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そろそろ夕飯の支度でもしようと、ソファから腰を上げた所で
玄関の開く音と、神楽ちゃんの元気な声が聞こえてきた。
「ただいまヨ~」
「お帰り、神楽ちゃん」
まず自分の靴を脱ぎ、次に定春の足を拭いている神楽ちゃんに
声を掛けると、僕はそのまま台所へと向った。
・・・て、その前に・・
「ちゃんとうがいと手洗いするんだよ~」
と、一応釘を刺しておく。
判ってるネ、一々言わなくてもヨロシ。と、神楽ちゃんから返って来るが、
やっぱり言っとかないとね。
さて、神楽ちゃんも帰って来たことだし、さっさと作っちゃお。
銀さんはまだだけど、その内帰ってくるよね。
まず自分の手を洗いながら、作る順番を頭に描く。
ま、作るって言っても下拵えはもうやってあるしね。
しかもそんなに考えるほど、おかずないしね。
ちょっと虚しくなるのでそれ以上考えないようにする。
すると、いつの間に来たのか、不意に後ろから腰に抱きつかれて少し驚く。
振り返ってみれば、ソコには何だか楽しげな神楽ちゃんが。
「どうしたの?まだ何にも出来てないよ?」
そう言うと神楽ちゃんは そうじゃないネ。 と少しだけ口を尖らし、
僕の腰に巻きつけてる腕に力を込めてきた。
・・・ごめん、神楽ちゃん、真剣に痛いから、それ。
ギブギブ!!と叫ぶと、満足したのか漸く神楽ちゃんが力を緩めてくれた。
そしてまた楽しげな表情へと戻る。
「新八、新八!クイズするネ」
「クイズ?」
どうやら力を緩めたものの離す気はないらしい神楽ちゃんをそのままにして、
僕は夕飯作りへと戻り、耳だけを傾ける。
なんでも今日は大人しく友達とクイズを出し合って遊んだらしい。
・・・まぁ罰ゲームは何時もの如き・・・だったらしいけど。
それを僕にもお裾分けしてくれるそうだ。
神楽ちゃんの楽しそうな雰囲気に、思わず僕もホッコリ笑顔になる。
「で?どんな問題?」
言っとくけど夕飯作ってる最中だから、罰ゲームはなしね。そう言うと
神楽ちゃんは 仕方ないネ。 と笑い、クイズを出して来くれた。
何問か出され、どうにか間違わずに答えていく。
そして、そろそろ夕飯も出来上がろうかという時に、
最後の問題ネ。 にししと笑って神楽ちゃんがあるクイズを出した。
「『遺体』と『死体』どっちが男アルカ?」
「へ?」
出された問題にキョトンとしていると、新八にはちょっと難しいネ。と
フフンと笑われ、僕は一旦手を止めて真剣に考えてみる。
・・・なんだろう、なんか言葉でも掛けられてるのかな?
だが、幾ら考えても判らず、僕は降参とばかりに両手を上げた。
「ダ~メ、全然判んないや。どっちが男なの?」
「やっぱり新八はダメガネネ。仕方ない、グラさんが教えて差し上げるヨ。
あのね、『死体』が男アル。」
自慢げに答えを教えてくれる神楽ちゃんだけど、なんでそうなのかが
全く判らない。
「なんで男が『死体』なの?」
料理を盛り付けながらそう聞くと、後ろで一瞬首を傾げる気配がした。
あれ?まさか知らないの?
そう思っていると、神楽ちゃんが何かを思い出しながら
ポツポツと説明をしてくれた。
「えっと・・・女は『いたい』ネ。でも男は『したい』ネ。
だから『死体』が男ヨ」
でも何が痛くてしたいアルカ?そう聞いてくる神楽ちゃんに、
一瞬思考が止まる。
あの・・・それってつまりあの・・・・
嫌な汗がじんわりと出てくる中、どう言ったものか・・・とグルグル
していると、玄関が開く音が耳に入ってきた。
それと、ダルそうに帰りを告げてくる銀さんの声。
た、助かった~。
ほっとしつつ、後ろに居る神楽ちゃんを振り返る。
「銀さん帰ってきたね。夕飯も出来たし、ご飯にしよっか」
ちょっと口元が引き攣ってたかもしれないけど仕方ない。
こう言う話題は苦手なんだよ、僕!!
