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お正月と言う事もあってか、ほんの少しだけ何時もと雰囲気が違う
通りを歩いていると、不意に声を掛けられた。
「あ、桂さん。それにエリザベス」
振り向けばソコには、団子屋の前にある長椅子に腰を下ろし、
のんびりとお茶を啜っている見慣れた姿が。
・・・って、いいのか。こんな所でのんびりしてて。
・・・や、いいのか。テロ活動してない証拠だから。
とりあえず色々とツッコミたくなったけど、正月ぐらいはのんびりしたい。
僕は黙ってお茶をしている二人に近付き、年始の挨拶を述べた。
「あぁ、おめでとう。今年もよろしく頼むよ」
朗らかにそう言われ、僕は苦笑するしかない。
悪い人ではないと思うけど、指名手配犯にはあまり言われたくない言葉だ。
そんな僕の微妙な表情に気付かないまま、桂さんは小さく声を上げると、
ゴソゴソと袂を漁りだした。
何してるのかな?
首を傾げながらそれを見ていると、桂さんは目当ての物を見つけたらしく、
笑って僕の目の前に小さな袋を出してきた。
もしかしてこれって・・・
「お年玉だ。まぁ気持ちだけだがな」
「え!?あ、いやいや、いいですよ!そんな」
予想が当たり、慌てて両手を振った。
気持ちは嬉しいですけどね?
やっぱり貰えないでしょ、普通。
・・・や、別にそのお金の出所が不安とかじゃなくて。
あくまで年齢的にね、年齢的に。
・・・ま、実際不安なんだけどさ。
そんな僕を見て、子供が遠慮するもんじゃない。と言って、強引に
桂さんはポチ袋を僕の手に乗せてきた。
「それに思ったより年末にやった呼び込みのバイトが良くてな。
世の中不景気だと言うが、あぁいう業種は不景気知らずだな」
「ってバイトかよ!何やってんですかアンタ!
違う意味で不安になるよっ!!」
はははっと笑う桂さんに、とうとうツッコミを入れてしまう。
あぁ、お正月ぐらい心穏やかに行きたかったのに・・・
「なんだ、新八君は心配してくれてるのか?大丈夫だぞ。
俺は客を呼び込んでも、自分が行ったりはしないからな」
「いや、そうじゃ・・・もぅいいです」
カクリと力なく肩を落とし、有難くお年玉を頂戴する事にした。
「うんうん、子供は素直が一番だ。それにどうせ銀時からは
貰っていないのだろう?」
「あ、いえ。・・・それがくれたんですよ、銀さん。
茶封筒で渡されたから、最初お給料かと思ったんですけど・・・」
そう言うと、桂さんは酷く驚いたようだった。
・・・まぁね、気持ちは物凄く判るよ。僕だって心底驚いたし。
ってかお年玉って銀さんのキャラじゃないよね?
・・・や、茶封筒ってトコは銀さんっぽいか、うん。
あれ、表に『お年玉』って書かれてなきゃ、気付かなかったからね。
そのまんま食費に回してたからね、僕。
・・・まぁお年玉だとしても、
回す気だったけど。
それを言ったら、物凄く怒られてしまった。
お年玉は自分の好きなモノに使うモンなんだって。
そう言って照れ臭そうに僕の髪の毛を掻き回した銀さんは、
ちょっとだけ嬉しそうに見えたから、僕は有難く貰うことにしたんだよね。
ちなみにお登勢さんにも貰ってしまってたりする。
ちゃんとしたポチ袋で、家賃なんかに回すんじゃないよ?
と言う言葉と共に・・・
そんなに僕、所帯染みて見えるのかな?
や、考えたけどさ、少し。
それを話したら、桂さんにも頷かれてしまった。
「無駄遣いはよくないがな」
・・・家賃とか食費って無駄じゃないと思うんだけど。
寧ろ死活問題だと思うんですけど。
でも、そう言う事じゃないんだよね。
僕はクスリと笑って返事をし、改めて桂さんに御礼を告げた。
「あ、序にリーダーにも渡しておいて貰えるか?
それと、これが預かってた分だ」
そろそろ帰ろうと挨拶をしようとすると、再び桂さんがポチ袋を取り出してきた。
・・・って、神楽ちゃんのは判るとして、預かってた分って??
「この派手な柄のが高杉からだな。で、こっちの名前が微妙に
間違えて書かれているのが坂本の分だ」
「・・・・・・・は?」
「いや、この間一緒に呑んでな。その時に渡しておいてくれと
頼まれていたのだ」
ここで会えて丁度良かった。そう言って渡された袋は、やっぱり神楽ちゃん
の分も入っているのか、同じように二つずつあって・・・
本当、何やってんだよ、あんた達。
その後、何故だかエリザベスにまでお年玉を貰ってしまった。
ポチ袋は至って普通なんだけど・・・アノ人こそどうやって
お金を稼いでるんだろう。
ちなみに桂さんから貰ったポチ袋はエリザベス型のものだった。
・・・作ったのか、手作りなのか、これ!
