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「・・・なんだろう、アレ」
家の事をする為本日休みを貰っていた新八だったが、思ったよりも
早く終わってしまった為、暇潰しがてらブラブラと散歩をしていた。
そして公園まで来た所で、もしかしたら神楽が遊んでいるかも・・・と
思い、寄ってみたのだが・・・
「なんで・・・足?」
そう、呟き首を傾げる。
出てきてしまった言葉も無理はない。
上が滑り台で下が筒状になっている至って普通の遊具から、
何故だか二本の足がニョッキリ出ているのだ。
しかも、それが子供のものなら遊んでいる最中かと納得が
出来るのだが、どう見てもそれは大人の足で・・・
「倒れてる・・・のかな?それとも住んでる?」
世の中には色々な人が居るという事知っている新八としては、
それもアリだと言う事を知っている。
が、もし倒れているのだったら放ってはおけない。
とりあえずちょっと覗いてみようかな・・・住んでるようだったら
謝ればいいだけだし。
そう結論を出すと、新八はソロソロとニョッキリ出ている足へと近付いた。
そして恐る恐る覗いて見ると・・・
「・・・何やってんですか、アンタ」
げんなりとした表情を隠す言もせず、浮かべた。
「ん?なんでィ、新八か。」
声を掛けられた本人は、幾分煩わしそうに眉を顰めると、
目に当てていたアイマスクを軽く上げ、トンネルの入り口から
こちらを見ている新八を見返してきた。
「見て判んねぇかィ?昼寝だよ昼寝」
邪魔すんねィ。そう言うと再びアイマスクを降ろし、ゴソゴソと毛布を
引き上げた。
「って何毛布まで持ち込んでんですかっ!
住む気ですか?ここに住む気なんですか!?」
新八は腰を屈め、上半身をトンネルの中へと入れると
沖田の掛けている毛布を力強く引っ張った。
「おいおい、窃盗罪と昼寝妨害の罪でしょっ引くぜィ?
ってかこんな所に住む訳ねぇだろうが、頭大丈夫かィ?
ここは所謂別荘ってヤツでさァ」
沖田は沖田で取り上げられないよう、しっかりと毛布を
掴みながらそう答える。
だが、新八も諦めない。
「アンタこそ大丈夫ですか、その頭。
ってか別荘じゃないですからね、ここ!
思いっきり公共の物ですからっ!!」
微妙に声が響くトンネル内で怒鳴りあいながら、毛布を
引っ張り合う事数分。
慣れない体勢で引っ張り続けた新八が力尽き、漸くその手を緩めた。
そしてそのまま入り口で膝を着き、大きく肩を落とす。
「・・・とりあえず、本当何してんですか」
そう問い掛けると、沖田はケロッとした顔で上半身を
起こし、新八に向き直ると、
「だから昼寝って言ったろ?」
と、簡潔に答えた。
それに再び肩を落とす新八。
「昼寝って・・・なら何時もみたいにベンチで寝てればいいじゃないですか」
人騒がせな。少しだけ怒りを含ませた声で言うと、沖田はヤレヤレと
言った感じで首を振った。
「こんな寒い中、あんな所で寝る馬鹿はいませんぜ?」
「こんな所で寝てる馬鹿なら居ますけどね」
「おいおい、俺の別荘にケチをつける気かィ?
言っとくけど中々の快適空間でさァ」
確かめてみるかィ?笑って手招きする沖田に、アンタの別荘じゃないでしょ!
