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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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何時ものようにソファでゴロゴロしていると、突然ピリッとした痛みが
口元に走った。

思わず小さく声を上げ、手を当ててみれば、指先に薄っすらと
赤い血がついてるのが見えた。

あ~・・・切れたか、こりゃ。

指先についた血を見ながら、ペロリと唇を舐める。

やはりピリリと痛み、ぼんやりと卵掛けご飯は沁みそうだな・・・
なんて考えていると、それまで天井しか映ってなかった視界に
ヒョコリと新八が現れた。

「どうかしました・・・ってぅわ~、どうしたんですか、それ」

ソファに横になってる俺を、覗き込むようにして現れた
新八は、俺の切れた唇を見て痛そうに顔を顰め、その場に膝を着いた。

「ん~、なんか突然切れた」

ホレ。そう言って血の付いた指先を新八へと向ける。
それに益々顔を顰めると、新八は

「どうせ大口開けて欠伸でもしたんでしょ」

と言うと、ゴソゴソと自分の袂を漁り、何かを取り出してきた。
・・・ってそれ・・・

「・・・・・・・・・なに?」

小さな缶を取り出した新八に、俺は首を傾げる。
そんな俺を新八はクスリと笑うと、リップクリームですよ。と言って
手にした小さな缶の蓋を開けた。

「へ?だってリップクリームって口紅みたいなもんだろ?
ってかなんでオマエが持ってんの?」

言われた言葉に納得がいかず、そう問い掛けると、

「こういう形のもあるんですよ。僕も結構乾燥しやすいから、
この季節になると持ち歩いてるんです」

はい、軽く口開けてくださいね~。そう言って缶に中指を入れ、
中身を掬い取ると、そのまま俺の口元へと近づけてきた。

「・・・こういうの、変な味すっから苦手なんだけど」

「舐めなきゃいいでしょ、そんなの。
ってか舐めるな」

いやいや、それは無理でしょ。
だってなんか付けられたら舐めたくなるじゃん?
甘いかどうか、試したくなるじゃん??

そう訴えたくなるが、新八の指はすぐソコまで来ていて何も言えず、
大人しくされるがままになってしまった。

・・・ってか変な感じだな。

唇の上をゆっくり動いていく新八の指の感触に、なんだか
ムズムズしてしまう。

それを紛らわせる為に、視線をウロウロと彷徨わせていると、
新八の唇が目に入った。


あぁ、そうか。
これを塗ってるから、新八の唇は何時もかさついてないのか。
何時でもやわっこくて、暖かくて、甘くて・・・


そこまで思い、俺ははたとある事に気がついた。

って、ちょい待ち。
新八は何時もこれ、塗ってるって言ってたよな?
なのにあんなに甘いって事は・・・

浮かんでしまった疑問を解くべく、俺は未だ唇の上にあった
新八の指先をパクリと口に含んでみた。

・・・が、想像とは違う味に、思わず眉を顰めてしまう。

「ちょ、何してんですか、アンタ!!」

「いや、甘いかと思って」

目の前では新八が顔を赤く染め、俺の口から指を勢い良く外させた。


・・・確かに妙な味がしたが、なんとなく口寂しくなる。
って事はやっぱ妙じゃねぇんじゃねぇのか?
じゃなきゃ、なんであんなに新八の唇は甘いんだ?


そう思い、じっと新八の口元を見ていると、可愛いその口は
大きな溜息を吐き出した。

「だから舐めちゃダメだって言ってんでしょうが」

なんでそう思うかな~。そう言い、カクリと頭を俯かせる新八に、
俺の視線も下がる。

「だってよぉ、新ちゃんの唇はいつでも甘いんだもんよ」

そう言うと、新八は はぁ!?と変な顔をしながらも
顔を上げてくれた。
それと共に、俺の視線もやっぱり上がる。

そしてずっと見詰めていた新八の唇へと、そっと手を伸ばす。
俺の伸ばした手に何か感じたのか、新八がビクリと体を後ろへと
逃がそうとしたが、構わずに手を伸ばし、序に開いてる方の手も
伸ばして、先程まで俺の唇の上に居た指先を捉えてしまう。

そして真っ赤になった新八の、もっと赤い唇にそっと指を這わせた。

 

「オマエもコレ、つけてんだよな?」


だからこんなに柔らかくて、プニプニしてんだよな?


「なのにさ、変な味した事ねぇもん。」


寧ろ甘くて、何回でも味わいたくなって。

 


俺はその感触を楽しむように、ゆっくりと指を動かした。

輪郭をなぞり、弾力を楽しみ、少しだけ開いた唇の中へと
指を差し込む。
その瞬間、新八の息が指に伝わり、ゾクリと背筋が震える。


あぁ、きっとその吐き出された息も、きっと甘い。


俺は先程言われた事も忘れ、ついペロリと自分の唇を舐めてしまった。

感じるのは小さな痛みと、妙な味。

そこでやっと、それまで考えていた答えが出た。
俺は緩く口元を上げると、新八の唇にあった指を離し、
そのまま後頭部へと移動させる。

そして小さな声で慌てる新八を引き寄せ、序に自分の体も起こして
甘い、甘いその唇を堪能すべく、迎え出ることにした。




触れた唇は甘く。

感じた感触は柔らかく。

重なった部分は暖かい。




「結局、新八自身が甘いんだよな」

モロ銀さん好み。満足げに呟き、ペロリと唇を舐め上げる。

今度は自分のではなく、新八のを・・・だ。

やっぱり感じる甘さに、こればっかりはどんなに言われようとも
舐めるのを止められねぇだろうなぁ・・・と、心の底から思った。


*******************************
二万打お礼企画第二段。
姫りんご様からのリクで
「銀新でドキドキあまあまなキス話」との事でしたが、
如何だったでしょうか?

あんまり詳しく描写できず、スミマセンでした~ι
アマアマにはしたつもりですが・・・ど、どうでしょう(ドキドキ)
少しでも気に入って頂けたら嬉しいです!
企画参加、本当に有難うございましたvv