自分が判る限り、神楽ちゃんの疑問には答えてあげたいけど
これは無理。荷が重いから、僕には!!
なんとか話を変えつつ、料理を持って行くよう神楽ちゃんに
頼むと、快く引き受けてくれた。
良かった、どうやら話を変える事が出来たみたいだ。
安心して料理を居間へと持っていく神楽ちゃんを見送り、僕はお味噌汁を
よそう。
だけとびっくりしたな~、そんなクイズ、誰が出すんだろう。
最近の子達って凄いな~。なんて思わず考えていると、
居間の方から神楽ちゃん達の声が聞こえてきた。
どうやら銀さんに手伝いを褒められているらしい。
言葉は悪いけどね、本当素直な人達じゃないよな。
二人の会話にクスリと笑っていると、
「そう言えば銀ちゃん、なんで『したい』が男で『いたい』が女ネ」
と、神楽ちゃんの声が聞こえ、僕は再び思考停止となった。
「あ~?なんだそりゃ」
「今日やったクイズネ。『遺体』と『死体』男はどっち?って言うので
『死体』が男アルけど、なんでそうなるネ」
心底不思議そうな神楽ちゃんの声に、銀さんの あ~、そういうのね。と
ダルそうな声が続いた。
ってかまだあの疑問を忘れてなかったのか、神楽ちゃんはぁぁ!
僕は味噌汁をその場に置いて、居間に居る二人の下へと向った。
また早い、早いからね、そういう話題は!!
空気読めよ、コノヤロー!!と祈りながらも、銀さんの事だから
何も考えず答えてしまいそうだ・・・と焦る。
居間に着き、止めようと銀さんの名前を呼ぼうとする前に、
銀さんはかったるそうに頭を掻きながら神楽ちゃんに答えていた。
「それはアレだ。間違ってるぞ?」
・・・と。
その言葉に、神楽ちゃんは首を傾げ、僕は目を丸くする。
・・・あれ?銀さん、空気読んだ?てか逃げた?
どっちにしろちょっとマトモな人に見えるよ、銀さん!!
ホッと胸を撫で下ろし、これなら銀さんに任せといてもいいかな。
と、再び台所へ戻る事にする。
「なんでネ。答えはこれで合ってるヨ」
納得いかないらしい神楽ちゃんの声が聞こえる。
そりゃ~そうだよね~。友達とやった時は、理由は判らなくても
それが答えだったんだもんね。
でも銀さん、ここは誤魔化してくださいよ?
その無駄に上手い口先を心置きなく使ってくださいよ?
そう思っていると、銀さんの声が聞こえてきた。
「なんでも何も違ってんだから仕方ねぇだろ。いいか?万事屋においては
『したい』が銀さんで『いたい』が新八だ」
「って何言ってんだコノヤロー!!」
銀さんの言葉に、僕は光の速さで持って居間へと舞い戻り
手にしていたお玉を力いっぱいぶん投げた。
どうやらそれは銀さんの額に命中したらしい。
酷くいい音を発して、一瞬銀さんの頭が後ろへと飛んだ。
・・・が、あまり威力はなかったらしい。
いってぇなぁ。なんて言いながら、銀さんはすぐに頭を元に戻した。
そして少し赤くなった額を摩りながら、
「何すんだよ、新八。あ、あれか?新ちゃんも『したい』の方か?
そうだよな~、銀さん頑張ってるから
『いたい』はねぇよなぁ」
等と一人納得しながら頷いた。
「うっせぇよ!!黙れよもう!!!」
なんで僕、お玉持ってたんだろう。
包丁持ってれば良かったのに!!