と言いつつ、素直に四つん這いの状態で中に入っていく新八。
それを見て、沖田は再び横になる。
「あ・・・暖かい?」
見れば下にはきちんとダンボールが敷いてあり、風も遮られて
いるので外よりは温かく感じる。
ポツリと呟いた新八に、沖田の口元がニンマリと上がった。
「だろ?まぁ風の向きによっちゃあ使えねぇけどねィ」
そう言い、近くまできた新八の手を取って引き寄せ、寝転がせる。
そして暴れだされる前に、さっと被っていた毛布を新八にも
掛けてしまった。
「ちょ、何してんですか!」
「まぁまぁ。折角お招きしんたでィ、ゆっくりしていきなせェ」
あ~、温けぇ。
そう言って互いの首元まで毛布を引き上げると、沖田は新八の方に
体を向け、目蓋を閉じてしまった。
確りと新八の手を握って。
新八はそれを見て諦めるように小さく息を吐くと、
同じように体を横へと向けた。
幾ら小柄な方の二人でも、流石に子供向けの遊具の中は狭すぎるのだが、
これならばなんとか収まる事が出来る。
「ゆっくりも何も狭いんですけどね・・・」
ま、どうせ暇だし、少しだけ。ゴソゴソと体を動かし、楽な姿勢を取ると
新八も目蓋を閉じてみた。
その途端小さな寝息と、遠くの喧騒が耳に入ってくる。
こんな所で何してんだか・・・と思うものの、感じる体温も
聞こえる音も新八の眠気を誘い、それに抗う暇もなく、
新八は眠りの世界へと旅立っていった。
「・・・何やってんだ、こいつ等」
市民からの通報により駆けつけてみれば、居たのは見慣れた顔の
能天気な寝顔。
ヒクリと頬を引き攣らせる土方の肩を、近藤が笑って引き止める。
「ははは、微笑ましいじゃないか」
「微笑ましいってアンタ・・・」
能天気な顔がここにもあった・・・と、土方はガクリと肩を落とした。
「しかし、ここまで気持ち良さそうに寝られると
起こすのが忍びないな。どうする?トシ」
「どうする?じゃねぇよ!
そこじゃねぇだろうが、尋ねる部分はぁぁ!!!」
怒鳴る土方と、二人が起きる!と焦る近藤。
そんな二人の先では、狭いトンネルの中で互いに小さくなって毛布に
包まり、熟睡している沖田と新八の姿があった。
****************************
この後、寝たまま背負われて帰宅し、坂田に怒られます。
「ちょっと遅くなったネ」
最近陽が長くなってて油断した。
神楽は定春に跨り、赤く染まった空を見上げた。
今日も何時もどうり遊びに出掛けた。
ーうん、これはヨシ。
そして何時もどうり門限までには家に帰る予定だった。
ーうん、確かにそう思ってたアル。
だが、予定とは時にその通りに進まない事もある訳で。
「あいつのせいネ!」
神楽はギリッと拳を握り締めた。
そう、自分はきちんと時間を見て帰ろうと思ったのだ。
けれど珍しく仕事をしていたらしい沖田と途中で会い、つい何時ものように
死闘のゴングを鳴らしてしまったのだ。
まさに予想外の出来事。
(沖田の仕事が)
「定春!もっと早く走るネ!!」
オマエは白い彗星ヨ!!そう嗾ける神楽に、定春も答えるように一つ鳴くと、
周囲を無視してスピードを上げた。
ヤバイヤバイ。もう門限の時間過ぎたネ。
銀ちゃん、きっと家に居るヨ。
こう言う時に限って絶対居るネ、アレは。
で、こ憎ったらしい顔で説教するに決まってるネ!
別に怖くないけど、
マダオに説教される事ぐらい悔しいことはないネ!!
全く、自分の事は棚上げし過ぎて腰痛めろや、コラ!!!
せめて新八だけなら・・・あぁ、でも彼も私の帰りが遅いと
やっぱり心配そうなシケタツラをするネ。そう思う神楽の視界に、
見慣れた色が入り込んできた。
「あれは・・・・定春!!」
「わふっ!!」
名を呼ぶと神楽の意思が伝わったのか、前方に見えてきた人影目掛けて
定春が僅かに進路を変えた。
そして定春の足音に気付いたのか、前方の人影がこちらを向いた瞬間、
乗っていた神楽がその人影の襟首を掴み、自分の後ろへと引き上げた。
「か、神楽ちゃん!!?」
「おぅ!ぱっつぁん、乗ってくアルカ~?」
驚いたのは引き上げられた新八である。
目を大きく開きながらも、しっかりと定春に掴まる姿に、神楽はニヤリと
口元を上げた。
「いや、もう乗せられてるから。
・・・って、それより門限過ぎてるよ?」
ダメじゃない。眉を顰め、そう言う新八に神楽はすっと顔を戻した。
「仕方ないネ。乙女の時間は世間様が思っているより短かかったアル」
「や、意味判んないからね、ソレ」
「大体あのクソサドが真面目に仕事してなきゃ~よぉぉぉ!!!」
「乙女、そんな事言わないから!