拍手[2回]

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「えっと・・・どちら様でしょう?」

ある昼下がりの午後、顔を並ばせた銀時達の前で
全身を砂まみれにさせた新八は、コトリと首を傾げた。



 

事の起こりはこうだ。
本日見事に仕事がなかった銀時達は、暇潰しがてらに
三人と一匹で散歩がてら買出しへと出向いていた。

見上げれば気分がいい秋晴れ。

仕事がないのは苦しいが、偶にはこんな風に過ごすのも悪くない・・・
と思ってた矢先に、最早天敵とも言える黒い集団に出会ってしまい、
後は・・・ご想像通りだ。

ここが外で、公共の場であるにも関わらず戦闘を開始する沖田と神楽。
本来ならば止めるべき立場のその上司共は、手を出してはいないものの
口は思いっきり出して醜い争い中。

「いや~、人気のない公園で良かったなぁ」

なぁ、新八君。そう言って笑う近藤に、新八は一つ溜息を吐く。

「ポジティブ精神も程ほどにしといて下さい、近藤さん」

「所でお妙さんは元気かい?朝会った時は少し元気がなかったようだけど、
もしかして疲れてるのかな?毎日夜遅くまで大変そうだからね~」

「本当、程々にしといて下さいね、その精神。
ってかそう思ってるならそっとしといて下さいよ」

しみじみと語る近藤に、新八がツッコミを入れていると、日常生活に於いて
決して身近ではない、けれども聞き慣れてしまった爆発音

聞こえてきた。

「あ~もう、何か壊れてたら真選組でもって下さいよ?」

ウチには弁償するお金、ありませんからね!顔を上げ、そう続ける
筈だった新八の言葉は、酷く近い場所から聞こえた鈍い音と
真っ暗くなった視界のお陰で、言葉になる事はなかった。

 




「いやいやいや、え?何ソレ、お約束過ぎね?」

鈍い音と近藤の叫び声にそれぞれ戦いを止めて振り返ってみれば、
そこには大の字になって倒れている新八の姿と、その横に
何故か転がっている大人の拳ぐらいある鉄の塊。

どうやら沖田の発砲したバズーカで破壊された遊具の破片が
新八の頭を直撃したらしい。

意識を失くしている新八に、慌てて駆け寄ってみれば、案の定
頭に大きなコブが出来ていた。

とりあえず呼び掛けてみた所、幸いな事に新八は直ぐに意識を取り戻した。
だが、なにしろ頭の事だ。とりあえず病院へ行こう・・・と
銀時が手を差し出した所で、最初の言葉が新八から吐き出されたのである。


 

「やばいよ?オマエ。だってソレ、もう銀さんやったじゃん。
ゴリだってやったしさ、二番煎じ所じゃないよ?」

だからとっとと笑えない冗談はやめなさい。ボーッと座ったまま
こちらを見ている新八に銀時が告げるが、新八は首を傾げるばかり。

記憶がない・・・と言うのはあまり実感がないが、
確かになんでこんな所に居るのか、自分でも判らない。
それに・・・

新八は周りに居る人達を見回し、

「銀さん?」

・・・って誰?と、その人物を探す素振りをした。

不思議そうなその姿に冗談は含まれて居なく、銀時達から言葉奪う。

「・・・ゴリ」

が、こちらは迷わず近藤に視線を止めたので、直ぐに各々
喋りだした。

「いや、なんでそこで俺の事見んのぉぉ!!!?
違うから、近藤さんだからね、俺ぇぇぇ!!!」

「うっせぇよ!直ぐに認識されるのを有難がれよ、今は!!
ってか新八!俺、俺が銀さんだから!!」

嘆く近藤を拳で黙らせ、銀時が必死な形相で新八に言い寄る。
思わず後ずさってしまった新八の背中に、暖かい手が当てられる。
振り返ってみれば、そこには困ったように眉を顰める土方が。

「ったく、どうすんだよコレ。おい、大丈夫か?
自分の事は判るか?」

そう聞かれ、新八は曖昧に頷く。

なんとなく判るが、目の前にいる人達に見覚えはない。・・・けど、

「た、多分・・・ですけど」

なんだか危険な事は非常に良く判る。

些か怯えたように自分からも離れようとする新八に、土方がまだ
名乗っていない事に気がつく。
そして小さく舌打ちをし、名乗ろうとした所で、

「あぁ、そいつはトッシーね、トッシー」

「またの名をマヨと言うネ」

「あ、別に覚えなくていいですぜィ?
直ぐに戒名へと変わるんで」

と、銀時達に先を越されてしまった。

「おぉぉぉおいぃぃ!!
誰一人として正確に言えてねぇじゃねぇかぁ!!
ってか戒名ってなんだ、戒名って!!」

思わず刀を抜こうとした所で、新八の青褪めた顔が視界に入り、
土方は一瞬体を固めると大きく深呼吸をし、どうにか怒りを納める事に
成功したのだが・・・

・・・やはり先程の自分の判断は正しかったらしい。

新八はじりじりと土方の傍を離れていった。

その肩を叩いたのは沖田だ。
ニンマリと楽しげな表情を浮かべ、

「俺は総悟って言いまさァ。覚えていやせんか?アンタとは
『ご主人様』『下僕眼鏡』と呼び合ってる仲でさァ」

と自己紹介をしてきた。

え、何ソレ。
僕そんな世界の扉を開いちゃいましたかぁぁ!!?