等と悔やんでいると、神楽ちゃんがポンと手を叩くのが見えた。
・・・え?何納得してんの、神楽ちゃん。
「成る程、判ったネ。
そう言う意味だったアルカ」
「ってどう言う意味ぃぃぃ!!!?
ちょ、神楽ちゃん、何をどう判っちゃいましたか!?」
「何ってアレだよなぁ、俺達の夜の営み・・・」
「黙っとけやコラァァァ!!!
なんでこう言う時だけ素直ぉぉぉぉ!!!?」
「新八~、ご飯食べるネ。私、お腹すいたヨ」
「いや、なんでそんなすっきりしてんの!?
なんで謎は全て解けた的表情してんのぉぉぉ!!?
やめてくんない?あれで理解するの
やめてくなんいぃぃ!!」
その後、真っ赤になった新八によって
『万事屋内、クイズ禁止』令が出されたのは言うまでもなく、
暫くの間、お泊りもなかったのはもっと言うまでもないのであった。
***************************
娘は知らないうちに成長していきます(おいι)
※文通編の話になります※
※グダグダ感満載です※
新八がうららの姉を追いかけて行った後、銀時達は土方達と
上手いこと合流し、車を手に入れた。
そして、これまでの経緯を簡単に話していく。
「で、新八君はどうした?」
近藤の言葉に、銀時はダルそうに追いかけて行った事を告げた。
それに土方が呆れたように言葉を零す。
「目当ての女、ほったらかしにしてか?」
「・・・理屈で動くヤツじゃねぇ。
目の前で泣いている女が居たら、惚れた女ほっといて涙拭きに
行くヤツだ」
そう語る銀時に、土方も近藤も妙に納得してしまう。
確かに、あの少年は、そうするだろう。
そんな所が、また気持ちの良い所なのだけれども、
何分土方と近藤は仕事中だ。
そろそろ車を返して欲しい。
そう思い、土方が口を開こうとするが、一瞬先に銀時が口を開いた。
「ちなみに目の前で泣いている女が居たら、
例え愛しの銀さんが居たとしても、ほっといて拭きに行くんだけど
そこら辺どう思う?ちょっと酷くね?」
「うるせぇよ!!!
なんだソレ!どう言う繋がりぃぃ!!?
ってかテメーと比べたら、誰でもそうするわぁぁぁ!!!」
「なんでだよ!?言っとくけどなぁ、俺は例え目の前に
泣いてたり真っ裸な女が居たとしても、新ちゃんから
離れたりしませんんん!!!ってか誰が見せるかそんなモン!!
新八の清らかな目が穢れるわぁぁぁ!!!」
「なら一番にテメーが離れてやれよ!
テメーが一番の穢れの元
なんだよぉぉぉぉ!!!!」
怒鳴りあう銀時と土方を余所に、突然車が音を立てて止まった。
「ちょ、行き成り止まるな、総悟!!」
文句を言う土方に、沖田は一つ息を吐くと銀時へと顔を向けた。
「旦那ぁ、新八語りはいいですが・・・事件ですぜィ」
目の前のビル、ソコには今にも飛び降りそうなきららの姿があった。
屋上で一悶着あり、結果として飛び降りてしまったきららを追って銀時は
体をビルの外へと投げ出した。
そして上手いことキャッチし、銀時はきららの言葉を聴いた。
その最中、銀時は視線を感じ、視線を流す。
見れば向かい側のビルに、真剣な表情をした新八の姿が。
多分色んな所を走り回ったのだろう。
遠くからでも、肩で息をしているのが判る。
そしてきららの告白。
・・・何やってたんだろうな、俺は。
こんなにも一生懸命に縁を繋げようとしている二人の邪魔をし、
新八の努力も無駄にしてしまう所だった・・・
視線の先では、新八が紙を掲げている。
それはきっと心からの言葉で、それはきららを
救ってくれる言葉だ。
・・・あぁ言う事、素でやっちゃうのが新八なんだよなぁ。
本当、天然タラシで困っちまう。
銀時は淡く笑みを浮かべると、反動をつけてビルの中へと
飛び込んだ。
そして、一度唇を強く噛み締めると、自分の決心に震えそうな声を隠し、
きららに告げる。
「・・・返事、返してやってくれるか?」
その言葉は、もしかしたら自らの首を絞める結果になるかもしれない。
だが、アソコまで頑張っている新八の努力を無駄にする事は出来ない。
そんな可哀想な事・・・
そう今までの自分の行いを反省している銀時の前で、
二人の文字での会話が交わされる。
そしてきららの名前を知った新八が、酷くやんわりとした笑みを
浮かべるのが目に入った。
その笑顔に、銀時は口元を緩め、次にハッと目を見開いた。
・・・て待てよ?アレが俺以外のヤツに向けられるのって
やっぱダメじゃね?
