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ポンポンと軽く手を乗せれば、まるで誂えた様にしっくりと
自分の手に馴染む。
・・・これ、本当は俺のモンじゃね?
「あ~、またこんな所に脱ぎっぱなしにしてっ!」
昨日呑んだ酒に浸りながらまったり朝寝を決め込んでいたら、
昼の少し前に我が家のオカンに叩き起こされてしまった。
流石に昼までってのは許されなかったらしい。
ズキズキと痛む頭を抱え、これ以上怒らせる前に・・・と
なんとか体を起こせば・・・少し遅かった。
昨日寝る前に脱ぎ散らかしてそのままにしてあった服が
見つかってしまったのだ。
・・・いや、確かに言われてたけどね?
脱いだものは洗濯機に入れろって何度も言われてるけどね。
でもよ、この場合ちゃんと着替えて寝た事を
まず褒めてくれ。
なんて俺の些細な願いは叶わず、新たな怒りのツボ・着物のシミを
見つけてしまった新八は、ギロリと俺の前で仁王立ちした。
あぁ・・・その冷たい視線が
俺に新しい世界への扉を開かせる。
・・・て、ヤバイヤバイ。
落ち着け、俺。思い出せ、ドS精神。
でもその冷たい視線もツボ過ぎる。
ドキドキと高鳴る心臓を押さえつつ、俺はゆっくりと
腰を上げた。
そしてキャンキャンとお小言を始めた新八の頭にポンと手を乗せ、
序にワシャワシャとその柔らかい頭をかき混ぜる。
「ちょ、やめて下さいよ。ってか聞いてるんですかっ!?」
「あ~、はいはい、聞いてるよ~。
何時もあんがとね~」
そう言い、最後に軽く数回叩いて新八の頭から手を離し、
そのまま洗面所へと足を向けた。
・・・よし、なんとか新たな世界には旅立たなかったぞ。
・・・ってかいいよなぁ、アレ。
顔を洗い、何だかんだ言って用意してくれた朝兼昼食を
食べ終わった後、まったりとソファに座ったまま、
隣でテレビを見ている新八の顔を盗み見る。
何時でも背筋をぴしっと伸ばしている新八なので、
背凭れに体を預けまくっている俺から見れば、
丸っこい後頭部もばっちり見えていて。
・・・いいよなぁ、本当。
つい、手が伸びてしまう。
「何ですか?」
突然の感触に驚いたのか、一瞬肩を竦めた新八が
不審げに俺へと視線を向けてくる。
それに ん~。 と適当に返事をし、俺は伸ばした手の先の
感触に神経を集中させた。
サラリとした手触り。
手に馴染む丸い感触。
あぁ・・・やっぱりいいな、コレ。
なでなでと新八の頭をひたすら撫でる。
「・・・楽しいですか、それ」
そんな俺に、不審げなままの視線を投げかけながら、新八が
問い掛ける。
「結構」
即答で答えれば、返ってきたのは深々とした溜息。
失礼なヤツだな、コノヤロー。
まぁ自分では判らないかも知れないが、こいつの頭は心地が良い。
なんと言うかこう・・・しっくり俺の手に馴染むのだ。
・・・ってか俺の手にはまるとか、ちんまくね、コレ。
サラサラと流れる髪をかき上げながら、新八の後頭部の形を確かめる。
おぉ、凄い。掴めるぞ、コレ。
何か力入れたらそのままグワシャと潰れそうだ。
や、しねぇけどよ、そんな事。
だってこれは慈しむべき物体だ。
寧ろ癒し的存在だ。
まぁ新八自体がそれなんだけどよ。
もう何つぅの?触ってるだけで元気になるっつうか?
あ、一部じゃなくて全体な。
そこはちゃんと言っとくから。
そんな即物的なもんじゃないから、銀さん。
まぁ全体って言ってんだから、
そこも含まれてんだけどな。
あぁ、でもさっきまでズキズキしていた頭も、
今じゃピンク色に染まってホンワカ幸せ気分だ。
半分が優しさで出来てるもんなんか目じゃねぇな。
ALL新八は半端ねぇ。
でもよ・・・いいのかコレ。
頭って大事じゃなかったっけ?
なのにこんな剥き出しで大丈夫なのか!?
俺みたいにワサッと吸収材系にしなくていいのか、
この髪の毛!
あぁ、でもこのサラサラした髪の感触も気に入ってるしなぁ・・・
さて、新八の頭を守る為にはどうすればいいのだろう。
俺はフワフワしている脳で一生懸命考えた。
結果・・・
「・・・何してんですか、銀さん」
冷たい声音で新八が問い掛けてくる。
きっと表情も、俺が新たな世界の扉を勢い良く開きたくなる
ぐらいの冷たさをしているのだろう。
止めてくれ、今じゃその新たな世界への扉は
自動ドア並みの簡単オープンだ。
まぁ今は声だけだからまだ大丈夫だろう。と、俺は
抱き締めている新八の頭に頬擦りをした。
そう、大事な大事な新八の頭は、今は俺の腕の中だ。
これならちんまい新八の頭を何からも守れるし、
何より俺が気持ち良い。
まさに一石二鳥!
やっべ、今日の俺、滅茶苦茶冴えてる。
スリスリと頬擦りし、俺は体全体で幸せを満喫した。
・・・ってかこれだけしっくり腕の中にはまるんだから、
頭だけじゃなく、新八そのものが俺のもんじゃね?
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何ものからも守れますが、坂田からは守れてません(←一番の悪)