[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「ね・・・なんか銀さん魂的なものが抜け出そうなんだけど・・・」
「後少しなんだから我慢して下さい」
「あ、違うなコレ。なんか熱く燃え滾ってる筈の少年の心的ものまでが
凍りつきそうな感じ?え、ウソ。ヤバクね?」
「・・・聞けよコンチキショー。だから後少しですって!
って言うかそんなの銀さんの妄想ですから。既に少年の心的ものは
銀さんの中から抜け出て久しいですから」
「いやいや、そんな事ないって。銀さん、心はいつでも少年ですから。
どんな時でも煮えたぎってますからァァァ!」
「じゃあいいじゃねーか」
不毛な会話を断ち切って、新八は深い息を吐いた。
考えてみれば、今の状況は奇跡的なものだ。
なんと言っても今はまだ朝9時を少し過ぎた頃。
場所は本日開店のとあるスーパー。
開店なだけあって、色々なモノが安い。
しかも先着300名様に、卵の無料配布ときたもんだ。
・・・これを行かずして、万事屋の明日はない。
という事で、新八は銀時等を説得し、半ば泣き落とし、最終的に脅して一緒に
来て貰ったのである。
・・・と言うか、一番の原因(大食らいとマダオ)なんだから、
これくらいは当たり前なんだけどね。
昨日は万事屋に泊まり、寝汚い二人を叩き起こしてここまで来たのだが、
如何せん、寒すぎた。
一応万全を期して早めに出てきたので、卵はなんとか手に入りそうだが、
さすがにこの寒さの中、ただ突っ立っているのは辛い。
「神楽ちゃん、大丈夫?」
未だぼやいてる銀時を無視し、隣で静かに立っている神楽に目を向ける。
と、其処には未だ半分夢の中に居るらしく、目をトロンとさせている神楽が。
「って神楽ちゃん、起きて!こんなトコで寝ちゃ駄目だよ!!
あ~、もう洟出てるし!」
はい、コレで拭いて!・・・と動こうとしない神楽の洟をティッシュで
拭う。
すると、近づいた新八の温もりに気付いたのか、神楽は新八に顔を向けると
そのまま新八の胸元にギュっとしがみ付いて来た。
「ん~・・・ぬくいアル」
そのままの格好でニマニマと笑う神楽に、新八は少し苦笑すると、
自分の着ている上着の端を手に持ち、その体を包み込むようにして抱きしめた。
「そのまま寝ちゃ駄目だよ~」
「判ってるネ~任せるヨロシ」
ニコニコ・ニマニマと二人で温め合うその光景に、銀時のボヤキが一瞬止まる。
「・・・て、え?なにソレ。何二人で温かくなってんの?銀さんは?
なんか銀さん、体よりも心が凍えそうよ?」
「え~、だって銀さん無駄にでかいから僕の中に入れないでしょ?」
「いやいやいや、それは大丈夫だから。ゆっくり慣らせばだいじょ・・」
「なんの話だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
そんなもん慣れたくも無いわぁぁ!」
「え。だってそれじゃ新八、切れちゃう・・・」
「って、いい加減其処から離れろぉぉぉぉ!このセクハラ上司が!
卵の件がなけりゃ、さっさと訴えて勝ちますよ!本気で!!」
新八が本気で切れ掛かった所に、かなり強い、冷たい風が吹きぬけた。
その瞬間、銀時達の口も寒さの為完全に閉じられる。
「・・・あの、本当、何にもしないんで仲間に入れて下さい」
細かく震えながらそう懇願する銀時に、新八は溜息を一つ零すと、
「あんま信用できないですけど・・・ま、仕方ないですね」
この後も働いて貰わないといけないし・・・そう言って神楽を抱き締めたまま
銀時の方へと移動する。
「あ、ちょっと待って下さい。えっと・・・あ、この位置で動かないで
下さいね」
新八は通りに背を向けるよう銀時に立たせ、その胸元へ自分の背を押し付けた。
「・・・あの、新八君?なんか銀さん、背中がものっそい寒いんですけど」
「気のせいですよ」
「なんかあの・・・アレ?もしかして銀さん、風除けになってる?」
「神楽ちゃん、温かいね~」
「おぅ!ちょっと加齢臭するけどナ」
「ちょっ!酷くない?風除けにまでなってるのに、扱い酷くない?」
「だから~、それは銀さんの気のせいですって」
「そうアル。全くコレだからマダオは駄目ネ。被害妄想加齢臭で」
「え?なんでまだついてんの?なんだよコノヤロー。