新八頑張ったけど、俺だって頑張ったじゃん!?
色々小細工はしたけど、ウソはついてないじゃん?
新ちゃんと俺の為に頑張ったじゃん!!?
これで新ちゃん取られたら、俺が可哀想じゃね!?
ってか、取られたらダメじゃね!?
・・・やっぱ全力で邪魔しよう。
でも、新八が可哀想だから、せめてこれ以上縁が進まないように
きっちり見守っていこう。
小細工、ガンガンしていこう。
行って友人止まりだから、本当!!
幾ら優しくても、銀さんをほっとくのはやっぱ禁止ですぅぅぅ!!!
もし新八が涙を拭きに行っても、しっかり着いてくから。
握ったこの手は離さないからぁぁぁ!!!!!
いい風が吹く中、目の前で涙するきららをそのままに、
銀時はそう固く誓った。
*********************
坂田は坂田って事で。
台無し万歳~☆(おぃぃぃぃ!!!)
今日も今日とて、飽きると言うか懲りると言う言葉を知らない
近藤が妙にストーカーし、ボコられた。
いや、もうこれはボコられるとか可愛いものじゃないだろう。
新八は妙に倒され、意識を失った近藤を縁側まで引きずり、
横にさせた所で一つ息を吐いた。
既に真選組には連絡してあるし・・・と、新八は前もって用意していた
救急箱を開け、簡単ではあるが近藤の治療を始めた。
そして粗方治療し終えた所で、近藤の隊服の肩口が破れている事に
気付く。
新八は一瞬考えるが、直ぐに救急箱を仕舞うと、今度は裁縫道具を
探しに家の中へと足を向けた。
幸い、妙は近藤を沈めた後、友人と約束があるから・・・と
出掛けてしまった。
最初の内は、意識を失くした近藤を家の中へ入れるのでさえ
妙は拒否したのだ。
しかし、家の前で人が倒れているのも外聞が悪い。
新八がそう言うと、
「なら、今度からはもう少し飛距離を伸ばすことにするわ」
とにっこり微笑まれたのだが、それはそれで困る。
ウチから飛んできた・・・と
丁寧にも届けられたらどうするのだ。
結局、新八の説得により、意識のなくなった近藤は速やかに
家の中へと引きずり込む事となった。
勝手知ったる我が家だ。
何かあっても後処理しやすい。
で、まさかそのまま放置しとく気にもなれず、毎度新八が
こうして手当てをしていたりする。
ちなみにすぐに無くなる消毒液や包帯等は、月一で真選組から
届けられているので、妙も文句は言わない。
新八はこれも手当ての序だ・・・と、持って来た裁縫道具を置くと、
近藤の上着を脱がせた。
自分よりも大きい、しかも意識の無い人間の服を脱がすのは
結構重労働だったが、なんとか無事に脱がす事が出来た。
でも、着るのは流石に自分でやって貰おう。
新八はそう決めると、針を手にし、チクチクと慣れた手つきで
破れた部分を縫い始めた。
「よし、出来た!」
縫い終わった隊服を掲げ、新八はざっと確認の目を通した。
そして出来栄えに満足すると、掲げていた服を畳もうとし、
はたとその手を止めた。
基本、新八の着る物は着物だ、あまり洋装には縁がない。
そのせいか、少しだけ目の前のモノに興味が沸いてしまう。
しかも一般の人には縁のない真選組の隊服だ。
チラリと新八は近藤に目をやり、まだ目が覚めていない事を
確認すると、コソコソと手にしていた上着に腕を通した。
「ふ~ん、こんな感じなんだ~」
立ち上がり、羽織った上着にキョロキョロと視線を向ける。
体格のせいか、上着と言うよりちょっとした外套のようだ。
新八はプラプラと手を振ってみる。
