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※公平も時と場合による。のちょっと続きになってます。※
朝日がゆっくりと顔を出した頃、その日万事屋に泊まった新八が
ゆっくりと閉じていた目を開けた。
未だ眠そうな目を数回擦ると、欠伸をしながら体を起こし、視線を隣の
布団へと向けた。
何時もならばそこには未だ夢の中に行ったっきりの銀時の姿が
ある筈なのだが、今はなく、昨夜その布団の主が帰ってこなかった事を
告げていた。
「朝帰りか・・・それとも玄関辺りで倒れているのか・・・」
昨夜、ちょっと出掛けてくる・・・と言っていそいそと出掛けた銀時を
思い出す。
原付の鍵を持っていかなかった事から、呑みに行ったのは確実だ。
とりあえず人様に迷惑掛けてなきゃいいけど・・・ってか
僕にも迷惑掛けなきゃもっといいんだけど・・・
小さく溜息を吐いて自分の布団を畳み、押入れへと仕舞う。
銀時の分はそのままだ。
多分帰って来た瞬間、布団へと倒れこむ羽目になるだろう。
これじゃ~今日も仕事はないな。
タイムサービスでいいのがありますように!!と願いながら着替え、
居間へと足を向けた・・・が、直ぐにその足を止め、びくりと体を
振るわせた。
何故なら薄暗い居間のソファに誰かがボーっと座っていたからだ。
「って何してんですか!銀さん!!」
よく見ればそれは銀時で、新八はほっと胸を撫で下ろすものの
驚かされたという気持ちから、少し声を尖らせる。
その声に、銀時がのそりと顔を上げた。
「新八・・・お前・・・」
「なんですか?」
何かを問い掛けるように口を開く銀時に、新八はコトリと首を傾げる。
どうやらそれ程酔っている訳ではない様だ。
だが、言い難そうに視線をあちこちへと飛ばす様に、新八はますます
首を傾げる。
とりあえず少し待ってみるものの、中々はっきりと言葉に出そうとしない
ばかりか、ガクリと肩を落としてしまった銀時に、
新八は小さく溜息を吐くと とりあえず顔洗ってきます。 と
その場を後にした。
朝と言うのは何かと忙しいのだ。
サカサカ顔を洗い、歯を磨き、序に神楽も起こす。
そして台所へと行くと、薬缶に火を掛けお湯を沸かす。
その間、冷蔵庫から食材を出し、炊飯器をチェックしながら
先程の銀時の姿を思い浮かべた。
なんだろう、銀さん。
なんか物凄く言い難そうだったけど・・・
まさかお金全部使っちゃったとか!?
ありえる可能性に、新八は一瞬血の気が引いてしまう。
・・・いやいや、大丈夫。
銀さん、あぁ見えて奢らせるの上手いし、そんな命の糸を自ら断ち切るような
真似しない・・・とも言い切れないんだけどね!!!
もしそうだったらどうしよう!!と青くなる新八の前で、薬缶が
お湯が沸いた事を告げた。
それを合図に、まずは銀時に話を聞いてみなければ・・・と急須にお湯を入れ、
三人分の湯呑みを持って居間へと戻っていく。
「あ、神楽ちゃんお早う。ちゃんと顔洗った?」
戻れば銀時の向かい側のソファに神楽が座っていて、新八の挨拶に
眠そうに手を上げて答えを返してくる。
それに笑顔を返し、それぞれの湯飲みにお茶を注いでいく。
湯呑みを渡す時にちらりと銀時を見るが、まだ肩を落としていて
何かを話す気配はない。
なら先に朝ごはんを作ってこようか・・・と、新八がそのまま台所へ戻ろうと
した時、漸く銀時が言葉を発した。
「新八・・・それに神楽」
「なんですか?銀さん」
呼ばれて不思議そうに見返すと、何かの覚悟が出来たのか、銀時は
自分の膝をパン!と叩くと、力の篭った目で神楽と、その隣に腰を降ろした
新八を見据えた。
「どうしたネ、銀ちゃん」
「何かあったんですか?」
銀時の何時にない真面目な雰囲気に、神楽も新八も少しだけ心配になる。
そんな二人に銀時はコクリと唾を飲み込むと、
「お前ら、昨日何処にいた?」
と、問い掛けてきた。
「昨日?」
不思議そうに問い返せば、重々しい雰囲気で銀時が頷く。
「と言うか昨日何してた?」
「何って・・・」
そう言って神楽と新八は顔を見合わせる。
昨日は二人で買い物に行って、その帰りに公園に寄り、偶々そこで昼寝
していた沖田と軽く神楽ちゃんがバトルして・・・
昨日の自分達の行動を思い出し、コトリと首を傾げた。
別に変わったことはしていない。何時も通りだ。
そう言うと銀時はバンッ!とテーブルを叩き、その体を乗り出した。
「何時も通り!?ゴリに抱っこされる事が日常的なんですか
お前らはぁぁぁぁぁ!!!!」
「「・・・は?」」
言われた言葉に、神楽と新八はポカンと口を開ける。
が、それが気に入らなかったらしい。銀時は荒々しく体を戻すと、
腕を組んで顔を背けた。
「言っとくけどなぁ、銀さん、全部知ってるんだからな!
