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「・・・なんだろう、アレ」
家の事をする為本日休みを貰っていた新八だったが、思ったよりも
早く終わってしまった為、暇潰しがてらブラブラと散歩をしていた。
そして公園まで来た所で、もしかしたら神楽が遊んでいるかも・・・と
思い、寄ってみたのだが・・・
「なんで・・・足?」
そう、呟き首を傾げる。
出てきてしまった言葉も無理はない。
上が滑り台で下が筒状になっている至って普通の遊具から、
何故だか二本の足がニョッキリ出ているのだ。
しかも、それが子供のものなら遊んでいる最中かと納得が
出来るのだが、どう見てもそれは大人の足で・・・
「倒れてる・・・のかな?それとも住んでる?」
世の中には色々な人が居るという事知っている新八としては、
それもアリだと言う事を知っている。
が、もし倒れているのだったら放ってはおけない。
とりあえずちょっと覗いてみようかな・・・住んでるようだったら
謝ればいいだけだし。
そう結論を出すと、新八はソロソロとニョッキリ出ている足へと近付いた。
そして恐る恐る覗いて見ると・・・
「・・・何やってんですか、アンタ」
げんなりとした表情を隠す言もせず、浮かべた。
「ん?なんでィ、新八か。」
声を掛けられた本人は、幾分煩わしそうに眉を顰めると、
目に当てていたアイマスクを軽く上げ、トンネルの入り口から
こちらを見ている新八を見返してきた。
「見て判んねぇかィ?昼寝だよ昼寝」
邪魔すんねィ。そう言うと再びアイマスクを降ろし、ゴソゴソと毛布を
引き上げた。
「って何毛布まで持ち込んでんですかっ!
住む気ですか?ここに住む気なんですか!?」
新八は腰を屈め、上半身をトンネルの中へと入れると
沖田の掛けている毛布を力強く引っ張った。
「おいおい、窃盗罪と昼寝妨害の罪でしょっ引くぜィ?
ってかこんな所に住む訳ねぇだろうが、頭大丈夫かィ?
ここは所謂別荘ってヤツでさァ」
沖田は沖田で取り上げられないよう、しっかりと毛布を
掴みながらそう答える。
だが、新八も諦めない。
「アンタこそ大丈夫ですか、その頭。
ってか別荘じゃないですからね、ここ!
思いっきり公共の物ですからっ!!」
微妙に声が響くトンネル内で怒鳴りあいながら、毛布を
引っ張り合う事数分。
慣れない体勢で引っ張り続けた新八が力尽き、漸くその手を緩めた。
そしてそのまま入り口で膝を着き、大きく肩を落とす。
「・・・とりあえず、本当何してんですか」
そう問い掛けると、沖田はケロッとした顔で上半身を
起こし、新八に向き直ると、
「だから昼寝って言ったろ?」
と、簡潔に答えた。
それに再び肩を落とす新八。
「昼寝って・・・なら何時もみたいにベンチで寝てればいいじゃないですか」
人騒がせな。少しだけ怒りを含ませた声で言うと、沖田はヤレヤレと
言った感じで首を振った。
「こんな寒い中、あんな所で寝る馬鹿はいませんぜ?」
「こんな所で寝てる馬鹿なら居ますけどね」
「おいおい、俺の別荘にケチをつける気かィ?
言っとくけど中々の快適空間でさァ」
確かめてみるかィ?笑って手招きする沖田に、アンタの別荘じゃないでしょ!
