?
ってかこれでどうやって周囲にアピールするの?」

「ならここに置いとけばヨロシ。
大体私と銀ちゃんのと二つだけなんて、
心底寒気がする光景ネ」

むすっとした表情で言われ、苦笑したものの確かにここでしか
使わないのだし・・・と、僕もそのまま置くようになった。


それからも、そんなやり取りが何度かあり、次第に万事屋に
僕自身の物を置くようになっていった。

定位置に置かれるようになった割烹着。
並んだ歯ブラシ。
いつの間にか客用から揃いの物に変わった茶碗や湯呑み。

そして・・・

 

「何やってんですか、あんた等」

ある朝何時もの様に万事屋に行ったら、珍しい事に二人の住人は
既に起き出していた。

それだけでも驚きなのに、何故だか箪笥の整理をしているではないか。

天変地異が起こったらこいつ等のせいですっ!!

・・・と、思わず全ての人々に謝りたくなったとしても、仕方ない事だろう。
それぐらい驚いたのだ、僕は。

だが、そんな僕の気持ちも知らずに、天災の原因となろう人物の
一人は、酷く満足げにこちらを見返してきた。

「新八っ!いいタイミングネ。ほらここ、新八のトコアル」

そう言って指差された所には、昨日まで銀さんの衣類が入っていた
箪笥の一段が。

なんの事か判らず首を傾げていると、他の段に衣類を仕舞いこんだ
銀さんが、ワシワシと頭を掻きながら答えを返してくれた。

「今朝早くに神楽に叩き起こされたんだよ。あ、文字通りな。
で、新八が毎日帰るのは着替えを置く場所がねぇからだ・・・って」

「私、寝ないで考えたヨ。着替えが無かったら次の日困るネ。
でもこれで大丈夫ヨ」

にししと笑い、そう告げると神楽ちゃんは ご飯ご飯~ と
和室から出て行ってしまった。

残されたのは、ポカンとそれを見送る僕と、銀さんの二人。

「・・・ま、アレだ。寂しかったんだろ、神楽も」

「え?」

そう言われ、僕は銀さんへと顔を戻そうとした所で、
ギュッと抱き締められてしまった。
突然の事に顔を上げようとするが、直ぐに銀さんの手が
僕の頭へと乗り、それ以上上げることが出来なかった。

「ちょっ、銀さん!?」

「って事でよ。姉ちゃんが心配なのも判るが・・・こっちの家にも
もっと居てくれや」

銀さんもちょっと寂しかったし。そう甘える様な声を耳元に落とされて
嫌と言えるわけもなく・・・


その日の内に、空いた一段には僕の着替えがすんなりと収まる事となり、
仕事に関係なく、泊まる回数も増えたのだけれど。

 

 

 

「でも、こんな時は面倒だよね。持ってくる手間は減ったけど」

「だったら、もう全部こっちに置いとけばいいじゃねぇか」

仕舞った箪笥を見詰めポツリと零せば、何時の間に風呂から出たのか、
背後から圧し掛かるように抱きついてきた銀さんにそう答えられた。

「何言ってんですか。そう言う訳にもいかないでしょ?」

後ろから腰に撒きつかれて来た銀さんの手をぺチリと叩けば、
拗ねた様な声が耳元で聞こえた。
それにクスリと笑い、今度は僕の方が寄り掛るように体を預ける。

銀さんはそれを確りと受け止めると、僕の肩口に顎を置き、
目の前の箪笥に視線をやった。
そしてゆるりと上がる口元。

「ま、いいけどな。少しずつでもこうして増えてってるし」

その声がなんだかとても嬉しそうで、僕は思わず、
銀さんの頬に唇を置いてしまったのだった。

******************
新八移住計画勃発中(笑)
 

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洗濯物を畳み終え、それを箪笥に仕舞う序に明日着るモノも
用意しておこう・・・と、中の物を探ったが、何故か自分が
着ようと思っていたモノが見当たらない。

「あれ?確かに洗って仕舞った筈なんだけど・・・」

そう思い、再度探ってみたが、やはり見付からない。

こうなってしまうともうダメだ。

ないならないで、他のモノを用意すればいいだけの話なのだが、
どうにも気になってしまう。

という事で、僕は几帳面に畳み仕舞われた自分の着物を、
一つずつ取り出していく事にした。

 

 

「やっぱりない・・・」

周囲に箪笥の中身を並べ立てた中、僕は一人首を傾げた。

もしかして破れが酷かったとかで捨ててしまったのだろうか?

そんな考えも浮かぶが、新八は直ぐにそれを打ち消した。
仕事柄、そう言う事も偶にはあるのだが、
大抵きっちりと直して着ているし、何よりその仕事自体が
最近なかったのだ。

それにやっぱり洗って箪笥に仕舞いこんだ記憶もある。

なのになんで??

