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「えっと・・・どちら様でしょう?」
ある昼下がりの午後、顔を並ばせた銀時達の前で
全身を砂まみれにさせた新八は、コトリと首を傾げた。
事の起こりはこうだ。
本日も見事に仕事がなかった銀時達は、暇潰しがてらに
三人と一匹で散歩がてら買出しへと出向いていた。
見上げれば気分がいい秋晴れ。
仕事がないのは苦しいが、偶にはこんな風に過ごすのも悪くない・・・
と思ってた矢先に、最早天敵とも言える黒い集団に出会ってしまい、
後は・・・ご想像通りだ。
ここが外で、公共の場であるにも関わらず戦闘を開始する沖田と神楽。
本来ならば止めるべき立場のその上司共は、手を出してはいないものの
口は思いっきり出して醜い争い中。
「いや~、人気のない公園で良かったなぁ」
なぁ、新八君。そう言って笑う近藤に、新八は一つ溜息を吐く。
「ポジティブ精神も程ほどにしといて下さい、近藤さん」
「所でお妙さんは元気かい?朝会った時は少し元気がなかったようだけど、
もしかして疲れてるのかな?毎日夜遅くまで大変そうだからね~」
「本当、程々にしといて下さいね、その精神。
ってかそう思ってるならそっとしといて下さいよ」
しみじみと語る近藤に、新八がツッコミを入れていると、日常生活に於いて
決して身近ではない、けれども聞き慣れてしまった爆発音が
聞こえてきた。
「あ~もう、何か壊れてたら真選組でもって下さいよ?」
ウチには弁償するお金、ありませんからね!顔を上げ、そう続ける
筈だった新八の言葉は、酷く近い場所から聞こえた鈍い音と
真っ暗くなった視界のお陰で、言葉になる事はなかった。
「いやいやいや、え?何ソレ、お約束過ぎね?」
鈍い音と近藤の叫び声にそれぞれ戦いを止めて振り返ってみれば、
そこには大の字になって倒れている新八の姿と、その横に
何故か転がっている大人の拳ぐらいある鉄の塊。
どうやら沖田の発砲したバズーカで破壊された遊具の破片が
新八の頭を直撃したらしい。
意識を失くしている新八に、慌てて駆け寄ってみれば、案の定
頭に大きなコブが出来ていた。
とりあえず呼び掛けてみた所、幸いな事に新八は直ぐに意識を取り戻した。
だが、なにしろ頭の事だ。とりあえず病院へ行こう・・・と
銀時が手を差し出した所で、最初の言葉が新八から吐き出されたのである。
「やばいよ?オマエ。だってソレ、もう銀さんやったじゃん。
ゴリだってやったしさ、二番煎じ所じゃないよ?」
だからとっとと笑えない冗談はやめなさい。ボーッと座ったまま
こちらを見ている新八に銀時が告げるが、新八は首を傾げるばかり。
記憶がない・・・と言うのはあまり実感がないが、
確かになんでこんな所に居るのか、自分でも判らない。
それに・・・
新八は周りに居る人達を見回し、
「銀さん?」
・・・って誰?と、その人物を探す素振りをした。
不思議そうなその姿に冗談は含まれて居なく、銀時達から言葉奪う。
「・・・ゴリ」
が、こちらは迷わず近藤に視線を止めたので、直ぐに各々
喋りだした。
「いや、なんでそこで俺の事見んのぉぉ!!!?
違うから、近藤さんだからね、俺ぇぇぇ!!!」
「うっせぇよ!直ぐに認識されるのを有難がれよ、今は!!
ってか新八!俺、俺が銀さんだから!!」
嘆く近藤を拳で黙らせ、銀時が必死な形相で新八に言い寄る。
思わず後ずさってしまった新八の背中に、暖かい手が当てられる。
振り返ってみれば、そこには困ったように眉を顰める土方が。
「ったく、どうすんだよコレ。おい、大丈夫か?