と言いつつ、素直に四つん這いの状態で中に入っていく新八。
それを見て、沖田は再び横になる。
「あ・・・暖かい?」
見れば下にはきちんとダンボールが敷いてあり、風も遮られて
いるので外よりは温かく感じる。
ポツリと呟いた新八に、沖田の口元がニンマリと上がった。
「だろ?まぁ風の向きによっちゃあ使えねぇけどねィ」
そう言い、近くまできた新八の手を取って引き寄せ、寝転がせる。
そして暴れだされる前に、さっと被っていた毛布を新八にも
掛けてしまった。
「ちょ、何してんですか!」
「まぁまぁ。折角お招きしんたでィ、ゆっくりしていきなせェ」
あ~、温けぇ。
そう言って互いの首元まで毛布を引き上げると、沖田は新八の方に
体を向け、目蓋を閉じてしまった。
確りと新八の手を握って。
新八はそれを見て諦めるように小さく息を吐くと、
同じように体を横へと向けた。
幾ら小柄な方の二人でも、流石に子供向けの遊具の中は狭すぎるのだが、
これならばなんとか収まる事が出来る。
「ゆっくりも何も狭いんですけどね・・・」
ま、どうせ暇だし、少しだけ。ゴソゴソと体を動かし、楽な姿勢を取ると
新八も目蓋を閉じてみた。
その途端小さな寝息と、遠くの喧騒が耳に入ってくる。
こんな所で何してんだか・・・と思うものの、感じる体温も
聞こえる音も新八の眠気を誘い、それに抗う暇もなく、
新八は眠りの世界へと旅立っていった。
「・・・何やってんだ、こいつ等」
市民からの通報により駆けつけてみれば、居たのは見慣れた顔の
能天気な寝顔。
ヒクリと頬を引き攣らせる土方の肩を、近藤が笑って引き止める。
「ははは、微笑ましいじゃないか」
「微笑ましいってアンタ・・・」
能天気な顔がここにもあった・・・と、土方はガクリと肩を落とした。
「しかし、ここまで気持ち良さそうに寝られると
起こすのが忍びないな。どうする?トシ」
「どうする?じゃねぇよ!
そこじゃねぇだろうが、尋ねる部分はぁぁ!!!」
怒鳴る土方と、二人が起きる!と焦る近藤。
そんな二人の先では、狭いトンネルの中で互いに小さくなって毛布に
包まり、熟睡している沖田と新八の姿があった。
****************************
この後、寝たまま背負われて帰宅し、坂田に怒られます。
「銀ちゃん。そろそろ帰ってくるアルカ?」
炬燵の中、ゴソゴソと体を潜り込ませながら神楽ちゃんが
聞いてきた。
僕はそれに、洗濯物を畳んでいた手を休め、チラリと時間を
確認する。
今日の依頼は、そんなに人数はいらないらしいので、銀さんだけ
行っている。
遠くの場所でもないし、夕方には終わると言っていたので
そろそろ帰ってくる頃だろう。
そう告げると、神楽ちゃんはこの寒いのにご苦労な事ネ。と言って
またモソモソと炬燵の中へと潜って行った。
どうやら置いて行かれたのがつまらなかったらしい。
僕はクスリと笑って畳み終わった洗濯物を仕舞うべく、両手に抱え込んだ。
その際、チラリと窓の外へと視線を向ける。
昼間はそれなりに温かかったものの、
陽はとうの昔に落ち、風の音も加えられてなんとも寒そうだ。
でも防寒具を持って行くように言っといたから、多分大丈夫だろう。
・・・まぁぶつくさ言うだろうけどさ、ウザイくらいに。
でも働いてきてくれているのだ、それぐらいはちゃんと聞いてあげよう。
しつこかったら無視すればいいだけだし。
そう思っていると、不意に神楽ちゃんが何か言ったのが聞こえた。
え?と聞き直せば、ムッと口を尖らした顔の神楽ちゃんが
再度、先程の言葉を口にした。
「だからこんな寒いのに銀ちゃんはアホネって言ったアル。
手袋もマフラーもなしに。無謀にも若者気取りアルカ?
