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仕事も無い暇な午後。
隣り合ってソファに座り、テレビを見ていたら不意に新八の視線が
こちらを向いているのに気が付いた。
それにチラリと視線を向け、目で問い掛けると、
どこか感心したように新八が呟いた。
「銀さんって色、白いですよね~」
その言葉に、俺は深々と息を吐く。
本当、何回も言ってるけどな?
寧ろ理解するまでしつこく言い続けるけどな?
銀さんのこれ、銀ですから!!
決して白髪とかじゃないですからぁぁぁぁ!!!
そう言うと新八はキョトンとした顔をし、次に苦笑した。
「いや違いますよ。髪の事じゃなくて肌の色です。
銀さん、半端な着方してるくせに両腕とも白いじゃないですか」
「え?ちょっと待って?なんか今酷い言葉が混じってた気がするんだけど。」
「ほら見てくださいよ。僕なんてちゃんと着てても
少し焼けちゃって・・・」
「スルー!!?てか今もなんか混じってたよね?
明らかに混じり込んでたよね!?
胸を突き刺す凶器と言う名の言葉が!!」
一生懸命訴えるが、新八は無視してスッと袖を上げ、
俺の腕と自分の腕を比べ始めた。
・・・ね、ちょっと泣いていい?銀さん。
「うん、やっぱり銀さんの方が白いや」
「・・・まぁ焼けない方だしな、銀さん。」
寧ろ赤くなるな。比べられていない方の手で頭を掻きつつそう告げると、
新八は うわ、痛そうですね~。 と僅かに眉を下げた。
「後、蚊とかに食われてもなんか痛々しいぞ?」
「痕、ばっちり出来そうですもんね」
そっと俺の腕を取り、マジマジと見詰めながら頷く新八に、ちょっとした
悪戯心が芽生える。
俺はニンマリと口元を上げると、新八の耳元へと口を近づけた。
そして
「ちなみに、キスマークも・・・な?」
低い声で、そう囁く。
こう言えば新八の事だ、真っ赤になって慌てるだろう。
さっき俺を苛めた罰だ、俺も苛めてやる。
そう思い、ニヤニヤとその後の新八の動向を見守っていると、俺の予想を反し
新八は へ~ と呟くと、俺の腕を手に取り、比較的柔らかい内側に
唇を押し付けた。
そしてチュウ チュウ と吸い付き始める。
・・・・・・・・・・・・え?
突然の事に体が固まり、何も出来ない俺を余所に、新八は何度か吸うと
パッと口を離した。
そして俺の腕に赤い痕が付いたのを確認すると、
「本当だ!結構簡単につきましたよ」
と、満面の笑顔を俺へと向けてきた。
あ~、本当だね~。簡単に出来たね~。
・・・って、簡単にやり過ぎだ、おいぃぃ!!!!
ちょ、本当もう勘弁してください。
何コレ、新手の拷問!!!?
ってかその笑顔、子供が新しい玩具見つけた瞬間のと一緒だよね?
やましい大人の事情とか全く判ってないよね!?
寧ろ超ほのぼのムードだよねぇぇぇ!!!?
もう一回・・・と、楽しそうに口を近付ける新八に、俺は慌てて
腕を引き抜き、反対の手で新八の顔を塞いだ。
「あ、何すんですか!もう一回やらして下さいよ~」
顔を塞いでいる手を除けようと、新八が俺の手を掴むが無論離してはやらない。
俺は空いている手で自分の顔を覆い、俯いた。
ダメだ、完璧赤いよ、俺の顔。
本当、白いんだから。
マジで赤いの丸判りだから!!
新八が ケチ だの 減るもんでもなし!! と言っているが、知るもんか。
ってか減るから!
確実に銀さんの理性が減ってくから!!
最初っから無いようなもんを
これ以上減らしてどうする!!!