突然言われた身に覚えのない自分の過去に、新八は
さっと血の気が引くのを感じた。

「いやいやいや、沖田君?
何言っちゃってんの?
本当何言っちゃってんのぉぉぉ!!!!」

違うからね!!銀時はそう言うと沖田の手を叩き、新八を
自分の元へと引き寄せる。
そして肩を掴むと、何が何だか判らず目を見開いている
新八を自分の方へと向かせた。

「新八!思い出せよ!!
オマエは俺と、『ハニーv』『なんですか、ダーリンvv』
呼び合う仲で、二十四時間年中無休でイチャつき合ってる
ラブラブカポーなんだぞ!!」

・・・なんかイラッとくんな、それ。
てか、それもどんな別世界ぃぃぃ!!!?

銀時の言葉に、ますます血の気を引かせていく新八に、
土方の言葉が待ったをかける。

「なんだその妄想の吹き溜まりは!!
ってかテメー等、コイツの記憶を改竄してんじゃねぇよ!!」

「妄想でも改竄でもありません~。
何れなる、確実な未来予想図です!!」

「それが改竄って言うんじゃねぇか!!
ちなみに本当は俺と『新たん』『トッシー』と呼び合う
仲で
ござるよ?」

「え?トッシー?トッシーかコノヤロー!!」

銀時に肩を掴まれたまま、何故だか先程とは雰囲気の違う土方に
手を握られ、新八はポカンと口を開けてしまう。
既に頭の中はグチャグチャだ。

え・・・何コレ。
どっちにしろ僕の知ってる僕の世界じゃないじゃん!!
一体何をやらかしてましたか、自分んんん!!!

新八がそう、記憶にない自分に問い掛けていると、
先程まで嘆いていた近藤がおずおずと近付いてきた。

「ち、ちなみに新八君。俺はお妙さんの恋人で
近いうちに君の義兄さんになる・・・」

「あぁ、それは違いますね」

ニコニコと話しかける近藤を、すっぱりと断ち切る。

うん、判んないけど多分違う。
きっと違う。
確実に違う。

何故だかは判らないが、それだけは言い切れる。

妙な確信の元、そう告げるとそれまで激しく言い合っていた銀時が
嘆く近藤を蹴り倒した。

「テッメー、何いい加減な事ほざいてやがる!
それだと俺までテメーの事を義兄さん呼ばわりしなきゃいけなく
なんだろうが!!
ただでさえゴリラに育てられた女
義姉さんって言わなきゃなんねぇんだから、これ以上
俺に重荷を背負わすなぁぁぁ!!!!」

「テメーこそ何ほざいてやがる。
って言うかこういう時はコイツの将来を思って、
ヤクザな家業から離れさしてやるのが王道だろうが!!」

いっそ他人の振りしてやれ、他人の!!新八から手を
離し、今度は銀時の胸元を掴んでそう怒鳴る土方に、
それまで観戦していた沖田が小さく拍手を送る。

「お、自力で元に戻りやがった。
ってか偶には良い事言うじゃねぇか、偽善者土方。
ついでに旦那の魔の手からも離れさせてやって下せェ。
主人は一人で十分なんで」

「いやいや、君も十分魔の手だからね?
本当、そのまんまだから。
っつうか離れるとか無理に決まってんだろうが!
寧ろより一層しがみ付いて、距離縮めて
記憶が戻ってもどうしようもない所まで
食い込んでってやらぁ!!

俺に舞い降りた最大のチャンスを潰すんじゃねぇぇ!」

銀時も新八から手を離し、負けじと土方の胸元を掴んで
怒鳴り返す。

二人の勢いに、自分の身が開放された事に気付かず、
暫し呆然としていた新八であったが、少し離れた所から
神楽に手招きをされているのに気付き、そろそろと
その場から離脱する事に成功した。

 


「新八も大変ネ」

「はぁ・・・」

定春に凭れながらそう言う神楽に、新八は溜息と共に返事をすると、
疲れたように肩を落とした。

「ちなみに私は神楽ヨ。まだ思い出さないカ?」

そう言われ、新八は力なく頷いた。

ってかあの中にもし正解があるのならば、思い出したくない。

「安心しなせェ。あれは全部可哀想な大人の妄想でィ」

そんな考えが判ったのか、同じように銀時達から離れ、
こちらへとやって来た沖田が、そう答えた。

「ってか貴方のも十分安心できない内容なんですが」

「大丈夫でィ。何時かはその関係に心躍る日が来まさァ」

「いや来ないですからね!?
あ~もう!なんでこんな事になっちゃったんだろぉぉぉ!!」

そうそうないだろ、記憶喪失なんて!!そう嘆き、頭を
抱える新八の横で、神楽と沖田がチラリと目を合わせる。
そしてそのまま静かに原因となった鉄の塊へと視線を動かした。