袖も長すぎて、指がチョコンと見えるぐらいだ。
「おっきぃな~」
「ですねィ、まるで上着が立ってるみたいだぜィ?」
ポツリと呟いた独り言に、突然横から声が入ってきて、新八は
ビクリと背筋を伸ばした。
「まさか新八が局長の座を狙ってたとは・・・中々の野心家でィ」
「お、沖田さん!!」
振り向けば、ソコには近藤を迎えに来たらしい沖田の姿が。
新八は慌てて上着を脱ぐと、恥ずかしそうに腕に抱え込んだ。
「こ、これはただ洋装ってのに興味があっただけで・・・」
「おいおい、局長の座はそのおまけですかィ。
まぁ最近の菓子もおまけの方が本命とも言えやすし、実際俺としても
副長の座は土方さんの命のおまけみてぇなもんで・・・」
「いや違いますから!
ってかそれで言ったら土方さんの命、
メッチャ軽い扱いなんですけどぉぉ!!」
新八の突っ込みに、そうですかィ?と沖田は飄々と答えると、
近藤が横になっている縁側へと腰を降ろした。
「でも、意外と似合ってましたぜィ、その服。
まぁ埋もれてたみてぇだけどな」
「うっさいですよ。仕方ないじゃないですか、
近藤さん、おっきいんだから!」
新八が口を尖らせて言い返すと、沖田はニヤリと口元を上げ、
「新八が小さいからじゃねぇのかィ?」
と楽しそうに問い掛けてきた。それにムッとする新八。
「なら沖田さんも着てみてくださいよ」
いかにおっきいか判りますから!そう言って新八は抱えていた服を
沖田へと差し出した。
それに一瞬、沖田は身を引いた。新八はそれを見逃さず、
ニンマリと口元を上げる。
「あれ?沖田さんも埋もれちゃいそうでイヤなんですか?」
「っんな訳あるかィ!おら、寄越しやがれ!!」
先程とは違い、楽しげな新八に沖田は口を曲げると縁側へと
上がり、自分の上着を脱ぎ捨てた。
そしてそれを新八に渡すと、代わりに近藤の服を羽織る。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・言っとくが、さっきの新八よりはマシってもんでィ」
ポソリと呟かれた沖田の言葉に、新八も渋々納得する。
納得するが、やはり沖田にも近藤の服は大きすぎて
手の甲が半分ほど隠れている。
「やっぱりおっきいですね~、近藤さん」
思わずと言った感じで出てしまった新八の言葉に、沖田は小さく
鼻を鳴らす。
「俺等は成長期だぜィ?後は縮むしかねぇんだから
今ぐらい夢見させといてやらねぇとねィ」
「それもそうですよね」
「それよか新八、俺の服着てみなせェ。近藤さんのよりは
幾分マシだぜィ?」
「いいんですか?」
新八の問い掛けに、まぁそれでも大きいとは思うがねィ。と笑って
沖田が答えた。
それに少しムッとするが、新八はイソイソと手にしていた沖田の
上着に腕を通した。
「あ、なんか上着って感じです」
先程の近藤の時とは違い、少しはまともに着れていると思う。
新八は、今度は手の甲まで隠している袖をプラプラと振った。
「おぅ、ちょっとはさまになってんじゃねぇかィ。
もう何年かしたら丁度良くなりそうだねィ」
「何年か・・・じゃなくても近いうちに丁度良くなってみせますよ」
沖田の言葉に、新八は反論しながらも照れ臭そうに微笑んだ。
それに沖田は自分の手の甲を隠している袖を上げながら、
ふふんと笑った。
「俺もでさァ。こんなん軽~く着こなしてみせやすぜィ。
なんてったって俺等、発情期真っ最中だからねィ」
「そうそう、発情期舐めんなっ・・
ておぉぉぉぃいいい!!!!
