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「ね・・・なんか銀さん魂的なものが抜け出そうなんだけど・・・」
「後少しなんだから我慢して下さい」
「あ、違うなコレ。なんか熱く燃え滾ってる筈の少年の心的ものまでが
凍りつきそうな感じ?え、ウソ。ヤバクね?」
「・・・聞けよコンチキショー。だから後少しですって!
って言うかそんなの銀さんの妄想ですから。既に少年の心的ものは
銀さんの中から抜け出て久しいですから」
「いやいや、そんな事ないって。銀さん、心はいつでも少年ですから。
どんな時でも煮えたぎってますからァァァ!」
「じゃあいいじゃねーか」
不毛な会話を断ち切って、新八は深い息を吐いた。
考えてみれば、今の状況は奇跡的なものだ。
なんと言っても今はまだ朝9時を少し過ぎた頃。
場所は本日開店のとあるスーパー。
開店なだけあって、色々なモノが安い。
しかも先着300名様に、卵の無料配布ときたもんだ。
・・・これを行かずして、万事屋の明日はない。
という事で、新八は銀時等を説得し、半ば泣き落とし、最終的に脅して一緒に
来て貰ったのである。
・・・と言うか、一番の原因(大食らいとマダオ)なんだから、
これくらいは当たり前なんだけどね。
昨日は万事屋に泊まり、寝汚い二人を叩き起こしてここまで来たのだが、
如何せん、寒すぎた。
一応万全を期して早めに出てきたので、卵はなんとか手に入りそうだが、
さすがにこの寒さの中、ただ突っ立っているのは辛い。
「神楽ちゃん、大丈夫?」
未だぼやいてる銀時を無視し、隣で静かに立っている神楽に目を向ける。
と、其処には未だ半分夢の中に居るらしく、目をトロンとさせている神楽が。
「って神楽ちゃん、起きて!こんなトコで寝ちゃ駄目だよ!!
あ~、もう洟出てるし!」
はい、コレで拭いて!・・・と動こうとしない神楽の洟をティッシュで
拭う。
すると、近づいた新八の温もりに気付いたのか、神楽は新八に顔を向けると
そのまま新八の胸元にギュっとしがみ付いて来た。
「ん~・・・ぬくいアル」
そのままの格好でニマニマと笑う神楽に、新八は少し苦笑すると、
自分の着ている上着の端を手に持ち、その体を包み込むようにして抱きしめた。
「そのまま寝ちゃ駄目だよ~」
「判ってるネ~任せるヨロシ」
ニコニコ・ニマニマと二人で温め合うその光景に、銀時のボヤキが一瞬止まる。
「・・・て、え?なにソレ。何二人で温かくなってんの?銀さんは?
なんか銀さん、体よりも心が凍えそうよ?」
「え~、だって銀さん無駄にでかいから僕の中に入れないでしょ?」
「いやいやいや、それは大丈夫だから。ゆっくり慣らせばだいじょ・・」
「なんの話だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
そんなもん慣れたくも無いわぁぁ!」
「え。だってそれじゃ新八、切れちゃう・・・」
「って、いい加減其処から離れろぉぉぉぉ!このセクハラ上司が!
卵の件がなけりゃ、さっさと訴えて勝ちますよ!本気で!!」
新八が本気で切れ掛かった所に、かなり強い、冷たい風が吹きぬけた。
その瞬間、銀時達の口も寒さの為完全に閉じられる。
「・・・あの、本当、何にもしないんで仲間に入れて下さい」
細かく震えながらそう懇願する銀時に、新八は溜息を一つ零すと、
「あんま信用できないですけど・・・ま、仕方ないですね」
この後も働いて貰わないといけないし・・・そう言って神楽を抱き締めたまま
銀時の方へと移動する。
「あ、ちょっと待って下さい。えっと・・・あ、この位置で動かないで
下さいね」
新八は通りに背を向けるよう銀時に立たせ、その胸元へ自分の背を押し付けた。
「・・・あの、新八君?なんか銀さん、背中がものっそい寒いんですけど」
「気のせいですよ」
「なんかあの・・・アレ?もしかして銀さん、風除けになってる?」
「神楽ちゃん、温かいね~」
「おぅ!ちょっと加齢臭するけどナ」
「ちょっ!酷くない?風除けにまでなってるのに、扱い酷くない?」
「だから~、それは銀さんの気のせいですって」
「そうアル。全くコレだからマダオは駄目ネ。被害妄想加齢臭で」
「え?なんでまだついてんの?なんだよコノヤロー。
温かいけど寒いぞコラァァァ」
そう言いながらも、自分の上着で二人を包み込むように抱き締める銀時。
どうやら予想以上に暖かく、残りの時間を過ごせそうだ。
新八は前と後ろにある温もりに。
神楽は包み込んでくる二人分の温もりに。
銀時は胸元にある大切な温もりに。
そっと笑みを零したのであった。