[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「本っっっ当!あいつどうにかしてくんない!?」
銀時はそう言うと、飲み掛けのビールをテーブルに勢い良く置いた。
当然お登勢の怒鳴り声が飛んでくるが、新八の声以外に対しては
簡単に耳を日曜設定に出来る銀時。
さくっと無視して目の前に居る人物を睨み付けた。
「あいつ?あいつって誰だ?」
そう言って首を傾げるのは、多分近藤だ。
今日も限界以上に顔を腫らしているので、あまり判断できないが、
多分近藤だ。
叫びすぎたのだろうか、声も幾分掠れていてこちらも判断出来ないが、
多分近藤だ。
・・・と言うかこの状態でも大丈夫な辺り、
やっぱり近藤でいいだろう。
ってかまずその状態をどうにかしろ。
そうは思うが、本人は『意識があるだけ今日はマシ。』とばかりに、
ニコニコと・・・多分ニコニコとお絞りを顔に当てつつ、
ビールを呑んでいる。
そのせいで出血は止まっていないのだが、
周囲はこれで少しはテンションが下がってくれれば・・・
と、こちらもさくっと無視だ。
ちなみにお絞りは使い捨てタイプなので、お登勢的にも
安心して無視できている。
ここにツッコミの鬼である新八が居れば、
「皆さん・・・とりあえず色々どうにかして下さい。
主に世間体とか思い出して。」
と、冷たい視線でもって言ってくれるのだろうが、生憎
この場に新八はいない。
何故なら、今夜は鬼っ子達による、久しぶりの
『朝まで生 怪 談』
を新八宅で行っているからだ。
なので、場はどんどん流されていくし、銀時の機嫌は悪い、
そして近藤の居の命はなんとか助かったのだ。
まぁ近藤の命が助かったのは、新八が止めたからではなく、
ましてやお妙の心に変化があった訳でもなく、
ただ単にさっさと怪談を始めたかった神楽が、殴られている近藤を
志村宅から投げ飛ばした結果だったりするのだが。
その時、あくまで偶然近くを歩いていた自分の頭に
落ちてきたのは、本気で偶然だと思いたい銀時である。
・・・でなければ後が怖い。
だがもし、これが偶然でなかった場合、近藤をそのまま放置
しておいたりしたらもっと怖い。
と言う事で銀時はこれ以上の志村宅への接近・・・ではなく、
夜の散歩を諦めて失神している近藤を引きずり、家路についたのだった。
まぁ運び賃としてそのままお登勢の店に運び込み、
勝手に飲み食い始めたのだが。
そして銀時は、途中で気が付いた近藤に、
前々から思っていた事を序とばかりに吐き出し始めたのであった。
「決まってんだろ、沖田君だよ沖田君。」
テメェんトコの鬼っ子だ。と、銀時は一度置いたビールを呷った。
「何だかんだ言ってウチの子等に付きまといやがってよぉ。
放任主義にも程があんだろうが。
躾はちゃんとしろよ、躾は。ってか仕事しろ。
テメェ共々」
ケッと吐き出すように言い募る銀時に、近藤は微かに眉を顰めた。
「躾も何も、総悟は良い子だぞ?
ただ、照れ屋だからそこら辺は奥深くに
隠されてるだけで」
「隠すなよ、そこは。
周りの為にも前面に押し出していけよ。」
「それに新八君達に付きまとうって言うより、
仲良く遊んでいるだけだろう?微笑ましいじゃないか」
うんうん。と頷く近藤に、銀時はうんざりとした表情を浮かべる。
「全然微笑ましくねぇよ。
最近のあいつ等、何やってっか知ってっか?
怪談だぞ、怪 談。いい年して何やってんだよ。
怖くて仲間に入っていけねぇじゃねぇかっ!」
いや、そっちこそいい年して何言ってんだ。
そう言うツッコミをして頂きたいが、生憎我らがツッコミマスターは
お妙を交えた何時ものメンバーで楽しく怪談の真っ最中だ。
なので基本真面目な近藤は、困ったように腕を組んだ。
「仲間外れは感心しないな・・・
よし、判った。俺等も怪談をしよう」
「・・・おいこらゴリラ。
何顔面怪談の様なツラして言ってやがる。
何を理解しやがった。」
「いや、実はだな~」
「ちょ、聞こえてますぅぅ!!?