「でも、お年玉か~」
父上が亡くなってからと言うもの、こう言ったものに縁がなかったから、
実は本当は少しだけ嬉しかったりする。
一応働いてるんだし、もう16だし、貰えると思ってなかったしね。
でも、まさか桂さん達までくれるとは思ってなかった。
どうしよう。嬉しいけど何に使えばいいんだろう。
普段あまりない事に頭を悩ませていると、今度は前方から
名前を呼ばれた。
顔を上げれば、そこにはやはり見慣れた黒い服の集団が。
「おめでとうございます、近藤さん、土方さん、沖田さん」
頭を下げて挨拶すれば、それぞれの形で挨拶を返してくれた。
「なんか久しぶりだねぇ、お妙さんは元気かい?」
「えぇ、最近は特に調子がいいみたいです」
ニコニコと笑ってる近藤さんに、苦笑しつつそう返す。
さすがの近藤さんも、年末年始の忙しさに姉上のストーカーを
してなかったんだよね。
「そうか。さすがお妙さん、会えない寂しさも周囲には悟らせないなんて
なんて健気なんだ!!大丈夫!もうすぐ仕事も一段落着くから!
安心してくれと伝えておいてくれっ!」
「はい、そろそろ警戒再開しろと伝えておきます」
「あれ?なんか極端な伝言ゲームみたいになってない?」
「いや、正確に翻訳してるだけじゃねぇですかィ?」
「ってかまだとうぶん忙しいんだよ、おい」
首を傾げる近藤さんに、次々とツッコミが入る。
相変わらずだなぁ、なんて笑い、では・・・と軽く頭を下げて
その場を後にしようとするが、直ぐに引きとめられた。
なんだろう。と振り返ると、ニコニコと笑ってる近藤さんが、
ポケットから何かを取り出して僕へと差し出していた。
・・・って、これってまさか・・・
「はい、お年玉」
やっぱりかぁぁぁぁ!!!!!
ってか何コレ、なんかちゃっかり『義弟へ』とか書かれてるんですけどぉぉ!!
「あ・・・いえそんな・・・僕もうそんな年でもないですし・・・」
両手を振って遠慮していると、突然その手を強く握られた。
そしてクルリとひっくり返されると、その手の上にポンと白い封筒が
乗せられる。
「ガキが遠慮してんじゃねぇよ」
「土方さん・・・」
アンタもですか・・・って封筒って・・・
まぁ茶封筒じゃないだけマシ・・・かな?
「そうそう、遠慮なんかしちゃダメだよ?
総悟なんて毎年財布ごと持ってく勢いなんだから」
呆然としている僕の手に、近藤さんも可愛らしい柄のポチ袋を乗せていく。
勿論、きちんと神楽ちゃんの分も。
「え・・・でも・・・」
「いいじゃねぇですか。こんな時でもなきゃぁ大人の甲斐性を
見せれねェ人達なんですから。
ガンガン上納させりゃいいんでさァ」
それでも戸惑っていると、沖田さんが僕の肩に手を回して引き寄せて
そんな事を言ってきた。
「テメェはそろそろやる側に回っとけや、コラ」
「心外でさァ。俺は何時でも殺る側ですぜィ。
って事で金と共に命も落としとけよ土方コノヤロー」
「どっちも落とさねぇよっ!
ってか正月早々縁起の悪い事言ってんじゃねぇぇぇぇ!!!」
と、怒りも顕に土方が刀を抜き、何時もの小競り合いが始まる。
あ~、もう本当。変わらな過ぎだよ、この人達。
段々と離れていく二人を力の抜けた視線で追っていると、
ポンと肩を軽く叩かれた。
見れば隣には近藤さんが居て、ニッコリと笑っている。
そして、そのまま肩に置いた手を僕の頭へと移動すると、
「総悟の言う通りだ。大人の見得だとでも思って、収めといてくれないか?」
で、好きに使いなさい。そう言って優しく頭を撫でてきた。
・・・これで断ったら、子供の我が侭だよね。
僕は素直に 有難うございます。 とお礼を言うと、手に乗せられた
袋をギュッと抱き締めた。
「あ、でも生活費とかに回しちゃダメだからね!」
「後、天パーにも渡すんじゃねぇぞぉぉ!!!」
隣からは真剣な顔をした近藤さんに。
そして少し離れた所からは、本気な声の土方さんにそう言われた。
・・・だから僕の事なんだと思ってんですか、あんた等。
さて、何に使おう。
何時もより温かくなった懐と、なんだかくすぐったい心を引きつれ、
僕は軽い足取りで万事屋へと向った。
「今度、このあぶく銭で遊ぼうぜィ」
後ろから掛けられた、沖田さんの声に元気良く返事を返しながら。
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貰うのもあげるのも嬉しいもんです。
・・・まぁ懐は寂しくなりますけどね(泣)