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『合鍵』
それは万事屋に神楽もやって来て、賑やかになった頃。
そしてそれに伴い、新八の家事能力が確実に上がってきた頃。
「あ、そう言えば銀さん、鍵下さいよ」
「ん?何時ものトコにあんでしょ?」
部屋の掃除に精を出している新八を横目に、銀時はソファに寝転んだまま答えた。
「その鍵じゃなくて!合鍵とかないんですか?」
そんなやる気のない銀時の態度に、新八は箒片手に溜息を吐いた。
新八の答えに、銀時は あ~ だの う~ だのと言葉にならない声を出しながら、
ダラダラと新八の方へと体全体を向ける。
そして、
「・・・・・・・なんで?」
と、如何にも不思議そうに問いかけた。
その問い掛けに、新八はもう一度溜息を落とす。
「なんでじゃないですよ。一つしかなかったら不便でしょ?
買い物に行きたくても、出掛けられない時とかあるし」
「なんで?」
「だから、その時誰も居なかったら出掛けられないでしょ?
まぁ神楽ちゃんは大体帰ってくる時間が決まってるからいいですけど、
銀さんは予測出来ないし・・・」
「なんで?」
「だ~か~ら!幾ら盗られる物がないって言っても、鍵かけずに出掛けられないでしょ!
って言うかなんで其処まで聞くんですか!?」
何か言い難い理由でもあるんですか!?・・・とのらりくらりとした銀時の問い掛けに、
新八が切れかける。
そんな新八に、銀時がコイコイと手招きする。
「なんですか、もう!」
怒っててもそこは新八。素直に銀時の傍へとやって来る。
銀時は傍に立った新八の手を、やんわりと握り締めた。
「?銀さん?」
「だから、なんでよ」
再び問い掛けてきた銀時の言葉に、新八はカクリと首を傾げる。
「だから~」
「だって、一緒に出掛ければいいでしょ。そんなの」
「は?」
「一緒に出掛けて、一緒に帰ってくればいいでしょ?
買い物とか、銀さんが帰ってくるの待ってればいいでしょ?」
違う? と今度は銀時が首を傾げた。
そんな銀時に、新八はほんの少しだけ口元が緩むのを感じた。
変な所で寂しん坊で甘えん坊なのだ、この男は。
でも実際はそんな事していられない訳で。
「でも、朝とか二人とも寝てるじゃないですか。
今の所はある鍵をお借りしてますけど・・・」
それだと僕が帰った後、何処にも出掛けられないでしょ?
そう言って新八はソファの傍に膝を着いた。
近くなった距離に、銀時は握っていた手を抱え込むようにしてさらに距離を縮める。
「別に出掛けないし。・・・て言うか、そんなん考えるなら帰んなきゃいいだろ」
心なしか拗ねている様な銀時の態度に、新八は今度こそはっきりと笑みを浮かべた。
そして空いてる方の手で、銀時の頭を優しく撫でる。
「週の半分はここに居るじゃないですか。交通費も馬鹿にならないですし、
どっかのマダオが呑んでくるし・・・」
「・・・・・すんません」
「大体鍵って言うのは・・・家族なら普通持ってるモンでしょ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから合鍵、僕にください。ってか出せ。」
にっこりと笑う新八に、銀時は暫し顔を伏せると、そのままソファから体を起こした。
そしてそのまま新八を引っ張るように、玄関へと足を向ける。
「買い物、行くぞ」
「はい」
「んで・・・まぁアレだ。・・・・・・・・・・・もう一つ、作っとくか」
「はい」
あ~、でもあいつはすぐ失くしそうだよな~
・・・なんて髪をガシガシと搔きながら言う銀時に、
新八は渡されるであろう新品同様の鍵を何時使おうか・・・とちょっとだけ考えた。
・・・自分で言っておきながら、アレだけど。
そんなに使う時がなさそうだ。
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[銀新十題]さまからお借りしてきました。