何ソレ、また何かやらかしちゃいましたかぁぁ!!?」
「別に何もしてないネ。ちょっくら破壊活動しただけヨ。
サドが」
「・・・さっきそのサドは真面目に仕事してたって言いませんでしたか?」
「サドが真面目に破壊活動してたの間違いネ」
ニッと笑う神楽に、新八は大きく息を吐いた。
「でも遅れたのは確かだからね。知ったら銀さん、怒るよ~」
新八の言葉に、ウッと言葉を飲み込む神楽。
・・・やっぱりカ。
チラリと視線を向け、今日、居るアルカ?と問い掛けてきた。
それに新八は考えるように首を傾げると、
「ん~、多分もう居るんじゃないかな?僕が出掛ける前、ちょっと
出てくるって言ってたし」
ま、あの人の言う事だから当てにならないけど。苦笑する新八に
神楽はふとある事に気が付いた。
「そう言えば新八はなんでここに居るネ」
どっか行ってたアルカ?問い掛ける神楽に あぁ と笑うと、
「お登勢さんの手伝いでね。ちょっと届け物に行ってたんだ
思ったより遠かったから、途中で会えて良かったよ。」
乗せてくれて有難うね。そう言って定春の背を優しく撫でた。
「銀ちゃんは?知ってるアルカ??」
「一応メモ書きして来たけど?」
なんで?と不思議そうな顔をする新八に、神楽は 定春!! と名を呼んだ。
ソレと共に、更に加速は増していく。
ヤバイヤバイ、本当にヤバイネ。
こう言う時に限って、きっと銀ちゃんはもう家に居るネ!
誰も居ない家で、一人で待ってるヨ、私達を!!
万事屋で一人居る銀時の姿を思い描き、神楽はグッと眉間に皺を寄せた。
「神楽ちゃん?どうしたの?」
「いいから!早く帰るネ!!」
突然それまでの表情を一変させた神楽に、新八は一瞬怪訝そうな視線を
向けるが、直ぐにその頬を綻ばせた。
そして、そうだね。と呟くと、
「門限破っちゃったし、早く帰ろっか。で、今日は二人で
お説教受けようね」
だからもう少し頑張ってね。そう言って定春の背をポンポンと叩いた。
新八の言葉を聞き、漸く神楽も顔の強張りを解いた。
「違うネ。定春も一緒だから二人と一匹ネ!」
「あは、そっか~。じゃあきっとお説教タイムも三倍だ~」
「全く、年寄りは話が長くなっていけないアル」
「僕、今日帰れるかな?」
「きっと無理ネ。だから今日はお泊り決定ヨ」
三人で川の字アル~。とニシシッと笑う神楽の視界に見慣れた景色が入り、
そこに銀色の頭がウロウロとうろついているのが見えるまで、あと少し。
*********************
門限はきっと五時(笑)
その日、万事屋から帰った新八は、家の冷凍庫を見て姉の好物である
アイスがない事に気が付いた。
いつも夜遅くまで仕事を頑張ってくれている姉だ。
せめてこれぐらいは用意しといてあげたい・・・と、少し遅い時間
ではあったが、財布を片手に買い物へと出掛けた。
「とりあえず明日の分だけでいいかな。スーパーで買った方が
安いし・・・」
ついでに何か買うものあったっけ・・・と、考えながら人気のなくなった
道を歩いていると、不意に背後から爆発音が聞こえてきた。
何事だ!?と振り返った瞬間、フワリと体が浮き上がったのを新八は感じた。
「えぇぇ!??な、何んでぇぇえ!!!!???」
「あぁ、新八君、こんばんは」
パニックになっている新八に、聞き慣れた声が掛けられた。
その発生先に目をやれば、そこには流れていく街並みをバックに
軽く片手を上げ、挨拶している桂の姿が。
見れば自分を抱え上げているのはエリザベスで、こちらも看板片手に
挨拶をしてきていた。
「あ、あぁこんばんは・・・ってぇ!!そうじゃないでしょ!!
