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そろそろ夕飯の支度でもしようと、ソファから腰を上げた所で
玄関の開く音と、神楽ちゃんの元気な声が聞こえてきた。
「ただいまヨ~」
「お帰り、神楽ちゃん」
まず自分の靴を脱ぎ、次に定春の足を拭いている神楽ちゃんに
声を掛けると、僕はそのまま台所へと向った。
・・・て、その前に・・
「ちゃんとうがいと手洗いするんだよ~」
と、一応釘を刺しておく。
判ってるネ、一々言わなくてもヨロシ。と、神楽ちゃんから返って来るが、
やっぱり言っとかないとね。
さて、神楽ちゃんも帰って来たことだし、さっさと作っちゃお。
銀さんはまだだけど、その内帰ってくるよね。
まず自分の手を洗いながら、作る順番を頭に描く。
ま、作るって言っても下拵えはもうやってあるしね。
しかもそんなに考えるほど、おかずないしね。
ちょっと虚しくなるのでそれ以上考えないようにする。
すると、いつの間に来たのか、不意に後ろから腰に抱きつかれて少し驚く。
振り返ってみれば、ソコには何だか楽しげな神楽ちゃんが。
「どうしたの?まだ何にも出来てないよ?」
そう言うと神楽ちゃんは そうじゃないネ。 と少しだけ口を尖らし、
僕の腰に巻きつけてる腕に力を込めてきた。
・・・ごめん、神楽ちゃん、真剣に痛いから、それ。
ギブギブ!!と叫ぶと、満足したのか漸く神楽ちゃんが力を緩めてくれた。
そしてまた楽しげな表情へと戻る。
「新八、新八!クイズするネ」
「クイズ?」
どうやら力を緩めたものの離す気はないらしい神楽ちゃんをそのままにして、
僕は夕飯作りへと戻り、耳だけを傾ける。
なんでも今日は大人しく友達とクイズを出し合って遊んだらしい。
・・・まぁ罰ゲームは何時もの如き・・・だったらしいけど。
それを僕にもお裾分けしてくれるそうだ。
神楽ちゃんの楽しそうな雰囲気に、思わず僕もホッコリ笑顔になる。
「で?どんな問題?」
言っとくけど夕飯作ってる最中だから、罰ゲームはなしね。そう言うと
神楽ちゃんは 仕方ないネ。 と笑い、クイズを出して来くれた。
何問か出され、どうにか間違わずに答えていく。
そして、そろそろ夕飯も出来上がろうかという時に、
最後の問題ネ。 にししと笑って神楽ちゃんがあるクイズを出した。
「『遺体』と『死体』どっちが男アルカ?」
「へ?」
出された問題にキョトンとしていると、新八にはちょっと難しいネ。と
フフンと笑われ、僕は一旦手を止めて真剣に考えてみる。
・・・なんだろう、なんか言葉でも掛けられてるのかな?
だが、幾ら考えても判らず、僕は降参とばかりに両手を上げた。
「ダ~メ、全然判んないや。どっちが男なの?」
「やっぱり新八はダメガネネ。仕方ない、グラさんが教えて差し上げるヨ。
あのね、『死体』が男アル。」
自慢げに答えを教えてくれる神楽ちゃんだけど、なんでそうなのかが
全く判らない。
「なんで男が『死体』なの?」
料理を盛り付けながらそう聞くと、後ろで一瞬首を傾げる気配がした。
あれ?まさか知らないの?
そう思っていると、神楽ちゃんが何かを思い出しながら
ポツポツと説明をしてくれた。
「えっと・・・女は『いたい』ネ。でも男は『したい』ネ。
だから『死体』が男ヨ」
でも何が痛くてしたいアルカ?そう聞いてくる神楽ちゃんに、
一瞬思考が止まる。
あの・・・それってつまりあの・・・・
嫌な汗がじんわりと出てくる中、どう言ったものか・・・とグルグル
していると、玄関が開く音が耳に入ってきた。
それと、ダルそうに帰りを告げてくる銀さんの声。
た、助かった~。
ほっとしつつ、後ろに居る神楽ちゃんを振り返る。
「銀さん帰ってきたね。夕飯も出来たし、ご飯にしよっか」
ちょっと口元が引き攣ってたかもしれないけど仕方ない。
こう言う話題は苦手なんだよ、僕!!
自分が判る限り、神楽ちゃんの疑問には答えてあげたいけど
これは無理。荷が重いから、僕には!!