違いますから!そこ、全然違いますからぁぁぁ!!!!」
「なんでィ、別にソコまで違っちゃいねぇだろうよ。
成長期の年代=発情期真っ最中ですぜィ?」
「その生々しい図式やめて下さい!!
も~、なんでそんな話になるんですか~!!」
「それは俺等が
発情期真っ最中な証拠でィ」
「うっせぇよ!!!!」
真っ赤になって怒鳴る新八に、沖田はしれっとした表情で答える。
会話の内容はアレだが、二人の格好はどちらも大きい服に身を沈めている
状態で・・・
さて、どのタイミングで起きようか。
二人の子供らしい行動を、薄目ながらもどこか穏やかな視線で
覗っていた近藤は、少しだけ苦笑した。
*********************************
近藤さんはお父さん(笑)
夜も更けた頃、銀時に送ってもらいながら家路へと歩いていると、
見慣れた顔ぶれと行き会った。
「土方さん、沖田さん。こんばんは」
途端、銀時は嫌な顔をするが、それを肘で突きながら新八は軽く頭を下げる。
見れば相手側も微妙な表情をしているが、それでも片手を上げて
挨拶を返してくれた。
「おう、今帰りか?」
「あ、新八ィ、後ろにストーカーが居ますぜィ」
「これ銀さんんんんん!!!!
何、沖田君、きちんと目ぇ開いてますぅぅぅ!!?」
「お陰様でばっちりでさァ。土方さんの目は
もうすぐ閉じられたままになる予定ですけどねィ」
「おいぃぃぃぃ!!!何不吉な事言ってんだぁぁ!!」
相変わらずの会話に、新八は苦笑する。
「土方さん達は見回りですか?」
問い掛けると、沖田から小さい溜息が聞こえてきた。
「そうでさァ。全く、成長期の俺には睡眠が必要だって言うのに・・・
こう言うのは今後萎む一方のヤツがやればいいのにねィ」
ね、土方さん。そう言う沖田に、土方が軽く拳骨を落とす。
「昼間たっぷり寝てるヤツが何言ってやがる」
そんな二人に、新八は またサボったんですか・・・と笑っていると、
不意に横からグイッと腕を引き寄せられた。
見ればそこにはダルそうに頭を掻いている銀時が。
「あ~、はいはい。挨拶は済んだだろう、早く行こうぜ、新八。
で、テメーラは寝る間も惜しんで税金分きっちり働けや」
ヒラヒラと追い払うように手を振る銀時に、新八は咎めるように
名を呼んだ。
銀時の言葉にピクリと眉を上げるものの、ふとある事に気付いた土方が
新八達に問い掛ける。
「新八は判るとしても、なんでオメーまで一緒に居るんだ?」
訝しげに銀時を見詰める土方に、新八は苦笑を浮かべると
「家まで送ってもらってるんです」
ま、その後何処に行くか判ったもんじゃないですけど。そう言って
少し温度の下がった視線を銀時へと向けた。
それに慌てたように銀時が手を振って否定を表す。
「いやいやいや、そこは銀さんを信じとこうよ、新八君~。」
「だって何時も言いますけど、僕一人で平気ですよ?
寧ろ家に神楽ちゃん一人を残してくる方が心配です」
「何?冷蔵庫の中身が?」
口を少し尖らしそう言う新八に、銀時が真剣な表情で返し、
酷く良い音を立てながら頭を叩かれた。
「何言ってんですか!!
それも心配ですけど違うでしょ!!」
「・・・ってか心配な事には心配なんだな」
二人のやり取りを眺めていた土方がポツリと呟く。
それを聞き、新八は恥ずかしそうに微かに頬を染めた。
「そ、そうですけど、それはほんの少しですよ?だって神楽ちゃんは女の子で
僕は男ですもん。時間だってまだ早いのに・・・」
「アイツの場合、そんな性別があったとしても関係ないように
思えますがねィ。それに早いって言ってももう夜ですぜィ?