丁度お前等がゴリラに抱っこしてもらってる時ぃ?
長谷川さんが居合わせたらしくてぇ?
ものっそい楽しげにぃ?ほのぼの家族的みたいなぁ?
そんな感じだったらしいですねぇ、あぁ!!?」
銀さん、その時万事屋でお留守番だったんですけどぉ?そう恨めしげに
いう銀時に、二人は呆れた視線を投げる。
「・・・ってアンタ、昼寝してただけじゃないですか、その時」
「そうネ。誘ったけど着いて来なかったのは銀ちゃんネ」
「うっせぇよ!!だからってなぁ、なんで抱っこになるんですかって
話だよ!!そう言うのは銀さんの役割だろうが!?」
なんでゴリ!?と怒りを顕にする銀時に、
「いや、銀さんの役割でもないでしょ」
と冷静に突っ込むが、銀時の怒りは収まらないらしい。
二人に向って上半身を乗り出してきた。
「い~や、役割ですぅ!
ってかほのぼの家族は坂田家の別名ですぅ。
勝手に他のヤツラを入れないで下さいぃぃ。
勿論ペットとしても不可だあんなゴリラァァァ!!!
大体そんな無防備に抱っこなんてされてんじゃありません!
男は皆狼だって言ってんだろうがぁぁ!!!!」
「アレは狼じゃないネ、ゴリヨ、ゴリ」
「もっと悪いじゃねぇかぁぁぁ!!!
ふっざけんなよ、なんで俺もやってねぇような事をゴリが
やってんだよ!おかしくね?それっておかしくね?」
「アンタの頭がおかしいよ、本当」
「おかしくねぇよ!!
長谷川さんはおかしそうに話してたけどな?
微笑ましい的雰囲気で話してたけどな?
銀さん、マジ泣きそうだったから。
本気で泣き入りそうだったから!!」
切々と語りだす銀時に、新八と神楽は深々と溜息を零す。
なんなんだろうか、この大人は。
思わず心の底からそんな事を思ってしまう。
自分達の事を大切に思ってくれる事は嬉しいが、
まさかこんな事で朝の貴重な時間を潰されてしまうとは・・・
やってられないとばかりに新八はソファから立ち上がると、
朝食を作るべく台所へと向おうとした。
それに銀時が慌てて手を伸ばす。
「ちょ、待てって!まだ話は終わってねぇ・・」
「はいはい、判ったネ。」
そう言って神楽が銀時の伸ばした手を掴み、そのまま自分の下へと
引っ張る。そしてヒョイッと銀時の体を上へと放り投げた。
「はい、銀ちゃん、高い高~いネ」
「って俺じゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
銀時の叫び声と、何かが固い物に当たる音を聞きながら、新八は
さっさと朝食の献立へと意識を変えることにしたのであった。
**********************
蒼さん、坂田はやっぱり坂田だったよ(笑)
で、只今この坂田を幸せにするかどうか考え中。
・・・やっぱり放置が一番ですか?(おいι)
上のヤツラに呼び出された帰り、偶には歩こう・・・と近藤が言い、共に
歩いていた土方であったが、とある公園の所まで来て、その足が止まった。
「またアイツラ・・・っ!」
「ん?どうした、トシ」
剣呑な表情で公園内を見詰める土方に、隣を歩いていた近藤も止まる。
そして土方の視線を追っていけば・・・
「あぁ、また派手にやってるなぁ」
土方の表情の原因を見つけてしまい、思わず苦笑する。
二人の視線の先、そこには怒鳴り声を撒き散らしながら、大暴れという言葉が
可愛く思えてしまう程の乱闘をしている見慣れた二人、神楽と沖田。
そしてそれを少し離れた所で見守っている新八の姿が。
「ったく、何やってやがんだ、アイツラは!!」
大体総悟は巡察の時間じゃなかったのか!?と息を荒くして公園内へと
入っていく土方に、近藤も続いた。
どうやら公園内にはその三人以外いないようだ。
ざっと見渡し、被害状況を確認する。
すると、人の気配に気付いたのか、それまで見守っていた新八がクルリと
顔を向け、次に慌てたようにこちらへと小走りに寄って来た。
「あ、すみません!今ここに入ってくると危なっ!!」
どうやら新八は、ただ見守っていただけではなく、被害を大きく
しない為に地道に頑張っていたらしい。
・・・が、何かに足を取られたようで、途中で盛大に転んでしまった。
近藤と土方は足を早め、新八の元へと急いだ。
「いてててて・・・あ、危ないですから・・・て、近藤さんと土方さん」
なら大丈夫か~。慌てて顔を上げ、ずり落ちた眼鏡を掛け直しながら
そう注意する新八であったが、入ってきたのが見知った人物だった為、
ほ~っと肩の力を抜いた。
「おい、大丈夫かよ」