なんとか話を変えつつ、料理を持って行くよう神楽ちゃんに
頼むと、快く引き受けてくれた。
良かった、どうやら話を変える事が出来たみたいだ。
安心して料理を居間へと持っていく神楽ちゃんを見送り、僕はお味噌汁を
よそう。
だけとびっくりしたな~、そんなクイズ、誰が出すんだろう。
最近の子達って凄いな~。なんて思わず考えていると、
居間の方から神楽ちゃん達の声が聞こえてきた。
どうやら銀さんに手伝いを褒められているらしい。
言葉は悪いけどね、本当素直な人達じゃないよな。
二人の会話にクスリと笑っていると、
「そう言えば銀ちゃん、なんで『したい』が男で『いたい』が女ネ」
と、神楽ちゃんの声が聞こえ、僕は再び思考停止となった。
「あ~?なんだそりゃ」
「今日やったクイズネ。『遺体』と『死体』男はどっち?って言うので
『死体』が男アルけど、なんでそうなるネ」
心底不思議そうな神楽ちゃんの声に、銀さんの あ~、そういうのね。と
ダルそうな声が続いた。
ってかまだあの疑問を忘れてなかったのか、神楽ちゃんはぁぁ!
僕は味噌汁をその場に置いて、居間に居る二人の下へと向った。
また早い、早いからね、そういう話題は!!
空気読めよ、コノヤロー!!と祈りながらも、銀さんの事だから
何も考えず答えてしまいそうだ・・・と焦る。
居間に着き、止めようと銀さんの名前を呼ぼうとする前に、
銀さんはかったるそうに頭を掻きながら神楽ちゃんに答えていた。
「それはアレだ。間違ってるぞ?」
・・・と。
その言葉に、神楽ちゃんは首を傾げ、僕は目を丸くする。
・・・あれ?銀さん、空気読んだ?てか逃げた?
どっちにしろちょっとマトモな人に見えるよ、銀さん!!
ホッと胸を撫で下ろし、これなら銀さんに任せといてもいいかな。
と、再び台所へ戻る事にする。
「なんでネ。答えはこれで合ってるヨ」
納得いかないらしい神楽ちゃんの声が聞こえる。
そりゃ~そうだよね~。友達とやった時は、理由は判らなくても
それが答えだったんだもんね。
でも銀さん、ここは誤魔化してくださいよ?
その無駄に上手い口先を心置きなく使ってくださいよ?
そう思っていると、銀さんの声が聞こえてきた。
「なんでも何も違ってんだから仕方ねぇだろ。いいか?万事屋においては
『したい』が銀さんで『いたい』が新八だ」
「って何言ってんだコノヤロー!!」
銀さんの言葉に、僕は光の速さで持って居間へと舞い戻り
手にしていたお玉を力いっぱいぶん投げた。
どうやらそれは銀さんの額に命中したらしい。
酷くいい音を発して、一瞬銀さんの頭が後ろへと飛んだ。
・・・が、あまり威力はなかったらしい。
いってぇなぁ。なんて言いながら、銀さんはすぐに頭を元に戻した。
そして少し赤くなった額を摩りながら、
「何すんだよ、新八。あ、あれか?新ちゃんも『したい』の方か?
そうだよな~、銀さん頑張ってるから
『いたい』はねぇよなぁ」
等と一人納得しながら頷いた。
「うっせぇよ!!黙れよもう!!!」
なんで僕、お玉持ってたんだろう。
包丁持ってれば良かったのに!!
等と悔やんでいると、神楽ちゃんがポンと手を叩くのが見えた。
・・・え?何納得してんの、神楽ちゃん。
「成る程、判ったネ。
そう言う意味だったアルカ」
「ってどう言う意味ぃぃぃ!!!?
ちょ、神楽ちゃん、何をどう判っちゃいましたか!?」
「何ってアレだよなぁ、俺達の夜の営み・・・」
「黙っとけやコラァァァ!!!
なんでこう言う時だけ素直ぉぉぉぉ!!!?」
「新八~、ご飯食べるネ。私、お腹すいたヨ」
「いや、なんでそんなすっきりしてんの!?
なんで謎は全て解けた的表情してんのぉぉぉ!!?
やめてくんない?あれで理解するの
やめてくなんいぃぃ!!」
その後、真っ赤になった新八によって
『万事屋内、クイズ禁止』令が出されたのは言うまでもなく、
暫くの間、お泊りもなかったのはもっと言うまでもないのであった。
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娘は知らないうちに成長していきます(おいι)