何なんですか、これは!」
なんで抱え上げられて全力疾走!?と、問い掛けようとした所で、
後ろから嫌な音が新八達を追ってきた。
そして身構える暇もなく、両サイドで爆発が起こる。
「全くだ。夜中だと言うのにドッカンドッカンと・・・
近所迷惑にも程があるだろう。騒がしくて眠れぬわ。」
「いや、聞きたいのはそこじゃないんですけどね。
ってか、その前に眠る場所がなくなっちゃうでしょ、あれじゃ」
新八は爆発音に身を竦めながらも、しっかりとエリザベスの体へと
しがみ付き、視線を後ろへと流した。
そこには予想通り黒い集団が追っかけてきており、先頭を走る人物も
思ったとおりの人物で、新八は大きく息を吐いた。
普段サボってばっかのような気がするのに・・・なんでこう言う時は
生き生きとしているんだろう。
てか、走りながらバズーカ撃つって、何気に凄くない?
寧ろ周囲を気にせず撃ちまくる
その精神が凄くないぃぃ!!?
「一般市民も居ると言うのに、構わず撃ってくるとは・・・」
走りながらも器用に背後からの攻撃を交わしている桂が
忌々しげに呟くのに、新八も少し頷く。・・・が、
「っつうかその一般市民を巻き込んだのは誰ですか。
行き成り抱き抱えて・・・」
新八の言葉に、桂は心外そうな表情で見返してきた。
「それは違うぞ、新八君。俺達はキミを危ない状況から
救ったにすぎん」
「危ない状況?」
振動に舌を噛みそうになるのを堪えながらそう問い返すと、
桂が神妙に頷いた。
エリザベスも空いている片手で看板を出し、桂の言葉に同意している。
・・・てか、果てしなく器用だな、エリザベス・・・
今現在自分の置かれている状況から逃避したくなる思考を押さえ、
新八は先程の自分の事を思い返した。
確かあの時は、後ろから爆発音が聞こえて・・・
「まさか、流れ弾とかに当たりそうになってたんじゃ・・・」
少しだけ青褪めてそう呟けば、
「いや、未成年の一人歩きは
危ないだろう」
と、至って普通に返された。
「っておぉぉぉおおい!!
何ソレ、どんな危機的状況!!?」
「何を言う!少し冒険したいと言うお年頃な気持ちも判らないでもないが、
その些細な気持ちが少年少女を悪の道へと引きずり込むのだぞ!?」
「少しも何も、今現在とんでもない冒険に巻き込まれ中だよ!