そう言って倒れこんでいる新八を見れば、何故かそこには浅いものではあるが穴が
空いていて、一瞬土方の眉が顰められる。
ここの設備はどうなってんだ。と、公園に相応しくないその穴を見詰めるが、
直ぐにその原因に思い当たり、同じように自分の転んだ原因を
見ていた新八と共に、深い息を吐いた。
近藤はそんな二人に苦笑すると、未だ倒れこんでいる新八へと手を伸ばす。
「新八君も大変だな」
近藤の言葉に、乾いた笑いを返しながら手を借りようとした新八だったが、
その手は空振りへと終わってしまう。
新八が不思議に思う暇も無く、近藤は新八の脇へと両手を差し入れると、
そのまま軽々と抱き上げてしまった。
「・・・へ?」
「怪我はないかい?」
まるで子供のように新八を抱き上げたまま問い掛けてくる近藤に、
新八は目を丸くしながらも コクンと頷いた。
そして何時もとは全く違う視界に漸く自分が置かれている状態に
気付き、顔を赤らめながら慌てて手足をバタつかせた。
それを不思議そうに見る近藤に、土方は一つ息を吐くと、軽く近藤の肩を
叩いた。
「近藤さん・・・いいからもう降ろしてやれ」
「ん?あぁ、そうか。」
はい、悪かったね。そう言って笑い、静かに新八をその場に立たせた。
「いえ、そんな・・・えっと、有難うございます」
それに恥ずかしそうにしながらも、きちんと頭を下げる新八。
その後ろで あ~!! と言う神楽のおおきな声が響いた。
何時の間に戦闘が終了したのだろうか、見れば神楽と沖田の二人が
こちらへと走り寄って来ていた。
「ずるいネ、新八!!私も高い高いして欲しいヨ!!」
「俺も土方さんに他界、他界して欲しいでさァ」
「おい、ちょっと待て総悟。
なんか字面に妙な呪いを感じるんだが?」
「はい、土方さん、他界、他界~」
「手を俺の首に
伸ばすんじゃねぇぇぇえ!!!!!
何ソレ、締める気満々じゃねぇかぁぁぁぁ!!!」
両手を伸ばしてくる沖田を振り払い、刀へと手を伸ばす土方。
それを諌めようと近藤が声を掛けようとした時、不意に目の前に
神楽が姿を現した。
そして近藤へと両手を伸ばしてくる。
近藤は困ったようにちらりと土方達へと視線を飛ばすと、
既にそこには新八の姿があり、二人の間に入ってくれているようだった。
安心していると、焦れた様に神楽が手を振りながら近藤の名を呼ぶ。
「早くするネ、ゴリ。女の誘いを断るもんじゃねーヨ」
「ってゴリって名前じゃないからね!?と言うか女の子が
そう言う事言っちゃダメでしょうが!!」
そう言いながらも仕方ない・・・と神楽の両脇に手を入れ、
先程の新八の様に高く抱き上げる。
「お~!!凄いネ、視線が高いヨ!!人がまるでゴミのようネ!!」
「いや、そこまで高くないからね」
神楽の喜びようをやんわりと笑って見詰めていると、喧嘩が終わったのか
憮然とした土方と、飄々とした沖田、それに苦笑を浮かべた新八が
直ぐ傍へと来ていた。
「すみません、近藤さん」
「いやいや、これくらい軽いもんだよ。
なんなら新八クンももう一回するかい?」
そう聞くと新八は頬を微かに染めながら一瞬止まり、慌てて首を横に振った。
だが、少しだけ空いたその間に、近藤はクスリと笑みを深める。
「さすが近藤さん、伊達にゴリラの称号を持ってないでさァ。」
「いや、ゴリラじゃないからね。そんな称号、持ってないから。
ってか貰っても嬉しくないから、そんな称号!!」
「でも本当、力ありますよね。僕だって軽々でしたもん」
未だ降りようとしない神楽を抱き上げたままの近藤を、
新八と沖田は感心した目で見詰め、小さく頷いた。
「全く、土方さんには出来ない芸当でさァ
マヨネーズを最後の最後まで搾り出すぐらいしか力、ねぇからねィ」
「あぁ?んだとコラ、マヨパワー舐めんなよ?」
沖田の言葉に、土方はヒクリと頬を引き攣らせると オラ、こっち来い!! と
神楽へと手を伸ばした。
その手を神楽は一瞬見たものの、直ぐにフイッと顔を逸らす。
「やぁヨ。ゴリの方が背が高いネ。そっちに行ったら低くなるヨ」
「おいおい見たかィ、新八。思いっきり振られてまさァ。
しかも相手はあのチャイナだぜィ。女っ気ないと思ってたら
そう言う趣味だったなんて・・・俺は恥ずかしくって見てらんねぇでさァ
目の前から速やかに消えてくれよ、土方コノヤロー」
「おいぃぃぃ!!!!何いい加減な事言ってやがんだぁぁ!!!!
ってか近藤さんも何気に距離を置くんじゃねぇよ!!!
今までの会話、
聞こえてましたかぁぁぁ!!!?
