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少し前までそんなに寒くはなかった。
だから油断していたんだ、色々と。
僕は洗濯物を取り込みながら、前よりも高くなった空を見上げた。
「新八~」
洗濯物を抱え干し場から帰ってくると、居間から銀さんに名前を
呼ばれた。
そのままヒョコリと顔を出すと、ソファの上で体育座りを
しているいい大人が居た。
「・・・何やってんですか、アンタ」
呆れた声でそう返し、和室へと洗濯物を次に炬燵布団を寄せる。
・・・が、まだ生乾きだ。
これは明日もう一回干さないとダメだな。
軽く肩を落とすと、また僕を呼ぶ銀さんの声が聞こえた。
「なんなんですか、もう!」
僕は立ち上がるとドカドカと居間へと向った。
すると先程の格好のまま、目の前に立った僕を見上げ、銀さんが
どう?と問い掛けてきた。
何がどうなのか判らず首を傾げると、銀さんは視線を和室へと
飛ばし もう出せるか? と聞いてきたので、漸く質問の意味を
理解出来た。
「まだダメですね。明日もう一回干さなきゃ」
そう答えると、銀さんは大袈裟なぐらい肩を落とした。
「あ~、もうマジかよ。」
嘆く銀さんに、僕は苦笑を浮かべる。
そう、まだ大丈夫だと思って、炬燵の準備を全くしていなかったのだ。
「仕方ないですよ。まさか急にこんなに寒くなるとは
思ってませんでしたもん」
「ってかよ、別に洗わなくても良かったんじゃね?」
そのまま使えばよぉ。じとりと見詰めてくる銀さんに、僕は
腰に手を当て、ギロリと睨み返す。
「ダメですよ!ずっと仕舞ってあったんですからね?
きちんと洗わなきゃダメです」
虫とかいたらどうすんですか!そう言うと銀さんはスゴスゴと首を縮めた。
以前、まだ僕が万事屋に来たばかりの頃、それまで万年床だった
銀さんの布団を上げようとして、その下にあった惨状は
未だ記憶の中から消えようとしてくれない。
・・・うん、あれは凄かった。
思わず思い出してしまい、ブルリと体を震わせる。
するとそれを見ていた銀さんが、何を思ったのかチョイチョイと
僕を手招きしてきた。
なんだろう・・・と近寄ると、不意に手を引っ張られ、そのまま
僕は銀さんの膝の上に・・・
「ちょ、何すんですか!」
「うんうん、だよなぁ。新八も寒いよなぁ」
慌ててその場から立ち上がろうとする僕を無視して、銀さんは更に
僕の背中に手を回すと、そのままぎゅっと抱き締めて肩口へと
顔を埋めてしまった。
「あ~、あったけぇ~」
猫だったらきっと喉を鳴らしているだろう。そんな雰囲気で
擦り寄ってくる銀さんに、思わず小さく笑いが零れる。
「そんなに寒かったですか?」
「おう、寒い寒い。オメーだって寒かっただろ?」
ほっぺ、冷てぇぞ。そう言って今度は自分の頬を僕の頬に寄せてきた。
それがくすぐったくて、少しだけ肩を竦ませる。
「動いてるとそんなに気にならないですよ?」
「ばぁか、少しは気にしろ。ほら、手も入れろって」
僕の背中から片手を離すと、銀さんの肩に置いていた僕の手を掴み
銀さんと僕の胸の間に入れてしまう。
そして再び背中へと手を回すと、ぎゅ~っと抱き締めてきた。
「あ~、あったけぇ~」
「銀さん、そればっか」
クスリと笑って言うと、んじゃ幸せ~。 と言葉を変えてきた。
なんだそれ。クスクス笑っていると、なんだよ。とばかりに
銀さんが抱き締めている腕に力を込めてきたので、余計に笑ってしまう。
そして思い浮かべるのは、生乾きの炬燵布団。
「ね、銀さん」
そう言って銀さんの首筋に擦り寄れば、微かに銀さんの筋肉が
動き、こちらに向いたのが判った。
でもきっと、その目には何も映っていないだろう。
・・・いや、何も映ってないってのは違うか。
近すぎて見えてないだけ。
現に僕の視界にだって、銀さんの首筋しか映ってない。
改めて自分達の今の格好を思い出し、笑えてくる。
眼鏡が当たって痛いのにね。
本格的な冬も、まだ来てないってのにね。
ギューギュー抱き締めあって、何やってんだか。
零れ出る笑いをそのままに、銀さんに問い掛ける。
「炬燵出します?」
布団、電気入れちゃえばそのうちに乾いちゃうかもしれませんよ?
そう言うと、銀さんは少しだけ唸り、
「・・・ま、アレだ。虫はやっぱやだしな。
この際だ、徹底的にお日様にやっつけて貰おうや」
電気代も節約しなきゃな。銀さんはそう言うと、僕の肩口に
完全に頭を乗せ、グリグリと摺り寄せてきた。
だからくすぐったいっての!
震える僕を無視し、収まりのいい場所を見付けたのか
銀さんは動きを止め、小さく息を吐き出す。
「あ~・・・でも寒いのは寒いんで、まだこのままで宜しく」
あ~、ホントあったけぇ~。
あ~、もうマジ幸せ~。
そのまま続いた銀さんの言葉に、僕は笑って、もっと温かくなるよう
銀さんの首筋へと鼻を埋めた。
どうやら万事屋の炬燵の出番は、まだ先になりそうだ。
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偶にはイチャコラさせてみる。