悪じゃなくて死への道に道連れ寸前だよ!!!」
そう突っ込む間にも、直ぐ横で景気良く爆発は繰り広げられているのだが、
桂は気にせず言葉を続けた。
「しかもこんな夜更けに出歩くとは・・・自分で思っているほど
親切な大人ばかりではないのだぞ?中には優しい振りをして
人攫いをする輩もいるのだから気を付けねば・・・」
「って、今まさに攫われてる状況
なんですけどぉぉお!!」
「こら、人の話はきちんと聞きなさい。理由があるなら
きちんと聞いてあげるから」
「って聞けるか、こんな状況で!!!!」
見れば先程よりも背後の真選組との距離が縮まっている様な気がする。
しかも、沖田の構えるバズーカの標準が、なんとなく合ってきている
気がする。
ヤバイ・・・と咄嗟に目を瞑る新八に、桂は不意に立ち止まると、
「確かに・・・少し周りが煩いな」
そう呟いて懐からんまい棒を取り出すと、それを力強く地面へと
叩き付けたのであった。
「もう目を開けてもいいぞ」
桂に言われ、恐る恐る目を開けてみれば、そこは何処かの屋根の上らしく、
周囲は静けさに包まれていた。
どうやら上手く真選組は撒けたようだ。
新八は安心して肩の力を抜いた。
それを見詰め、桂がフッと笑みを浮かべる。
「どうやら安心したようだな。どんな理由があったにせよ、
夜道の一人歩きと言うのは不安になるものだ」
「・・・もうそれでいいです」
一々突っ込むのも疲れる。と、新八は諦めてカクリと頭を垂れた。
「そうか、では家まで送るとしよう」
行くぞ、エリザベス。桂はその様子に満足げに頷くと、未だ新八を
抱え上げたままのエリザベスを促し、そのまま屋根伝いに
歩き始めた。
「・・・で、なんでここなんです?」
心身ともに疲れきった新八が漸く降ろされた場所は、何故か夕方後にした
ばかりの万事屋の前で。
家まで送ってくれるんじゃなかったのかよ。と、無言で桂を見上げれば、
「なんでも何も、
家まで送ると言っただろう」
と、至極当たり前のように返された。
・・・いやここ、僕の家じゃないから。
一応職場だから。
最早第二の家のようなもんだけど、
本籍住所は違うから。
そうは思うが、もう色々と疲れた。
「大体銀時も銀時だ。こんな夜分に新八君一人を出歩かせるとは・・・」
一度よく言い聞かせねば・・・と、チャイムを押し続ける桂を見詰め、
新八は諦めと共に大きく息を吐き出した。
落し物シリーズです(断言)
てか、ヅラは多分間違ってない(笑)
「全く、弱いんだから、こんなになるまで呑まないで下さいよ!」
繁華街と言っても、そろそろ灯りが少なくって来た夜更けすぎ。
新八は既に力があまり入っていない大きな体に肩を貸しながら
人気のなくなった道を歩いていた。
「あ~、うんうん、大丈夫、呑んでない、呑んでないから」
流し込んだだけ~。ヘラヘラと楽しげに言う銀時に、新八は
深い溜息を吐いた。
飲み屋から電話が来たのは、夕食後にフラリと出掛けてそのまま
帰って来そうにない銀時を待つのも馬鹿らしいと、
そろそろ寝ようと思っていた時の事だ。
既に何回か迎えに行っている新八は、電話の向こうに謝罪と直ぐに行く事を
告げ、急いで万事屋を飛び出して行った。
そして、辿り着いた店で見つけたのは、デロデロに酔っ払った上司の姿。
お金もないのに・・・と怒りを顕にしたが、どうやら今日は
誰かの奢りだったらしい。
潰れている銀時の向こうに見える、同じよな状態の、同じような
モジャモジャ頭はすっぱり見ない事にした。
そして半ば眠りの淵に居る銀時を起こし、店主にもう一度侘びを入れると、
速やかにその場を後にした。
「ちょ、銀さん!もう少しですからちゃんと歩いて下さいってば!!」
段々と重くなっていく銀時の体に、新八は慌てて声を張り上げた。
隣から言葉になっていない声と共に、アルコールの匂いがやってくるが
そんな事を気にしている場合ではない。
だって、ここで寝られても運べないし!!
無理無理無理、肩を貸している今でさえ厳しいのに!!
