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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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「あ、ヅラアル」

買い物帰り、遊んできた神楽と丁度会った新八は、人通りの多い道を
並んで歩いていた。
そこに先程の神楽の声が聞こえ、少しだけ驚く。

「え、ドコ?」

どうも桂と言う人物は指名手配されていると言う事実を時折忘れるらしく、
普通に昼間の大通りを歩いていたり、万事屋に訪ねて来たりする。

最初の頃律儀に心配したりしたのだが、その後の真選組との攻防を
見ていると、そんなに心配しなくてもいいか・・・と思うようになった。

・・・て言うか、心配してたあの頃の自分に言ってあげたい。

心配するだけ無駄だ・・・と。

けれど、やっぱり気になってしまうのは自分の性分で、またこんな人の
多い所に!・・・と呆れながらも視線を流した。

が、桂の姿も、多分共に居るのであろうエリザベスの姿も見当たらない。
不思議に思っていると、隣に居た神楽にグイッと袖を引かれた。

「あれネ」

そう言って指差された所を見ると、そこは掲示板らしく、色々な張り紙が
貼られていた。
近寄って見てみると、確かに其処には桂の顔が・・・

「あぁ、手配書ね」

ドコで撮られたのか、桂の顔写真の下に、

『このツラ見たら真選組へ!!』

と書かれている。・・・って言うか、ツラって・・・
自ら柄の悪さをアピールしてどうすんだろ、あの人達。

乾いた笑いを零していると、不意に隣の神楽から不満そうな声が聞こえてきた。

「どうしたの、神楽ちゃん」

仮にも知り合いがこんな風に手配されてるのがイヤだったんだろうか。
そう思い聞いてみると、

「違うネ。ずるいアル、私もこんな風にポスター貼られたいネ」

・・・と言う事だったらしい。
いや、違うからね。ポスターとかそう言う穏やかなものじゃないから、コレ。

そう告げるものの納得いかないらしく、僕の持っている風呂敷包みに手を入れ、
ゴソゴソと漁ったかと思うとメモ用のペンを取り出し、
止める間もないままその手配書に何かを書き込んでしまった。

「ちょ、何してんの、神楽ちゃん!!」

「うるさいネ!歌舞伎町の女王である私を差置いて人気者になろうなんて
六年早いヨ!!

短っ!!何その妙に具体的な年数!!
ってかコレはそういうのじゃないから!」

遅れたものの何とかペンを取り返し、きちんと説明しようとした所で
後ろから聞きなれた声が掛けられた。

「なんでィ、そんなに手配書貼られたいなら遠慮する事ァねぇ。
今すぐそこら中に貼り散らかしてやるぜィ

振り返ればそこには黒い隊服に身を包んだ沖田の姿が。

「あ、沖田さん、こんにちは。ご苦労様です、巡察中・・・ではないですね

軽く頭を下げ挨拶をするが、その時視界に入った首元のアイマスクに
頬を引きつらせる。

・・・労った僕の一瞬を返せ。

「オマエに遠慮する気はないけど、力を借りるつもりもないネ!
私は私の力でこうなってみせるヨ!!

いや、そうなったら困るから。
って言うか気を抜いたら今すぐにでも
余裕でそうなっちゃいそうだから!!

ダメだよ!気合を入れている神楽にそう言い聞かせていると、後ろに居た
沖田がヒョコリと二人の間に体を入れ、

「で?見知ったツラでもありやしたかィ?」

と、問い掛けてきた。
 

・・・いや、見慣れた顔はありましたけどね。


そう思いながらも、言葉にする事はせず、引き攣る頬をなんとか緩ませた。

「ま、見掛けたら知らせて下せェ」

期待しないで待ってまさァ。沖田は緩く首を廻すと、大きく伸びを
しながらその場を後にした。

「・・・それはこっちの台詞だと思うんだけど・・・」

「あ、新八!早く帰らないとドラマの再放送が始まるネ!!」

沖田を見送り、肩を落とした所で神楽にそう急かされ、新八は一つ笑みを
浮かべると、

「だね。早く帰ろっか」

再び二人並んで帰路についたのであった。

 