暫しの間悩んだ末、新八はある可能性に辿り着いた。

「もしかして・・・」

そう呟くと、新八は立ち上がって自室を後にした。

 

 

 



『はいはい、本日の業務はとっくの昔に終了致しましたってんだよ
コノヤロー。』

長い間呼び続け、漸く出たと思ったら、いかにもダルそうな
声が耳に入ってきた。

「なら昼間ならちゃんと業務してるんですね、コノヤロー」

思わず出た突っ込みに、受話器の向こうで小さく驚き、
名を呼ぶ銀時の声が聞こえた。
それに対し、新八は深く息を吐く。

「全く、仕事がないんですから年中無休の24時間体勢
受付ぐらいはして下さいよ」

『安心しろ、新八からのは万事その体勢だ。
で、何?やっぱりこっちに泊まりたくなった?
いいよいいよ、全然OK。なんなら迎えに行くか?』

「その体勢は今後休止状態にして下さい、無駄なんで。
ってかなんでそう無駄にアクティブ!?
仕事に見せろよ、その精神!!
大体そう思うなら、電話する前に行ってますし、そもそも
帰ったりしません」

『お!新ちゃんてば男前だな~、おい。
でもやっぱ危ないから、銀さんが迎えに行くって。
だから玄関で大人しく三つ指ついて待ってろ』

途端に耳に流れ込んでくるニヤけた声に、新八の目が据わる。

「や、だから泊まる気は全く無いって事なんですけどね。
って、人の話聞いてます!?泊まる話なんて全然出てないんですけどっ!
何コレ、何処か別のと混線でもしてるんですか!?」

そうじゃなくてっ!・・・と、新八は漸く銀時の元へ電話をした
理由を話し出した。




『はぁ!?着物ってオマッ・・・そんなの明日にでも
自分で確認すればいいじゃねぇか』

呆れた声でそう言う銀時に、新八も少しだけ口篭る。

確かにそうだ。
でも気になってしまったら最後、それを確認するまで
落ち着かないのだから仕方が無い。

「お願いします、銀さん。ちょっと見て貰うだけで
いいですから。このままだと気になって眠れそうにないんですよ」

渋る銀時に、なんとか確認して貰おうと必死になって頼み込む新八。
その声にとうとう根負けしたのか、受話器の向こうから、大きな溜息と
判ったよ。 という力ない銀時の声が聞こえた。

その声に新八は感謝を述べると、銀時の気が変わらないうちに・・・と
急いで探してもらいたい着物の特徴を伝え始めた。

「・・・判りましたか?銀さん」

『ん~?・・・まぁ、多分?』

そう聞くものの、銀時の返事は曖昧で、何処か頼りない。

「もう、本当に判ってんですか?」

『いや、だってよぉ、オマエの着物って大抵似たような感じじゃん?
だからそう言われてもよぉ・・・』

段々と面倒臭くなってきた・・・という感アリアリの銀時の声に、
新八はこれだけは言うまい・・・と思っていた着物の
特徴を渋々口に出した。

「・・・銀さんが赤い中ぐらいの太さの縄が似合いそうだ
って言ってたあの着物ですよ」

『あ、アレね。了解了解』

じゃあまた後で連絡するわ。そう言うとガチャリと通話を切られ、
耳に入ってくるのは虚しいツー ツーという音のみ。


「・・・や、それで判るなよ」


と言う新八の切ない突っ込みは、誰に伝わる事もなく、
受話器の中へと吸い込まれていった。

 

 

 

それからどれ位たったのだろう。
新八はその間に・・・と、先程広げてしまった着物を箪笥に
仕舞いこみながら、銀時からの電話を待っていた。

が、全て仕舞い終えても電話は鳴る素振りを見せない。

・・・や、そんな素振り見せられても怖いけどね。
でも本当、どうしたんだろう。まさか面倒臭くなって放置してるとか!?

いっその事もう一度電話してみようか・・・そう思った時、
不意に玄関の方で物音がした。

日は変わっていないとしても、既に夜更けだ。
こんな時間に人の家を訪ねる人などいないだろう。

・・・まぁ例外は居るのだが。

だがその例外はこの時間、姉の仕事場でボコボコになっているか、
財布を空にさせられている所だろう。
ならば、可能性として残るは・・・

そこまで考え、新八は手に馴染んだ木刀を持ち、ソロソロと
玄関へと足を進めた。
だが、玄関が見えた所で、その気合も見事に粉砕させられた。

だってあの玄関に映った見事な髪の跳ね具合は・・・

新八は一つ息を吐くと、木刀を置いて玄関へと足を進めた。
そして鍵を開け、玄関を開け・・・

「・・・何やってんですか、アンタ」

目だけはしっかり胡散臭げな半目で、目の前に立っている
銀時を睨み上げた。

「おいおい、無用心過ぎるだろう、オマエ。
そんな簡単に開けちゃってどうすんのよ。
もし悪い人だったらヤバイ所じゃすまないよ?」

「そうでしたね。じゃあ閉めときます」

ヤレヤレ・・・と、まるで子供に言い聞かせるように
告げてくる銀時に、新八はそう返すとそのまま玄関を閉めようとする。
それを慌てて押し留める銀時。

「待て待て待て。今悪い人って言ったじゃん!?
目の前にいる人は違うでしょ?オマエの銀さんよ!?」

「限りなく悪い人ですね。
ってか無用心も何も、銀さんだって丸判りですからね!?」

「え?何ソレ。愛の力!?」

「天パの力だよ。
それよりもここで何してんですかっ!」

さっき電話で頼んだことは!?そう問い質すと、銀時は あ~それな~。
と言い、顎に手を当てた。

「やっぱさ、そこまで気になるってんなら
自分の目で確かめた方がすっきりすると思うのよ、銀さん。」

「・・・・・・・・・・は?」

うんうん、と自分の言葉に頷きながら話す銀時に、
新八はポカンと口を開いた。

「幾ら尊敬する銀さんの言葉でもよ?もしかして・・・とか
思っちまうだろ?
や、銀さんはアレよ?オマエの言葉だったらきっちり信用して、
どんな言葉でもいい方向に解釈して受け止めていくけどね?
で、明日だと気になって眠れねぇんだろ?
だからこうして迎えに来てやったんだよ」

完璧じゃね?と、自信有り気に言い終える銀時。
それを見詰めながら、新八は酷い疲れが一気に来たのを感じた。


確かに銀さんの言う通り、もしかして・・・と言うか
面倒臭くて適当に答えたかも・・・とは思ってしまうかもしれない。
だが、幾らなんでもこれは・・・

「ホラ、もう時間が遅ぇんだ。さっさと家の戸締りして来いよ。
あ、やっぱいいや。戸締りは俺がしとくから、
オマエは明日の用意してこい。銀さん疲れてるから
連れ帰ったら最後、送れそうにもないから」

そう言ってイソイソと家の中に入っていく銀時の背中を見て、

「やり過ぎな上に完璧でもないんですけど・・・」

と、ツッコムものの、それに力はなく。
その代わりにやんわりとした笑みが、新八の口元に浮かんだ。

「全く・・・銀さん、ちゃんと戸締りして下さいよっ!
じゃないと気になって僕、どんな時間帯であろうとも確認しに
帰ってきますからねっ!」

そう告げると、新八も明日の用意をする為に、家の中へと
足を進めた。
それに対し、悲鳴のような銀時の声が上がる。


だって仕方ない。
一度気になると、どうしようもないのだ。
それが嫌なら、戸締りぐらいは完璧にして下さいね、銀さん。

*********************
多分普段見られないぐらいに真剣に戸締りします。

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「「あっ」」

買い物の帰り道、神楽ちゃんと歩いていると、道端に光り輝く
モノを見付けた。
近寄って見てみると、それは一枚の5百円玉で。

「おぉっ!ラッキーネ、新八。
これで久しぶりにおやつが買えるヨ」

「え~、おやつよりもまず
食費に回したいんだけど・・・
ってダメだよっ!落し物なんだからちゃんと届けないとっ!」

神楽ちゃんの言葉に、一瞬素で答えてしまった。
危ない危ない。幾らお財布が寂しい事になってても、
こう言う事はちゃんとしないとね。
侍たるもの、清く正しく美しくっ!