こんな事なら定春を起こして連れてこれば良かった・・・と一瞬思うが、
直ぐにその案は闇の中へと放り込んだ。
・・・無駄な血は流したくない、
特にこんな理由で自分の血を。
定春を起こした場合に起きるであろう惨劇を予想し、新八はブルリと
体を震わせた。
そしてなんとか声をかけ続け、銀時には少しでも自力で歩いていって
貰おうと決めた時、弱弱しい声が隣から聞こえてきた。
「どうかしました?」
顔を向けそう問い掛けると、銀時は顔を青褪めさせ、新八の肩に廻している
手とは反対の手で、苦しそうに口元を押さえていた。
それを見て、新八は答えを待つまでもなく、近くの側溝へと銀時の体を
押しやったのであった。
「どうですか?少しは気分良くなりました?」
それから暫く落ち着くのを待ち、新八はしゃがみ込んでいる銀時に
問い掛けた。
体育座りで膝の間に視線を落としていた銀時は、その声にゆっくりと
頭を上げると、未だ酔いの冷め切らぬ顔でニヘラと笑う。
「お~、ぱっつぁん!どうした、こんな所で」
こんな時間に未成年がふら付くとは・・・いかんねぇ。いかんいかん。等と
何度となく頷きながら呟くので、新八はとりあえずそのコクコクと動いてる
頭を軽く叩いた。
「原因が何言ってんですか」
ほら、行きますよ。そして銀時の手を取ると、どうにか立たせて
自分の肩へと腕を廻させた。
それをキョトンとした表情で見詰めていた銀時だったが、
次第にクスクスと笑い出した。
「どうしたんですか?」
普段あまり見る事のない銀時の表情に、新八はまともな返答を期待しないまでも、
会話を繋げる為・・・と問いかけてみる。
すると、銀時はいっそう楽しげに笑い、直ぐ隣にある新八の頬へと
自分の頬を摺り寄せた。
「ね、今ね?銀さん、拾われちゃったよね?これ。」
新八に。そう告げてくる銀時に、新八は一瞬目を丸くする。
酔っ払いの思考回路は複雑だ。
どこをどうしたら、『迎え』が『拾う』事になるのだろうか。
って言うかなんで拾われて嬉しいんだ?
っつうかその前に誰に捨てられた設定??
色々思いはするものの、それこそ酔っ払い相手に何言っても無駄だろう。
なので、一番重要な所だけ、言葉にしてみる。
「別に拾ってないですよ。てかこんなマダオ、自発的に拾いません」
「い~や、拾いました。新八は銀さんを拾っちゃいました~」
歌うように言ってますます擦り寄ってくる銀時に、新八は小さく噴出す。
「なら拾うの止めて元のトコに戻します」
こんな重いの、持ってられないですもん。そう言って銀時の背に廻していた
手を離そうとしたが、反対にギュッと抱き込まれてしまう。
「ちょ、銀さん苦しい!!」
苦しさのあまり、なんとか間に手を入れて離れようとするが、銀時が
それを許さず、抱き締めている腕に力を込めていく。
「無理でぇす。一度拾われたからには、捨てられても追っかけて
離れませぇん。逃げても無駄でぇす。」
「なんすか、ソレ。押しかけにも程があるぞコノヤロー」
「ちなみに今なら一割と言わず、銀さん全部を贈呈しまぁす」
だからきちんと拾って。銀時は新八の言葉を無視すると、
その旋毛に軽く唇を落とした。
新八は小さく息を吐くと、宥めるように銀時の背中を叩いた。
「はいはい、判りました。ちゃんと拾いましたよ~」
だからもう帰りましょうね。新八の言葉に、銀時は小さく笑って頷くと
もう一度その旋毛へと唇を落とし、
「拾われちゃったな~、おい」
と、嬉しそうに呟いたのであった。
そんな銀時を見て、新八はクスリと笑いながらも、
これは朝起きて記憶があったら恥ずかしいだろうなぁ。
と、今後自分がお酒を飲む時は、発言に気をつける事を固く誓ったのであった。
「うぅ・・・頭がヤバイんですけど・・・え、何コレ?