 

 

 

 

 

その夜、誘われて呑みに行っていた銀時は、
桂と共に人気のなくなった道を歩いていた。

「銀時・・・誘ったのは俺だが、奢るとは一言も・・・」

「うるせぇなぁ。んな細かい事グダグダ言うからヅラんなるんだよ、
テメーは」

「ヅラじゃない、桂だ!!」

あ~、はいはい、お約束お約束。・・・っておい、見ろよコレ」

手を振って軽く桂の言葉を流していた銀時が、不意に道端にある掲示板
へと寄っていった。

「あらまぁ~、有名人だねぇ、オマエ」

奇しくもそれは昼間新八達が見ていた桂の手配書で。
暗いながらも銀時は目を凝らしてそれを見詰めた。

「ふん、くだらん。こんな手配書一枚、俺の変装でかわしてやるわ

「いや、あれ変装でもなんでもないから。
単なる悪ふざけだから、本当」

あれで何で捕まんねぇかな、コイツ。そう言いつつ見ていた銀時が
突然 プッ と噴出した。

「なんだ、人の写真を見て笑うヤツがいるか!!」

「や、違う違う。そうじゃなくてこっちだって」

ホレ。そう言って指差された場所を見れば、其処には・・・

 

『このヅラ見たら真選組へ!!』

 


人気のなくなった夜更けの街中で、再びお約束の台詞が叫ばれたのは
言うまでもない。

********************
蒼月銀河様と異様に盛り上がった手配書話(笑)
とりあえず本命の前にこちらを・・・
本命の方は相変わらずツッコミ所満載で、
難産でございますよ、蒼さん~(泣)
・・・ま、でも書く気満々なんですが(大笑)

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「ちわ~。誰かいやすかィ?」

「いないよ~」

玄関から、聞きなれた声がした。それに銀時はデスクの椅子に座ったまま
答える。
すると、ドカドカと室内に入ってくる音がした。

「あ、いるじゃないですかィ。旦那ァ、居るなら居るって言ってくだせェ」

「だから居ないって言ったじゃん。っつうか居ないって言ったのに
なんで堂々と入ってくんのよ」

不法侵入って知ってますぅ?と言いつつ、ジャ○プから目を離して
侵入者へと目をやり、銀時は読んでいたジャ○プを落とした。

「知ってますが鍵が開いてたもんでねィ。歓迎されてると見做して
入ってきやした

「いや、してないからね。見做されても困るからね!?
って言うかソレ!!!」

銀時は立ち上がり、勝手に侵入してきた沖田へと指を指した。

「なんで新八担いでんだ、コノヤロー!!!」

・・・正確には沖田の肩に担がれている新八に向けて。

「拾ったんでさァ」

憤る銀時に構わず、沖田はしれっとした顔でそう言うと、ぐったりとした新八を
担ぎなおした。
どうやら新八には意識がないらしい。
その事に、銀時は一瞬焦りが生まれた。

「おい、まさか新八になんかあったのか!?」

「いや、別に何もありませんぜ?」

沖田は ただ・・・と言葉を続けると軽い手つきで新八のお尻を叩いた。

「転んだらしく、足を怪我してたんでさァ。で、俺が親切にも
手を貸してやろうって言ったにも関わらず、遠慮するもんでねィ?」

全く慎み深いにも程がありまさァ。そう言って大袈裟に肩を竦め、
首を振る。

「いや、それは普通に本能が命令したんだろ。
オマエの親切=危険!・・・みたいなさぁ」

俺だって力の限り遠慮するから、本当。嫌そうに言う銀時の言葉を無視し、
沖田は言葉を続けた。

「なんで問答無用で手錠かまして担ぎ上げたら、
いつの間にか静かになってやした。

素直になるのが遅いんでィ、この眼鏡は
。ケロリと何でもないように
告げてくる沖田に、銀時は瞬間、頭の中が真っ白になる。
序に力も抜けそうになるのを、デスクに手を付く事でなんとかやり過ごし、
再び沖田へと言葉を向けた。