「そうですよ!大体なんで僕、こんな所で倒れてたんですか!?」

原因が判れば、もしかしたら記憶が戻るかもしれない。
そんな思いから新八が二人に問い掛けるが、何故か
優しく肩を叩かれた。

あんな所に鉄の塊が落ちているのは、明らかに不自然だ。
だが、それ以上に周りの大人達が異常なので、
今の所新八は気付いていない。ならば・・・

「頑張るネ、新八。思い出せなくてもまた新しく
作っていけばいいだけの話ヨ」

「そうでィ。何時までも原因なんて小さい事に拘ってたら
前に進めませんぜィ?」

「え?いやなんかいい話で纏めようとしてません?
ってか決して小さくないですよね?記憶喪失の原因って」

「あ、この子は定春アル。定春~、NEW新八
挨拶するヨロシ」

「や、NEWって・・・って噛んでる、噛んでるから定春!!」

「さすがNEW新八でさァ。
凄い懐かれ様じゃないですかィ」

「その名前を定着させないでくれます!!?
ってか血が~~~!!!!」

 

 


その後、大量の出血と引き換えに無事記憶を取り戻す事が出来た新八は、
怪我が治った後も、暫くの間万事屋に近づく事はなかったという。

 

「ってか簡単に記憶を落っことす方が悪いネ」

「いや、強制的に落とされたからね、アレ」

「新ちゃ~ん、そろそろ万事屋に戻って・・・」

「あれ?どなたでしたっけ?この変態クソ天パ」

「ちょ、何その一点集中な記憶喪失ぅぅぅ!!!」

********************
二万打お礼企画第一弾
もんちょ様からのリクで「新ちゃん記憶喪失」と言う事ですが、
如何だったでしょうか?

一万打企画に続いての一番乗り、本当に有難うございますv
なんだかグダグダになってしまいましたが、
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいですv

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朝食を食べ終わり、のんびりとテレビを眺めていると、万事屋の電話が
久しぶりに鳴り響いた。

・・・が、生憎何時もそれを取る新八は、現在朝食の後片付け中。

「ちょっと~、誰か出て下さいよ~」

台所からそんな声が聞こえ、俺はダルそうに背凭れから体を離すと、
ソファで定春を撫でている神楽へと声を掛けた。

「うぉおおい、ちょっと出ろや、神楽」

「いやネ、私今忙しいヨ」

銀ちゃんが出るヨロシ。そう言ってギロリと睨まれる。

・・・あれ?俺、ここの社長だよね?一応
しかも坂田家的には大黒柱だよね?一応。

なので、ここで負けてはならん・・・と、再び神楽に命ずる。
うん、別に面倒臭いとかじゃないから。
威厳を保ちたいだけだから、銀さん。

だが、相手もさるモノ、中々頷きゃしねぇ。
なんだ?反抗期かぁ?
無闇に逆らいたいお年頃ですか?オメーは。
言っとくけど銀さん、そんなお年頃でも容赦しないから。
無闇に逆らってくるのはこの髪だけで十分なんじゃぁぁ!!!

と、二人して睨みあい、そのまま
「オメーが出ろ」「いやネ、銀ちゃん出るヨロシ」と、無駄な戦いを
繰り広げていたら、騒がしく鳴っていた電話が
プツリと切れた。
どうやら自ら諦めてくれたらしい。

何だよ、一人でトイレに入ってる時ばっか狙って鳴りやがるから
とんでもなく空気読めねぇやつだと思っていたが・・・中々どうして。
案外空気読めるじゃねぇか。

あ~これで静かにテレビが見える・・・と思ってたら、
行き成り脳天に衝撃が来た。
見ればそこには恐ろしげな笑みを浮かべた新八が・・・

「あんた等は・・・電話の一つもまともに取れないんですか!!」

仕事の依頼だったらどうするんです!と怒る新八。
俺はチョップを食らった頭を摩りつつ、

「んだよ、まだそんな夢見てんの?」

いい加減現実見ろよ。と諭すように告げたら、今度は額に横から
チョップを食らった。

ちょ!地味にマジで痛いんですけどぉぉぉ!!!!

「人中じゃなかっただけ良かったと思ってください」

ちょっと涙目になりながらそう訴えると、酷く冷めた視線でそう返された。
・・・あれ?愛は何処に行ったのかな?
なんか一μも見えないんですけど・・・あれ?
俺、目が悪くなったかな?

そう思ってると、新八はくるりと俺に背を向け、今度は神楽へと
声を掛けた。

「神楽ちゃんも。・・・居るんだから電話、取ってみてよ。ね?」

腰に手を当ててるものの、声は明らかに優しげだし最後の方なんて
お願いでもするように、首をコテリと傾けていた新八。

あぁ、なんだ・・・あったよ、愛。アソコに。

ってアソコに合ってどうすんだよ。

文句を言おうと俺が口を開く前に、神楽がソファから勢い良く立ち上がった。

「いやネ!私、絶対取らないヨ!!」

そう言うと、定春の名を呼び、そのまま外へと出て行ってしまう。
ったく、仕方ねぇなぁ、反抗期ってやつぁよぉ。

呆れ半分でそれを見送り、背凭れへと体を預けると、
新八が肩を落としているのが目に入った。

「気にすんな、ありゃ~単なる反抗期だ」

そう声を掛けると、困ったような表情の新八が振りかえった。

「違いますよ。・・・神楽ちゃん、電話に慣れてないみたいで」

「あぁ?なんだそりゃ。あいつんトコだって電話ぐらいあっただろうに」

新八の言葉に眉を顰め、そう言うと更に困ったような顔をされた。

「あったにはあったみたいですけど・・・出た事はなかったみたいで・・・」

そう言われ、漸く俺も合点がいった。
確かにあのオヤジが電話なんぞを小まめにする訳がない。
一人で母親を看病してたって言うんだ、他にかけてくるヤツも
いなかっただろう。
まして・・・

