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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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その日、万事屋で何時もの様に家事に勤しんでいると、
妙に機嫌の良い銀さんが外から帰って来た。

なんだろう、珍しくパチンコで勝てたのかな?

だが、勝った時に大量に交換して来るお菓子の類が見えない。

・・・ってか何時も思うんだけど、お菓子に交換してくるぐらいなら
換金して来て欲しいんだよね、ウチの家計事情としては。
まぁ偶に洗剤とかお通ちゃんのCDとかも持ってきてくれるけどさ。
あれって計算してみると、普通に買うより安いんだよね。
・・・いっその事玉だけ買って、そのまま交換して来てくれないかな?
洗剤は安売りがあるからいいけど、CDは別だ。
今度お願いしてみようか・・・ってダメか。
絶対遊んでくるよ、この男は。

ちなみに以前、お菓子じゃなくて換金してきて下さいとお願いしたら、
ソコまで勝ててる訳じゃない。と返された。
それが酷くしょんぼりとした声だったので、それ以降は
何も言わないようにしている。

どうやらパチンコと言うのは、中々シビアな世界らしい。


「機嫌良いですね。何か良い事合ったんですか?」

ならなんだろう。と、とりあえず率直にそう聞いてみると、
銀さんはニヤリと笑い、

「別に~。」

とだけ答え、和室へと引っ込んでしまった。
そしてピシャリと閉められる襖。

僕は掃除機片手にそれを見送り、コトリと首を傾げたが、
機嫌が悪いよりは良いか・・・と思い直し、再び掃除へと
思考を戻した。

だってまだまだやる事いっぱいだしね。
銀さん、暇だと直ぐ絡んできて本気で邪魔だもん。
聞くのは全部終わってからでいいや。

そうやって家事に没頭していった僕は、すっかり銀さんの事を
頭の隅へと追いやったのであった。

 

 




そうしてどれくらい時間が経ったのか。
家事が一段落し、お茶でも飲もうかと思った所で、ふと
和室に引っ込んだままの銀さんを思い出した。

そう言えばアレから和室はずっと静かなままだ。

もしかして寝てるのかな?と思いつつ、とりあえず
銀さんもお茶を飲むか聞いてみようと、僕は和室へと向った。

「銀さ~ん、開けますよ~・・・・・って、何してんですか、アンタ」

声を掛けつつ襖を開けてみると、ソコにはこちらに背を向けて
項垂れている銀さんの姿が。
・・・ってか何か部屋自体が暗い感じなんですけど。

「・・・新八ぃ~」

少し引き気味の僕に、背を向けていた銀さんがゆっくりと振り返った。
その顔は、ここに入るまでの表情とは打って変わり、
どんよりとしている。

「ちょ、どうしたんですか、一体!」

慌てて中に入り、銀さんの傍へと駆け寄って膝を着くと、力ない声が
何かを告げた。

「え?何ですか?」

上手く聞き取れず、僕は銀さんの力なく落ちた肩に手を置き、
再度問い掛けてみた。
その声は、少し強張っていたかもしれない。
だってあの銀さんがこんなになるなんて、滅多に無い事だ。
何時だって飄々として、ノラクラしているのに、
今は完全に落ち込んでいる。

僕はコクリと息を飲み、ゆっくりと開いていく銀さんの口元を
凝視していた。

「・・・甘くねぇんだよ」

・・・・・・・・・・は?

