[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
洗濯物を畳み終え、それを箪笥に仕舞う序に明日着るモノも
用意しておこう・・・と、中の物を探ったが、何故か自分が
着ようと思っていたモノが見当たらない。
「あれ?確かに洗って仕舞った筈なんだけど・・・」
そう思い、再度探ってみたが、やはり見付からない。
こうなってしまうともうダメだ。
ないならないで、他のモノを用意すればいいだけの話なのだが、
どうにも気になってしまう。
という事で、僕は几帳面に畳み仕舞われた自分の着物を、
一つずつ取り出していく事にした。
「やっぱりない・・・」
周囲に箪笥の中身を並べ立てた中、僕は一人首を傾げた。
もしかして破れが酷かったとかで捨ててしまったのだろうか?
そんな考えも浮かぶが、新八は直ぐにそれを打ち消した。
仕事柄、そう言う事も偶にはあるのだが、
大抵きっちりと直して着ているし、何よりその仕事自体が
最近なかったのだ。
それにやっぱり洗って箪笥に仕舞いこんだ記憶もある。
なのになんで??
暫しの間悩んだ末、新八はある可能性に辿り着いた。
「もしかして・・・」
そう呟くと、新八は立ち上がって自室を後にした。
『はいはい、本日の業務はとっくの昔に終了致しましたってんだよ
コノヤロー。』
長い間呼び続け、漸く出たと思ったら、いかにもダルそうな
声が耳に入ってきた。
「なら昼間ならちゃんと業務してるんですね、コノヤロー」
思わず出た突っ込みに、受話器の向こうで小さく驚き、
名を呼ぶ銀時の声が聞こえた。
それに対し、新八は深く息を吐く。
「全く、仕事がないんですから年中無休の24時間体勢で
受付ぐらいはして下さいよ」
『安心しろ、新八からのは万事その体勢だ。
で、何?やっぱりこっちに泊まりたくなった?
いいよいいよ、全然OK。なんなら迎えに行くか?』
「その体勢は今後休止状態にして下さい、無駄なんで。
ってかなんでそう無駄にアクティブ!?
仕事に見せろよ、その精神!!
大体そう思うなら、電話する前に行ってますし、そもそも
帰ったりしません」
『お!新ちゃんてば男前だな~、おい。
でもやっぱ危ないから、銀さんが迎えに行くって。
だから玄関で大人しく三つ指ついて待ってろ』
途端に耳に流れ込んでくるニヤけた声に、新八の目が据わる。
「や、だから泊まる気は全く無いって事なんですけどね。
って、人の話聞いてます!?泊まる話なんて全然出てないんですけどっ!
何コレ、何処か別のと混線でもしてるんですか!?」
そうじゃなくてっ!・・・と、新八は漸く銀時の元へ電話をした
理由を話し出した。
『はぁ!?着物ってオマッ・・・そんなの明日にでも
自分で確認すればいいじゃねぇか』
呆れた声でそう言う銀時に、新八も少しだけ口篭る。
確かにそうだ。
でも気になってしまったら最後、それを確認するまで
落ち着かないのだから仕方が無い。
「お願いします、銀さん。ちょっと見て貰うだけで
いいですから。このままだと気になって眠れそうにないんですよ」
渋る銀時に、なんとか確認して貰おうと必死になって頼み込む新八。
その声にとうとう根負けしたのか、受話器の向こうから、大きな溜息と
判ったよ。 という力ない銀時の声が聞こえた。
その声に新八は感謝を述べると、銀時の気が変わらないうちに・・・と
急いで探してもらいたい着物の特徴を伝え始めた。
「・・・判りましたか?銀さん」
『ん~?・・・まぁ、多分?』
そう聞くものの、銀時の返事は曖昧で、何処か頼りない。
「もう、本当に判ってんですか?」
『いや、だってよぉ、オマエの着物って大抵似たような感じじゃん?