そんな事をしても、オーラと加齢臭でぶち壊しネ」
「え?嘘・・・だって僕、ちゃんと持ってくようにって・・・」
そう言えば、神楽ちゃんは炬燵の中に手を入れ、何かを取り出してきた。
見ればそれは、確かに銀さんのマフラーと手袋で・・・
「暖めといて忘れてったアル。」
炬燵で暖めとくなんて頭良くね?・・・なんて言ってただけに哀れネ。
呆れ顔でそう吐き出す神楽ちゃんに、僕はカクリと肩を落とした。
自業自得だと言えばそれまでだけど・・・
僕は再び窓の外へと視線を向けた。
外はやっぱり寒そうで。
今日は珍しく仕事をしてきている訳で。
その銀さんと言えば、着替えを一々炬燵の中に入れ、暖めてから
着替えをするような寒がりだったりする訳で。
僕は一つ息を吐くと、持っていた洗濯物を手早く仕舞い、自分のマフラーを
手に取った。
それを見ていた神楽ちゃんが、迎えに行くアルカ?と聞いてきたので
苦笑を一つ。
「これで風邪でも引かれたら、仕事して貰った意味がないからね」
そう言うと、神楽ちゃんは仕方ないとばかりに首を振り、
それまで潜っていた炬燵から出ると、僕と同じようにマフラーを
手に取り、自分の首へと巻いていく。
「仕方ないネ。眼鏡とマダオだけじゃヴィジュアル的に
寒いアル。私も一緒に行ってやるヨ」
「や、別にいいよ?外、寒いだろうし、僕だけで・・・」
「いいからっ!早く行くヨロシ!」
ってか寒いって何!?そう突っ込む前に、神楽ちゃんは銀さんのマフラーを
持ち、急かせる様に僕の背中を押してきた。
「って神楽ちゃん!手袋、手袋忘れてるからっ!」
とりあえず僕も神楽ちゃんも手袋ははめたものの、銀さんのは
未だ炬燵のテーブルの上だ。
そう言うと、別に大丈夫ヨ。と、何故か自信満々に答えられ、
そのまま玄関の外へと連れ出されてしまった。
こうなると、もう何を言っても無駄だろう。
僕はほんの少し、心の中で銀さんに謝りながら、
でも忘れてった方も悪いんだし、マフラーがあるだけマシだろう。
と結論付けると、そのまま神楽ちゃんに引き摺られるように
万事屋を後にした。
「てか神楽ちゃん、僕、鍵閉めてないんだけど」
「大丈夫ヨ、定春が居るネ」
「あ、そっか」
先程までの神楽ちゃんと同じように、炬燵の中に潜り込んでいた
定春の事を思い浮かべる。
うん、確かに定春が居れば、大丈夫だろう。
・・・その前に何も盗られるモノがないけれど。
でも・・・
「やっぱり手袋も持ってきてあげた方が良かったんじゃない?」
思ってたよりも冷たい空気にそう呟けば、
僕の手を握ったまま、少し先を歩く神楽ちゃんがクルリと振り向いた。
「何言ってるネ。ちゃんと持ってきてやったヨ、特別性の手袋」
そう言ってニシシと笑い、繋いだ手を目の辺りまで上げてみせた。
最初、何のことか判らず、キョトンとしてしまったが、
握られる手の感触に気付き、プッと小さく噴出してしまう。
「確かに・・・特別性だね」
「当たり前ヨ。これ以上最高の手袋はないネ。
銀ちゃんには勿体無いけど、今日だけ特別アル」
身も心も寒い思いして働いてきたマダオに特別サービスヨ。
そう言って笑う神楽ちゃんに、僕も口元が緩むのが判る。
そうだね。きっとこの手袋なら身も心もポッカポカになれるね。
少しだけ早足になる足元に、大振りになっていく握られた手。
その先で、
「あ、一番星アル」
見上げた空には、キラキラと輝く星。
その下で、寒そうに身を縮めながら歩いてくる、明るい銀色。
さぁ、早くその手を、何よりも温かい手で包んであげようか。
**************************
今日だけは特別に坂田が真ん中。
蒼さんからバトンを頂きました~♪
って事でやらかしてもらいます。(何する気だっ!)