「沖田君・・・それ、拉致」

「監禁までいってないからセーフでさァ。」

「いやアウトだから。
確実にそれアウトだからぁぁぁ!!!」

って言うか怪我より酷い事になってんじゃん、それ!!そう怒鳴る銀時に、
沖田はチラリと新八へと視線を向ける。
新八は未だピクリとも動かない。
どうも完璧に頭に血が上っているらしく、バーンと爆発する一歩手前だ。

「・・・相変わらず存在感のないヤツでィ」

「いや、ソレ新ちゃん、本当に存在しなくなっちゃうからぁぁぁ!!!

さっさと下ろせ!!!そう言ってデスクを周り、沖田の所に行こうとする
銀時だったが、沖田は片手を上げてそれを制した。
そして上げた手をそのままクルリと返す。

「・・・何よ、その手」

沖田の行動に、訝しげに眉を顰める銀時。
それを見やり、沖田は口元を上げる。

「拾ったモンを届けたんですから、一割くだせェ」

「はぁぁぁぁ!!?」

「ま、そうは言っても旦那からはどうしたって何にも出てきそうに
ねぇですからね・・・」

沖田はそう言うと、担ぎ上げていた新八を、近くのソファへと
寝転がし、真っ直ぐな黒髪を直すように優しく梳いた。
そして視線を銀時に向けると、

「だから本人から貰うとしまさァ」

そう言ってニヤリと笑った。

「あ・・・いや、あの・・・沖田君?」

「とりあえず明日朝一で回収に来やすんで、出掛ける用意しとけって
言っといて下せぇ。」

じゃあ。沖田は呆然としている銀時に軽く手を上げて挨拶を送ると、
足取りも軽く、その場を後にしたのだった。

 

 

その後、目覚めた新八が銀時に

「そこ等辺で落ちてるんじゃありません!!!」

と涙目ながら説教されるのだが、理由が判らない新八に

「人を物扱いすんじゃねぇぇぇ!!」

と怒鳴られる事になるのだが、それはまた別のお話・・・

*******************************
落ちてたら全力で拾いに行きます。

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その日、雨音と共に何時もの声が銀時の意識の中へと入って来た。
それがまた心地よくて、銀時の目蓋は開こうとしない。


「銀さん!も~、起きてくださいよ!!」


半ば呆れが混じった声と共に体を揺すられるが、それすらも心地いい。

「ん~、わりぃ、後五分・・・と言うか一時間
いや、寧ろ半日と言うか好きなだけぇ・・・

って制限ないな、おいぃぃ!!もう、朝ごはん神楽ちゃんに
全部食べられても知りませんからね!」

ムニャムニャと言葉を口にして、ゴロリと寝返りをうつ銀時に、新八は
最終通告を告げると、軽く銀時の額を叩いて立ち上がった。

新八が離れていく気配に、銀時はチラリと目蓋を開ける。


あぁ、心地良いものの一つが行っちまう・・・


って言うか朝ごはんなしはつれぇなぁ・・・と思った所で、あるモノが
銀時の視界に入った。
その瞬間、それまで閉じたり開いたりしていた銀時の目蓋がカッと開かれ、
布団を抱き締めていた腕が、ソレを目掛けて勢い良く伸びた。

「って、ぅわっ!!!!