死んだような・・・いや、違うな。今は完全に死んだ目だ。
そんな目で呟かれた言葉は、『甘くねぇ』

「・・・銀さん、今はそれが判っただけでもいいとしましょう。
大丈夫ですって、今からでも十分間に合います・・・多分」

「え?間に合うの?マジで!?」

縋るような目を向けられ、僕はなるべく安心出来るように
やんわりと微笑み返す。

「えぇ。だからこれからはちゃんと仕事して、
規則正しい生活をしていきましょうね。
大丈夫です、きっといつか世間も判ってくれますよ」

励ます様にそう告げると、非常に微妙な顔を返された。

「・・・いや、なんで世間様が出てくんの?」

そう言われ、僕はコテリと首を傾げた。

「・・・あれ?漸くほぼプー自分の人生に対しての
世間の対応について悲観してたんじゃないんですか?」

「してねぇよっ!え?何ソレ、そんな目で銀さんを見てたの!?
違うから、銀さんちゃんと職に就いてるから。
全然悲観なんてしてないからっ!」

「いや少しぐらいは悲観して下さいよ。
シャレになってませんから、現実的に」

目の前に真っ赤な家計簿突きつけてやろうか、コノヤロー。
本当、世間も現実も甘くないんだぞ、おい。

思わず睨んでいると、銀さんは話を逸らすように
バンッと畳みに手を付いた。

「そうじゃなくてコレだ、コレッ!!」

そう言われ、渋々銀さんから目を離し、見てみると・・・

「・・・アンタ、またこんなものをっ!!」

ソコには銀さんが愛してやまない糖分様々な羊羹が鎮座されていた。
ちなみに既に食べていた様で、くっきりとした歯型付だ。

・・・どうりで機嫌よさそうな上、いそいそと和室に入ってった
筈だよっ!
全く、こちとら特売だのタイムサービスだの狙って、
必死にやりくりしてるって言うのにっ!!

プルプルと怒りで震えていると、銀さんから焦ったような
声が掛けられた。

「ちがっ!ちょ、落ち着け新八っ!
これは買ったんでも拾ったんでもねぇし、
そもそも羊羹じゃねぇ!」

「どっから見ても羊羹でしょうがっ!」

見え見えの嘘に厳しく突っ込むと、銀さんは激しく否定し、そして

「だってこれ・・・甘くねぇ・・・」

と、弱弱しい声でポツリと呟いた。

 

 

 

話を聞いてみるとこうだ。
パチンコにでも行こうとフラフラしている時に、沖田さんと会ったらしい。
そこで、この羊羹(仮)を貰ったそうだ。
で、早速堪能しようと、予定を変更してここに帰ってきて
口にした所、甘味の姿が何処にも見当たらない、
非常に残念な思いをしたらしい。

「・・・アンタ、何素直に貰ってるんですか」

白けた目で見詰めていると、肩を落とした銀さんがチラリと
こちらを見上げてきた。

「だってよ?アイツ誰も食べねぇって言うんだぜ?
天下の羊羹様なのによぉ。だから折角親切心むき出し
貰ってきてやったのに、全然甘くねぇし」

「むき出しだったのは、糖分に対する欲求そのものでしょう。」

ってか甘くない羊羹なんて、全然予想がつかない。

僕はウジウジと視線を落とし、畳にのの字を書いている銀さんから
件の羊羹へと視線を移した。

見かけはまんま羊羹だ。
でもそれは売っているようなものではなく、手作り感に溢れている。
・・・って事は、もしかして沖田さんの手作りだろうか?

些か抵抗があるものの、好奇心には勝てず、僕はその羊羹へと
手を伸ばし、少しだけ千切って口の中へと放り込んだ。

その瞬間広がる、なんとも言えない残念感。

・・・これは、銀さんじゃなくても色々失望するかもしれない。
と言うか、糖分王である銀さんならば、それ以上だろう。
ってかなんでこんなモノ作ったんだ?あの人。
あんまりよく判らないけど、こういうのって作るのに結構
手間隙掛かるよね!?
時間の無駄だよねぇ!?