と、その前にメルフォお返事☆
※姫りんご様
あけましておめでとうございます。
年が明けても、変わらない妄想速度ですみませんι
でも、楽しんで頂けてる様で、嬉しい限りですvv
そして、初期の方も読み直されたとか・・・有難うございます~vv
でも、確かに初期はラブラブ度が高かったですね。
・・・何があったんでしょう・・・(聞くなι)
それでも、今の変態へタレ銀さんも、ちょい病み銀さんも、ツンデレ新ちゃんも
気に入って頂けてるとの事で、嬉しい限りですvv
今後も調子に乗ってガンガン書いていこうと思っていますので、
どうぞよろしくお願いしますvv
以下、『続き』にバトンです。
お暇な方はどうぞ☆
本日は万事屋にお泊りです。
という事で和室に布団を敷き、明日の朝食の準備でもしようかと
台所へ行こうとした所、丁度お風呂から出てきた銀さんと行き会った。
「あ、もうお布団敷いてありますから」
「お~、有難うさん」
ヒラヒラと手を振る銀さんを見送り、僕もさっさと下準備して
お風呂に入ろう・・・と思っていると、不意に居間へと行った
銀さんに名前を呼ばれた。
「なんですか?お茶ですか?お酒はダメですよ。
イチゴ牛乳はもっとダメですよ?」
そう言いながら居間へと顔を出せば、何やら和室を前に
仁王立ちしている銀さんが。
不思議に思い、ソファに座ってテレビを見ていた神楽ちゃんを見れば、
こちらも同じように不思議そうな顔をしていて。
なんなんだろう、一体。
なんか変なトコでもあったのかな?
「あの、銀さん?どうかしました?」
和室の前の背中に問い掛けると、銀さんはゆっくりと顔だけを
こちらへと向けた。
その顔は、なんだかとても真剣で、思わず僕は背筋を伸ばしてしまった。
「銀さん?本当、どうかしました・・・」
「新八ぃ・・・いいんだな、オマエ」
コクリと息を飲み、再度問い掛けるが、言い終わらないうちに
そんな事を言われてしまった。
いいって・・・何が?
訳が判らず、何も言えずにいると、銀さんは何かを決意したかのように
一つ頷き、今度は神楽ちゃんへと視線を向けた。
「よし、判った。・・・神楽、オマエはもう寝ろ」
「寝ろってまだテレビの途中ネ」
銀さんの真剣な雰囲気に少し驚いたようだったけど、直ぐに気を取り直し、
神楽ちゃんはそう言い返した。
うん、そうだよね、
しかもまだ八時だしね。流石に寝るには早いよ。
ってか一体なんなんだろう。
何かあったのだろうか。僅かに湧き上がる不安に、キュッと拳を
握り締めていると、銀さんは大きく溜息を吐いた。
そして・・・
「ばっか、オマエ空気読めよ。見てみ?今ものっそく
大人の雰囲気満載だから。
和室から駄々漏れ中だから。」
「って何言ってんだ
アンタァァァァ!!!!!」
・・・とりあえず近くにあったゴミ箱を投げつけさせて貰いました。
「ぃってぇぇ!!!何すんだよ、コノヤロー!
折角銀さんがオマエの意思を尊重して、状況作りに協力してやろうって
のによぉ!!」
「うっさいわぁあ!!空であった事に感謝しろよオイィィ!!
ってか何の意思ですか!
どんな状況作りですか!!」
そう叫ぶと、銀さんは微かに頬を染め、視線を反らした。
「何ってオマエ・・・」
「銀ちゃん、空気読むヨロシ。
キモイ空気が満載ネ、今」
白けた表情でそう言う神楽ちゃんに、今度は銀さんが
叫び声を上げた。
「キモイ言うな!ってか銀さんきっちり読んでるからっ!
その上での状況判断だからっ!!」
「だからどんな状況判断ですかっ!」
そう言うと、銀さんは体をずらし、和室の奥を指差した。
そこにはここに泊まる時はそうしている様に、きちんと並んだ二つの
布団が・・・
「別に何時も通りじゃないですか」
こっからどんな状況を想像するんだろ?