銀時の手がソレを掴んだ瞬間、新八の体がバランスを崩して
転びそうになり、慌てて両手をついた。

「ちょっ!行き成り何すんですか、アンタ!!!」

なんとか顔面を強打する事を防いだ新八が、四つん這いになった状態で
振り返ってみれば、そこには自分の足をガッチリと掴んで凝視している
銀時の姿が。

「・・・なんなんですか、アンタ」

自分の足を見詰める真剣な表情に、新八は心も体も引きそうになったが、
銀時に掴まれている為、それも出来ず。
寧ろ引き寄せられそうになって、新八は少しだけ慌てて体を反転させた。
そして腰をどっしりと落とし、それ以上引き寄せられないよう
手を突っ張る。

「銀さん?あの・・・寝惚けてます?」

その状態で恐る恐る問い掛けると、漸く銀時の視線が足から新八の
顔へと移った。

「・・・何、コレ」

「何って・・・僕の足です」

銀時の質問に、新八は半目で見返し、次の瞬間ハッと目を見開いた。

「銀さん・・・もしかして糖尿で目が・・・っ!!!」

「いや、判ってる、見えてるから、ちゃんと!
だからそんな真剣に哀れみの篭った目
で見ないでくれるぅぅぅ!!?

「なら、なんなんですかぁ~」

もう、離して下さいよ。先程とは打って変わった呆れ顔で
新八は掴まれた足をプラプラと揺すった。

銀時はその足をもう片方の手も出してがっちりと掴み、

「なんなんですかじゃねぇんだよ!なんで裸足?足袋は??
裸足の女神気取りかコノヤロー!!!銀さん的には
女神ってぇより天使だけどな、新ちゃんは!!!

「怖いよ、その思考!!!そんなオッサン脳内妄想を突然
曝け出さないで下さい!」

「いや、合ってるから。世間的に見ても
そんな感じだから、新八は!

そんな世間評価いらねぇよ!もう、は~な~せ~!!」

熱く語る銀時の頭に、新八は掴まれていない足を本能のまま
思いっきり振り下ろしたのであった。

 

 

「で、どったのよ、足袋」

綺麗に踵落としが決まった筈なのに、未だ銀時の手は新八の足から
離れない。
それでも先程よりは掴まれている力が弱くなったので、新八は後ろ手を
着いて溜息を零した。

「・・・雨ですよ、雨。
ここに来るまでに結構塗れちゃったんで、脱いだんです」

それだけですよ、気が済みました?そう言って、布団にうつ伏せで寝転んだまま
自分の足を掴んでいる銀時を見やった。
銀時は新八の言葉にちらりと視線を上げ、 あ~、成る程ねぇ。と納得した。

確かに雨音が激しく聞こえる。
これでは幾ら傘をさしても、濡れてしまうだろう。
その上新八は草履を愛用している。
雨降りには不向きな履物だ。

「銀さん、本当、そろそろ離して下さいよ。神楽ちゃん起こしてこなきゃ」

って言うかなんでそんなに気になるんですか?不思議そうにコトリと首を
傾げる新八に、銀時はニヤリと口元を上げた。

「・・・その顔、朝に相応しくないですよ、控えてください」

新八が嫌そうにそう言うと、銀時は いやいや と頭を軽く振り、

「新ちゃんには負けるって。も~、銀さんびっくりだよ」

そう言いながら、ツウッと新八の足の指を撫でた。

「目ぇ開けたら普段見れない部分が見えてんだもん、
や~らし~ったらねぇなぁ、おい

「なっ!!!何言って・・ちょ、舐めないで下さいよ!そんなトコ!!!」

「あ~、もう本当、やらし~」

「どっちがだぁぁぁぁ!!!!!」

 


その日、万事屋の日常生活が始まったのは、何時もより数時間遅れた
昼過ぎで、新八の普段の持ち物に、予備の足袋が加わったのは言うまでもない。

***********************
歩き方が下手なのか、滅茶苦茶濡れます、足元。
って言うか起きて目の前に新ちゃんの素足があったら、
どんなに眠くても抱え込みます(←本能で生きてます)

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その日、開店前のお登勢の店に、一人のお客が来ていた。
古くからの友人で、時折訪ねてきてはお登勢に家族の愚痴を零すのだ。