「掛けた事も、殆どなかったみたいですし・・・」

・・・だろうな。
鳴る事がないなら、鳴らす事もなかっただろう。

どうしようもない時、受話器を取っても掛ける所がなく
無機質な音しか耳に入ってこないってのは、どんな気持ちだろう。

なんだかイヤな気分になり、それを振り払うように俺は盛大に
頭を掻いた。
そんな俺を見て、新八がクスリと苦笑する。

「ま、今はそんな事ないですけどね。ここだって偶にだけど
電話鳴りますし、かける所だって、もうあるんだから・・・」

早く慣れて貰わなきゃ。新八はそう呟くと、再び神楽が出て行った玄関の方に
視線を向け、やんわりと微笑んだ。

 

 

 

 

 

その夜、新八が帰り、俺が風呂に入っていると、不意に電話が鳴った。
が、相変わらず神楽は出ようとしないようで、延々と鳴り続けている。

・・・ま、その内切れるだろう。

俺も態々風呂から出て出るのはイヤなので、そのまま放置しておく事に決める。
だが、何か余程の用事なのか、どれだけ経っても電話が鳴り止む事はなく、
とうとう風呂の向こうに神楽がやって来て

「どうにかするヨロシ!!」

煩くてテレビの音が聞こえないネ。と文句を言ってきた。

ったく、仕方ねぇなぁ。

俺は風呂から上がり、軽く拭いて腰にタオルを巻くと、未だ鳴り続けている
電話へと向った。

「はいはいうっせぇなぁ、万事屋だコンチキショー。」

『・・・なんなんですか、その受け取り方』

文句を言ってやろうとしたが、受話器から流れてきたのは先程まで
ここに居た新八の声で、俺は一瞬言葉が詰まる。

『銀さん、今お風呂入ってたんでしょ?風邪引かれたら困るんで
さっさと戻ってください』

「え?新八?っつうかなんで銀さんが風呂入ってたの知ってんの?
もしかしてストーカ・・・」

『自分の血で満たされたお風呂に入りたいですか?
いいからとっとと戻って!・・・っとその前に神楽ちゃんに
変わってください』

新八の言葉に、半裸からではない悪寒を感じながら振り返ると、
聞き慣れた名前を耳にしたからか、神楽がこちらを見ていた。
それに 変われってよ。 と受話器を差し出すが、
神楽は困ったように身を引いてしまう。

俺は半ば無理矢理神楽の手を取ると、そのまま引き寄せて
受話器を掴ませた。

「新八からだ、用件聞いとけ」

判ったな。そう言うと、未だ受話器を耳に当てようとしない神楽を
残し、風呂場へと戻った。

そして冷え切った体を浴槽に沈めながら、先程の電話の事を
思い浮かべる。

考えてみれば、こんな夜に新八から電話があるのは珍しい。

何かあったのだろうか・・・だが、声は普通だった気がする。

一通り考えてみたが何も浮かばず、俺はある程度体を
温まらせると、風呂から上がった。


「神楽ぁ、新八、なんだって?」

タオルで頭を拭きながら居間へと戻ると、既に電話は終わったのか
ソファに神楽が座っていた。

・・・と言うか、あの後ちゃんと出たのか?

少し心配して問い掛けると、神楽は頭だけをこちらに向け、

「別に。何か元栓がどうとか言ってたネ」

と、少しだけムッとした表情で答えてきた。

「元栓?」

不思議に思いながらも、とりあえず台所へと行って見る。
が、元栓はきちんと締められている。

「全く、締めたかどうか判らないなんて、ダメガネもいいとこネ」

ブチブチと文句を言う神楽の声が聞こえ、俺は
新八にしては珍しい事もあるもんだ・・・とだけ思い、
その場を後にした。

 

 




が、次の日の夜も電話は掛かってきた。
今度もやっぱり俺が風呂に入っている時だ。

昨日と同じように鳴り続ける電話に、俺も同じように観念し、
風呂から出る。

かけてきた人物は、やはり新八だ。

俺にさっさと風呂に戻り、神楽に変われと言うのでそう告げる。
神楽は俺に無理矢理受話器を渡され、渋々出る。

そんな事が何日か続いた。

用件は様々だが、それ以外は何も変わらない。
最初は神楽と一緒に文句を言っていた俺だったが、
流石に新八が何をしたいか判り、密かに協力する事にした。

様は慣れればいいのだ、こんなもの。

そんなある日、やっぱり掛かってきた電話に俺が出て、
神楽に変わろうとすると、初めて自ら受話器を受け取った。

なんだよ、おい。
毎晩こんな格好で廊下を行き来した甲斐があったんじゃねぇの?