首を傾げていると、銀さんは僅かに眉を顰めた。
「あぁ!?全然何時も通りじゃねぇよ!見てみ、何時もより
布団の距離が近いから!
10mmは確実に近いからっ!!
って事はアレだろ?今夜はOKよvvって事だろ!?
何だかいけそうな気がすんだろ?
そう言うの、あると思います!」
「ねぇよっ!!全く塵ほどもねぇよっ!
ってか何?その無駄な計測力ぅぅ!
大体そんな事考えながら敷いたりしません!!」
「いやあるって、マジで!
俺は大抵そんな事考えながら敷いてるからっ!
きっとアレだ、深層心理の何かが働いて、無意識に近付けちゃったんだな、
新ちゃんは。いやいや、初々しくて銀さん嬉しい」
「何かって何!?
ってかその前に警戒心がバリバリ働くわっ!!
ちょ、どいて下さい!今すぐ布団、引き離しますから。」
「ばっ、やめろって!近付けるなら大歓迎だが、
引き離すのは却下だ却下!!」
ドカドカと和室に近付き、中に入ろうとするが、銀さんに
止められてしまい、暫しその場で揉み合ってしまう。
・・・とその時、頭の直ぐ横でカチャリと言う冷たい音が聞こえてきた。
チラリと視線を向ければ、ソコには何故か傘を構えた神楽ちゃんが・・・
「テレビの音、聞こえないネ。少し黙るヨロシ」
「「・・・は、はい」」
座った目をした神楽ちゃんに、ほんの少し寿命が縮まった気がしたけど、
大切なモノは守れました。
とりあえずその後、僕が全ての行動に於いて慎重になったのは言うまでもない。
*****************************
多分ウチの坂田は目が合っただけでも、こう判断します(おいι)
お正月と言う事もあってか、ほんの少しだけ何時もと雰囲気が違う
通りを歩いていると、不意に声を掛けられた。
「あ、桂さん。それにエリザベス」
振り向けばソコには、団子屋の前にある長椅子に腰を下ろし、
のんびりとお茶を啜っている見慣れた姿が。
・・・って、いいのか。こんな所でのんびりしてて。
・・・や、いいのか。テロ活動してない証拠だから。
とりあえず色々とツッコミたくなったけど、正月ぐらいはのんびりしたい。
僕は黙ってお茶をしている二人に近付き、年始の挨拶を述べた。
「あぁ、おめでとう。今年もよろしく頼むよ」
朗らかにそう言われ、僕は苦笑するしかない。
悪い人ではないと思うけど、指名手配犯にはあまり言われたくない言葉だ。
そんな僕の微妙な表情に気付かないまま、桂さんは小さく声を上げると、
ゴソゴソと袂を漁りだした。
何してるのかな?
首を傾げながらそれを見ていると、桂さんは目当ての物を見つけたらしく、
笑って僕の目の前に小さな袋を出してきた。
もしかしてこれって・・・
「お年玉だ。まぁ気持ちだけだがな」
「え!?あ、いやいや、いいですよ!そんな」
予想が当たり、慌てて両手を振った。
気持ちは嬉しいですけどね?
やっぱり貰えないでしょ、普通。
・・・や、別にそのお金の出所が不安とかじゃなくて。
あくまで年齢的にね、年齢的に。
・・・ま、実際不安なんだけどさ。
そんな僕を見て、子供が遠慮するもんじゃない。と言って、強引に
桂さんはポチ袋を僕の手に乗せてきた。
「それに思ったより年末にやった呼び込みのバイトが良くてな。
世の中不景気だと言うが、あぁいう業種は不景気知らずだな」
「ってバイトかよ!何やってんですかアンタ!
