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朝食を食べ終わり、のんびりとテレビを眺めていると、万事屋の電話が
久しぶりに鳴り響いた。
・・・が、生憎何時もそれを取る新八は、現在朝食の後片付け中。
「ちょっと~、誰か出て下さいよ~」
台所からそんな声が聞こえ、俺はダルそうに背凭れから体を離すと、
ソファで定春を撫でている神楽へと声を掛けた。
「うぉおおい、ちょっと出ろや、神楽」
「いやネ、私今忙しいヨ」
銀ちゃんが出るヨロシ。そう言ってギロリと睨まれる。
・・・あれ?俺、ここの社長だよね?一応。
しかも坂田家的には大黒柱だよね?一応。
なので、ここで負けてはならん・・・と、再び神楽に命ずる。
うん、別に面倒臭いとかじゃないから。
威厳を保ちたいだけだから、銀さん。
だが、相手もさるモノ、中々頷きゃしねぇ。
なんだ?反抗期かぁ?
無闇に逆らいたいお年頃ですか?オメーは。
言っとくけど銀さん、そんなお年頃でも容赦しないから。
無闇に逆らってくるのはこの髪だけで十分なんじゃぁぁ!!!
と、二人して睨みあい、そのまま
「オメーが出ろ」「いやネ、銀ちゃん出るヨロシ」と、無駄な戦いを
繰り広げていたら、騒がしく鳴っていた電話が
プツリと切れた。
どうやら自ら諦めてくれたらしい。
何だよ、一人でトイレに入ってる時ばっか狙って鳴りやがるから
とんでもなく空気読めねぇやつだと思っていたが・・・中々どうして。
案外空気読めるじゃねぇか。
あ~これで静かにテレビが見える・・・と思ってたら、
行き成り脳天に衝撃が来た。
見ればそこには恐ろしげな笑みを浮かべた新八が・・・
「あんた等は・・・電話の一つもまともに取れないんですか!!」
仕事の依頼だったらどうするんです!と怒る新八。
俺はチョップを食らった頭を摩りつつ、
「んだよ、まだそんな夢見てんの?」
いい加減現実見ろよ。と諭すように告げたら、今度は額に横から
チョップを食らった。
ちょ!地味にマジで痛いんですけどぉぉぉ!!!!
「人中じゃなかっただけ良かったと思ってください」
ちょっと涙目になりながらそう訴えると、酷く冷めた視線でそう返された。
・・・あれ?愛は何処に行ったのかな?
なんか一μも見えないんですけど・・・あれ?
俺、目が悪くなったかな?
そう思ってると、新八はくるりと俺に背を向け、今度は神楽へと
声を掛けた。
「神楽ちゃんも。・・・居るんだから電話、取ってみてよ。ね?」
腰に手を当ててるものの、声は明らかに優しげだし最後の方なんて
お願いでもするように、首をコテリと傾けていた新八。
あぁ、なんだ・・・あったよ、愛。アソコに。
ってアソコに合ってどうすんだよ。
文句を言おうと俺が口を開く前に、神楽がソファから勢い良く立ち上がった。
「いやネ!私、絶対取らないヨ!!」
そう言うと、定春の名を呼び、そのまま外へと出て行ってしまう。
ったく、仕方ねぇなぁ、反抗期ってやつぁよぉ。
呆れ半分でそれを見送り、背凭れへと体を預けると、
新八が肩を落としているのが目に入った。
「気にすんな、ありゃ~単なる反抗期だ」
そう声を掛けると、困ったような表情の新八が振りかえった。
「違いますよ。・・・神楽ちゃん、電話に慣れてないみたいで」
「あぁ?なんだそりゃ。あいつんトコだって電話ぐらいあっただろうに」
新八の言葉に眉を顰め、そう言うと更に困ったような顔をされた。
「あったにはあったみたいですけど・・・出た事はなかったみたいで・・・」
そう言われ、漸く俺も合点がいった。
確かにあのオヤジが電話なんぞを小まめにする訳がない。
一人で母親を看病してたって言うんだ、他にかけてくるヤツも
いなかっただろう。
まして・・・
「掛けた事も、殆どなかったみたいですし・・・」
・・・だろうな。
鳴る事がないなら、鳴らす事もなかっただろう。
どうしようもない時、受話器を取っても掛ける所がなく
無機質な音しか耳に入ってこないってのは、どんな気持ちだろう。