温かいけど寒いぞコラァァァ」
そう言いながらも、自分の上着で二人を包み込むように抱き締める銀時。
どうやら予想以上に暖かく、残りの時間を過ごせそうだ。
新八は前と後ろにある温もりに。
神楽は包み込んでくる二人分の温もりに。
銀時は胸元にある大切な温もりに。
そっと笑みを零したのであった。
「新八~、ちょっと手を貸すネ」
久しぶりにあった仕事のお陰で、現在ちょっとだけ何時もより
懐具合が良い万事屋。
なので今日はちょっとだけ豪勢に・・・と、傍から見れば涙を誘う
ものだが、それでも立派なオヤツタイムを満喫し、
お茶を飲んでいた所、不意に神楽にそんな事を言われた。
「?はい、でも何・・・ってオイィィィィィィィ!!」
不思議に思いながらも素直に向かいのソファに座っている神楽に
手を差し出すと、すぐさまその手を掴まれ、人差し指を食べられた。
突然の訳の判らない行動に、焦りながら必死に手を奪い返そうとするが
残念な事に力の事では神楽の方が数倍上だ。
「何?何なにナニ~!?今オヤツ食べたばかりなのに
まだ食べる気?無理、無理だから本当!生肉はお腹壊すから!!」
焦るあまり、常識的ツッコミはなされていない・・・が、新八は
かなり真剣だ。
そして自分ではどうしようもないと判断し、神楽の隣に居る銀時に
助けを求める。
・・・が、銀時は目の前の状況にも関わらず、ボーッとしている。
「・・・って、え?ナニ・・・とちょっ・・・アレ?え?あの・・・
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!??」
と思っていたがそうではなく、かなり動揺していたようだ。
出てくる言葉は意味不明で、先程まで見ていたジャンプが
真っ二つにご臨終されている。
その間も神楽は歯は立ててないものの、フニフニと指を加えたまま
首を傾げている。
「ちょっ神楽お前何してんの!そう言うのは銀さんの役割でしょ!!
ほら、早くペッてしなさい!ペッて!!!」
そう言いながら神楽の額と新八の手を掴み、力任せに引き離す。
「あ~、良かった有難うございます
・・って銀さんの役割でもないでしょ、んなもん!」
それでも律儀に銀時に礼を言い、自分の指の無事を確認し、ホッと
安心する新八。
それと反対に、神楽は不満げな表情だ。
「は~・・・で、何だったの、今のは」
新八はそんな神楽に一つ息をつき、問い掛けた。
「全くだ、あんな羨ましい事をまぁ・・・銀さんだって日頃
我慢に我慢を重ねて、この突っ走りそうになる10代の如き少年魂を
押さえ込んでだな~。あ、でも夜は別だよ?夜はもう夕日に向かって
走る中二の少年の如く・・・」
「アンタは黙っててください」
「・・・はい」
「・・・・しなかったネ・・・」
ブツブツと文句を言い始める銀時を、低い声と冷たい視線で固めた所、
ポツリと神楽が声を発した。
が、小さい声だったのであまり聞こえず、再度問い掛ける。
すると神楽はムスッとした顔を上げ、答え始めた。
「前にでっかいゴキブリ出た時に銀ちゃんが言ってたネ。
新八は何味だったか~って。それはもう引くぐらい真剣に何度も
言ってたネ。だから味見したのに・・・」
無駄だったネ。そう言った神楽に、新八は大きく肩を落とした。
「だからって神楽ちゃん・・・そん事しなくても・・・」
「だって新八、料理してるから味が染み込んでるかと思ったヨ。
銀ちゃんもそう思ったから味見してたんじゃないアルか?」
「「はぁ!?」」
「この間ソファで新八が昼寝してた時、銀ちゃんが・・・」
「かぁぐらぁぁ!駄目だろ~が、人様の指なんか舐めちゃ~よ~!
お父さんはそんな娘に育てた覚えはないと思うよ~?」
「いや、銀さん、今なんか・・・」
「銀ちゃんに育てられた覚えはないアルネ。」
「や、そうじゃなくて神楽ちゃん。さっきの続きは・・・」
「い~や、ほら思い出せってあの頃の日々を!ホラ、アレだ。
この世に生きる喜び、そして悲しみを語りあったアレだ。」
「知らネーヨ。
って言うかマダオに育てられる程安い女じゃないネ、私は」
「安心しろ、お前は酢昆布で釣られる十分安いマスコットだ」
「酢昆布を馬鹿にするヤツは酢昆布で吐くアルよ!!」
「上等じゃねーか!吐くのなんかな~、得意中の得意だって~の!
罪暦以外ならなんぼでも吐いてやるわァァァ!!」
とんでもなく気になる事を神楽が口にしたのだが、それを聞く事は
もう無理であろう。
突如始まった二人のバトルに避難しつつ、新八はとりあえず
「・・・暫くここに泊まるのはやめよう」
と、硬く心に誓ったのであった。
『ちょっと先の未来』
・・・んぁ?
あ~・・・なんだ?何かあったか?
ってなんだそりゃ。何もねーなら起こすんじゃねーよ。
は?魘されてた?俺が?
っと・・・あぁ?なんだこりゃ。なんで俺、泣いてんだ?
・・・はぁ?怖い夢でも見たか・・・って、おい。
俺の事何歳だと思ってんだ、オメー。
でも・・・夢、ねぇ・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
ってぇ!何すんだコラ!寝てなんかねぇって!
で、夢だろ・・・・あぁ、なんとなく覚えてる・・・なぁ。
何かな、ウルセーのが居るのよ、俺のトコに。
そいつがもう煩いの煩くないのって。
俺がな、ダラダラダラダラ素敵に過ごしてんのに、
やれ片付けしろだの、洗うものはキチンと籠に入れろだの、
一々口ウルセーのな。
そんなにイヤなら傍に居なきゃいいのに、なんか居るんだよ。
危ない事とかもあんのにな~、出てかねーの、そいつ。
ん?いや強くは・・・なかったな。
でも・・・眩しい・・・とは思ったな。
で、もう一人。
こいつもなんか俺のトコに居んのよ。
突き放してもさ、離れてかねーの。
あ、こいつは強かったな。ものごっつい強い。
でも・・・寂しい・・・とも思ったな。
ま、馬鹿だけどな。
って言うか二人とも馬鹿だな、ありゃ。
こんな俺のトコから離れやしなかったんだからよ。
それともう一匹。あぁ?いいんだよ、匹で。
だってそいつ犬だもんよ。
・・・ま、認めたくないぐらいでかかったけどな。
そいつらがさ、居んのよ、ずっと俺のトコに。
馬鹿だろ~。なんだったんだろうな、本当。
普通に一緒に飯食って。喧嘩して。買い物して。
笑って、泣いて、怒って。
おはよ~だの、いってらっしゃいだの、お帰りなさいだの。
なにが良くてあいつら、俺のトコにいたんかね。
は?で、それのドコが魘されるのかって?
・・・・怖い夢だったんよ、本当に。
あんな生活、俺だったら怖くて仕方ねーよ。
あんな目で見られて。
あんな柔らかい手で触れられて。
俺には無理だな。マジで怖ぇ。
あんな柔らかいモノ、手に入れたらどうすりゃいいんだよ。
あんな温かいモン、手に入れて、そんで失ったらどうすりゃいいんだ?
判ってるよ。別に今のこの状況に何か言うつもりはねぇ。
ねぇけどな・・・色々失くしちまったからな。
ってオイィィィィィィィィ、なんだその生暖かい眼差しは!
言っとくけどな、お前だって居たぞ!
なんか変な生き物愛でて、立派なヅラだったぞ、コノヤロー!!!
あ?もう戻すなよ、話をよ~。空気読めないヤツだな~、本当。
ん?・・・あぁ、そうだな。
怖ぇけどよ、
・・・・結構いい夢だったんじゃね?
少なくとも、目覚めるのに泣けるぐらいはよ。
*****************************************
[銀新十題]さまからお借りしました。
攘夷戦争時代の銀さん、予知夢(笑)
『気まずい二人乗り』
今更こんな事が気まずい・・・なんて言ったら、アンタは笑いますか?
