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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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その日、開店前のお登勢の店に、一人のお客が来ていた。
古くからの友人で、時折訪ねてきてはお登勢に家族の愚痴を零すのだ。

生憎そんな経験をした事がないお登勢ではあったが、
飲み屋を営んでいる為、似たような話はよく耳にする。
が、耳にするだけだ。

嫁がどうした。孫がどうした。息子がどうした。

それは自分とは縁のない世界での話で、
大変だねぇ。とは言うものの、それでもどこか一歩下がった
視点でしか言うことが出来ず、お登勢は今尚続く愚痴に、
少しばかりの羨望を混じらせて煙を吐き出すのが常であった。

今日もまた同じような会話が続くものだと思っていたのだが、
聞きなれた声と共に店の扉が開けられた事によって少しばかり
それが変化した。

「こんにちは~・・って、あ。すみません、ご来客中でしたか」

見ればそこには新八が立っており、お登勢以外の人が居るのに
気付いて また後で来ます。 と扉を閉める所だった。

「別に構いやしないよ、ねぇ?」

今まで眉間に皺を寄せて愚痴を零していた友人に問い掛ければ、
にっこり笑って同意してくれる。
新八はそれでもすまなそうに頭を下げると、中へと入ってきた。

「で、どうしたんだい?」

家賃でも持ってきてくれたのかい?と聞けば、乾いた笑い声で返された。
・・・ま、期待しちゃいないけどね。
じゃあ何の用だい。と再度聞けば、新八はおずおずと持っていた小鉢を
お登勢の居るカウンターの前へと置いた。

「この間お登勢さんに聞いた方法で漬けてみたんです。
で、結構良く出来たんで、お礼と報告がてらに持ってきたんですけど・・」

お邪魔しちゃってすみません。そう言って新八はお登勢の向かい側に
座っていた友人に軽く頭を下げた。

「へ~、坊やが漬けたのかい?」

友人の言葉に、新八は えぇ、まぁ。と少しだけ苦笑を浮かべた。
それを横目で見ながら、どれどれ。と小鉢の中の漬物に手を伸ばす。

「・・・うん、中々良く漬かってるじゃないか。」

同じように手を伸ばした友人も、酷く感心したようにお登勢の言葉に
頷いた。
新八は二人の言葉に恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに笑みを零すと、

「本当ですか?良かった~」

と、胸を撫で下ろした。

「銀さんも気に入ってくれたみたいで。『ババァんトコと同じしみったれた
味がしやがる』なんて言いながらも、バクバク食べちゃうんですよ」

ニコニコと笑う新八に、お登勢は呆れたように息を零した。

「あいつは口に入りゃ何でもいいんじゃないかい?」

って言うかしみったれたってなんなんだい。そう言うお登勢に新八は
両手を振ってその言葉を否定した。

「違いますよ。だって買ってきたのだと文句を言うだけで
そんなに食べませんもん」

お登勢さんの味付け、大好きなんですよ、銀さん。笑う新八に、お登勢は
どうだか と肩を竦めた。

「そんな文句言うくらいなら、自分でやりなって言っておやり」

「あはは、無理ですよそんなの。あ、じゃあお邪魔してすみませんでした」

新八はペコリと頭を下げると、その場を後にしようとした。
その後姿に、お登勢が声を掛ける。
キョトンとした顔で振り返る新八に、先程友人が手土産代わりに持ってきた
茄子を少し分けて持たせてやった。

「いいんですか?有難うございます。」

二人に礼を言う新八に、お登勢は少しだけ口元を緩めると、

「今日はウチもこれを使って一品作ろうと思うんだけどね、
後で手伝ってくれるかい?」

そう新八に問い掛けた。すると、一瞬目を丸くした新八だったが
直ぐに嬉しそうに笑みを広げ、

「もしかしてこの間お裾分けしてくれたやつですか?
あれ、すっごく美味しかったです!あ、序に作り方も教えてくださいね」

神楽ちゃんも僕も大好きなんで。そう言って後で必ず来る事を約束すると
今度こそ新八は扉の向こうへと消えていった。

それを笑顔で見送っていた友人が、はぁ と大きな溜息を吐いた。
どうかしたかい。と尋ねれば、再び嫁の愚痴だ。

なんでも料理の味付けが自分とかなり違うらしく、
教えようとすると露骨に嫌な顔をするのだと言う。

息子も息子で、どちらでも構わない と我関せず。

孫は自分の作る料理は田舎臭いと言って口にもしないと言う。

「あんな風に慕ってくれるなんて・・・羨ましいねぇ」

そう呟く友人に、お登勢は 何言ってんだい。 と言い、俄かに騒がしくなった
頭上を見上げた。


未だ友人は家族の愚痴を零している。

それはもう自分には出来ない事だ。

けれど・・・


「ウチのトコの馬鹿共に比べりゃ可愛いもんさね」


そう呟き、自分の味と良く似た漬物をまた一つ齧りながら
緩やかにその口元を上げたのだった。

*********************
あそこは私の中では二世帯住宅です(←本気)

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