自分の事は判るか?」
そう聞かれ、新八は曖昧に頷く。
なんとなく判るが、目の前にいる人達に見覚えはない。・・・けど、
「た、多分・・・ですけど」
なんだか危険な事は非常に良く判る。
些か怯えたように自分からも離れようとする新八に、土方がまだ
名乗っていない事に気がつく。
そして小さく舌打ちをし、名乗ろうとした所で、
「あぁ、そいつはトッシーね、トッシー」
「またの名をマヨと言うネ」
「あ、別に覚えなくていいですぜィ?
直ぐに戒名へと変わるんで」
と、銀時達に先を越されてしまった。
「おぉぉぉおいぃぃ!!
誰一人として正確に言えてねぇじゃねぇかぁ!!
ってか戒名ってなんだ、戒名って!!」
思わず刀を抜こうとした所で、新八の青褪めた顔が視界に入り、
土方は一瞬体を固めると大きく深呼吸をし、どうにか怒りを納める事に
成功したのだが・・・
・・・やはり先程の自分の判断は正しかったらしい。
新八はじりじりと土方の傍を離れていった。
その肩を叩いたのは沖田だ。
ニンマリと楽しげな表情を浮かべ、
「俺は総悟って言いまさァ。覚えていやせんか?アンタとは
『ご主人様』『下僕眼鏡』と呼び合ってる仲でさァ」
と自己紹介をしてきた。
え、何ソレ。
僕そんな世界の扉を開いちゃいましたかぁぁ!!?
突然言われた身に覚えのない自分の過去に、新八は
さっと血の気が引くのを感じた。
「いやいやいや、沖田君?
何言っちゃってんの?
本当何言っちゃってんのぉぉぉ!!!!」
違うからね!!銀時はそう言うと沖田の手を叩き、新八を
自分の元へと引き寄せる。
そして肩を掴むと、何が何だか判らず目を見開いている
新八を自分の方へと向かせた。
「新八!思い出せよ!!
オマエは俺と、『ハニーv』『なんですか、ダーリンvv』と
呼び合う仲で、二十四時間年中無休でイチャつき合ってる
ラブラブカポーなんだぞ!!」
・・・なんかイラッとくんな、それ。
てか、それもどんな別世界ぃぃぃ!!!?
銀時の言葉に、ますます血の気を引かせていく新八に、
土方の言葉が待ったをかける。
「なんだその妄想の吹き溜まりは!!
ってかテメー等、コイツの記憶を改竄してんじゃねぇよ!!」
「妄想でも改竄でもありません~。
何れなる、確実な未来予想図です!!」
「それが改竄って言うんじゃねぇか!!
ちなみに本当は俺と『新たん』『トッシー』と呼び合う
仲でござるよ?」
「え?トッシー?トッシーかコノヤロー!!」
銀時に肩を掴まれたまま、何故だか先程とは雰囲気の違う土方に
手を握られ、新八はポカンと口を開けてしまう。
既に頭の中はグチャグチャだ。
え・・・何コレ。
どっちにしろ僕の知ってる僕の世界じゃないじゃん!!
一体何をやらかしてましたか、自分んんん!!!
新八がそう、記憶にない自分に問い掛けていると、
先程まで嘆いていた近藤がおずおずと近付いてきた。
「ち、ちなみに新八君。俺はお妙さんの恋人で
近いうちに君の義兄さんになる・・・」
「あぁ、それは違いますね」
ニコニコと話しかける近藤を、すっぱりと断ち切る。
うん、判んないけど多分違う。
きっと違う。
確実に違う。
何故だかは判らないが、それだけは言い切れる。
妙な確信の元、そう告げるとそれまで激しく言い合っていた銀時が
嘆く近藤を蹴り倒した。
「テッメー、何いい加減な事ほざいてやがる!