なんだかイヤな気分になり、それを振り払うように俺は盛大に
頭を掻いた。
そんな俺を見て、新八がクスリと苦笑する。
「ま、今はそんな事ないですけどね。ここだって偶にだけど
電話鳴りますし、かける所だって、もうあるんだから・・・」
早く慣れて貰わなきゃ。新八はそう呟くと、再び神楽が出て行った玄関の方に
視線を向け、やんわりと微笑んだ。
その夜、新八が帰り、俺が風呂に入っていると、不意に電話が鳴った。
が、相変わらず神楽は出ようとしないようで、延々と鳴り続けている。
・・・ま、その内切れるだろう。
俺も態々風呂から出て出るのはイヤなので、そのまま放置しておく事に決める。
だが、何か余程の用事なのか、どれだけ経っても電話が鳴り止む事はなく、
とうとう風呂の向こうに神楽がやって来て
「どうにかするヨロシ!!」
煩くてテレビの音が聞こえないネ。と文句を言ってきた。
ったく、仕方ねぇなぁ。
俺は風呂から上がり、軽く拭いて腰にタオルを巻くと、未だ鳴り続けている
電話へと向った。
「はいはいうっせぇなぁ、万事屋だコンチキショー。」
『・・・なんなんですか、その受け取り方』
文句を言ってやろうとしたが、受話器から流れてきたのは先程まで
ここに居た新八の声で、俺は一瞬言葉が詰まる。
『銀さん、今お風呂入ってたんでしょ?風邪引かれたら困るんで
さっさと戻ってください』
「え?新八?っつうかなんで銀さんが風呂入ってたの知ってんの?
もしかしてストーカ・・・」
『自分の血で満たされたお風呂に入りたいですか?
いいからとっとと戻って!・・・っとその前に神楽ちゃんに
変わってください』
新八の言葉に、半裸からではない悪寒を感じながら振り返ると、
聞き慣れた名前を耳にしたからか、神楽がこちらを見ていた。
それに 変われってよ。 と受話器を差し出すが、
神楽は困ったように身を引いてしまう。
俺は半ば無理矢理神楽の手を取ると、そのまま引き寄せて
受話器を掴ませた。
「新八からだ、用件聞いとけ」
判ったな。そう言うと、未だ受話器を耳に当てようとしない神楽を
残し、風呂場へと戻った。
そして冷え切った体を浴槽に沈めながら、先程の電話の事を
思い浮かべる。
考えてみれば、こんな夜に新八から電話があるのは珍しい。
何かあったのだろうか・・・だが、声は普通だった気がする。
一通り考えてみたが何も浮かばず、俺はある程度体を
温まらせると、風呂から上がった。
「神楽ぁ、新八、なんだって?」
タオルで頭を拭きながら居間へと戻ると、既に電話は終わったのか
ソファに神楽が座っていた。
・・・と言うか、あの後ちゃんと出たのか?
少し心配して問い掛けると、神楽は頭だけをこちらに向け、
「別に。何か元栓がどうとか言ってたネ」
と、少しだけムッとした表情で答えてきた。
「元栓?」
不思議に思いながらも、とりあえず台所へと行って見る。
が、元栓はきちんと締められている。
「全く、締めたかどうか判らないなんて、ダメガネもいいとこネ」
ブチブチと文句を言う神楽の声が聞こえ、俺は
新八にしては珍しい事もあるもんだ・・・とだけ思い、
その場を後にした。
が、次の日の夜も電話は掛かってきた。
今度もやっぱり俺が風呂に入っている時だ。
昨日と同じように鳴り続ける電話に、俺も同じように観念し、
風呂から出る。
かけてきた人物は、やはり新八だ。
俺にさっさと風呂に戻り、神楽に変われと言うのでそう告げる。
神楽は俺に無理矢理受話器を渡され、渋々出る。
そんな事が何日か続いた。
用件は様々だが、それ以外は何も変わらない。
最初は神楽と一緒に文句を言っていた俺だったが、
流石に新八が何をしたいか判り、密かに協力する事にした。
様は慣れればいいのだ、こんなもの。
そんなある日、やっぱり掛かってきた電話に俺が出て、
神楽に変わろうとすると、初めて自ら受話器を受け取った。
なんだよ、おい。
毎晩こんな格好で廊下を行き来した甲斐があったんじゃねぇの?