毎日と言っていい程一緒に居て。
それこそ、朝叩き起こす所から、夜布団を引いて・・・時には泊まって。
そんな日々を過ごしてるってのに、どうも駄目なんです、僕。
最初は別に気にしなかった筈なのに。
それどころか、こういったモノに乗るのも、二人乗りするのも初めてで、
緊張するやら嬉しいやら・・・
兎に角、その時の感情に『気まずい』なんてモノは含まれて居なかったのに。
最近はどうも駄目なんです。
前より緊張はしなくなったけど、別の意味で緊張し始めちゃったし。
なんか嬉しい・・・って言うか、それに似たこそばゆい感じが
倍増しちゃいましたし。
それらを自覚すればする程、妙に・・・気まずい。
だからちょっと離れて。
ついでに掴まる手もちょっと遠慮気味にしてみたのに。
その度に
「危ね~ぞ~」
って、相変わらずやる気のない声で
けれど手を取ってしっかりと掴ませるから。
またぺったり距離は縮まって。
ついでにしっかり手も廻す羽目になって。
おまけに自分の顔が火照ってくのも判って。
・・・近くなったアンタの耳も、赤くなってるのが見えて。
あぁもう、本当気まずい。
************************************************
[銀新十題]からお借りしました。
そして同じお題でもう一つお笑いVer
カッコ悪い銀さんでも大丈夫な方だけどうぞ。
『合鍵』
それは万事屋に神楽もやって来て、賑やかになった頃。
そしてそれに伴い、新八の家事能力が確実に上がってきた頃。
「あ、そう言えば銀さん、鍵下さいよ」
「ん?何時ものトコにあんでしょ?」
部屋の掃除に精を出している新八を横目に、銀時はソファに寝転んだまま答えた。
「その鍵じゃなくて!合鍵とかないんですか?」
そんなやる気のない銀時の態度に、新八は箒片手に溜息を吐いた。
新八の答えに、銀時は あ~ だの う~ だのと言葉にならない声を出しながら、
ダラダラと新八の方へと体全体を向ける。
そして、
「・・・・・・・なんで?」
と、如何にも不思議そうに問いかけた。
その問い掛けに、新八はもう一度溜息を落とす。
「なんでじゃないですよ。一つしかなかったら不便でしょ?
買い物に行きたくても、出掛けられない時とかあるし」
「なんで?」
「だから、その時誰も居なかったら出掛けられないでしょ?
まぁ神楽ちゃんは大体帰ってくる時間が決まってるからいいですけど、
銀さんは予測出来ないし・・・」
「なんで?」
「だ~か~ら!幾ら盗られる物がないって言っても、鍵かけずに出掛けられないでしょ!
って言うかなんで其処まで聞くんですか!?」
何か言い難い理由でもあるんですか!?・・・とのらりくらりとした銀時の問い掛けに、
新八が切れかける。
そんな新八に、銀時がコイコイと手招きする。
「なんですか、もう!」
怒っててもそこは新八。素直に銀時の傍へとやって来る。
銀時は傍に立った新八の手を、やんわりと握り締めた。
「?銀さん?」
「だから、なんでよ」
再び問い掛けてきた銀時の言葉に、新八はカクリと首を傾げる。
「だから~」
「だって、一緒に出掛ければいいでしょ。そんなの」
「は?」
「一緒に出掛けて、一緒に帰ってくればいいでしょ?
買い物とか、銀さんが帰ってくるの待ってればいいでしょ?」
違う? と今度は銀時が首を傾げた。
そんな銀時に、新八はほんの少しだけ口元が緩むのを感じた。
変な所で寂しん坊で甘えん坊なのだ、この男は。
でも実際はそんな事していられない訳で。
「でも、朝とか二人とも寝てるじゃないですか。
今の所はある鍵をお借りしてますけど・・・」
それだと僕が帰った後、何処にも出掛けられないでしょ?
そう言って新八はソファの傍に膝を着いた。
近くなった距離に、銀時は握っていた手を抱え込むようにしてさらに距離を縮める。
「別に出掛けないし。・・・て言うか、そんなん考えるなら帰んなきゃいいだろ」
心なしか拗ねている様な銀時の態度に、新八は今度こそはっきりと笑みを浮かべた。
そして空いてる方の手で、銀時の頭を優しく撫でる。
「週の半分はここに居るじゃないですか。交通費も馬鹿にならないですし、
どっかのマダオが呑んでくるし・・・」
「・・・・・すんません」
「大体鍵って言うのは・・・家族なら普通持ってるモンでしょ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから合鍵、僕にください。ってか出せ。」
にっこりと笑う新八に、銀時は暫し顔を伏せると、そのままソファから体を起こした。
そしてそのまま新八を引っ張るように、玄関へと足を向ける。
「買い物、行くぞ」
「はい」
「んで・・・まぁアレだ。・・・・・・・・・・・もう一つ、作っとくか」
「はい」
あ~、でもあいつはすぐ失くしそうだよな~
・・・なんて髪をガシガシと搔きながら言う銀時に、
新八は渡されるであろう新品同様の鍵を何時使おうか・・・とちょっとだけ考えた。
・・・自分で言っておきながら、アレだけど。
そんなに使う時がなさそうだ。
**************************************************
[銀新十題]さまからお借りしてきました。