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「・・・なんだろう、アレ」
家の事をする為本日休みを貰っていた新八だったが、思ったよりも
早く終わってしまった為、暇潰しがてらブラブラと散歩をしていた。
そして公園まで来た所で、もしかしたら神楽が遊んでいるかも・・・と
思い、寄ってみたのだが・・・
「なんで・・・足?」
そう、呟き首を傾げる。
出てきてしまった言葉も無理はない。
上が滑り台で下が筒状になっている至って普通の遊具から、
何故だか二本の足がニョッキリ出ているのだ。
しかも、それが子供のものなら遊んでいる最中かと納得が
出来るのだが、どう見てもそれは大人の足で・・・
「倒れてる・・・のかな?それとも住んでる?」
世の中には色々な人が居るという事知っている新八としては、
それもアリだと言う事を知っている。
が、もし倒れているのだったら放ってはおけない。
とりあえずちょっと覗いてみようかな・・・住んでるようだったら
謝ればいいだけだし。
そう結論を出すと、新八はソロソロとニョッキリ出ている足へと近付いた。
そして恐る恐る覗いて見ると・・・
「・・・何やってんですか、アンタ」
げんなりとした表情を隠す言もせず、浮かべた。
「ん?なんでィ、新八か。」
声を掛けられた本人は、幾分煩わしそうに眉を顰めると、
目に当てていたアイマスクを軽く上げ、トンネルの入り口から
こちらを見ている新八を見返してきた。
「見て判んねぇかィ?昼寝だよ昼寝」
邪魔すんねィ。そう言うと再びアイマスクを降ろし、ゴソゴソと毛布を
引き上げた。
「って何毛布まで持ち込んでんですかっ!
住む気ですか?ここに住む気なんですか!?」
新八は腰を屈め、上半身をトンネルの中へと入れると
沖田の掛けている毛布を力強く引っ張った。
「おいおい、窃盗罪と昼寝妨害の罪でしょっ引くぜィ?
ってかこんな所に住む訳ねぇだろうが、頭大丈夫かィ?
ここは所謂別荘ってヤツでさァ」
沖田は沖田で取り上げられないよう、しっかりと毛布を
掴みながらそう答える。
だが、新八も諦めない。
「アンタこそ大丈夫ですか、その頭。
ってか別荘じゃないですからね、ここ!
思いっきり公共の物ですからっ!!」
微妙に声が響くトンネル内で怒鳴りあいながら、毛布を
引っ張り合う事数分。
慣れない体勢で引っ張り続けた新八が力尽き、漸くその手を緩めた。
そしてそのまま入り口で膝を着き、大きく肩を落とす。
「・・・とりあえず、本当何してんですか」
そう問い掛けると、沖田はケロッとした顔で上半身を
起こし、新八に向き直ると、
「だから昼寝って言ったろ?」
と、簡潔に答えた。
それに再び肩を落とす新八。
「昼寝って・・・なら何時もみたいにベンチで寝てればいいじゃないですか」
人騒がせな。少しだけ怒りを含ませた声で言うと、沖田はヤレヤレと
言った感じで首を振った。
「こんな寒い中、あんな所で寝る馬鹿はいませんぜ?」
「こんな所で寝てる馬鹿なら居ますけどね」
「おいおい、俺の別荘にケチをつける気かィ?
言っとくけど中々の快適空間でさァ」
確かめてみるかィ?笑って手招きする沖田に、アンタの別荘じゃないでしょ!
と言いつつ、素直に四つん這いの状態で中に入っていく新八。
それを見て、沖田は再び横になる。
「あ・・・暖かい?」
見れば下にはきちんとダンボールが敷いてあり、風も遮られて
いるので外よりは温かく感じる。
ポツリと呟いた新八に、沖田の口元がニンマリと上がった。
「だろ?まぁ風の向きによっちゃあ使えねぇけどねィ」
そう言い、近くまできた新八の手を取って引き寄せ、寝転がせる。
そして暴れだされる前に、さっと被っていた毛布を新八にも
掛けてしまった。
「ちょ、何してんですか!」
「まぁまぁ。折角お招きしんたでィ、ゆっくりしていきなせェ」
あ~、温けぇ。
そう言って互いの首元まで毛布を引き上げると、沖田は新八の方に
体を向け、目蓋を閉じてしまった。
確りと新八の手を握って。
新八はそれを見て諦めるように小さく息を吐くと、
同じように体を横へと向けた。
幾ら小柄な方の二人でも、流石に子供向けの遊具の中は狭すぎるのだが、
これならばなんとか収まる事が出来る。
「ゆっくりも何も狭いんですけどね・・・」
ま、どうせ暇だし、少しだけ。ゴソゴソと体を動かし、楽な姿勢を取ると
新八も目蓋を閉じてみた。
その途端小さな寝息と、遠くの喧騒が耳に入ってくる。
こんな所で何してんだか・・・と思うものの、感じる体温も
聞こえる音も新八の眠気を誘い、それに抗う暇もなく、
新八は眠りの世界へと旅立っていった。
「・・・何やってんだ、こいつ等」
市民からの通報により駆けつけてみれば、居たのは見慣れた顔の
能天気な寝顔。
ヒクリと頬を引き攣らせる土方の肩を、近藤が笑って引き止める。
「ははは、微笑ましいじゃないか」
「微笑ましいってアンタ・・・」
能天気な顔がここにもあった・・・と、土方はガクリと肩を落とした。
「しかし、ここまで気持ち良さそうに寝られると
起こすのが忍びないな。どうする?トシ」
「どうする?じゃねぇよ!
そこじゃねぇだろうが、尋ねる部分はぁぁ!!!」
怒鳴る土方と、二人が起きる!と焦る近藤。
そんな二人の先では、狭いトンネルの中で互いに小さくなって毛布に
包まり、熟睡している沖田と新八の姿があった。
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この後、寝たまま背負われて帰宅し、坂田に怒られます。