だが神楽ちゃんは、そんな僕の言葉をヘッと鼻で笑い飛ばした。

「何言ってるネ。これはどっかの誰かの財布と言う名の
天からの贈り物
ネ。素直に貰っとくのがヨロシ」

「いや、それが落し物って事だからね?
ちゃんと届けなきゃダメだって」

言い聞かせるようにそう言うと、僕は神楽ちゃんの手から
5百円玉を奪い取った。

第一ちゃんと届けて、半年後に気分良く
名実共に自分のモノにする方が断然良いし。

「んだよ~、良い子ちゃんぶりやがって。
銀ちゃんなら知らない顔で踏みつけて、さり気なく移動した後
きっちり自分の懐に入れてるアル」

「・・・ダメだからね、それ。
完全無欠でダメな見本だから、それ」

第一カッコ悪いでしょ?と言うと、神楽ちゃんは何かを思い出すように
天を仰いだ後、確かに・・・と頷いた。

どうやら既に神楽ちゃんの前でご披露されていたらしい。
ある意味いい人生の見本だ。反面的な。

「とりあえず届けにいこ?」

そう言うが、神楽ちゃんはまだ5百円玉に未練があるようで、
大変恨めがましい視線を送ってくる。

・・・神楽ちゃんの前で、お金の事言い過ぎたかな。
とりあえず今度からは自重して、居ない所で
攻め立てる事にしよう。

そう心の中で決意していると、

「お、何してんでィ、そんな道端で。
アリの行列でも蹴散らしてんのかィ?」

と、見慣れた顔の黒服が前方からやって来た。

「って何でそんな可哀想な事しなきゃいけないんですか、沖田さん」

ってかこの年でそんな事してたら、アリも可哀想だが、
それ以上に頭が可哀想だ。

「え?だって楽しいってか気分良いじゃねぇか」

そんな事を思っていたら、とても不思議そうにそう返された。

・・・アンタ、その年でまだそんな事してんですか。

あ、でも丁度良いかもしれない。
真選組と言えば一応お巡りさんだ。

例え目の前の人が、駄菓子の詰まった紙袋を
抱えていたとしても
・・・だ。

そう思い、僕はここに居た経緯を話し、持っていた5百円玉を
沖田さんへと差し出した。
すると返って来たのは、眉を顰められた嫌そうな顔。

「んなのさっさと使っちまえばいいのに。
きっとアレですぜィ?それはどっかのヤツの財布から
零れ落ちたと言う名の神様からの施しでさァ」

「だからそれが落し物だって言ってんですよっ!
大体一応警察であるアンタがそんな事言ってどうすんですかっ!」

「そうネ。どうせなら金じゃなくて現物支給
施しにして欲しいアル!!
特に酢昆布的な」

「・・・いや、そんな施しもいらないからね?
神楽ちゃんだけだから、それで喜ぶのは。
ってかもし落ちてても絶対食べちゃダメだからねっ!!」

兎に角っ!と、更に5百円玉を差し出すが、沖田さんは
知らん振りだ。
なんでそんなに頑なに拒むんだろうか。

流石に不思議に思い、問い掛けようとしち時に再び僕等へと
聞き慣れた声が掛けられた。

「あ、近藤さん」

振り返ってみれば、少し顔の変形している近藤さんが立っていた。
・・・って、何で顔が変形・・・あぁ、止めておこう。
だって答えは判りきっているもの。

とりあえず近藤さんの顔は見なかった事にしていると、
不思議そうに首を傾げながら僕達の元へとやって来た。

「何やってるんだ?三人固まって。
ってか総悟は確か今日、内勤だった筈じゃ・・・」

「休憩時間でさァ。それよりも近藤さん、
新八達がはした金を拾ったそうなんで、受理しといて下せェ。
俺は忙しいんで」

「いや、アンタ今休憩時間だって言いましたよね?
しかもプラプラ歩いてましたよね?さっき」

「そんな事ありやせんぜィ?俺ほど多忙な男は居ねぇよ。
だから受理する時間も、その書類書く時間もねぇ・・・
ってか誰がやるかそんな面倒臭ぇ事」

「おいぃ!!本音駄々漏れぇぇ!!
隠すなら全面的に隠し通せよ、そこはっ!」

「それすらも面倒臭いんでィ」

オラ、さっさと渡しちまいな。と言って、5百円玉毎
僕の手を近藤さんへと向けた。
それを受け取り、ニッコリと笑う近藤さん。

「あぁ、確かに受け取ったよ。ご苦労だったね?」

そう言って近藤さんは、ニコニコと笑いながら僕と神楽ちゃんの
頭を大きな手で撫でてくれた。

・・・や、ちょっと嬉しいけど、流石に恥ずかしいですから、それ。

「総悟も休憩時間だって言うのに、ご苦労だったな」

って、さっきの会話聞いてました!?

神楽ちゃんの頭から手を下ろしながら、そう言う近藤さんに
少しだけ力が抜ける。

僕が言うのもなんだけど、近藤さんは少しは人を疑った方が
いいと思う。

「全くでさァ」

・・・で、アンタは少しは罪悪感を持て。

白々しくもそう言い、肩を竦める沖田さんに呆れていると、
受け取った5百円玉を丁寧に紙に包み、ポケットに入れていた
近藤さんが、今度は内ポケットから財布を出してきた。

そして、はい。と千円札を一枚、僕の手へと乗せる。

「え?あのこれ・・・は?」

近藤さんの行動の意味が判らず、乗せられたお金と近藤さんの顔に
視線を行き交わせていると、再び頭を撫でられた。

「偉かったからね?これはそのご褒美だよ」

三人でおやつでも買って食べなさい。そう言って最後にポンポンと
軽く頭を叩くと、近藤さんはそのまま歩いていってしまった。

え?あの、でも・・・・えぇ!!?
これって、これでいいの!?

慌てて近藤さんを呼び止めようとすると、不意に手の上にあった
お札を取られ、その代わりに駄菓子が一杯詰まった紙袋を寄越された。

見ればヒラヒラとお札を振る沖田さんが。

「ま、近藤さんがあぁ言ってんだから、素直に
甘えときましょうや」

「いや、アンタは甘えなくてもいいと思うんですが」

「ちなみにその駄菓子は俺からのご褒美でィ。
有難く涙しながら一つ一つ噛み締めて食いなせィ」

「マジでか!?仕方ないから
銀ちゃんに見付からないように一気に流し込むヨ!」

「いや、それ全然味わってねぇだろ」

さっさと近藤さんの歩いていった方向とは反対の方へと
歩き出す沖田さんと、それを追いかける神楽ちゃん。

僕はと言うと、本当にいいのかな?と、戸惑うものの、
急いで二人の後を追った。

そして並んだ僕に、神楽ちゃんがにししと笑う。

「良い事すると、気分がいいネ」

いや、気分と言うか何と言うか・・・
うん、でもやっぱりなんか良いね。

にっこりと笑い、同意する僕に、神楽ちゃんはますます
笑みを深めた。

 

 


その後、三人で食べたお団子も、神楽ちゃんと二人で食べた
駄菓子も、普段よりももっと美味しく感じたのは、
多分気のせいじゃないと思う。

うん、やっぱり落し物は届けるのが一番気持ち良いや。

*********************
三万打、全体的なお礼(笑)
10代組をリクして下さった方が、有難い事に
何人かいらっしゃったので、最後に書かせて頂きましたv

こちらはフリーになりますので、お気に召したらどうぞ☆

もしリクしたけれどまだアップされていないと
言う方がいらっしゃったらご一報ください。


では、企画にご参加して下さった皆様。
読んで下さった皆様。
本当に有難うございましたvv
これからも末永くお付き合いして下さると
嬉しい限りですv

 

拍手[1回]