少しだけ照れ臭そうに受話器を耳に当てる神楽に、
思わず口元が緩んだのが自分でも判った。

 

『本当ですか?良かった~』

その日の夜、神楽が眠ったのを確認してから、俺は新八の所へ
電話を掛けた。
その時の様子を話せば、受話器の向こうからは嬉しげな新八の声が
聞こえてくる。
きっと声と同じように、嬉しそうに笑っているんだろう。

本当ならその顔、直に見たかったけどな。
今の俺の顔は恥ずかしくて見せられないから、やっぱり電話でよかった。

だって多分、俺の顔もユルユルに緩んでる。



 


次の日、もうすぐ昼になろうという時に電話が鳴った。
勿論新八が居るので、俺も神楽も出ない。
だが、新八は少しだけ電話の相手と受け答えをすると、
不意に神楽の名前を呼んだ。

「神楽ちゃ~ん、お登勢さんから電話~」

その言葉に、神楽がびっくりした表情で体を竦めた。
新八からの電話には慣れ始めたが、他のヤツからの電話にはまだ慣れない様で、
呼ばれても中々出ようとしない。

ってか直ぐ下に居るのに、なんで態々電話?

訝しげに見詰めていると、なんとか受話器を取らせた新八がこちらを
向いて小さな笑みを浮かべてきた。

・・・あ、成る程ね。ババァも仲間か。

日頃とは比べ物にならないくらいの小さな声で答える神楽から目を離し、
俺はそれまで見ていたジャ○プへと視線を落とした。
笑ってるように見えるのはアレだ。
ジャン○プが面白いからだから勘違いしないように、新八クン。


それからと言うもの、万事屋の電話は大忙しだ。
夜も昼も、一度は鳴る。

それは下のババァからだったり、お妙からだったり、様々だ。
ただ、沖田君から来た時は、俺も神楽もびっくりだ。
新八は笑ってたけどな、アレは心臓に悪いから。
電話にも悪いから。
思わずその短い生涯を
終えそうになってたからな、電話。



で・・・だ。
今、俺は外に居るわけだ。
珍しくあった仕事の帰りなんだが、その帰りに買い物をしてきて
くれと新八に言われたりしたのだ。
断ろうとしたが、にっこり微笑まれちゃ~仕方がない。
決してその時握られてた拳が怖かった訳じゃない、うん。

けれど、とりあえず買ったはいいのだが、
重さ的にはなんでもない量だが、嵩張るものばかりで
ちょっと一人で持つのは辛いような気もする訳だ。

で・・・目の前には偶然にも公衆電話がある訳で。
新八からも、キツかったら電話をしてくれと言われてる訳で。
手元には買い物袋の他に、偶々お釣りで買った酢昆布があったりしてだな。

俺は一つ息を吸うと、目の前の公衆電話へと手を伸ばした。

仕方ないよコレは。
だって銀さん、仕事してきて疲れてるし。
多分この時間帯は新八、夕飯の準備で忙しいし。
だから・・・


「あ、新八?銀さんだけど神楽いるか?」


うん、仕方ない。

そう自分にいい聞かせていると、受話器の向こうから聞きなれた、
けれど何時もとは少し違う声が聞こえてきた。

うん、まぁアレだ。
とりあえず俺を物珍しそうに指差すのは止めようか、そこの少年。

*********************
グラさんが普通に電話を取って詐欺に合ってましたが、
それはそれ・・・と言う事で(おいι)

 

拍手[3回]