違う意味で不安になるよっ!!」
はははっと笑う桂さんに、とうとうツッコミを入れてしまう。
あぁ、お正月ぐらい心穏やかに行きたかったのに・・・
「なんだ、新八君は心配してくれてるのか?大丈夫だぞ。
俺は客を呼び込んでも、自分が行ったりはしないからな」
「いや、そうじゃ・・・もぅいいです」
カクリと力なく肩を落とし、有難くお年玉を頂戴する事にした。
「うんうん、子供は素直が一番だ。それにどうせ銀時からは
貰っていないのだろう?」
「あ、いえ。・・・それがくれたんですよ、銀さん。
茶封筒で渡されたから、最初お給料かと思ったんですけど・・・」
そう言うと、桂さんは酷く驚いたようだった。
・・・まぁね、気持ちは物凄く判るよ。僕だって心底驚いたし。
ってかお年玉って銀さんのキャラじゃないよね?
・・・や、茶封筒ってトコは銀さんっぽいか、うん。
あれ、表に『お年玉』って書かれてなきゃ、気付かなかったからね。
そのまんま食費に回してたからね、僕。
・・・まぁお年玉だとしても、
回す気だったけど。
それを言ったら、物凄く怒られてしまった。
お年玉は自分の好きなモノに使うモンなんだって。
そう言って照れ臭そうに僕の髪の毛を掻き回した銀さんは、
ちょっとだけ嬉しそうに見えたから、僕は有難く貰うことにしたんだよね。
ちなみにお登勢さんにも貰ってしまってたりする。
ちゃんとしたポチ袋で、家賃なんかに回すんじゃないよ?
と言う言葉と共に・・・
そんなに僕、所帯染みて見えるのかな?
や、考えたけどさ、少し。
それを話したら、桂さんにも頷かれてしまった。
「無駄遣いはよくないがな」
・・・家賃とか食費って無駄じゃないと思うんだけど。
寧ろ死活問題だと思うんですけど。
でも、そう言う事じゃないんだよね。
僕はクスリと笑って返事をし、改めて桂さんに御礼を告げた。
「あ、序にリーダーにも渡しておいて貰えるか?
それと、これが預かってた分だ」
そろそろ帰ろうと挨拶をしようとすると、再び桂さんがポチ袋を取り出してきた。
・・・って、神楽ちゃんのは判るとして、預かってた分って??
「この派手な柄のが高杉からだな。で、こっちの名前が微妙に
間違えて書かれているのが坂本の分だ」
「・・・・・・・は?」
「いや、この間一緒に呑んでな。その時に渡しておいてくれと
頼まれていたのだ」
ここで会えて丁度良かった。そう言って渡された袋は、やっぱり神楽ちゃん
の分も入っているのか、同じように二つずつあって・・・
本当、何やってんだよ、あんた達。
その後、何故だかエリザベスにまでお年玉を貰ってしまった。
ポチ袋は至って普通なんだけど・・・アノ人こそどうやって
お金を稼いでるんだろう。
ちなみに桂さんから貰ったポチ袋はエリザベス型のものだった。
・・・作ったのか、手作りなのか、これ!
「でも、お年玉か~」
父上が亡くなってからと言うもの、こう言ったものに縁がなかったから、
実は本当は少しだけ嬉しかったりする。
一応働いてるんだし、もう16だし、貰えると思ってなかったしね。
でも、まさか桂さん達までくれるとは思ってなかった。
どうしよう。嬉しいけど何に使えばいいんだろう。
普段あまりない事に頭を悩ませていると、今度は前方から
名前を呼ばれた。
顔を上げれば、そこにはやはり見慣れた黒い服の集団が。
「おめでとうございます、近藤さん、土方さん、沖田さん」
頭を下げて挨拶すれば、それぞれの形で挨拶を返してくれた。
「なんか久しぶりだねぇ、お妙さんは元気かい?」
「えぇ、最近は特に調子がいいみたいです」
ニコニコと笑ってる近藤さんに、苦笑しつつそう返す。
さすがの近藤さんも、年末年始の忙しさに姉上のストーカーを
してなかったんだよね。
「そうか。さすがお妙さん、会えない寂しさも周囲には悟らせないなんて
なんて健気なんだ!!大丈夫!もうすぐ仕事も一段落着くから!
安心してくれと伝えておいてくれっ!」
「はい、そろそろ警戒再開しろと伝えておきます」
「あれ?なんか極端な伝言ゲームみたいになってない?」
「いや、正確に翻訳してるだけじゃねぇですかィ?」
「ってかまだとうぶん忙しいんだよ、おい」
首を傾げる近藤さんに、次々とツッコミが入る。
相変わらずだなぁ、なんて笑い、では・・・と軽く頭を下げて
その場を後にしようとするが、直ぐに引きとめられた。
なんだろう。と振り返ると、ニコニコと笑ってる近藤さんが、
ポケットから何かを取り出して僕へと差し出していた。
・・・って、これってまさか・・・
「はい、お年玉」
やっぱりかぁぁぁぁ!!!!!
ってか何コレ、なんかちゃっかり『義弟へ』とか書かれてるんですけどぉぉ!!
「あ・・・いえそんな・・・僕もうそんな年でもないですし・・・」
両手を振って遠慮していると、突然その手を強く握られた。
そしてクルリとひっくり返されると、その手の上にポンと白い封筒が
乗せられる。
「ガキが遠慮してんじゃねぇよ」
「土方さん・・・」
アンタもですか・・・って封筒って・・・
まぁ茶封筒じゃないだけマシ・・・かな?
「そうそう、遠慮なんかしちゃダメだよ?
総悟なんて毎年財布ごと持ってく勢いなんだから」
呆然としている僕の手に、近藤さんも可愛らしい柄のポチ袋を乗せていく。
勿論、きちんと神楽ちゃんの分も。
「え・・・でも・・・」
「いいじゃねぇですか。こんな時でもなきゃぁ大人の甲斐性を
見せれねェ人達なんですから。
ガンガン上納させりゃいいんでさァ」
それでも戸惑っていると、沖田さんが僕の肩に手を回して引き寄せて
そんな事を言ってきた。
「テメェはそろそろやる側に回っとけや、コラ」
「心外でさァ。俺は何時でも殺る側ですぜィ。
って事で金と共に命も落としとけよ土方コノヤロー」
「どっちも落とさねぇよっ!
ってか正月早々縁起の悪い事言ってんじゃねぇぇぇぇ!!!」
と、怒りも顕に土方が刀を抜き、何時もの小競り合いが始まる。
あ~、もう本当。変わらな過ぎだよ、この人達。
段々と離れていく二人を力の抜けた視線で追っていると、
ポンと肩を軽く叩かれた。
見れば隣には近藤さんが居て、ニッコリと笑っている。
そして、そのまま肩に置いた手を僕の頭へと移動すると、
「総悟の言う通りだ。大人の見得だとでも思って、収めといてくれないか?」
で、好きに使いなさい。そう言って優しく頭を撫でてきた。
・・・これで断ったら、子供の我が侭だよね。
僕は素直に 有難うございます。 とお礼を言うと、手に乗せられた
袋をギュッと抱き締めた。
「あ、でも生活費とかに回しちゃダメだからね!」
「後、天パーにも渡すんじゃねぇぞぉぉ!!!」
隣からは真剣な顔をした近藤さんに。
そして少し離れた所からは、本気な声の土方さんにそう言われた。
・・・だから僕の事なんだと思ってんですか、あんた等。
さて、何に使おう。
何時もより温かくなった懐と、なんだかくすぐったい心を引きつれ、
僕は軽い足取りで万事屋へと向った。
「今度、このあぶく銭で遊ぼうぜィ」
後ろから掛けられた、沖田さんの声に元気良く返事を返しながら。
******************************
貰うのもあげるのも嬉しいもんです。
・・・まぁ懐は寂しくなりますけどね(泣)