未成年が出歩いていい時間じゃねぇや。って事で土方さん、
俺も帰っていいですかィ?」
「あぁ、見回りが終わったらな。」
聞いてくる沖田を軽く流し、しかし・・・と土方はやる気なさそうに
頭を掻いている銀時へと視線を移した。
「それならもっと早く帰したらどうなんだ?その方が安全だろ」
そう告げる土方に、銀時は ヘン と鼻を鳴らした。
「ソレが出来たら苦労しねぇよ」
銀時の言葉に、土方と沖田は首を傾げた。
何時見ても暇そうな万事屋である。
そんな時間の掛かる仕事・・・と言うか仕事自体あるのか疑問だ。
二人の仕草に、疑問をある程度理解した新八が困ったように
笑みを零した。
「いや、仕事自体は全くないと言っても良いんですけど、
他の事が・・・」
「他の事?」
土方の問い掛けに、新八は微かに視線を上げ、指を折って話し始める。
「えぇ、まぁ夕飯はいいんですけど、その後の片付けに明日の朝食の
下準備。後は銀さんの布団を敷いて、寝巻きの用意して、
歯磨きチェックして・・・・」
「な?無理だろ?早く帰るの」
新八の言葉に、銀時は何故か得意げに胸を張り、土方は深い息を吐いた。
「テメーは・・・何処まで世話かけりゃ気が済むんだ!!
しかも何だ?歯磨きチェックって!
年上の威厳はどうしたぁぁぁ!!!!」
「新八が相手ならとことんですけど何かぁぁあ!!?
大体年上の威厳なんざなぁ、歯磨きチェックの前じゃゴミだ、ゴミ!
至近距離で見詰められてみ?顎に手を添えられてみ?
・・・シャレになんねぇから、アレ」
「マジでか!!?」
最後は真剣な表情で言われ、思わず土方も真剣になりそうになる。
・・・が、直ぐ隣から酷く白けた視線を感じ、二人は慌てて背筋を
伸ばし、小さく咳を吐き出した。
「ま、まぁアレだ。例え早く帰ろうとな、やっぱ送る事に
なると思うわ、銀さん」
顎に手を当て、軽く頷きながらそう言う銀時に、新八が不満の
声を上げる。
「なんでですか。ってか、今現在
既に一人で帰りたい気満々なんですが」
「その方が安全な気がしてきたねィ。
あ、なんなら俺が送っていきますぜィ?」
「お前はそう言ってそのまま帰る気だろうが」
沖田の提案に、土方が速攻でダメだしをすると、判ってねぇですねィ。と
緩く頭を振られた。
「なんだよ、まさか『ちゃんと戻ってきます』なんて心にもねぇ事
言う気じゃねぇだろうな」
「やだねィ、人を信じられないってのは。俺は帰る気なんて
更々ないですぜィ。
そのまま新八ん家に
泊まってきまさァ」
「サボリには変わりねぇだろうが、それぇぇぇ!!!」
怒鳴る土方と、それを飄々と交わす沖田。そんな二人を余所に、
新八は銀時を見上げて先程の問い掛けを繰り返した。
「でも本当、なんで早くても一人じゃダメなんですか?」
不満げな表情の新八に、銀時は苦笑を浮かべると、
「だってさ、お前触られやすそうじゃん?」
そう言い、ポンと新八の肩へと自分の手を乗せた。
「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」
「・・・あれ?ちょ、なんで三人してそんな目で銀さんの事見てんの?」
新八は元々だが、つい先程まで怒鳴りあっていた土方達までもが
何故か動きを止め、銀時へと視線を注いでいた。
しかもみんな、漏れなく温度の低い視線だ。
「だってそうじゃね?新八ってめっちゃ攫われやすそうじゃね?