「でね、引ったくりにあって僕がそれを追いかけてたら、
偶々横の小道から銀さんが出てきて捕まえてくれたんだよ」

タイミングいいよね~、あの人。そう言いながら洗濯物を
畳んでいる新八の声が、幾分弾んでいるのが判る。
神楽は寄り掛った背中でそれを感じながら、適当な返事を返し、
酢昆布を齧った。

・・・って言うかタイミングがいいも何もないネ。

そもそも銀時は、新八が買い物に出掛けた後、まるで後を
追う様に万事屋を出て行ったのだ。
それを知っている自分からしてみれば、偶々なんかでは全く無く、
純然たる必然だ。

大体誘われた時に普通に答えればいいだけの話ネ。
なんで毎回渋るアルカ。

お陰で最近は荷物が多くなりそうな時や、お一人様~と言う
限定品がある時にしか誘われなくなっている。

・・・哀れなものネ。

毎度買い物に行こうとする新八の姿に、ソワソワしているものの
気付かれる事なく、一人で出掛けてしまう新八にカクリと肩を
落としている銀時の姿を、神楽はヘッと鼻で笑い飛ばした。
だが新八はそんな神楽に気付かず、一人で話を進めていく。

「やっぱりアレかな?
銀さんがアクシデントを引き寄せてるのかな?」

いや、違うネ。
銀ちゃんが新八に引き寄せられてるだけネ。勝手に。

・・・そう考えると、アクシデントを引き寄せてるのは新八アルカ?

ふと思いついた事を新八に言ってみると、え~。と嫌そうな声が
返って来た。

「やな事言わないでよ。言っとくけどそんな事ないからねっ!」

顔をクルリと神楽に向け、むっとした顔で言う新八に、
はいはい。と適当に返事を返す。

ま、アクシデントよりもっと最悪なのを
引き寄せてるけどナ。

「そりゃ~色々な事に巻き込まれるけどさ。
・・・あ、でもそんな時も大体銀さんが来てくれるっけ・・・」

僕、助けて貰ってばっかりだなぁ。少し落ち込んだ様な声で
ポツリと呟く新八に、神楽は器用に片方だけ眉を上げた。

・・・いや、その考えで行くと
新八は銀ちゃんにつけられてばかりネ。
アレあるか?志村家の遺伝子には
ストーカーホイホイの要素でも
組み込まれているアルカ?

大体何時も思うけどタイミング良すぎヨ。
なんであんなに丁度いい、見せ場ばっちりのタイミングで
出てこれるアルカ。
って言うかぶっちゃけ何で何時も新八の場所が判るネ。

新八レーダーでも付いてるアルカ?


それに私見てしまったネ。
前にやっぱり新八が危なかった時、これもやっぱりタイミング良く
出てきて助けた銀ちゃんが、新八の嬉しそうな顔を見た瞬間、
満足げにニンマリと口元を上げたのを。

・・・あの時の銀ちゃんは、無駄に煌いてたアルヨ。

「気にする事ないネ。
あれは既に銀ちゃんの趣味の域ヨ」

そう言うと、新八はクスリと苦笑し、人助けが?と答えた。

それにとりあえず頷いておく神楽。

ま、正しくは新八助け・・・って言うか
新八の前でカッコ付けるのが・・・ネ。

「でもそっか~・・・うん、そうだよね。
銀さん、あぁ見えて情が深いし」

情は情でも愛がつく情だけどな。
しかも新八限定。

「普段はあんなにやる気なさそうなのに、
いざという時はちゃんと決めてくれるし」

まさに不良が少し良い事をすると
ごっさ良いヤツに見える法則の応用ネ。

計算高いにも程があるヨ。
今度私も使ってみるアル。

「ちょっとだけ・・・ヒーローみたいだね?」

これからは偶に手伝いをして新八に褒めてもらおう。と
心に決めていると、ふふっと笑いながら新八がそんな事を口にした。

その顔は本当に、心の底からそう思っているようで、
私は本当に、心の底から同情した。

・・・騙されてるネ、新八。

だが、ここで新八曰くのヒーロー像を壊すほど、私は
子供ではない。

「あ、これ銀さんには内緒だからねっ!」

恥ずかしそうに顔を赤らめ、そう言う新八に私は素直に頷いておいた。

だって妙な計算ばかりして直球勝負に出ようとしない大人に
褒美をやる程、私は大人でもないのだ。

 

 

 

 

 

 




そんなある日、万事屋にきた仕事が、簡単な物探しから
物騒な事柄へと方向転換した。

・・・ま、何時もの事だけど。

その途中、やはり新八の危機にタイミングよく現れた銀ちゃんが
軽い怪我を負った。

・・・でも別行動してた筈・・・っていやいや、
もう突っ込まないネ。
突っ込まないけど、一つだけ言わせて欲しいアル。

銀ちゃん、なんで頭に
葉っぱが着いてるアルカ。
その葉っぱ、直ぐソコの垣根の葉とそっくりネ。
確か颯爽と出てきた場所は正反対のトコからだった筈ヨ。

まぁそんな疑惑が沸いたものの、とりあえず仕事は無事終了。
万事屋に帰って、銀ちゃんは新八に手当てして貰ってたアル。

新八は最初無茶をするなとか何とかお説教をしてたものの、
最終的に物凄くすまなそうな顔で銀ちゃんを労わってたネ。

そして今、軽い怪我ではあるものの、心配だから・・・と言って
万事屋に泊まる事にした新八は、着替えを持ちに家へと帰っている。

銀ちゃんに、ちゃんと休んでいるように言付けて。
なのに・・・・

 