大体テメーが言い出した事だろうが!総悟!!」
ギロッと新八の肩に凭れ、こちらをニヤニヤと見詰めている沖田に
そう怒鳴るが、言われた方は何処吹く風。
軽く肩を竦めると、
「俺は何にも言ってねぇですぜィ。土方さんが自主的に
チャイナの体に手を伸ばしただけでさァ」
やらしい男でさァ、ねぇ?と、隣の新八へと同意を求めた。
それに新八は乾いた笑いしか返せない。
土方は少しの間怒りに体を震わせていたが、これ以上何を言っても
自分がムカツクだけだ・・・と悟り、大きく息を吸い込んだ。
「ま、でもアレだな。俺は兎も角、お前には無理そうだな」
あれは。そう言ってクイッと顎で未だに神楽を抱き上げている
近藤を示す。
それに沖田は深く息を吐き、頭を緩く振ると、
「当たり前でさァ。俺は抱き上げるより
跪かせる方が得意なんでねィ。」
と告げ、ニヤリと口元を上げた。
「その発言の方がよっぽどやらしいんですけどぉぉぉぉ!!!」
何得意げに言ってんのぉぉ!!?思わず土方がそう怒鳴るが、
「あ、近藤さん、もう一回新八を上げて下せィ」
あっさりと無視され、沖田は新八を連れて近藤の元へと行ってしまった。
それに焦ったのは新八。
捕まれた手を振り払おうと、懸命に振る。
「ちょ!僕はいいですって!!」
なんで僕なんですか!!と、恥ずかしさから頬を赤くして言う新八に、
沖田は再びニヤリと笑いを零す。
「何言ってんでィ。実はちょっとやって貰いたかっただろ?
素直になんなせィ。それで羞恥に悶えまくれィ」
そう言って神楽を降ろした近藤の前へと新八を押し出す。
「何その一方的なプレイ!!!
第一近藤さんも疲れますって!」
「いや、大丈夫だよ?」
はい、おいで~。とにこやかに笑って新八へと手を差し出す近藤。
その姿に、神楽が感嘆の息を零す。
「おぉ~さすがゴリネ。空気読んでるアル」
「いや、読んでねぇよ。
全然読めてねぇよぉぉぉお!!!
ちょ、本当マジでいいですからぁぁぁぁあ!!!!」
逃げようとするが後ろからがっちりと沖田が肩を捕まえており、
身動きできない。
それに近藤が明るい笑い声を上げ、そのまま抱き上げた。
「ぎゃぁぁぁぁあ!!!お、降ろしてくださいぃぃい!!」
「ははは、新八君は遠慮深いなぁ」
「さすが近藤さん、小娘一人上げられなかったどっかのヤローとは
違いまさァ」
「まだ言うか、このクソガキ!!おい、新八!
ちょっとこっち来い!」
「い、いやですぅぅぅぅぅ!!!!」
沖田の言葉に土方が青筋を立て、今度は新八へと手を伸ばすが、
新八は恥ずかしさのあまりそれ所ではない。
涙目になりながら、必死に頭を振った。
それを見、沖田と神楽がコソコソと話し出す。
「おい、見たかィ、チャイナ。あのヤロー、今度は新八狙いでさァ。」
「本当ネ、子供の敵ヨ。暫く私に近付かないで」
「って丸っきり聞こえまくってんですけどぉぉぉお!!!?」
違うって言ってんだろうがぁあ!!と、土方はとうとう刀を抜き、
沖田に向き合うが、それよりも一瞬先に沖田と神楽が走り出す。
「とうとう力に訴えてきやがったぜィ。
タスケテ~、穢サレルゥゥゥウ」
「大人って汚いネ!獣ヨ~!!!」
「ちょ、テメー等ぁぁぁぁ!!!
滅多な事言ってんじゃねよ!!!!!
頼むから口を噤めぇぇぇぇ!!!!!」
始まってしまった壮絶な追いかけっこを、近藤は新八を抱き上げたまま
微笑ましげに見詰めた。
「うんうん、仲が良いってのはいい事だなぁ」
「・・・近藤さんってホント、色々と大らかですよね」
「いや~、そうかなぁ~」
「・・・ってかそろそろ降ろしてください」
「ん?もういいのかい?」
「はい、本当にいいです」
新八の妙に力強い言葉に、近藤は笑って手を降ろすと、そのまま
新八の頭をくしゃりと撫でた。
「こんな事なら何時でも言ってくれ、お安い御用だから」
そう言って柔らかい笑みを浮かべる近藤に、新八は恥ずかしさと
照れ臭さが混じった微妙な顔を浮かべる。
確かに、ちょっと子供の時の事を思い出して嬉しかったりもした。
いい人だな~。とも思う。
けどやっぱり・・・
「なら近藤さん、今度は沖田さんにしてあげて下さいよ。
僕や神楽ちゃんだけだとズルイでしょ?」
恥ずかしかったんだぞ、コノヤロー!!!