誰があの鐘を鳴らしてるの?」
「いや、誰も鳴らしてませんから。って言うかどの鐘??」
次の日、起こした銀時は昨夜の楽しげな雰囲気とは全く違い、
布団から起き上がるのもままならない屍状態だった。
この調子じゃ、今日は使い物にならないな。と新八は判断すると、
持ってきた水を銀時へと差し出した。
「これに懲りたら、今後は控えてくださいね」
新八の言葉に、銀時は差し出された水を口にしながら、小さく頷いた。
ま、この分じゃ昨日の記憶はないな。
「・・・結構可愛かったのに・・・」
ボソリと呟いた新八に、聞き取れなかった銀時が 何? と問い掛けるような
視線を寄越した。
それに何でもないと首を振ると、遣り残した家事をこなす為、その場から
腰を上げようとした・・・が、不意に銀時の手が新八の手を取った。
「何ですか?」
まだお水いります?と問い掛ける新八に、銀時は違うと軽く手を振り、
「オマエ、今日泊まってく?」
と聞いてきた。新八は突然言われた言葉に、今日何かあったか?と
頭を巡らせるが何も思い浮かばず、
「いえ、帰りますけど・・・何かありましたっけ?」
と、銀時に問い掛けた。すると銀時は 別になんもねぇけどよ・・・
と言葉を続け、
「何時ごろ銀さんの全部を受け取ってくれるのかな~って。」
ニヤリと笑って捕まえていた新八の手に唇を落とした。
「っな!!!」
「ちなみに今すぐでも頑張って答えます」
二日酔いですが、よろしく~。と笑う銀時に、
「それを言うなら不束者だぁぁぁぁぁああ!!!」
と、顔を真っ赤にした新八が痛恨の一撃を加えたのは、言うまでもない。
***************************
拾い物シリーズ(いつの間に??)坂田編です。
「おい、どうした」
「あ、土方さん」
巡察中、道端で蹲っている見慣れた姿を見つけた。
調子が悪いのかと、少しばかり慌てて声を掛けのが悪かったのか、
返ってきたのはきょとんとした顔と声。
この場合、不思議そうにするのはこちらの方だと僕は思いました。
・・・て、あれ?また作文???????
コホンと一つ咳を吐いて気を取り直し、既に立ち上がって
呑気に挨拶なんぞしてくる少年、志村新八に向かって
土方は先程の体勢の理由を問い掛けた。
すると、恥ずかしそうに視線を伏せ、首筋を掻きながら
ちらりと袴の裾を上げた。
って、上げた!!!???
思わず視線が普段晒される事のない素肌に目がいき、固まってしまう
土方を余所に、新八はそのまま軽く足をあげ、プラリと振った。
「どうも鼻緒が切れちゃったみたいで・・・」
使い込んでたから、寿命ですかね?気恥ずかしげに告げる新八に、
土方は漸く視線を草履へと移した。
「あ?・・・あぁ、鼻緒・・・」
確かにプツリと切れているらしく、新八の足から離れ、プラプラと
揺れている。
それを見て土方は片膝を着くと、新八の足をそっと掴んだ。
「ぅわっ!ちょ、土方さん!!」
「あ~、本当だ。こりゃダメだな」
突然足を取られた事でバランスを崩しそうになった新八から、焦った
声が聞こえたが、土方はそれを無視して繁々と原因の箇所を見詰めた。
「ちょっ、いいですから離して下さいよ~」
「ん?いや、ちょっと待て。っつうかバランス悪いなら俺の肩に手ぇ
乗っけとけ」
そう言うと土方は新八の足から草履を取り、足袋のみとなった足を
自分の膝へと乗せてそのままポケットを探りだした。
ちなみに乗せられた足は、土方の手によってガッチリと掴まれている。
新八はそんな土方に、離してくれる気がない事を悟ると、
諦めと共に小さく息を吐いた。
「・・・面倒見いいですよね~」
「そうか?」
何でもなさそうに言う土方に、新八は姉と毎日の様に繰り返される攻防戦の末、
屍となった近藤を迎えに現れる姿を思い出していた。
・・・性分なんだろうな、きっと。
ほんの少し涙を滲ませながら、新八は土方の言葉に甘えてそっと肩に手を置いた。