「何やってるネ」

妙な気配に和室の襖を開けてみれば、大人しく寝ている筈の銀ちゃんが
うっすら汗を掻いて布団の上に座っていた。

「寝てろって言われた筈ネ。なんで起きてるアルカ。
汗まで掻いて」

どうやら新八に言われた事を無視して体を動かしていたらしい。
じっとりと見詰め、そう問い掛けると銀ちゃんは慌てた様に
パタパタと手を振った。

「あぁ!?これは・・・アレだ。
布団が暑くてよ~」

「昨日まで寒くて仕方ないから行火変わりに
一緒に寝てくれ
って
新八に頼んでたマダオは何処のどいつネ」

「ちょ、何で知ってるのぉぉぉ!!!?
ってかそれは昨日までの事だろうがっ!
天候は日々変化してんだよ」

「確かに変化してるけど、今日は寒の戻りだって
テレビでやってたヨ」

「ばっか。お前何でもかんでもテレビの情報を
鵜呑みにしてんじゃぇよ。
ヤツラの70%は嘘の情報なんだからよ」

限りなく嘘の塊で作られてる銀ちゃんに
言われたくないネ。
それよりも・・・と、微かに引き攣っている銀ちゃんの顔から
視線を、白い包帯が巻かれている部分へと移動させる。

「包帯・・・血が滲んでるネ」

そんなに深い傷ではなかった筈なのに。
言外にそう込めれば、銀ちゃんはそ~っと私から視線を逸らした。

「これは・・・アレだ。血じゃねぇから。
アレだ、アレ・・・あの・・・そう、苺シロップ!
や~、銀さんてアレじゃん?糖分がないと生きてけねぇじゃん?
そう、そうだよ。や~参ったなぁ、
見付かっちまったなぁ、おい。
あ、新八には内緒な?糖分摂取したって怒られっから」

参った参った。と困り顔で呟く銀ちゃんに、私はズイッと
手を差し出した。

「何?握手?」

「したら真っ白な包帯共々、その頭を真っ赤に
染め上げてやるネ。」

さっさと出すヨロシ。そう言うと銀ちゃんは渋々手の上に
300円乗せてくれた。

それを握り締め、にこりと笑うと少し出掛けてくると告げて
私は和室を後にする。

何か後ろで銀ちゃんがブツブツ言ってたけど、無視ネ、無視。
一々付き合ってたら時間が勿体無いヨ。

居間で寝ていた定春を呼び、そのまま玄関から外へと飛び出す。
目指すは愛しの酢昆布ネ。
あ、序に新八も迎えに行こう。
で、少しだけ遠回りして帰ってくるのだ。

そうすれば、安静にしていろと言われた銀ちゃんは
無駄に動き回って怪我を悪化させるだろうし、
その分新八が泊まる日数も増えるってものネ。

 

ちゃんとタイミングを計ってやるから、
怪しまれない程度に頑張るヨロシ。

計算高いのは大人よりも女の特権ネ。

 

今頃布団から起き上がり、精力的に動き回っているだろう
銀時を思い浮かべ、神楽はにししっと笑うと
進む足を軽く弾ませたのであった。

*******************
三万打お礼企画・第十弾。
蒼月様からのリクで「坂田の生息理由」と言う事でしたが
・・・こんな感じはどうでしょう?
ちょっとメールで盛り上がってた内容とは違った気がι
ってか寧ろ一番計算高いのは神楽ちゃんじゃね?(笑)

あ~、でも弄り具合が少なすぎた気がモリモリしますι
すみません、多分吉原炎上編を見過ぎてたせいです(おいι)

リベンジになったか怪しい限りですが、
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいですvv

企画参加、有難うございました~v

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その日、万事屋で何時もの様に家事に勤しんでいると、
妙に機嫌の良い銀さんが外から帰って来た。

なんだろう、珍しくパチンコで勝てたのかな?

だが、勝った時に大量に交換して来るお菓子の類が見えない。

・・・ってか何時も思うんだけど、お菓子に交換してくるぐらいなら
換金して来て欲しいんだよね、ウチの家計事情としては。
まぁ偶に洗剤とかお通ちゃんのCDとかも持ってきてくれるけどさ。
あれって計算してみると、普通に買うより安いんだよね。
・・・いっその事玉だけ買って、そのまま交換して来てくれないかな?
洗剤は安売りがあるからいいけど、CDは別だ。
今度お願いしてみようか・・・ってダメか。
絶対遊んでくるよ、この男は。

ちなみに以前、お菓子じゃなくて換金してきて下さいとお願いしたら、
ソコまで勝ててる訳じゃない。と返された。
それが酷くしょんぼりとした声だったので、それ以降は
何も言わないようにしている。

どうやらパチンコと言うのは、中々シビアな世界らしい。


「機嫌良いですね。何か良い事合ったんですか?」

ならなんだろう。と、とりあえず率直にそう聞いてみると、
銀さんはニヤリと笑い、

「別に~。」

とだけ答え、和室へと引っ込んでしまった。
そしてピシャリと閉められる襖。

僕は掃除機片手にそれを見送り、コトリと首を傾げたが、
機嫌が悪いよりは良いか・・・と思い直し、再び掃除へと
思考を戻した。

だってまだまだやる事いっぱいだしね。
銀さん、暇だと直ぐ絡んできて本気で邪魔だもん。
聞くのは全部終わってからでいいや。

そうやって家事に没頭していった僕は、すっかり銀さんの事を
頭の隅へと追いやったのであった。

 