と、沖田にも同じ思いをして貰うことにした。
ニッコリと笑ってそう言えば、近藤はポンと手を叩き、
「あぁ、そう言えばそうだな。おーい、総悟~」
と言って、未だ追いかけっこを続けている沖田達へと手招きした。
―――――沖田の珍しい声が園内に響き渡るまで、後少し・・・
********************
近藤さんは子煩悩そうですv
※文通編最中の話となっております※
※いつも以上にグダグダになっております※
土方が書いた手紙を持ち、新八が足早に部屋を出て行った後、
残された三人は少しだけ顔を引き攣らせていた。
原因は土方が消し忘れた近藤の文章。
「・・・あ~あ、やっちゃったなぁ、おい」
ボソリと出された銀時の言葉に、土方の眉がピクリと上がる。
「可哀想にな~新八。これでもうダメだろうなぁ」
そしたら泣いちゃうかな~、泣いちゃうだろうなぁ。肩を竦め、
溜息を吐きながら言葉を吐き出す銀時に、土方は大きくタバコを吸うと、
「アレは・・・アレだ。テメーへのフォローだ」
だから泣いたらテメーのせいな。そう言って銀時に向けて煙を
吐き出した。
それを手で払いのけながら、銀時が眉間に皺を寄せる。
「あぁ!?なんで俺のせいなんだよ。ってか俺へのフォローってなんだ!!
そんな事頼んでないんですけどぉぉぉ!?
寧ろテメーが無意識に消さなかったんじゃねぇのか!?
よくやった!!」
「んな訳ねぇだろ!!!
大体なぁ、頼んでねぇけど
オーラがバリバリだったんだよ!!
潰してくれオーラが出まくってんだよ、テメーは!!!
ってか礼を言うなぁぁぁ!!!」
互いの襟を掴み、睨みあう二人に、近藤が慌てて間に入ってくる。
「まぁまぁ落ち着け、二人共。仕方ないだろう、もう新八君は
手紙を出しに行ってしまったんだから。
なんなら今から追いかけてみるか?」
まだ間に合うかもしれないぞ。そう問い掛ける近藤に、銀時と土方は
一瞬目を合わせると、
「「・・・いや、それはいい」」
声を合わせて答え、大人しく互いの手を離すと元の位置へと戻っていった。
そんな二人に近藤は そうか? と答えると、座り直して
腕を組み、土方に視線を向けた。
「でもな?トシ。万事屋だって新八君の為に頑張っているぞ?
色々小細工はしてるみたいだが」
「その小細工が新八の為か
自分の為かは判らねぇがな」
「おいおい、ちょっといい加減な事言わないでくれますかぁ!?
俺は常に新八の事を考えてますぅぅ
銀さんの半分は新ちゃんの事で出来てる勢いですぅ」
「勝手に主成分にしてんじゃねぇよ!
切り離してやれよ、馬鹿が移んねぇうちに!!
ってかその割りに全然いい方向に行ってる気がしねぇけどなぁ?」
「それはテメーらのせいだろうがぁぁぁ!!!
本当、いい加減にしろよコノヤロー。
願ったり叶ったりじゃねぇか。」
「人のせいにすんな!!
ってかさっきから本音が見えてんだよ、
隠せよ、せめて!!」
再び怒鳴りあいを始めてしまった二人に、近藤は
苦笑を浮かべ、まぁいいか・・・と、止めるのを諦めてしまう。
そしてどんどん本気を出していく二人を、少し離れた所から眺めた。
「大体なぁ、真剣に考えてんなら近藤さんを引き入れてんじゃねぇよ!
ダメになるに確立大幅アップじゃねぇか!!」
「だから入れてやったんじねぇか!!
有難く思えやコノヤロー」
「あれ?なんか俺、酷い事言われてない?」
「いや大丈夫だ、テメーは最高にいい仕事をしてるさ、
グッジョブ、ゴリ」
ふと耳に入ってきた言葉に疑問を浮かべるものの、直ぐに銀時に
否定の言葉を返され、おまけにサムズアップまで送られて
近藤は素直に引き下がった。
それを見て土方が大きく息を吐き、髪をかき上げる。
「だがな、仕事をしねぇのは困るんだよ。
せめて時間外にやれ、時間外に」
「時間外ならいいのかよ!!
ってかそんなの構ってらんねぇんだよ。そんなの待ってたら
新八が自分で考えちまうかもしんねぇだろうが!!」
「んだとぉ?それぐらい自分で考えりゃいいじゃねぇか!
後で幾らでも握りつぶしてやんよ!
・・・てかそれでいいんじゃねぇか?ぶっちゃけ」
「いやいや、それで行き成り相手から手紙が来なくなったら
新ちゃん、可哀想じゃね?