大きく息を吐き出した所で、不意に新八のつけた赤い痕が目に入り、
俺はますます頬が熱くなっていくのを感じた。
*********************
打たれ弱い坂田(笑)
「お妙さぁぁぁぁぁぁあああん!!!」
その日志村家は澄んだ空気の中、小鳥の囀りをBGMに既に日課になりつつある
『お妙さん参り』
を一方的にされ、お妙の
「散り去れ、ボケェェェェェェェェェ!!!!!」
との言葉と共に、容赦なくストーカーをこれまた日課になりつつある
花畑へと直行させる事に成功していた。
「・・・またか・・・」
朝食の後片付けをしていた所、この世のものとは思えない声と、
この世のものとは思いたくない破壊音が聞こえ、新八は大きく息を吐いた。
そこに、トコトコと足音をさせ、ヒョイと昨日妙に誘われこちらに
泊まった神楽が顔を出した。
「新八~、ゴリが死んだアル。スコップどこアルカ?」
「いやいやいや、まだ死んでないから、多分。
てかなんでスコップ!!!?ウチにこれ以上危険なモノを
埋めないでくれるぅぅぅ!!!?」
不穏な発言をする神楽を窘め、新八はもう一つ息を吐くと
とりあえず縁側にでも運んどいて。と神楽に頼み、再び洗い物へと視線を戻した。
「あれ?姉上は?」
洗い物を片付け、最早近藤専用となってしまった志村家の救急箱を
片手に縁側へと行くと、ソコには未だ意識不明な近藤と、暇そうに
縁側から足を投げ出し、プラプラさせている神楽が居た。
「姉御なら風呂入って寝るって言ってたネ」
今なら安心だからって。そう答える神楽に、新八は引き攣った笑いを浮かべた。
確かに・・・近藤がこの状態ならば安心だろう。
新八は横たわる近藤の傍に座ると、持ってきた救急箱を開けながら
怪我の具合にさっと目を通した。
・・・顔面に明らかに引きずられた後が見えたが、
そこは無視だ。加害者は一人でいい。
「うわっ!すっごいタンコブ!!」
近藤の頭に物凄いタンコブを見つけ、新八は思わず体を引いた。
そんな新八の隣で、神楽が興奮気味に言葉を発した。
「今日の姉御はまた一段と凄かったヨ!シュッ!!と行って
ゴギョッ!!!となったネ!!!」
「・・・うん、アレだね。人って色んな音が出せるんだね」
説明にはなっていなかったが、物凄く状況が判る。
新八はカクリと項垂れ、恐る恐るタンコブへと指を伸ばした。
やっぱり大きく腫れあがっている。
「・・・タンコブ出来れば安心なんだよね・・・確か」
内出血してない証拠とかなんとか聞いた事があるような気がする。
でも、先程の効果音といい、タンコブの大きさといい、流石に
さっさと真選組へと連絡して回収して貰った方がいいのかもしれない。
「なら私が早く回収に来るようお百度参りしてやるネ」
「いや、それより電話した方が早いからね?
明らかに簡単だからね、その方が」
悪いけど連絡してきてくれる?と神楽に頼むと、新八もタオルを濡らす為
その場を離れた。
引っ込め~、引っ込め~、回収に来るまでに少しでもいいから引っ込め~。
・・・と念じながら濡れタオルを近藤の頭に当てていると、漸く
神楽が縁側へと帰って来た。
「電話してきたアルヨ~」
ゴリはまだ起きないアルカ?そう言って新八の座っている所とは反対の
場所へとしゃがみ、近藤の顔を覗きこんだ。
それに苦笑して頷くと、新八も同じように覗き込む。
「だけどよく体、壊さないよね、近藤さん」
ウチの庭はどんどん破壊されていくのに・・・そう呟く新八に、
神楽も深く頷いた。
「ゴリなだけアルネ。あれだけのモノ食らったら、普通骨の二三本逝くヨ」
「あれだけってどんだけのモノ!?