 




そうしてどれくらい時間が経ったのか。
家事が一段落し、お茶でも飲もうかと思った所で、ふと
和室に引っ込んだままの銀さんを思い出した。

そう言えばアレから和室はずっと静かなままだ。

もしかして寝てるのかな?と思いつつ、とりあえず
銀さんもお茶を飲むか聞いてみようと、僕は和室へと向った。

「銀さ~ん、開けますよ~・・・・・って、何してんですか、アンタ」

声を掛けつつ襖を開けてみると、ソコにはこちらに背を向けて
項垂れている銀さんの姿が。
・・・ってか何か部屋自体が暗い感じなんですけど。

「・・・新八ぃ~」

少し引き気味の僕に、背を向けていた銀さんがゆっくりと振り返った。
その顔は、ここに入るまでの表情とは打って変わり、
どんよりとしている。

「ちょ、どうしたんですか、一体!」

慌てて中に入り、銀さんの傍へと駆け寄って膝を着くと、力ない声が
何かを告げた。

「え?何ですか?」

上手く聞き取れず、僕は銀さんの力なく落ちた肩に手を置き、
再度問い掛けてみた。
その声は、少し強張っていたかもしれない。
だってあの銀さんがこんなになるなんて、滅多に無い事だ。
何時だって飄々として、ノラクラしているのに、
今は完全に落ち込んでいる。

僕はコクリと息を飲み、ゆっくりと開いていく銀さんの口元を
凝視していた。

「・・・甘くねぇんだよ」

・・・・・・・・・・は?

死んだような・・・いや、違うな。今は完全に死んだ目だ。
そんな目で呟かれた言葉は、『甘くねぇ』

「・・・銀さん、今はそれが判っただけでもいいとしましょう。
大丈夫ですって、今からでも十分間に合います・・・多分」

「え?間に合うの?マジで!?」

縋るような目を向けられ、僕はなるべく安心出来るように
やんわりと微笑み返す。

「えぇ。だからこれからはちゃんと仕事して、
規則正しい生活をしていきましょうね。
大丈夫です、きっといつか世間も判ってくれますよ」

励ます様にそう告げると、非常に微妙な顔を返された。

「・・・いや、なんで世間様が出てくんの?」

そう言われ、僕はコテリと首を傾げた。

「・・・あれ?漸くほぼプー自分の人生に対しての
世間の対応について悲観してたんじゃないんですか?」

「してねぇよっ!え?何ソレ、そんな目で銀さんを見てたの!?
違うから、銀さんちゃんと職に就いてるから。
全然悲観なんてしてないからっ!」

「いや少しぐらいは悲観して下さいよ。
シャレになってませんから、現実的に」

目の前に真っ赤な家計簿突きつけてやろうか、コノヤロー。
本当、世間も現実も甘くないんだぞ、おい。

思わず睨んでいると、銀さんは話を逸らすように
バンッと畳みに手を付いた。

「そうじゃなくてコレだ、コレッ!!」

そう言われ、渋々銀さんから目を離し、見てみると・・・

「・・・アンタ、またこんなものをっ!!」

ソコには銀さんが愛してやまない糖分様々な羊羹が鎮座されていた。
ちなみに既に食べていた様で、くっきりとした歯型付だ。

・・・どうりで機嫌よさそうな上、いそいそと和室に入ってった
筈だよっ!
全く、こちとら特売だのタイムサービスだの狙って、
必死にやりくりしてるって言うのにっ!!

プルプルと怒りで震えていると、銀さんから焦ったような
声が掛けられた。

「ちがっ!ちょ、落ち着け新八っ!
これは買ったんでも拾ったんでもねぇし、
そもそも羊羹じゃねぇ!」

「どっから見ても羊羹でしょうがっ!」

見え見えの嘘に厳しく突っ込むと、銀さんは激しく否定し、そして

「だってこれ・・・甘くねぇ・・・」

と、弱弱しい声でポツリと呟いた。

 

 

 

話を聞いてみるとこうだ。
パチンコにでも行こうとフラフラしている時に、沖田さんと会ったらしい。
そこで、この羊羹(仮)を貰ったそうだ。
で、早速堪能しようと、予定を変更してここに帰ってきて
口にした所、甘味の姿が何処にも見当たらない、
非常に残念な思いをしたらしい。

「・・・アンタ、何素直に貰ってるんですか」

白けた目で見詰めていると、肩を落とした銀さんがチラリと
こちらを見上げてきた。

「だってよ?アイツ誰も食べねぇって言うんだぜ?
天下の羊羹様なのによぉ。だから折角親切心むき出し
貰ってきてやったのに、全然甘くねぇし」

「むき出しだったのは、糖分に対する欲求そのものでしょう。」

ってか甘くない羊羹なんて、全然予想がつかない。

僕はウジウジと視線を落とし、畳にのの字を書いている銀さんから
件の羊羹へと視線を移した。

見かけはまんま羊羹だ。
でもそれは売っているようなものではなく、手作り感に溢れている。
・・・って事は、もしかして沖田さんの手作りだろうか?

些か抵抗があるものの、好奇心には勝てず、僕はその羊羹へと
手を伸ばし、少しだけ千切って口の中へと放り込んだ。

その瞬間広がる、なんとも言えない残念感。

・・・これは、銀さんじゃなくても色々失望するかもしれない。
と言うか、糖分王である銀さんならば、それ以上だろう。
ってかなんでこんなモノ作ったんだ?あの人。
あんまりよく判らないけど、こういうのって作るのに結構
手間隙掛かるよね!?
時間の無駄だよねぇ!?

・・・あ、でもあの人は手間隙掛かっても、
人をおちょくるのには全力を出す人だった。

きっと今頃楽しそうに笑っているんだろうな~。と少しだけ
頬を引きつらせながらも、今だブツブツぼやいている銀さんの
肩にポンと手を置いた。

「まぁ仕方ないじゃないですか。
毒が入ってなかっただけマシだと思えば」

それにもう味が判ったのだから、食べなければいいだけの話だ。
そう言うと、銀さんは そう言う問題じゃねぇ。と
真面目な顔で目の前の羊羹を見詰めた。

「考えてもみろ。甘味はしねぇが、これは小豆様だ。
って事は餡子様でもある。ってぇ事は一応羊羹だ。
・・・食べなくてどうするよ、おい」

・・・いや、食べてどうするよ、おい。

「でも、食べると・・・いやいや、落ち着け銀時。
もしかしたらさっきのは夢だったかもしれねぇ。
今いったら、何時も通りの甘味が口一杯に広がるかも
しれねぇじゃん。うん、そうだ、銀時っ!
思い出せ、あの味をぉぉぉ!!!」

や、夢じゃねぇよ。
僕の口の中にも広がってるよ、あの絶望感。
無理ですからね?脳内で甘味保管しても、
口の中はがっかり感で一杯になりますからね!?

ブツブツと試行錯誤を繰り返している銀さんに、僕は
大きく溜息を吐いた。

色々言っている様だが、最初に食べた一口が相当ショックだったらしく、
未だにその手は羊羹へと伸ばされていない。

って、もしかして僕が家事をこなしていた間、ずっと
こんな事で悩んでた訳!?

・・・あ~、もういっその事これがトラウマになって
羊羹嫌いになってくれないかな~。

そう思った瞬間、僕の頭の中にある悪戯が浮かんだ。

うん、ずっとこうしててもウザイだけだしね。
この後、買い物にも付き合って欲しいし。

僕はやんわりと口元を上げると、膝立ちになって銀さんの前へと
場所を移動した。
そして徐に羊羹へと手を伸ばすと、それを手で掴み上げ、
そっと銀さんの目の前へと差し出す。

キョトリとする銀さんに、僕はにっこりと微笑を向け、
そして・・・


「銀さん。はい、あ~んして?」


そう言えば、銀さんは驚きに目を見開きながらも、パカリと口を開いた。
それを狙い定め、迷い無く羊羹を突き入れる僕。

美味しいですか?と聞けば、幸福と絶望を兼ね合わせた非常に
珍しい顔で僅かに頷かれた。

・・・って、本当凄い顔になってますよ、銀さん。

だが、これで銀さんの悩みは解消だ。
僕は満足げに頷くと、買い物の支度をするべく、その場から
立ち上がったが、銀さんはまだ口をモソモソと動かしている。

どうやら飲み込むのが辛いらしい。

・・・まぁあの味じゃね・・・

その姿が少しだけ可哀相に思えて、僕はつい腰を曲げて普段は見えない
銀さんの旋毛へと軽く唇を落としてしまった。

その瞬間、ゴクリと大きく飲み込む音が聞こえてきて、僕はホッと
笑みを零した。

「ちょ、新ちゃん!?今のもう一回っ!!」

「もう飲み込めたでしょ?だから終わりで~す」

「や、まだ全部は飲み込んでないからっ!
微かに残ってる気がするから、
歯の隙間とかぁぁぁ!!!」

「・・・それは普通に歯を磨いて来て下さいよ」

必死な顔で迫ってくる銀さんに、僕はほんの少しだけ
先程の行為を悔やんでしまったのは、無理もない事だと思う。

 

 

 

 

 

その後、偶然会った沖田さんにとても渋い顔をされた。
なんでもあの後、あの羊羹が気に入ったからと、
会う度に銀さんにせがまれているらしい。

それを聞いた僕が、心底後悔したのは・・・


・・・・・・多分言うまでもない。

******************
三万打お礼企画・第九弾。
Mag.様からのリクで、「悪戯で『甘くない羊羹』を食べさせられ
絶望的にヘコむ銀さんと、ソレを慰めようとする新八」
との事でしたが・・・如何だったでしょうかι
あんまり慰めていないような・・・(滝汗)
ちなみに、最終的に銀さんが幸せになる~・・・ってのは
ご想像通りでございました(笑)
さすが判ってらっしゃるvv(おいぃぃ!!)

こんな感じになりましたが、少しでも
楽しんで頂けたら嬉しい限りですv

企画参加、並びに何時もご感想、有難うございましたv

拍手[1回]


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