少しだけ照れ臭そうに受話器を耳に当てる神楽に、
思わず口元が緩んだのが自分でも判った。
『本当ですか?良かった~』
その日の夜、神楽が眠ったのを確認してから、俺は新八の所へ
電話を掛けた。
その時の様子を話せば、受話器の向こうからは嬉しげな新八の声が
聞こえてくる。
きっと声と同じように、嬉しそうに笑っているんだろう。
本当ならその顔、直に見たかったけどな。
今の俺の顔は恥ずかしくて見せられないから、やっぱり電話でよかった。
だって多分、俺の顔もユルユルに緩んでる。
次の日、もうすぐ昼になろうという時に電話が鳴った。
勿論新八が居るので、俺も神楽も出ない。
だが、新八は少しだけ電話の相手と受け答えをすると、
不意に神楽の名前を呼んだ。
「神楽ちゃ~ん、お登勢さんから電話~」
その言葉に、神楽がびっくりした表情で体を竦めた。
新八からの電話には慣れ始めたが、他のヤツからの電話にはまだ慣れない様で、
呼ばれても中々出ようとしない。
ってか直ぐ下に居るのに、なんで態々電話?
訝しげに見詰めていると、なんとか受話器を取らせた新八がこちらを
向いて小さな笑みを浮かべてきた。
・・・あ、成る程ね。ババァも仲間か。
日頃とは比べ物にならないくらいの小さな声で答える神楽から目を離し、
俺はそれまで見ていたジャ○プへと視線を落とした。
笑ってるように見えるのはアレだ。
ジャン○プが面白いからだから勘違いしないように、新八クン。
それからと言うもの、万事屋の電話は大忙しだ。
夜も昼も、一度は鳴る。
それは下のババァからだったり、お妙からだったり、様々だ。
ただ、沖田君から来た時は、俺も神楽もびっくりだ。
新八は笑ってたけどな、アレは心臓に悪いから。
電話にも悪いから。
思わずその短い生涯を
終えそうになってたからな、電話。
で・・・だ。
今、俺は外に居るわけだ。
珍しくあった仕事の帰りなんだが、その帰りに買い物をしてきて
くれと新八に言われたりしたのだ。
断ろうとしたが、にっこり微笑まれちゃ~仕方がない。
決してその時握られてた拳が怖かった訳じゃない、うん。
けれど、とりあえず買ったはいいのだが、
重さ的にはなんでもない量だが、嵩張るものばかりで
ちょっと一人で持つのは辛いような気もする訳だ。
で・・・目の前には偶然にも公衆電話がある訳で。
新八からも、キツかったら電話をしてくれと言われてる訳で。
手元には買い物袋の他に、偶々お釣りで買った酢昆布があったりしてだな。
俺は一つ息を吸うと、目の前の公衆電話へと手を伸ばした。
仕方ないよコレは。
だって銀さん、仕事してきて疲れてるし。
多分この時間帯は新八、夕飯の準備で忙しいし。
だから・・・
「あ、新八?銀さんだけど神楽いるか?」
うん、仕方ない。
そう自分にいい聞かせていると、受話器の向こうから聞きなれた、
けれど何時もとは少し違う声が聞こえてきた。
うん、まぁアレだ。
とりあえず俺を物珍しそうに指差すのは止めようか、そこの少年。
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グラさんが普通に電話を取って詐欺に合ってましたが、
それはそれ・・・と言う事で(おいι)