未練、残しちゃいそうじゃね?」
「ようはソコかよ。
でも・・・そうだな~、それはちと困るな・・・」
腕を組み、今度は真剣に悩みだした二人に、近藤は小さく口元を上げた。
何だかんだ言っても真剣に新八君の事を心配してるんだなぁ、
幸せ者だなぁ、我が義弟は。
そう思い、軽く頷くと、今頃手紙を出しているだろう新八に、
これだけ皆真剣に考えてんだ、頑張れ、新八君。
と、一人素直なエールを送ったのであった。
***************
すみません~、本当すみません~!!!(土下座)
ついア○銀の新ちゃん祭りに色々暴走してしまいました~ι
「そう言やぁ新八、その手、どうした?」
放課後、何時ものように先生に手伝いを要請され、
とりあえず資料の整理をしていると、不意にそう声を掛けられた。
「・・・別になんでもないですよ。それより早く手ぇ動かして
下さいよ」
止まってますよ。頬杖を着いてこちらを見ている先生に
そう告げると、僕は机の上に揃えた資料を抱え上げようとし、
そのまま止まってしまった。
何故なら、先生に手を捕まれたから。
そのままグイッと引き寄せられ、僕達は机を挟んで急接近してしまう。
「先生・・・」
手伝えって言ったのに邪魔してどうすんですか。
ってかやる気あんのか、コノヤロー。
そう言う気持ちを込めて視線を送ってみるが、先生には届かないようだ。
掴んだ僕の手を自分の目の前へと持ってくると、繁々と
先程から気になっているだろう部分を見詰め始めた。
「昨日はなかったよな、これ。」
どったの?火傷みたいだけど。僕の手から視線を動かさず、そう問い掛けてくる
先生に、僕は少しだけ溜息を吐いた。
本当、変な所で目敏いんだから。
「ちょっと料理しててやっちゃったんです、昨日」
答えない限り先生は開放してくれないだろう。
僕は簡潔に答えて、手を振りほどこうとしたが、先生はまだしっかりと
手を掴んで離そうとしない。
それどころか・・・
「おいおい気を付けろよ~。お前の体はお前一人のモノじゃないんだよ?」
そう言うなり、僕の手の火傷をペロリと舐めた。
「ちょっ!!!何してんですか、アンタ!!!」
舐めた!!この人、人の手勝手に舐めたぁぁぁ!!!!
慌てて手を引っこ抜こうと力を込めるが、それ以上の力で
捕まれてる為、どうしようも出来ない。
焦る僕に先生はちらりと視線を向けると、
「ん~消毒消毒」
と、先程よりもねっとりと舌を這わせ、パクリと口を開けて
その部分を覆ってしまった。
が、その後も先生の口の中で舌は動いているようで、
火傷の部分の上を熱い何かが動いている感触が掌から伝わってきた。
目に見えない分、余計それが生々しく感じ、僕は大きく体を
震わせてしまう。
その反動で、折角集めた資料が机の上から流れ落ちてしまった。
けれど僕はそれ所では無いわけで。
「せ、先生っ!ホント、もうやめ・・・」
自然と震えてしまう腕の先で、先生は漸く視線を上げ、
ちゅっと最後に小さい音を立てて僕の手から口を離すと、
掴んだ手をそのままに、僕の方へと体を起こした。
「ごめんごめん、悪かったって」
だから泣くな。そう言うと、今度は僕の目元へと軽く唇を落とした。
それにビクリと体を震わせるが、先生は気にしないで
そのまま僕の首筋へと顔を移動させた。
「でもお前が火傷なんかするから悪いんだろ?」
俺はこんなに大切にしてんのにさ。そう言ってクスリと笑う先生に、
僕は一度唇を噛み締める。
何か・・・と言うか色々言ってやりたいが、
言葉が出てこない。
せめて・・・と擦り寄ってくる先生から体を離そうとするが、
それも上半身が少し離れただけで終わってしまう。
しかも先生、寄ってくるし!!
も~、なんなんだよ、一体!!
怒りなのかなんなのか、僕の頬がますます熱くなっていく中、
先生はクンッと鼻を鳴らした。
「ん~、なんか今日、甘い匂いすんね、新八」
その言葉に、僕の体は小さく震えた。
先生はそれに気付いたのか、酷く楽しげな声を僕の耳元に
送ってくる。
「何時もはこんな怪我、しないよな?後こんな甘い香りも・・・」
なぁ新八?そう問い掛けてくる先生の顔は見なくても判る。
きっと滅茶苦茶いい顔で笑ってんだ、
この人はぁぁぁぁ!!!!
何も言えず視線を下に向けると、視界の隅でやっぱり上がってる
先生の口元が見えた。
「で?昨日何作ったの?」
おまけに声、メッチャ嬉しそうだし!
判ってるだろ、絶対アンタなんか気付いてるだろ!!
僕は未だ捕まっている手をギュッと握り締めた。
チキショー、こうなったら一人で食べてやる!!
寧ろ目の前で貪り食ってやるぅぅぅぅ!!!!
カバンの中にあるカップケーキを思い浮かべ、僕はそう固く誓った。
お祝いの言葉だって言ってやるか、コノヤロー!!!