生憎そんな経験をした事がないお登勢ではあったが、
飲み屋を営んでいる為、似たような話はよく耳にする。
が、耳にするだけだ。

嫁がどうした。孫がどうした。息子がどうした。

それは自分とは縁のない世界での話で、
大変だねぇ。とは言うものの、それでもどこか一歩下がった
視点でしか言うことが出来ず、お登勢は今尚続く愚痴に、
少しばかりの羨望を混じらせて煙を吐き出すのが常であった。

今日もまた同じような会話が続くものだと思っていたのだが、
聞きなれた声と共に店の扉が開けられた事によって少しばかり
それが変化した。

「こんにちは~・・って、あ。すみません、ご来客中でしたか」

見ればそこには新八が立っており、お登勢以外の人が居るのに
気付いて また後で来ます。 と扉を閉める所だった。

「別に構いやしないよ、ねぇ?」

今まで眉間に皺を寄せて愚痴を零していた友人に問い掛ければ、
にっこり笑って同意してくれる。
新八はそれでもすまなそうに頭を下げると、中へと入ってきた。

「で、どうしたんだい?」

家賃でも持ってきてくれたのかい?と聞けば、乾いた笑い声で返された。
・・・ま、期待しちゃいないけどね。
じゃあ何の用だい。と再度聞けば、新八はおずおずと持っていた小鉢を
お登勢の居るカウンターの前へと置いた。

「この間お登勢さんに聞いた方法で漬けてみたんです。
で、結構良く出来たんで、お礼と報告がてらに持ってきたんですけど・・」

お邪魔しちゃってすみません。そう言って新八はお登勢の向かい側に
座っていた友人に軽く頭を下げた。

「へ~、坊やが漬けたのかい?」

友人の言葉に、新八は えぇ、まぁ。と少しだけ苦笑を浮かべた。
それを横目で見ながら、どれどれ。と小鉢の中の漬物に手を伸ばす。

「・・・うん、中々良く漬かってるじゃないか。」

同じように手を伸ばした友人も、酷く感心したようにお登勢の言葉に
頷いた。
新八は二人の言葉に恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに笑みを零すと、

「本当ですか?良かった~」

と、胸を撫で下ろした。

「銀さんも気に入ってくれたみたいで。『ババァんトコと同じしみったれた
味がしやがる』なんて言いながらも、バクバク食べちゃうんですよ」

ニコニコと笑う新八に、お登勢は呆れたように息を零した。

「あいつは口に入りゃ何でもいいんじゃないかい?」

って言うかしみったれたってなんなんだい。そう言うお登勢に新八は
両手を振ってその言葉を否定した。

「違いますよ。だって買ってきたのだと文句を言うだけで
そんなに食べませんもん」

お登勢さんの味付け、大好きなんですよ、銀さん。笑う新八に、お登勢は
どうだか と肩を竦めた。

「そんな文句言うくらいなら、自分でやりなって言っておやり」

「あはは、無理ですよそんなの。あ、じゃあお邪魔してすみませんでした」

新八はペコリと頭を下げると、その場を後にしようとした。
その後姿に、お登勢が声を掛ける。
キョトンとした顔で振り返る新八に、先程友人が手土産代わりに持ってきた
茄子を少し分けて持たせてやった。

