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その日、万事屋から帰った新八は、家の冷凍庫を見て姉の好物である
アイスがない事に気が付いた。
いつも夜遅くまで仕事を頑張ってくれている姉だ。
せめてこれぐらいは用意しといてあげたい・・・と、少し遅い時間
ではあったが、財布を片手に買い物へと出掛けた。
「とりあえず明日の分だけでいいかな。スーパーで買った方が
安いし・・・」
ついでに何か買うものあったっけ・・・と、考えながら人気のなくなった
道を歩いていると、不意に背後から爆発音が聞こえてきた。
何事だ!?と振り返った瞬間、フワリと体が浮き上がったのを新八は感じた。
「えぇぇ!??な、何んでぇぇえ!!!!???」
「あぁ、新八君、こんばんは」
パニックになっている新八に、聞き慣れた声が掛けられた。
その発生先に目をやれば、そこには流れていく街並みをバックに
軽く片手を上げ、挨拶している桂の姿が。
見れば自分を抱え上げているのはエリザベスで、こちらも看板片手に
挨拶をしてきていた。
「あ、あぁこんばんは・・・ってぇ!!そうじゃないでしょ!!
何なんですか、これは!」
なんで抱え上げられて全力疾走!?と、問い掛けようとした所で、
後ろから嫌な音が新八達を追ってきた。
そして身構える暇もなく、両サイドで爆発が起こる。
「全くだ。夜中だと言うのにドッカンドッカンと・・・
近所迷惑にも程があるだろう。騒がしくて眠れぬわ。」
「いや、聞きたいのはそこじゃないんですけどね。
ってか、その前に眠る場所がなくなっちゃうでしょ、あれじゃ」
新八は爆発音に身を竦めながらも、しっかりとエリザベスの体へと
しがみ付き、視線を後ろへと流した。
そこには予想通り黒い集団が追っかけてきており、先頭を走る人物も
思ったとおりの人物で、新八は大きく息を吐いた。
普段サボってばっかのような気がするのに・・・なんでこう言う時は
生き生きとしているんだろう。
てか、走りながらバズーカ撃つって、何気に凄くない?
寧ろ周囲を気にせず撃ちまくる
その精神が凄くないぃぃ!!?
「一般市民も居ると言うのに、構わず撃ってくるとは・・・」
走りながらも器用に背後からの攻撃を交わしている桂が
忌々しげに呟くのに、新八も少し頷く。・・・が、
「っつうかその一般市民を巻き込んだのは誰ですか。
行き成り抱き抱えて・・・」
新八の言葉に、桂は心外そうな表情で見返してきた。
「それは違うぞ、新八君。俺達はキミを危ない状況から
救ったにすぎん」
「危ない状況?」
振動に舌を噛みそうになるのを堪えながらそう問い返すと、
桂が神妙に頷いた。
エリザベスも空いている片手で看板を出し、桂の言葉に同意している。
・・・てか、果てしなく器用だな、エリザベス・・・
今現在自分の置かれている状況から逃避したくなる思考を押さえ、
新八は先程の自分の事を思い返した。
確かあの時は、後ろから爆発音が聞こえて・・・
「まさか、流れ弾とかに当たりそうになってたんじゃ・・・」
少しだけ青褪めてそう呟けば、
「いや、未成年の一人歩きは
危ないだろう」
と、至って普通に返された。
「っておぉぉぉおおい!!
何ソレ、どんな危機的状況!!?」
「何を言う!少し冒険したいと言うお年頃な気持ちも判らないでもないが、
その些細な気持ちが少年少女を悪の道へと引きずり込むのだぞ!?」
「少しも何も、今現在とんでもない冒険に巻き込まれ中だよ!
悪じゃなくて死への道に道連れ寸前だよ!!!」
そう突っ込む間にも、直ぐ横で景気良く爆発は繰り広げられているのだが、
桂は気にせず言葉を続けた。
「しかもこんな夜更けに出歩くとは・・・自分で思っているほど
親切な大人ばかりではないのだぞ?中には優しい振りをして
人攫いをする輩もいるのだから気を付けねば・・・」
「って、今まさに攫われてる状況
なんですけどぉぉお!!」
「こら、人の話はきちんと聞きなさい。理由があるなら
きちんと聞いてあげるから」
「って聞けるか、こんな状況で!!!!」
見れば先程よりも背後の真選組との距離が縮まっている様な気がする。
しかも、沖田の構えるバズーカの標準が、なんとなく合ってきている
気がする。
ヤバイ・・・と咄嗟に目を瞑る新八に、桂は不意に立ち止まると、
「確かに・・・少し周りが煩いな」
そう呟いて懐からんまい棒を取り出すと、それを力強く地面へと
叩き付けたのであった。
「もう目を開けてもいいぞ」
桂に言われ、恐る恐る目を開けてみれば、そこは何処かの屋根の上らしく、
周囲は静けさに包まれていた。
どうやら上手く真選組は撒けたようだ。
新八は安心して肩の力を抜いた。
それを見詰め、桂がフッと笑みを浮かべる。
「どうやら安心したようだな。どんな理由があったにせよ、
夜道の一人歩きと言うのは不安になるものだ」
「・・・もうそれでいいです」
一々突っ込むのも疲れる。と、新八は諦めてカクリと頭を垂れた。
「そうか、では家まで送るとしよう」
行くぞ、エリザベス。桂はその様子に満足げに頷くと、未だ新八を
抱え上げたままのエリザベスを促し、そのまま屋根伝いに
歩き始めた。
「・・・で、なんでここなんです?」
心身ともに疲れきった新八が漸く降ろされた場所は、何故か夕方後にした
ばかりの万事屋の前で。
家まで送ってくれるんじゃなかったのかよ。と、無言で桂を見上げれば、
「なんでも何も、
家まで送ると言っただろう」
と、至極当たり前のように返された。
・・・いやここ、僕の家じゃないから。
一応職場だから。
最早第二の家のようなもんだけど、
本籍住所は違うから。
そうは思うが、もう色々と疲れた。
「大体銀時も銀時だ。こんな夜分に新八君一人を出歩かせるとは・・・」
一度よく言い聞かせねば・・・と、チャイムを押し続ける桂を見詰め、
新八は諦めと共に大きく息を吐き出した。
落し物シリーズです(断言)
てか、ヅラは多分間違ってない(笑)