銀さん、めっちゃ心配なんですけどぉぉぉ!!!?」
訳が判らずキョドル銀時に、土方が呆れたように溜息を吐いた。
「いやそうかもしれねぇけどな?まず自分の発言を心配しろや」
そして沖田が新八の肩に乗っていた銀時の手をそっと退ける。
「旦那ぁ、一応本音は隠しましょうぜィ?
さすがに素で言い間違えられちゃあフォローも入れられやせん」
「え?何、何?この生温い雰囲気!!
なんかものっそい居た堪れないんですけどぉぉぉぉ!!!?」
何か変な事言った!?と新八の肩を再度掴み、問い掛けようとした
銀時だったが、すっとその身を離され、空振りへと終わる。
そして少し銀時との距離を開けると、新八はやんわりと口元を上げると、
「じゃ、そろそろ帰りますね、土方さん、沖田さん、銀さん
お休みなさい」
軽く頭を下げた。
それに目を丸くする銀時。
「は?いやいや送ってくって、新ぱ・・・」
「結構です」
銀時の申し出を笑顔のまま交わすと、新八はそのまま歩き出そうとする。
それに慌てて駆け寄り、銀時は新八の腕へと手を伸ばした。
「だってお前、もし触られたらどうする・・・」
「うっせぇよ!!
何ソレ、既にその危機なんですけどぉぉ!!!?
統一しろよ、ソコは!!さっき普通に言えてたじゃん!!!」
「・・・無意識に言ってんじゃねぇのか?それ」
ポツリと土方が呟くが、言い争ってる二人には届かない。
真っ赤な顔をして怒鳴る新八に、銀時はますます首を傾げる。
「ってかさ~、なんでそんなに怒ってんの?
触られやすそうっての、恥ずかしかった?
仕方ないじゃん、お前触られやすそうな顔してんだもん」
「連呼してんじゃねぇよ。
ってかどんな顔じゃ、
ボケェェェェェ!!!!!!」
真面目な顔でそう言ってくる銀時の頭を叩き、新八は近くに居た
沖田の手を取ると、土方へと視線を向けた。
「土方さん、沖田さん借りますから!!」
今日は沖田さんに送ってもらいます!!そう言う新八の迫力に負け、
思わず土方が頷くと、鼻息も荒く、沖田を引きずるようにして
新八は歩いていってしまった。
遠くなっていく二人に、何やら夜更かしの相談なんかも聞こえてきたが
一度了承してしまった為何も言えず、土方は深く息を吐いた。
その隣で銀時が叩かれた頭を摩りながら、二人の後姿を
見送る。
「あ~あ、行っちまったよ、おい」
いいのかよ、アレ。と銀時に横目で見られ、土方はヒクリと頬を
引き攣らせた。
「誰のせいだと思ってやがる、あぁ!?」
「部下に尊敬されてねぇヤツのせい。
・・・あ~ったく、仕方ねぇなぁ」
その言葉に怒りを顕にする土方を無視し、銀時はゆっくりとした足取りで
動き出した。
それを訝しげに見る土方。
「おい、何処行く気だ?」
銀時が向おうとしている方向は万事屋とは反対方向である。
それは今しがた新八達が消えていった方向でもあって・・・
土方の問い掛けに、銀時は顔だけを軽く向けると、
「やっぱアレだからね。
ちょっくら触ってくるわ、新八」
そう言ってヒラヒラと片手を振り、そのまま歩いていった。
土方はその後姿を呆れた表情で見送り、新しいタバコに火をつけた。
「だから間違ってるってぇの・・・て、本当に間違ってるのか??
アレ??ってか間違ってても
間違えて無くても犯罪じゃね!?」
首を傾げる土方の耳に、遠くの方から新八の叫び声と大きな衝撃音、
そして何処か楽しげな沖田の声が入ってきた気がしたが、
気のせいだという事にして、少々疲れた体を引きずり、仕事へと戻っていった。
―――――――その後、不審な人物が道端で寝転がっていると
真選組に一報が入るのだが、それはまた別のお話・・・
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普通に言い間違えそうです。
でもある意味間違いでもない(おいι)