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「ちょっと遅くなったネ」
最近陽が長くなってて油断した。
神楽は定春に跨り、赤く染まった空を見上げた。
今日も何時もどうり遊びに出掛けた。
ーうん、これはヨシ。
そして何時もどうり門限までには家に帰る予定だった。
ーうん、確かにそう思ってたアル。
だが、予定とは時にその通りに進まない事もある訳で。
「あいつのせいネ!」
神楽はギリッと拳を握り締めた。
そう、自分はきちんと時間を見て帰ろうと思ったのだ。
けれど珍しく仕事をしていたらしい沖田と途中で会い、つい何時ものように
死闘のゴングを鳴らしてしまったのだ。
まさに予想外の出来事。
(沖田の仕事が)
「定春!もっと早く走るネ!!」
オマエは白い彗星ヨ!!そう嗾ける神楽に、定春も答えるように一つ鳴くと、
周囲を無視してスピードを上げた。
ヤバイヤバイ。もう門限の時間過ぎたネ。
銀ちゃん、きっと家に居るヨ。
こう言う時に限って絶対居るネ、アレは。
で、こ憎ったらしい顔で説教するに決まってるネ!
別に怖くないけど、
マダオに説教される事ぐらい悔しいことはないネ!!
全く、自分の事は棚上げし過ぎて腰痛めろや、コラ!!!
せめて新八だけなら・・・あぁ、でも彼も私の帰りが遅いと
やっぱり心配そうなシケタツラをするネ。そう思う神楽の視界に、
見慣れた色が入り込んできた。
「あれは・・・・定春!!」
「わふっ!!」
名を呼ぶと神楽の意思が伝わったのか、前方に見えてきた人影目掛けて
定春が僅かに進路を変えた。
そして定春の足音に気付いたのか、前方の人影がこちらを向いた瞬間、
乗っていた神楽がその人影の襟首を掴み、自分の後ろへと引き上げた。
「か、神楽ちゃん!!?」
「おぅ!ぱっつぁん、乗ってくアルカ~?」
驚いたのは引き上げられた新八である。
目を大きく開きながらも、しっかりと定春に掴まる姿に、神楽はニヤリと
口元を上げた。
「いや、もう乗せられてるから。
・・・って、それより門限過ぎてるよ?」
ダメじゃない。眉を顰め、そう言う新八に神楽はすっと顔を戻した。
「仕方ないネ。乙女の時間は世間様が思っているより短かかったアル」
「や、意味判んないからね、ソレ」
「大体あのクソサドが真面目に仕事してなきゃ~よぉぉぉ!!!」
「乙女、そんな事言わないから!
何ソレ、また何かやらかしちゃいましたかぁぁ!!?」
「別に何もしてないネ。ちょっくら破壊活動しただけヨ。
サドが」
「・・・さっきそのサドは真面目に仕事してたって言いませんでしたか?」
「サドが真面目に破壊活動してたの間違いネ」
ニッと笑う神楽に、新八は大きく息を吐いた。
「でも遅れたのは確かだからね。知ったら銀さん、怒るよ~」
新八の言葉に、ウッと言葉を飲み込む神楽。
・・・やっぱりカ。
チラリと視線を向け、今日、居るアルカ?と問い掛けてきた。
それに新八は考えるように首を傾げると、
「ん~、多分もう居るんじゃないかな?僕が出掛ける前、ちょっと
出てくるって言ってたし」
ま、あの人の言う事だから当てにならないけど。苦笑する新八に
神楽はふとある事に気が付いた。
「そう言えば新八はなんでここに居るネ」
どっか行ってたアルカ?問い掛ける神楽に あぁ と笑うと、
「お登勢さんの手伝いでね。ちょっと届け物に行ってたんだ
思ったより遠かったから、途中で会えて良かったよ。」
乗せてくれて有難うね。そう言って定春の背を優しく撫でた。
「銀ちゃんは?知ってるアルカ??」
「一応メモ書きして来たけど?」
なんで?と不思議そうな顔をする新八に、神楽は 定春!! と名を呼んだ。
ソレと共に、更に加速は増していく。
ヤバイヤバイ、本当にヤバイネ。
こう言う時に限って、きっと銀ちゃんはもう家に居るネ!
誰も居ない家で、一人で待ってるヨ、私達を!!
万事屋で一人居る銀時の姿を思い描き、神楽はグッと眉間に皺を寄せた。
「神楽ちゃん?どうしたの?」
「いいから!早く帰るネ!!」
突然それまでの表情を一変させた神楽に、新八は一瞬怪訝そうな視線を
向けるが、直ぐにその頬を綻ばせた。
そして、そうだね。と呟くと、
「門限破っちゃったし、早く帰ろっか。で、今日は二人で
お説教受けようね」
だからもう少し頑張ってね。そう言って定春の背をポンポンと叩いた。
新八の言葉を聞き、漸く神楽も顔の強張りを解いた。
「違うネ。定春も一緒だから二人と一匹ネ!」
「あは、そっか~。じゃあきっとお説教タイムも三倍だ~」
「全く、年寄りは話が長くなっていけないアル」
「僕、今日帰れるかな?」
「きっと無理ネ。だから今日はお泊り決定ヨ」
三人で川の字アル~。とニシシッと笑う神楽の視界に見慣れた景色が入り、
そこに銀色の頭がウロウロとうろついているのが見えるまで、あと少し。
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門限はきっと五時(笑)