「あれ?新八君、どうしたの?」

真選組屯所前、近藤が外から帰ってくると、門の前に立っている
少年の姿が目に入った。

それに声を掛けながら近付いていくと、新八は小さく声を上げ、
軽く頭を下げた。

「こんにちは、近藤さん」

「あぁ、こんにちは。で、どうしたの?誰かに用かな?
あ、もしかしてお妙さんから俺に言伝!!?」

「いえ、全く。
それより沖田さん、居ますか?」

新八の口から出てきた言葉に一瞬肩を落とすが、
次に出てきた名前に、直ぐに頭を切り替える。
そして上の方に視線を飛ばしながら、今日の予定を思い浮かべる。

「総悟は・・・確か今の時間は巡察している予定だから・・・
部屋に居るんじゃないのかな?」

それか公園のベンチ。そう言って笑う近藤に、新八は乾いた笑いを漏らす。

「それ・・・全然予定と合ってませんよね?」

「気にしてたら総悟とは付き合えんよ?」

突っ込んだ筈が、呆気らかんと答えられ、新八はもう何も言えなかった。

・・・ってかこれぐらい大らかな人じゃないと、あの人達を纏めることも、
姉上に付き纏う事も出来ないか・・・

しみじみとそう思っていると、近藤が言葉を続けた。

「で?総悟に何か用なのかな?」

その質問に、新八も自分がここまで来た理由を思い出し、胸元に抱えていた
紙袋に視線を落とした。

「えぇ。あの・・・コレ、昨日沖田さんがウチに持って来たんで、
返そうと思って・・・」

「そうか。なら俺から返しておこうか?」

親切心からそう思い提案してみた近藤だったが、新八は酷く驚いた表情で
少しだけ身を引き、次に勢い良く首を横に振りだした。

「あ・・・あの、新八君?」

「い、いいです!!あ、あの・・近藤さんの手を煩わせる程でも
ありませんし!」

思わず手を差し伸べる近藤に、新八は更に下がると、紙袋をぎゅっと
抱き締め、焦ったようにそう言い放った。

その行動に、近藤は少し首を傾げる。

「いや、返すぐらい何ともないんだけど・・・ってか新八君、
顔、真っ赤なんだけど、大丈夫?」

そう聞くと、今度は凄い勢いで首を縦に振り出した。

なんか見てると首がもげてゴロリといきそうで怖い。

近藤は再度新八の名前を呼ぶと、漸く首の振りを止めてくれた。

「大丈夫です!!全然大丈夫ですから!!
ってか今日は暑いですね~」

「??そうか?今日はそんなでもないような気が・・・」

「暑いです!!!」

「・・そ、そうだ・・・ね?」

必死にそう言い募る新八に、近藤も思わず頷く。
そして二人の間に沈黙が下り、気まずい雰囲気が流れた。

・・・さぁこの後どうしよう。

そんな事を必死に考え始めた二人に、
のんびりとした声が屯所内から掛けられた。

「あれ?何やってんですかィ、二人して」

掛けられた声に振り返れば、ソコには待ち望んだ姿があって。

「あ、総悟、丁度良かった。今新八君が・・・」

「こんなモン置いてくんじゃねぇよ、
この真性サドォォォ!」

ホッとした近藤が言い終わる前に、新八の怒鳴り声が走り、
序に沖田の元へと紙袋が投げつけられた。

それを片手で軽々とキャッチする沖田。
ニヤリと笑みを浮かべると、手にした紙袋を軽く振った。

「なんでィ、もう返しに来たのか?もっとじっくり
使ってくれても良かったんだけどねィ」

「アンタが勝手に置いてったんでしょ!!
何なんですか、姉上に僕の殺人要請でも
出したいんですか、アンタは!!
ってか使うって何に!!?」

「親友からのちょっとした贈り物ですぜィ?
有難く使っときな。
それに殺人要請だなんて酷いでさァ、俺はただ序に
スリル・ショック・ア~ンドサスペンスも贈ろうかと・・・」

「だから何にだよぉぉぉ!!!
ってかそれが既に殺人要請だから!
そんな三段構えが来たら確実
逝っちゃうから、僕!!」

「おいおい、こんなトコでそんな事大声で言うなィ。
意外とオープンな性格だったんだねィ、新八は」

「そんな風に受け止めるなぁぁぁ!!!
アンタの思考がオープンすぎるわ!!」

怒鳴る新八と、楽しそうに言葉を返す沖田。
そんな二人を見て、近藤はカクリと首を傾げた。

「えっと・・・総悟?一体新八君に何を貸したんだ?」

そう問い掛けると、凄い勢いで新八が 僕は借りてません!!
言って来たので、近藤は慌てて訂正した。

「あぁ、そうだったね。で、何を新八君のトコに置いてったんだ?」

近しい人程、沖田の悪戯は凄いものになる。
その上新八の怒り具合も相当なものだ。

近藤は、少しだけイヤな汗をかきながら沖田に問い掛ける。
すると・・・

「大したもんじゃありやせん。単なるエロ本でさァ」

と、呆気らかんとした顔で答えてくれた。
その答えに、ホッと胸を撫で下ろす近藤。

想像していたような殺傷能力トラウマが残るようなものでなかった事に
安心したのだ。

「なんだ、単なるエロ本かぁ。なら別に大丈夫・・・って
えぇぇえええ!!!?
ちょ、総悟君んん!?何貸してんの・・・ってか
何で持ってんのぉぉ!!!」

そう叫び、勢い良く沖田の持っていた紙袋を取り上げた。

「こう言うのはまだ二人には早いです!
見ても買ってもいけませんんん!!!」

「だから僕は見てませんし買ってもないですって!
そんなの買うぐらいなら、食費に回します!!」

「俺だって別に買ってはねぇでさァ。偶々山崎のトコの
押入れの奥にあったのが目に入っただけでィ」

「それどんな偶々!!?
ってかアレ、山崎さんのなんだ・・・」

へ~。と言いつつ、新八の視線の温度が低くなってるのに気付き、
近藤は心の中でそっと山崎を哀れんだ。

多分、これで暫くの間冷たい視線を送られる事になるだろう。
悪戯したのは総悟だが、持ち主の山崎も新八の中では同罪らしい。

ってかあぁ言ってみたものの、新八君の思考はそれでいいのか?
総悟の扱いも、それで合ってんのか?
年頃の男の子として正しいのか??

そうは思うものの、やはり早いものは早い。

近藤はそう思い、持っていた紙袋で軽く二人の頭を叩いた。

「兎に角!こう言うものはまだ早いの!
お父さんは許しませんからね!!」

鼻息荒くそう言うと、沖田と新八は少しだけ肩を落とし、
しゅんとした雰囲気で謝罪と了解したことを告げてきた。

それを聞き、近藤は よし。と重々しく頷くが、
ちらりと視線を合わせ、照れ臭そうに笑みを交わす二人を見て、
思わずやんわりと口元を上げたのだった。

 

 

 


「ちなみにその中には近藤さんのも入ってるんですけどねィ」

「え!?そうなんですか!!?」

「おぉ、一見清純そうに見えて一番ギリギリなのがそうですぜィ?」

「え!?ちょ、待って総悟・・・ってえぇぇぇ!!?
うっそぉぉぉぉ!!!!何でぇぇぇ!!?」

「いや~、偶々近藤さんの机の引き出しの二重底
見つけやしてねィ」

「だからそれどんな偶々ぁぁ!!!?」

「・・・近藤さん・・・暫く本気でウチにも姐上にも近付かないで下さい」

「え?あれ?なんでそんな冷めた視線!!?
違うから。そう言う意味で使ってた訳じゃないからぁぁぁ!!!」

「だから何に使うってんだよコノヤロー!!!!」

*******************************
お父さん近藤な話を書こうとしたら、こんなグダグダに(泣)
全ては風邪のせいと言う事にしといて下さいι
・・・咳、辛いっす(涙)

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少し前までそんなに寒くはなかった。
だから油断していたんだ、色々と。