***********************
坂田誕生日話・3Z版
・・・考えてみれば、通常版も誰も祝いの言葉を
言ってねぇぇぇぇ!!!(笑)
「銀時?」
夕方、久しぶりに入った仕事を終え道を歩いていると、
不意に名前を呼ばれた。
振り返ってみれば見慣れた顔で、俺は一つ息を吐く。
それは呆れからだったのか、久しぶりの仕事に疲れたからだったのか、
それとも・・・
俺はその先を考えるのを放棄し、声を掛けてきたヅラに対して
軽く手を上げた。
「で?何をしてるんだ、お前は」
「何って・・・お前にたかってる」
あの後、渋るヅラを引きつれて近くの団子屋の軒先に腰を落ち着けた俺は、
ヅラの問い掛けに簡潔に答える。
勿論手の中には愛しの団子だ。
そんな俺をヅラは白けた目で見、無言で俺の頭を叩いた。
「ってぇ!何すんだテメー!!」
「馬鹿か、お前は。そんな事を聞いているんじゃない。
フラフラとこんな所で何をしているんだと聞いているんだ」
またパチンコか!?ヅラの言葉に俺は軽く隣にある足を蹴飛ばす。
「ばぁか。仕事だ、仕事」
そう答え、残っていた団子を口の中へと放り込んだ。
すると、酷く驚いたような声が隣から発せられた。
「銀時・・・お前熱でもあるのか!?」
「ある訳ねぇだろ!!ってなんで写メ撮ろうとしてやがんだコラァア!!
ってかなんで携帯ぃぃ!?
何処の女子高生気取りだコノヤロー!」
「最近持ったのだ。いいだろう、エリザベスと家族割りだぞ?」
自慢げに携帯を掲げているので、持っていた串を思いっきり
投げつけてやる。
どうやら上手い事刺さったようで、文句を言ってくるが無視だ、無視。
ってかどうやって契約しやがった、指名手配犯め。
俺だってなぁ、金さえあればとっくの昔に契約してんだよ。
家族割りをフルに活用しまくってやってんだよ。
江戸一番の仲良し家族、坂田家を舐めんなよ!?
そう言い、追加の団子を頼もうとした所で、横からヅラに
止められてしまう。
「なんだよ、けち臭ぇなぁ。別にいいだろ、団子の一皿や二十皿」
「良くないわ!!何処に行った、
その間の皿は!!!」
と言うか・・・そう言うとヅラは先程俺が投げつけた串を皿に戻し、
「ならばこんな所で油を売っている場合ではなかろう。
早く帰ったほうがいいのではないか?」
特に今日は。そう言って緩く口元を上げた。
ソレに対し、俺は小さく舌打ちをする。
「・・・覚えてたのかよ」
「いや、忘れていたな」
面白くなさそうに言う俺に、ヅラはシレっと答えると、
「だが昨日リーダー達と偶然会ってな。相談されたのだ」
お前の欲しいものは何か・・・と。そう言い、何処か嬉しそうに
笑って団子と一緒に頼んだお茶に口をつけた。
「お前の事だから欲しいのは常に糖分だろうが、
糖分はあげられないし・・・かと言って糖分以外欲しいものが
判らないし・・・と困っていたぞ?」
ヅラの言葉に、俺は へ~ と適当に返事を返すと後ろ手を付き、上へと
視線を向けた。
ってかそれ、糖分しか出てきてねぇじゃねぇか。
どんだけ俺=糖分の図式が設立されてんだよ、
間違ってはねぇけど。
少しだけムッとする俺の横で、ヅラは尚も言葉を続けた。
「だからせめてケーキと、何時もより豪華めに料理をするのだと
言っていたな、新八君は。ちなみにリーダーは肩叩き券を
プレゼントすると言って、止められていた」
その時の様子を思い出したのか、ヅラはクスリと笑みを零した。
よし、ナイス新八。
神楽に肩叩きなんぞされたら、
俺の誕生日が命日とドッキングする所だ。
そんなサプライズは心底遠慮する。
けど・・・そうか~、やっぱりそうか~・・・
俺は片手を挙げ、クシャリと自分の髪を掴んだ。
ヅラはソレと共に何を思い出したのか、顎に手を当て、
微かに首を傾げる。
「それと、仕事の予定も入ってないから、特別に一日ダラダラ
させてやる・・・とも言っていたのだが?」
「・・・急に入ったんだよ、仕事」
そう、急に入ったのだ、一人分。
だから今朝、さっさと仕事に出掛けたのだ。
慌てるアイツラを置いて。
「なら早く帰ったらどうだ?こんな所でグダグダしていないで」
もう仕事は終わったのだろう。と言うヅラに、うるせぇよ。と答える。
本当、うるせぇ。
いいだろうが、俺がどうしようと。
大体ここを何処だと思ってやがる、天下の甘味屋だぞ?
居座る気もたかる気も満々だってぇの!
すると、俺の考えが読めたのか、ヅラは深々と溜息を吐いた。
「全く・・・いい大人が何を照れてるのやら・・・」
「ばっ!なんで俺が照れなきゃいけねぇんだよ!!」
その言葉に、思わず俺はヅラへと顔を向けてしまった。
ヅラはそんな俺に呆れた視線を寄越し、
「その顔で言っても説得力はないな」
そう言ってまた一つ、溜息を零した。
俺はヅラの言葉にグッと息を吸うと、そのままカクリと肩を落とし、
両手で顔を覆った。
「・・・最悪だ、テメー」
普通こう言う場合は見て見ぬ振りするだろうが。そう文句を言うと、
「ウジウジしているお前が悪い」
と、キッパリと言われた。
クソ、一々はっきりと言いやがって。
仕方ねぇだろうが、慣れてねぇんだからよ、こう言うのは!!
だってお前、アレだぞ?