何?殴られすぎて鼓膜破れちゃいましたぁぁ!!?」
叫ぶ銀時を無視し、近藤は懐から何かを取り出し、テーブルに置いた。
「心霊写真・・・て訳じゃないんだが・・・」
見てくれ。そう言って置いた数枚の写真を指差した。
それに対し、銀時は顔を背けると数回手を振る。
「心霊写真じゃねぇならいいじゃねぇか、んなの。
ってかしたくねぇんだよ、そんな話。
注目する所はそこじゃねぇんだよ」
「いや、ここの新八君の隣なんだが・・・」
「新八!?」
近藤の言葉に、銀時は背けていた顔を
一瞬にして写真に寄せた。
確かに、そこには近藤の言うとおり新八が写っている。
・・・何故だか視線はこちらに向いていないが。
だが注目する所はそこではなく・・・
「・・・なんだ、コレ」
そう言って銀時が注目している先、其処には新八の姿と・・・
「なんで神楽と二人でアイスなんか食ってる訳ぇぇ!!?
ちょ、許せないんだけど、銀さん。」
神楽の姿だった。
「・・・や、そこじゃなくてな」
「っつうか俺に黙ってアイス食ってるのもあれだけど、
何より新八のこの顔っ!
ヤバクね?もう色々ヤバクね?
よりによって棒アイスとかっ!
ヤバイの域超えてね!?
これは俺と夜二人っきりでするべき顔だろぉ!?
ってかさせるね、近々っ!」
写真を握り締めて切々と訴える銀時に、流石にお登勢から
灰皿が飛んできた。
思わず怒鳴り声を返そうとした銀時だったが、お登勢の
殺人的視線にそっと視線を外す。
・・・多分、この方が居る限り、新八の身の上は安全だ。
「万事屋・・・寝る前にアイスを食べるのは感心しないぞ。
っと、そうじゃなくてな」
そう言って近藤は銀時の手から零れた写真を手に取った。
そうじゃないのは近藤も同じだ。
だが、ツッコミ不在なのでそのまま進む。
「・・・ここだ、ここ」
近藤は写真の一部を指差し、銀時の顔へと近づけた。
そこには・・・
「・・・なんだ、コレ」
思わず銀時の眉が顰められるのも仕方が無い。
そこには楽しげにアイスを食べる新八と神楽の他に、
はっきりとしない影が映っていたのだ。
「ほら、これもこれも・・・」
次々に写真を見せていく近藤。
その写真全て、はっきりとしない影が映っていた。
見る見る顔色が悪くなっていく銀時。
「おい・・・これって・・・」
コクリと喉を鳴らしそう呟けば、近藤は あぁ。 と
重々しく頷いた。
「お妙さんだ」
「・・・・お妙・・・なんでこんな事に」
真剣な目を写真に向ける銀時に、近藤はもう一度
深く頷いた。
「全くだ、一体何でこんな・・・
写真を幾ら撮っても、お妙さんの姿は映らない。
どんなタイミングで、どんな場所から撮ったとしても
全てこうだ。
その上いつの間にかその場から消えてるんだから、
不思議と言うほかないだろう?」
あぁ、一体俺はどうすれば貴方の写真を手に入れられるのですか、
お妙さんんん!!!
そう咽び泣く近藤に、思わず哀れみの視線を送りそうになった
銀時だったが、今の言葉に少し引っかかりを覚え、
カクリと首を傾げた。
「その場から・・・消えてる?」
「あぁ、そうだ。こう・・・カメラを構えるだろう?
その時は確かにファインダーの中に居るんだが、
シャッターを押す瞬間、その姿が消えるんだっ!」
こう、パッと。身振りを交えながら説明する近藤に、
銀時はちょっと待て。と手を上げた。
「・・・ちなみにその後のお妙は?」
銀時の質問に、一瞬ポカンとした近藤だったが、直ぐに
質問の意図に気付き、ポンと手を打った。
「あぁ、それも不思議なんだが、いつの間にか
俺の後ろに居たりするな。
いや~、どんな場所に隠れててもそうなんだから、
本当不思議・・・いや、そんな不思議でもないか。
それだけ俺達の愛が深いって証拠だもんなぁ、うんうん。
あ、それでか。その後のお妙さんの拳が一段と重いのも。」
ニコニコと・・・多分ニコニコと幸せそうな笑顔を
腫れた奥に隠して、近藤が話し続ける。
ちなみにこれも不思議な事なのだが、そうして気を失った後は
大抵カメラが何処かに消えているか、
跡形もなく壊されているらしい。
ここにあるのは、奇跡の数枚だと言う。
・・・一番不思議なのは、僅かな残像しか残さない程の
スピードを手に入れたお妙の身体能力だな。
そう思いつつも、やっぱり後が怖いので何も言わず、
そっと新八の写っている写真を懐に入れた銀時であった。
**********
新ちゃんが関わった坂田も人のことは言えません(←人外)