「いいんですか?有難うございます。」

二人に礼を言う新八に、お登勢は少しだけ口元を緩めると、

「今日はウチもこれを使って一品作ろうと思うんだけどね、
後で手伝ってくれるかい?」

そう新八に問い掛けた。すると、一瞬目を丸くした新八だったが
直ぐに嬉しそうに笑みを広げ、

「もしかしてこの間お裾分けしてくれたやつですか?
あれ、すっごく美味しかったです!あ、序に作り方も教えてくださいね」

神楽ちゃんも僕も大好きなんで。そう言って後で必ず来る事を約束すると
今度こそ新八は扉の向こうへと消えていった。

それを笑顔で見送っていた友人が、はぁ と大きな溜息を吐いた。
どうかしたかい。と尋ねれば、再び嫁の愚痴だ。

なんでも料理の味付けが自分とかなり違うらしく、
教えようとすると露骨に嫌な顔をするのだと言う。

息子も息子で、どちらでも構わない と我関せず。

孫は自分の作る料理は田舎臭いと言って口にもしないと言う。

「あんな風に慕ってくれるなんて・・・羨ましいねぇ」

そう呟く友人に、お登勢は 何言ってんだい。 と言い、俄かに騒がしくなった
頭上を見上げた。


未だ友人は家族の愚痴を零している。

それはもう自分には出来ない事だ。

けれど・・・


「ウチのトコの馬鹿共に比べりゃ可愛いもんさね」


そう呟き、自分の味と良く似た漬物をまた一つ齧りながら
緩やかにその口元を上げたのだった。

*********************
あそこは私の中では二世帯住宅です(←本気)

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昼過ぎ、神楽は定春を連れ何時も通り遊びへと出掛けた。
それを見送り、新八は洗い物を済ますとお茶を入れ、ソファへと
腰を下ろす。
何時もなら銀時も居るのだが、今日はちょっとした仕事が入ったので
銀時一人で向かっているのだ。

なので現在、万事屋には新八一人きり。

何時もなら騒がしい家の中が、静まりきっているのが妙に居心地が
悪い。
新八は音を求め、テレビをつけるが生憎この時間帯は興味のない番組
ばかりだ。
幾度かチャンネルを変えるものの、直ぐに新八は電源を落とした。
そしてソファに深く座りなおし、湯飲みを手にする。

「・・・銀さん、まだ終わらないのかな・・・」

簡単な仕事だから・・・と言って出掛けていった銀時を思い出す。
仕事が来た時、一人で十分な内容だと、文句を言いながらも大抵
銀時が一人で向かう。

多分それは自分達がまだ子供だからだ。

それはお客に対する配慮とも取れるが、ドコか甘やかされてる気がして
新八はクスリと笑みが零れた。

今日は少しだけ豪勢にしようかな。

新八は冷蔵庫にある食材を思い浮かべながら、湯飲みを置き、
他の家事を済ませてしまおうと、腰を上げた。

 

天気のお陰で早めに乾いた洗濯物をよせ、干していた布団も中へと入れる。

「少し冷やしとこうかな」

よせた布団の熱に新八はそれを仕舞わずに、洗濯物を畳み始める。
それも終わり、そろそろ布団を仕舞おうかと立ち上がった所で、未だに
静かな家の中に気がつく。

「まだ・・・か」

神楽はまだ帰らないとしても、銀時は帰って来てもいい頃なんじゃないのかな・・
と新八は窓の向こうへと視線を向けた。
太陽が真上から移動したものの、まだまだ明るくて、人々の行き交う音が
聞こえてくる。

それはこの静まりきった家の中とは違う世界の事のようで。

「って、何考えてんだよ、もう」

新八は頭を振って軽く頬を叩くと、さっさとすべき事をしてしまおう。と
押入れへと足を向けた。
そして勢い良く襖を開け、布団を仕舞おうとした所で不意にいつもこの中で
眠っている少女の事を思い出した。
ここは和室の押入れなので、同じ場所とは言えないが、押入れなんてドコも
同じだ。
ただ、中に何かが入っているかいないかの違いで・・・