だからそう言われてもよぉ・・・』
段々と面倒臭くなってきた・・・という感アリアリの銀時の声に、
新八はこれだけは言うまい・・・と思っていた着物の
特徴を渋々口に出した。
「・・・銀さんが赤い中ぐらいの太さの縄が似合いそうだ
って言ってたあの着物ですよ」
『あ、アレね。了解了解』
じゃあまた後で連絡するわ。そう言うとガチャリと通話を切られ、
耳に入ってくるのは虚しいツー ツーという音のみ。
「・・・や、それで判るなよ」
と言う新八の切ない突っ込みは、誰に伝わる事もなく、
受話器の中へと吸い込まれていった。
それからどれ位たったのだろう。
新八はその間に・・・と、先程広げてしまった着物を箪笥に
仕舞いこみながら、銀時からの電話を待っていた。
が、全て仕舞い終えても電話は鳴る素振りを見せない。
・・・や、そんな素振り見せられても怖いけどね。
でも本当、どうしたんだろう。まさか面倒臭くなって放置してるとか!?
いっその事もう一度電話してみようか・・・そう思った時、
不意に玄関の方で物音がした。
日は変わっていないとしても、既に夜更けだ。
こんな時間に人の家を訪ねる人などいないだろう。
・・・まぁ例外は居るのだが。
だがその例外はこの時間、姉の仕事場でボコボコになっているか、
財布を空にさせられている所だろう。
ならば、可能性として残るは・・・
そこまで考え、新八は手に馴染んだ木刀を持ち、ソロソロと
玄関へと足を進めた。
だが、玄関が見えた所で、その気合も見事に粉砕させられた。
だってあの玄関に映った見事な髪の跳ね具合は・・・
新八は一つ息を吐くと、木刀を置いて玄関へと足を進めた。
そして鍵を開け、玄関を開け・・・
「・・・何やってんですか、アンタ」
目だけはしっかり胡散臭げな半目で、目の前に立っている
銀時を睨み上げた。
「おいおい、無用心過ぎるだろう、オマエ。
そんな簡単に開けちゃってどうすんのよ。
もし悪い人だったらヤバイ所じゃすまないよ?」
「そうでしたね。じゃあ閉めときます」
ヤレヤレ・・・と、まるで子供に言い聞かせるように
告げてくる銀時に、新八はそう返すとそのまま玄関を閉めようとする。
それを慌てて押し留める銀時。
「待て待て待て。今悪い人って言ったじゃん!?
目の前にいる人は違うでしょ?オマエの銀さんよ!?」
「限りなく悪い人ですね。
ってか無用心も何も、銀さんだって丸判りですからね!?」
「え?何ソレ。愛の力!?」
「天パの力だよ。
それよりもここで何してんですかっ!」
さっき電話で頼んだことは!?そう問い質すと、銀時は あ~それな~。
と言い、顎に手を当てた。
「やっぱさ、そこまで気になるってんなら
自分の目で確かめた方がすっきりすると思うのよ、銀さん。」
「・・・・・・・・・・は?」
うんうん、と自分の言葉に頷きながら話す銀時に、
新八はポカンと口を開いた。
「幾ら尊敬する銀さんの言葉でもよ?もしかして・・・とか
思っちまうだろ?
や、銀さんはアレよ?オマエの言葉だったらきっちり信用して、
どんな言葉でもいい方向に解釈して受け止めていくけどね?
で、明日だと気になって眠れねぇんだろ?
だからこうして迎えに来てやったんだよ」
完璧じゃね?と、自信有り気に言い終える銀時。
それを見詰めながら、新八は酷い疲れが一気に来たのを感じた。
確かに銀さんの言う通り、もしかして・・・と言うか
面倒臭くて適当に答えたかも・・・とは思ってしまうかもしれない。
だが、幾らなんでもこれは・・・
「ホラ、もう時間が遅ぇんだ。さっさと家の戸締りして来いよ。
あ、やっぱいいや。戸締りは俺がしとくから、
オマエは明日の用意してこい。銀さん疲れてるから
連れ帰ったら最後、送れそうにもないから」
そう言ってイソイソと家の中に入っていく銀時の背中を見て、
「やり過ぎな上に完璧でもないんですけど・・・」
と、ツッコムものの、それに力はなく。
その代わりにやんわりとした笑みが、新八の口元に浮かんだ。
「全く・・・銀さん、ちゃんと戸締りして下さいよっ!
じゃないと気になって僕、どんな時間帯であろうとも確認しに
帰ってきますからねっ!」
そう告げると、新八も明日の用意をする為に、家の中へと
足を進めた。
それに対し、悲鳴のような銀時の声が上がる。
だって仕方ない。
一度気になると、どうしようもないのだ。
それが嫌なら、戸締りぐらいは完璧にして下さいね、銀さん。
*********************
多分普段見られないぐらいに真剣に戸締りします。