それだと俺までテメーの事を義兄さん呼ばわりしなきゃいけなく
なんだろうが!!ただでさえゴリラに育てられた女を
義姉さんって言わなきゃなんねぇんだから、これ以上
俺に重荷を背負わすなぁぁぁ!!!!」
「テメーこそ何ほざいてやがる。
って言うかこういう時はコイツの将来を思って、
ヤクザな家業から離れさしてやるのが王道だろうが!!」
いっそ他人の振りしてやれ、他人の!!新八から手を
離し、今度は銀時の胸元を掴んでそう怒鳴る土方に、
それまで観戦していた沖田が小さく拍手を送る。
「お、自力で元に戻りやがった。
ってか偶には良い事言うじゃねぇか、偽善者土方。
ついでに旦那の魔の手からも離れさせてやって下せェ。
主人は一人で十分なんで」
「いやいや、君も十分魔の手だからね?
本当、そのまんま魔だから。
っつうか離れるとか無理に決まってんだろうが!
寧ろより一層しがみ付いて、距離縮めて
記憶が戻ってもどうしようもない所まで
食い込んでってやらぁ!!
俺に舞い降りた最大のチャンスを潰すんじゃねぇぇ!」
銀時も新八から手を離し、負けじと土方の胸元を掴んで
怒鳴り返す。
二人の勢いに、自分の身が開放された事に気付かず、
暫し呆然としていた新八であったが、少し離れた所から
神楽に手招きをされているのに気付き、そろそろと
その場から離脱する事に成功した。
「新八も大変ネ」
「はぁ・・・」
定春に凭れながらそう言う神楽に、新八は溜息と共に返事をすると、
疲れたように肩を落とした。
「ちなみに私は神楽ヨ。まだ思い出さないカ?」
そう言われ、新八は力なく頷いた。
ってかあの中にもし正解があるのならば、思い出したくない。
「安心しなせェ。あれは全部可哀想な大人の妄想でィ」
そんな考えが判ったのか、同じように銀時達から離れ、
こちらへとやって来た沖田が、そう答えた。
「ってか貴方のも十分安心できない内容なんですが」
「大丈夫でィ。何時かはその関係に心躍る日が来まさァ」
「いや来ないですからね!?
あ~もう!なんでこんな事になっちゃったんだろぉぉぉ!!」
そうそうないだろ、記憶喪失なんて!!そう嘆き、頭を
抱える新八の横で、神楽と沖田がチラリと目を合わせる。
そしてそのまま静かに原因となった鉄の塊へと視線を動かした。
「そうですよ!大体なんで僕、こんな所で倒れてたんですか!?」
原因が判れば、もしかしたら記憶が戻るかもしれない。
そんな思いから新八が二人に問い掛けるが、何故か
優しく肩を叩かれた。
あんな所に鉄の塊が落ちているのは、明らかに不自然だ。
だが、それ以上に周りの大人達が異常なので、
今の所新八は気付いていない。ならば・・・
「頑張るネ、新八。思い出せなくてもまた新しく
作っていけばいいだけの話ヨ」
「そうでィ。何時までも原因なんて小さい事に拘ってたら
前に進めませんぜィ?」
「え?いやなんかいい話で纏めようとしてません?
ってか決して小さくないですよね?記憶喪失の原因って」
「あ、この子は定春アル。定春~、NEW新八に
挨拶するヨロシ」
「や、NEWって・・・って噛んでる、噛んでるから定春!!」
「さすがNEW新八でさァ。
凄い懐かれ様じゃないですかィ」
「その名前を定着させないでくれます!!?
ってか血が~~~!!!!」
その後、大量の出血と引き換えに無事記憶を取り戻す事が出来た新八は、
怪我が治った後も、暫くの間万事屋に近づく事はなかったという。
「ってか簡単に記憶を落っことす方が悪いネ」
「いや、強制的に落とされたからね、アレ」
「新ちゃ~ん、そろそろ万事屋に戻って・・・」
「あれ?どなたでしたっけ?この変態クソ天パ」
「ちょ、何その一点集中な記憶喪失ぅぅぅ!!!」
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二万打お礼企画第一弾
もんちょ様からのリクで「新ちゃん記憶喪失」と言う事ですが、
如何だったでしょうか?
一万打企画に続いての一番乗り、本当に有難うございますv
なんだかグダグダになってしまいましたが、
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいですv