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「全く、弱いんだから、こんなになるまで呑まないで下さいよ!」
繁華街と言っても、そろそろ灯りが少なくって来た夜更けすぎ。
新八は既に力があまり入っていない大きな体に肩を貸しながら
人気のなくなった道を歩いていた。
「あ~、うんうん、大丈夫、呑んでない、呑んでないから」
流し込んだだけ~。ヘラヘラと楽しげに言う銀時に、新八は
深い溜息を吐いた。
飲み屋から電話が来たのは、夕食後にフラリと出掛けてそのまま
帰って来そうにない銀時を待つのも馬鹿らしいと、
そろそろ寝ようと思っていた時の事だ。
既に何回か迎えに行っている新八は、電話の向こうに謝罪と直ぐに行く事を
告げ、急いで万事屋を飛び出して行った。
そして、辿り着いた店で見つけたのは、デロデロに酔っ払った上司の姿。
お金もないのに・・・と怒りを顕にしたが、どうやら今日は
誰かの奢りだったらしい。
潰れている銀時の向こうに見える、同じよな状態の、同じような
モジャモジャ頭はすっぱり見ない事にした。
そして半ば眠りの淵に居る銀時を起こし、店主にもう一度侘びを入れると、
速やかにその場を後にした。
「ちょ、銀さん!もう少しですからちゃんと歩いて下さいってば!!」
段々と重くなっていく銀時の体に、新八は慌てて声を張り上げた。
隣から言葉になっていない声と共に、アルコールの匂いがやってくるが
そんな事を気にしている場合ではない。
だって、ここで寝られても運べないし!!
無理無理無理、肩を貸している今でさえ厳しいのに!!
こんな事なら定春を起こして連れてこれば良かった・・・と一瞬思うが、
直ぐにその案は闇の中へと放り込んだ。
・・・無駄な血は流したくない、
特にこんな理由で自分の血を。
定春を起こした場合に起きるであろう惨劇を予想し、新八はブルリと
体を震わせた。
そしてなんとか声をかけ続け、銀時には少しでも自力で歩いていって
貰おうと決めた時、弱弱しい声が隣から聞こえてきた。
「どうかしました?」
顔を向けそう問い掛けると、銀時は顔を青褪めさせ、新八の肩に廻している
手とは反対の手で、苦しそうに口元を押さえていた。
それを見て、新八は答えを待つまでもなく、近くの側溝へと銀時の体を
押しやったのであった。
「どうですか?少しは気分良くなりました?」
それから暫く落ち着くのを待ち、新八はしゃがみ込んでいる銀時に
問い掛けた。
体育座りで膝の間に視線を落としていた銀時は、その声にゆっくりと
頭を上げると、未だ酔いの冷め切らぬ顔でニヘラと笑う。
「お~、ぱっつぁん!どうした、こんな所で」
こんな時間に未成年がふら付くとは・・・いかんねぇ。いかんいかん。等と
何度となく頷きながら呟くので、新八はとりあえずそのコクコクと動いてる
頭を軽く叩いた。
「原因が何言ってんですか」
ほら、行きますよ。そして銀時の手を取ると、どうにか立たせて
自分の肩へと腕を廻させた。
それをキョトンとした表情で見詰めていた銀時だったが、
次第にクスクスと笑い出した。
「どうしたんですか?」
普段あまり見る事のない銀時の表情に、新八はまともな返答を期待しないまでも、
会話を繋げる為・・・と問いかけてみる。
すると、銀時はいっそう楽しげに笑い、直ぐ隣にある新八の頬へと
自分の頬を摺り寄せた。
「ね、今ね?銀さん、拾われちゃったよね?これ。」
新八に。そう告げてくる銀時に、新八は一瞬目を丸くする。
酔っ払いの思考回路は複雑だ。
どこをどうしたら、『迎え』が『拾う』事になるのだろうか。
って言うかなんで拾われて嬉しいんだ?
っつうかその前に誰に捨てられた設定??
色々思いはするものの、それこそ酔っ払い相手に何言っても無駄だろう。
なので、一番重要な所だけ、言葉にしてみる。
「別に拾ってないですよ。てかこんなマダオ、自発的に拾いません」
「い~や、拾いました。新八は銀さんを拾っちゃいました~」
歌うように言ってますます擦り寄ってくる銀時に、新八は小さく噴出す。
「なら拾うの止めて元のトコに戻します」
こんな重いの、持ってられないですもん。そう言って銀時の背に廻していた
手を離そうとしたが、反対にギュッと抱き込まれてしまう。
「ちょ、銀さん苦しい!!」
苦しさのあまり、なんとか間に手を入れて離れようとするが、銀時が
それを許さず、抱き締めている腕に力を込めていく。
「無理でぇす。一度拾われたからには、捨てられても追っかけて
離れませぇん。逃げても無駄でぇす。」
「なんすか、ソレ。押しかけにも程があるぞコノヤロー」
「ちなみに今なら一割と言わず、銀さん全部を贈呈しまぁす」
だからきちんと拾って。銀時は新八の言葉を無視すると、
その旋毛に軽く唇を落とした。
新八は小さく息を吐くと、宥めるように銀時の背中を叩いた。
「はいはい、判りました。ちゃんと拾いましたよ~」
だからもう帰りましょうね。新八の言葉に、銀時は小さく笑って頷くと
もう一度その旋毛へと唇を落とし、
「拾われちゃったな~、おい」
と、嬉しそうに呟いたのであった。
そんな銀時を見て、新八はクスリと笑いながらも、
これは朝起きて記憶があったら恥ずかしいだろうなぁ。
と、今後自分がお酒を飲む時は、発言に気をつける事を固く誓ったのであった。
「うぅ・・・頭がヤバイんですけど・・・え、何コレ?
誰があの鐘を鳴らしてるの?」
「いや、誰も鳴らしてませんから。って言うかどの鐘??」
次の日、起こした銀時は昨夜の楽しげな雰囲気とは全く違い、
布団から起き上がるのもままならない屍状態だった。
この調子じゃ、今日は使い物にならないな。と新八は判断すると、
持ってきた水を銀時へと差し出した。
「これに懲りたら、今後は控えてくださいね」
新八の言葉に、銀時は差し出された水を口にしながら、小さく頷いた。
ま、この分じゃ昨日の記憶はないな。
「・・・結構可愛かったのに・・・」
ボソリと呟いた新八に、聞き取れなかった銀時が 何? と問い掛けるような
視線を寄越した。
それに何でもないと首を振ると、遣り残した家事をこなす為、その場から
腰を上げようとした・・・が、不意に銀時の手が新八の手を取った。
「何ですか?」
まだお水いります?と問い掛ける新八に、銀時は違うと軽く手を振り、
「オマエ、今日泊まってく?」
と聞いてきた。新八は突然言われた言葉に、今日何かあったか?と
頭を巡らせるが何も思い浮かばず、
「いえ、帰りますけど・・・何かありましたっけ?」
と、銀時に問い掛けた。すると銀時は 別になんもねぇけどよ・・・
と言葉を続け、
「何時ごろ銀さんの全部を受け取ってくれるのかな~って。」
ニヤリと笑って捕まえていた新八の手に唇を落とした。
「っな!!!」
「ちなみに今すぐでも頑張って答えます」
二日酔いですが、よろしく~。と笑う銀時に、
「それを言うなら不束者だぁぁぁぁぁああ!!!」
と、顔を真っ赤にした新八が痛恨の一撃を加えたのは、言うまでもない。
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拾い物シリーズ(いつの間に??)坂田編です。