アイツラは内緒で頑張ってたらしいけどよ、
新八は、なんかちょっと前から全身に甘い匂い纏わせてたんだぞ!?
手には火傷のあとなんかあったんだぞ!?
菓子系なんて作った事、なさそうなのによぉ。
練習用のケーキ、どうしたんだって話だよ!
俺には糖分禁止させといて、自分はケーキな毎日ですかってんだ。
悔しいから甘い匂いの新ちゃんを食べさせてください。
ケーキがないなら、
甘い匂いの新ちゃんを食べれば
いいと思います!!
・・・て、やらなかったけどね、銀さん。
俺、超空気読めるから。
読めすぎて手、出せなかっただけだから。
へタレとかじゃ本当ないから。
で、神楽はよ、なんかやっぱコソコソやってんだよ。
新八に字、習ったりしてよ。
俺?勿論見ない振りよ。当たり前だろ?
銀さん、空気読める大人だから。
だって珍しい事もあるもんだ・・・って覗いたら、ものっそい嫌そうな目で
「見てんじゃねぇよクソ天パ」
って言われたからね!殺気、駄々漏れだったからね!!
あれ、空気よんでなかったら死んでたから、本当。
そんな感じで二人ともソワソワウキウキしててよ。
今日に近付けば近付くほど、それが増して行って?
そんな中で、俺はどんな態度でいればいいんですかって話だよ。
嬉しいやらこっ恥ずかしいやら・・・なんかもう判んなくなって
泣きそうになってきちゃったんだよ、バカヤロー。
俺は顔を覆った手で、前髪を勢い良くかき回した。
「・・・帰りたくねぇなぁ」
ポツリと零せば、ヅラに鼻で笑われた。
ヅラの癖に生意気な。と、睨みつけると呆れた視線を返された。
「だからそんな顔で言っても説得力ないと言ってるだろう。
ニヤけてるぞ、お前」
「あぁ!?俺、今テメーの事睨みつけてんですけどぉぉ!?」
日本語は正しく使ってくださ~い。そう言うが、ヅラの
意見は変わらないらしく、緩く首を振られる。
「確かに睨んでるし困ってるようでもあったがな・・・
ずっと嬉しそうだぞ、銀時。」
そう言って口元を上げ、ヅラは持っていた湯呑みを置いた。
「だが、そろそろ覚悟を決めたほうがいい」
ホラ。とヅラは視線を投げた。
つられてその視線を追えば、少し向こうに見慣れた頭が二つと大きな塊が一つ。
「どうやら待ち草臥れたらしいな」
クスリと笑われ、俺は小さく呻きながらガシガシと頭を掻いた。
「あ~、クソッ!!どうすんだよ、コレ!!」
ヤバクね?丸判りじゃね!?
頑張れよ、俺。
蘇れ、鉄壁のポーカーフェイスゥゥゥ!!!
頬を叩いたり、摩ったりして頑張っていると、バシンと力強く背中を
叩かれた。
その拍子に体が前に倒れ、僅かに腰が上がる。
「っなにすんだヅラァァァ!!!」
そのまま立ち上がり、振り返って叫べば ヅラじゃない!!と
お決まりの言葉が返って来るが、それも直ぐに終わる。
「そんな事よりさっさと行け、銀時。
無駄に足掻いてもそのダラケタ顔は治らん」
「ダラケタって何だ!?
さっきニヤけたツラって言ってませんでしたかぁ!?」
言い募るが、ヒラヒラと追い払うように手を振られてしまう。
「どっちも然程変わらんから安心しろ。
それに・・・そのままの方があの子達も喜ぶだろうよ」
「・・・うるせぇよ、馬ぁ鹿」
笑ってそう言われ、俺は舌打ちを打つとヅラに背を向けた。
見ればこちらに気付いたのか、見慣れた頭たちが向ってくるのが判った。
その光景に、やぱり少し泣きたくなって逃げ出したくなる。
だって仕方ないだろう、あれは俺が欲しかったものなのだ。
ずっと願っていたものなのだ。
一番、一番欲しかったものなのだ。
願ってたけれど、切望していたけれど、
まさか本当に手に入るとは思ってなかったものなのだ。
「祝い代わりにここは奢ってやるから行け」
背中に掛けられた言葉に、ショボイ祝いだな。と憎まれ口を叩いて
手を振り、俺はゆっくりと足を動かした。
ゆっくりゆっくり、せめてこの頬の熱がもう少し冷めるまで。
けれどそんな俺の願いも虚しく、俺の欲しかったモノ達は
スピードを上げてこちらへと向ってくる。
ホント、お子様な、お前ら。
もう少しでいいから空気読んでくれ。
どうしようもない大人の気持ちを察してくれ。
そんな切実な心情も読まれる事無く、俺のずっと欲しかったモノ達は
むず痒い言葉と共に勢い良く俺の元へと飛び込んできた。
判ったよ、判りましたよ!!
開き直ってやるよ、コンチキショー!!!
俺は飛び込んできたモノ達を力強く抱き締め、
幸せと言うものを満喫した。
・・・あ、やべ。ホント泣きそう。
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誕生日おめでとう、坂田コノヤロー!!!!