新八は、今は布団が入っていない為空いているその空間に目をやった。

そう言えば昔、まだ幼かった頃。
借金取りが来た時に姉上に隠れさせられた事があったっけ。

新八はボーッとその時の事を思い出した。

確かあの時は、その前にやって来た時に、物凄く殴られてしまったのだ。
そのせいで熱を出してしまい、心配した姉上に無理矢理入れられて・・・

結局、殴られる痛みよりも姉上の事が心配だった自分は、
言いつけを守らずに出て行ってしまったのだけれど。

結局また殴られて、姉上に心配かけちゃったっけ、その時の事を思い出し、
新八は苦笑を浮かべた。
それからと言うもの、新八が隠れる時は妙も共に隠れるのが常であった。

大抵見つけられてしまったので、ほんのひと時の安らぎでしかなかったけれど、
酷く安心したのを覚えている。

そこまで思い出し、新八は空の押入れを見詰めた。

あの時とは違い、男達の怒声も何かを壊す音も聞こえない、静かな室内。
けれど感じる寒気は似ている気がする。

「・・・入ってみようかな?・・・」

いい年をして・・・とも思ったが、今この場所には自分以外誰もいない。
ならば・・・と、新八は押入れの中へとその身を乗り上げた。
そして中へと体を全部入れると、中で膝を曲げ、そのまま襖を閉める。
すると、真っ暗な世界が新八を包み込んだ。

「真っ暗・・・て、当たり前か・・・」

それでも、微かな隙間から零れてくる光の筋が何本か見え、
ホッと身体の力を抜いた。

押入れの中は少し黴臭かったが、それでもヒンヤリとしてて気持ち良かった。
新八はゆっくりと体を横に倒した。
神楽の寝ているトコとは違い、こちらにはまだ少し荷物が置かれているので、
狭いのだが、体を横向きにして足を曲げれば寝られない事もない。

「静か~・・」

押入れの外に居た時よりも音が遮断され、静けさが増しているのだが、
狭い空間がそれを気にさせない。
それどころか、ちょっとだけ居心地がいい様な気がする。
神楽が寝床にしている気持ちも少しだけ判る様な気がして、
新八はそっと体の力を抜いた。

「早く帰ってこないかな~」

新八は一人そう呟き、常に自分の周りにある音を思い浮かべた。

騒がしくて、時に下のお登勢から怒鳴られる事もある
そんな音を。

 

 


そのまま自分は眠ってしまったようだ。
突然の大きな音に目を開けば、先程よりも明るい室内。

・・・って、あれ?ここって部屋??

なんか狭いような・・・と思っていると、何時の間に帰っていたのか
酷く疲れた表情の銀時がこちらを見ていた。

予想よりも時間が掛かったのだから、やはり疲れたのだろうか。
と、まだ半分閉じている目を擦りつつ、お帰りなさい。と言えば、
大きな溜息を吐かれた。

なんで??と、寝起きの為まわらない頭を傾げていると、ギュッと抱き寄せられる。
その力強さと温もり、そして感じる心音に、焦りながらも
酷く安心している自分が居た。

 

でも銀さんの声は少し不機嫌そうだ。


どうしてだろう。と考え、辺りを見回して納得。
そりゃぁこんな所で寝ているのを見付けたら、驚きもするだろう。

って言うか、恥ずかしすぎる。
この年で押入れの中に入って眠りこけちゃうなんて。

からかわれるだろうなぁ。なんて覚悟していたが、銀さんはポツリポツリと
文句を言って、抱き締めてくるだけだった。

その内に神楽ちゃんも帰って来て、今度こそからかいの的になる!と、
急いで出ようとしたのだが、銀さんは許してくれず、
そのまま抱き上げられて、気が付けば神楽ちゃん共々抱え上げられて
グルグル回されてた。


お陰で静かだった家の中は、色んな音で溢れかえって。

待ち望んでた音が身の回りに合って。


振り落とされないように銀さんの頭にしがみ付きながら、僕はそっと


「お帰りなさい」


もう一度、心からの言葉を口にした。

*********************
押入れ話、新ちゃんVer。
ちなみに昔、友人宅に泊まる時は大抵押入れで
寝てました、私。
・・・結構安心するんですよ、あの狭さ。

拍手[2回]


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