・・・あ、でもあの人は手間隙掛かっても、
人をおちょくるのには全力を出す人だった。

きっと今頃楽しそうに笑っているんだろうな~。と少しだけ
頬を引きつらせながらも、今だブツブツぼやいている銀さんの
肩にポンと手を置いた。

「まぁ仕方ないじゃないですか。
毒が入ってなかっただけマシだと思えば」

それにもう味が判ったのだから、食べなければいいだけの話だ。
そう言うと、銀さんは そう言う問題じゃねぇ。と
真面目な顔で目の前の羊羹を見詰めた。

「考えてもみろ。甘味はしねぇが、これは小豆様だ。
って事は餡子様でもある。ってぇ事は一応羊羹だ。
・・・食べなくてどうするよ、おい」

・・・いや、食べてどうするよ、おい。

「でも、食べると・・・いやいや、落ち着け銀時。
もしかしたらさっきのは夢だったかもしれねぇ。
今いったら、何時も通りの甘味が口一杯に広がるかも
しれねぇじゃん。うん、そうだ、銀時っ!
思い出せ、あの味をぉぉぉ!!!」

や、夢じゃねぇよ。
僕の口の中にも広がってるよ、あの絶望感。
無理ですからね?脳内で甘味保管しても、
口の中はがっかり感で一杯になりますからね!?

ブツブツと試行錯誤を繰り返している銀さんに、僕は
大きく溜息を吐いた。

色々言っている様だが、最初に食べた一口が相当ショックだったらしく、
未だにその手は羊羹へと伸ばされていない。

って、もしかして僕が家事をこなしていた間、ずっと
こんな事で悩んでた訳!?

・・・あ~、もういっその事これがトラウマになって
羊羹嫌いになってくれないかな~。

そう思った瞬間、僕の頭の中にある悪戯が浮かんだ。

うん、ずっとこうしててもウザイだけだしね。
この後、買い物にも付き合って欲しいし。

僕はやんわりと口元を上げると、膝立ちになって銀さんの前へと
場所を移動した。
そして徐に羊羹へと手を伸ばすと、それを手で掴み上げ、
そっと銀さんの目の前へと差し出す。

キョトリとする銀さんに、僕はにっこりと微笑を向け、
そして・・・


「銀さん。はい、あ~んして?」


そう言えば、銀さんは驚きに目を見開きながらも、パカリと口を開いた。
それを狙い定め、迷い無く羊羹を突き入れる僕。

美味しいですか?と聞けば、幸福と絶望を兼ね合わせた非常に
珍しい顔で僅かに頷かれた。

・・・って、本当凄い顔になってますよ、銀さん。

だが、これで銀さんの悩みは解消だ。
僕は満足げに頷くと、買い物の支度をするべく、その場から
立ち上がったが、銀さんはまだ口をモソモソと動かしている。

どうやら飲み込むのが辛いらしい。

・・・まぁあの味じゃね・・・

その姿が少しだけ可哀相に思えて、僕はつい腰を曲げて普段は見えない
銀さんの旋毛へと軽く唇を落としてしまった。

その瞬間、ゴクリと大きく飲み込む音が聞こえてきて、僕はホッと
笑みを零した。

「ちょ、新ちゃん!?今のもう一回っ!!」

「もう飲み込めたでしょ?だから終わりで~す」

「や、まだ全部は飲み込んでないからっ!
微かに残ってる気がするから、
歯の隙間とかぁぁぁ!!!」

「・・・それは普通に歯を磨いて来て下さいよ」

必死な顔で迫ってくる銀さんに、僕はほんの少しだけ
先程の行為を悔やんでしまったのは、無理もない事だと思う。

 

 

 

 

 

その後、偶然会った沖田さんにとても渋い顔をされた。
なんでもあの後、あの羊羹が気に入ったからと、
会う度に銀さんにせがまれているらしい。

それを聞いた僕が、心底後悔したのは・・・


・・・・・・多分言うまでもない。

******************
三万打お礼企画・第九弾。
Mag.様からのリクで、「悪戯で『甘くない羊羹』を食べさせられ
絶望的にヘコむ銀さんと、ソレを慰めようとする新八」
との事でしたが・・・如何だったでしょうかι
あんまり慰めていないような・・・(滝汗)
ちなみに、最終的に銀さんが幸せになる~・・・ってのは
ご想像通りでございました(笑)
さすが判ってらっしゃるvv(おいぃぃ!!)

こんな感じになりましたが、少しでも
楽しんで頂けたら嬉しい限りですv

企画参加、並びに何時もご感想、有難うございましたv

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