そして待つ事暫し。
だが、土方のポケットから、探していた物が出てくる事はなかった。
「すまねぇ、何時もはハンカチぐらい持ってるんだが・・・」
朝、近藤の血止めに使ってしまって、そのまま忘れていたらしい。
土方は申し訳なさそうに黒い髪を項垂れさせた。
それは手助けできなかった事からか。
それとも、毎朝の様に繰り返されている自分の上司の
行動を思い出したからか。
本当はいい所を見せられなかった悔しさからだが、
新八には判らない。
どちらにせよ土方に非はないのだ。と、
新八は慌てて手を振り、気にしないでくれと告げた。
「どうせもう万事屋に帰るだけですから、このままで行きますよ」
裸足って訳でもないし。そう言って新八は土方の膝から自分の足を
どかした。
土方も 仕方ねぇか。 と呟き、その場に立ち上がる。
そして土方から草履を返して貰おうと、手を伸ばした所で
目の前の人物にクルリと背を向けられ、新八は目を丸くする。
「あの・・・土方さん?」
「ん?おら、早く乗れ」
既に土方はしゃがんでおり、後ろ手でコイコイとばかりに新八を呼んでいる。
その姿に新八は俯きそうになる額に手を当て、そっと息を零した。
「・・・何してんですか」
「なんだ、横抱きがいいのか?」
「いや、人の話聞けよ。
ってかなんで負んぶなんですか!」
「幾ら足袋履いてても危ねぇだろ」
いいから早くしろ。土方はそう言うと、体を少し捩って新八の手を引き寄せ、
近付いた両足の膝の裏に手を廻すと、そのまま勢い良く立ち上がった。
「ぅわっ!!!」
突然の出来事に、慌ててしがみ付いてくる新八に、土方は一つ頷くと
軽くその体を持ち上げ、ちゃんとした負んぶの格好を取った。
そしてそのままなんの躊躇もなく歩き出す。
「うぅ・・・恥ずかしい・・・」
新八は真っ赤になっているだろう自分の顔をその背中に押し付けた。
そしてこの姿のまま万事屋に帰った時の事を予想し、
ガクリと肩を落とした。
「絶対からかわれる・・・」
「誰にだ?」
独り言よろしく、小さく呟いたつもりだったが、密着している為
土方には聞かれたらしい。
新八はウンザリした声で土方に答えた。
「銀さんと神楽ちゃんですよ」
あの人達、こういうのを見逃すほど大人じゃないんです。そう告げる新八に
土方は あ~、確かにな。 と同意した。
「安心しろ、向かってるのはそこじゃねぇ。屯所だ」
「え?」
土方の言葉に驚き、顔を上げれば確かに万事屋へと行く道ではない。
「・・・なんで?」
不思議そうに問い掛ける新八に、土方は小さく笑うと、
「落し物はまず警察に届けなきゃなぁ?」
「・・・僕、物じゃないですけど」
「落ちてた事には変わりねぇ」
「いや、座ってただけですけどね?」
「で、落とし主が半年現れなかったら、拾ったヤツのもんになる」
半年後は真選組隊士だな。視線をちらりと向け、ニヤリと笑う土方に、
新八は遠くの方からド○ド○の曲が流れてくるのが聞こえた気がした。
その後、半時も待たずに真選組屯所に現れた銀時に
無事引き取られたのだが・・・
「いいから!ちゃんと書いとかなきゃダメなんだよ!!」
「うるせーよ!ってかなんで『万事屋 坂田銀時』??」
書くなら僕の名前でしょうが!!と、サインペン片手に迫ってくる銀時相手に
熱い攻防を繰り広げていた。
「ばっか!こう言うのは所有者の名前を書くんだってぇの!!」
「馬鹿はオマエだぁぁぁぁぁあ!!」
「っち!やっぱペンだと消えちまうか・・・
・・・いっそ墨でも入れるか?」
「ぎゃぁぁぁぁあ!!
助けて、お巡りさぁぁあん!!!」
「ばっ!!待てって、
まだ名前書いてねぇぇぇええ!!!!」
・・・その後、暫くの間、志村新八が一人で外を出歩く事はなかったと言う。
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ちなみに場所は太ももでv(最悪だぁぁぁ!!)