僕は洗濯物を取り込みながら、前よりも高くなった空を見上げた。

 

「新八~」

洗濯物を抱え干し場から帰ってくると、居間から銀さんに名前を
呼ばれた。
そのままヒョコリと顔を出すと、ソファの上で体育座りを
しているいい大人が居た。

「・・・何やってんですか、アンタ」

呆れた声でそう返し、和室へと洗濯物を次に炬燵布団を寄せる。
・・・が、まだ生乾きだ。

これは明日もう一回干さないとダメだな。

軽く肩を落とすと、また僕を呼ぶ銀さんの声が聞こえた。

「なんなんですか、もう!」

僕は立ち上がるとドカドカと居間へと向った。
すると先程の格好のまま、目の前に立った僕を見上げ、銀さんが
どう?と問い掛けてきた。

何がどうなのか判らず首を傾げると、銀さんは視線を和室へと
飛ばし もう出せるか? と聞いてきたので、漸く質問の意味を
理解出来た。

「まだダメですね。明日もう一回干さなきゃ」

そう答えると、銀さんは大袈裟なぐらい肩を落とした。

「あ~、もうマジかよ。」

嘆く銀さんに、僕は苦笑を浮かべる。
そう、まだ大丈夫だと思って、炬燵の準備を全くしていなかったのだ。

「仕方ないですよ。まさか急にこんなに寒くなるとは
思ってませんでしたもん」

「ってかよ、別に洗わなくても良かったんじゃね?」

そのまま使えばよぉ。じとりと見詰めてくる銀さんに、僕は
腰に手を当て、ギロリと睨み返す。

「ダメですよ!ずっと仕舞ってあったんですからね?
きちんと洗わなきゃダメです」

虫とかいたらどうすんですか!そう言うと銀さんはスゴスゴと首を縮めた。
以前、まだ僕が万事屋に来たばかりの頃、それまで万年床だった
銀さんの布団を上げようとして、その下にあった惨状は
未だ記憶の中から消えようとしてくれない。

・・・うん、あれは凄かった。

思わず思い出してしまい、ブルリと体を震わせる。
するとそれを見ていた銀さんが、何を思ったのかチョイチョイと
僕を手招きしてきた。

なんだろう・・・と近寄ると、不意に手を引っ張られ、そのまま
僕は銀さんの膝の上に・・・

「ちょ、何すんですか!」

「うんうん、だよなぁ。新八も寒いよなぁ」

慌ててその場から立ち上がろうとする僕を無視して、銀さんは更に
僕の背中に手を回すと、そのままぎゅっと抱き締めて肩口へと
顔を埋めてしまった。

「あ~、あったけぇ~」

猫だったらきっと喉を鳴らしているだろう。そんな雰囲気で
擦り寄ってくる銀さんに、思わず小さく笑いが零れる。

「そんなに寒かったですか?」

「おう、寒い寒い。オメーだって寒かっただろ?」

ほっぺ、冷てぇぞ。そう言って今度は自分の頬を僕の頬に寄せてきた。
それがくすぐったくて、少しだけ肩を竦ませる。

「動いてるとそんなに気にならないですよ?」

「ばぁか、少しは気にしろ。ほら、手も入れろって」

僕の背中から片手を離すと、銀さんの肩に置いていた僕の手を掴み
銀さんと僕の胸の間に入れてしまう。
そして再び背中へと手を回すと、ぎゅ~っと抱き締めてきた。

「あ~、あったけぇ~」

「銀さん、そればっか」

クスリと笑って言うと、んじゃ幸せ~。 と言葉を変えてきた。

なんだそれ。クスクス笑っていると、なんだよ。とばかりに
銀さんが抱き締めている腕に力を込めてきたので、余計に笑ってしまう。

そして思い浮かべるのは、生乾きの炬燵布団。

「ね、銀さん」

そう言って銀さんの首筋に擦り寄れば、微かに銀さんの筋肉が
動き、こちらに向いたのが判った。

でもきっと、その目には何も映っていないだろう。
・・・いや、何も映ってないってのは違うか。
近すぎて見えてないだけ。
現に僕の視界にだって、銀さんの首筋しか映ってない。

改めて自分達の今の格好を思い出し、笑えてくる。

眼鏡が当たって痛いのにね。
本格的な冬も、まだ来てないってのにね。

ギューギュー抱き締めあって、何やってんだか。

零れ出る笑いをそのままに、銀さんに問い掛ける。

「炬燵出します?」

布団、電気入れちゃえばそのうちに乾いちゃうかもしれませんよ?
そう言うと、銀さんは少しだけ唸り、

「・・・ま、アレだ。虫はやっぱやだしな。
この際だ、徹底的にお日様にやっつけて貰おうや」

電気代も節約しなきゃな。銀さんはそう言うと、僕の肩口に
完全に頭を乗せ、グリグリと摺り寄せてきた。

だからくすぐったいっての!

震える僕を無視し、収まりのいい場所を見付けたのか
銀さんは動きを止め、小さく息を吐き出す。

「あ~・・・でも寒いのは寒いんで、まだこのままで宜しく」

あ~、ホントあったけぇ~。
あ~、もうマジ幸せ~。


そのまま続いた銀さんの言葉に、僕は笑って、もっと温かくなるよう
銀さんの首筋へと鼻を埋めた。

 

どうやら万事屋の炬燵の出番は、まだ先になりそうだ。

******************************
偶にはイチャコラさせてみる。

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