・・・にしても、やっぱ体とか鍛えてるからかな?」
そう言って新八は何気なく近藤の胸元に手を置いた。
そしてその厚さと固さに驚く。
「うわっ!すっごいカチカチ!!」
「本当アルカ?・・・ってぅおお!!凄いネ、めっちゃ固いヨ!!」
神楽も胸元に手を置き、目を輝かせるとバシバシと叩いて
その固さを試していた。
その衝撃に、咳き込みながら薄っすらと近藤の目が開いていく。
「ゲホッ!!・・・て、アレ?なんで俺・・・」
「あ、近藤さん、気が付きました?」
目を覚ました近藤に気付き、新八がそう言うも神楽の手は止まらない。
楽しそうにバシバシと叩きながら近藤に告げる。
「ゴリ!!スッゴイね、ガチガチのムキムキヨ!!」
「え?ッゲホ!・・そ、そうかな~・・ッグ!!」
近藤はそれに時々咽ながらも照れ臭そうに笑みを浮かべた。
新八は慌てて神楽を制しながらも、やはりどこかキラキラした目で
近藤を見詰めた。
「本当凄いですよ、やっぱり毎日鍛えてるんですか?」
「う、うん、まぁね・・グェッ!・・や、やっぱり体・・・ゴッ!が
基本だか・・ゲフッ!!」
「うぉぉぉお!!カッチンカッチンネ!!」
「あ、また!!もう神楽ちゃん、止めなよ」
「い、いやいや・・クッ!こ・・れくらいは・・・カハッ!!」
新八に止められながらも止めようとせず、それ所か段々と強くなっていく
神楽の手に言葉を詰まらせながらも近藤が律儀に答えていると、
「いやだわ~、何の為の基本なのかしらぁ?ストーカー?」
メキョ
「「あ・・・」」
何時の間に来ていたのか、先程まで新八達が触っていた近藤の
胸元に、お妙の踵がいい具合に埋まっていた。
「あ・・・姉上・・・」
ちらりと見れば、先程漸くこちらへと帰って来た近藤は再び旅立ったらしい。
カクリと力なく横たわっている
そんな近藤から妙はそっと足を下ろすと、未だに近藤の胸元に
ある新八達の手に目をやり、
「ダメよ?新ちゃんも神楽ちゃんも。
ウチでは飼えないんだから気軽に触っちゃあ」
勘違いして懐いちゃうでしょ?と、聖母の如き笑みを浮かべた。
その言葉に二人はさっと手をどかすと、少しだけ近藤と距離を取る。
妙はそれを満足げに見詰めると、 じゃあもう寝るわね。 と
告げ、その場を後にしたのであった。
「・・・神楽ちゃん、救急車・・・」
「判ってるアル。今ちゃんと祈ってるネ、早く来いって」
「いや、それ電話した方が早いからね」
とりあえず・・・と、新八は近藤の頭に当てていた濡れタオルを取り、
寧ろ微かに凹んでいそうな胸元にそっと当てなおしたのであった。
*********************************
近藤さんが大好きです(え?)
それは簡単な依頼の筈だった。
なのに、事が進めば進むほど胡散臭いものが出てきて。
その結果、新八が怪我を負った。
静まり返っている病院の廊下を歩き、辿り着いた一つの部屋。
その扉を開けると、ベッドの脇の椅子に座っている神楽の肩が
小さく震えたのが見えた。
けれど、こちらを振り向きはしない。
ただ、目の前で眠っている新八を見詰めている。
俺は黙ったまま扉を閉めると、壁際にある椅子を神楽の隣に移し、
腰を降ろした。
視線の先は、同じベッドの中の新八。
所々に白い包帯が見え、目に痛い。
自分も神楽も、同じような包帯が巻かれているのだが、
何故こんなにも新八に巻かれている包帯は目に痛いのだろう。
ちらりと見た神楽も同じ思いなのか、酷く眉を顰めていた。
だな、痛くてまともに見てらんねぇよな。
でも、離したくねぇよな。
もう、少しの間でさえ目を離したくない。
そんな事を考えながら、とりあえずの経緯をポツリポツリと話す。
依頼主が酷く謝り、感謝していた事。
お妙に連絡がついた事。
明日以降、もしかしたら真選組が事情聴取に来るかもしれない事。
「・・・関係ないネ」
ちゃんと聞いていたのか、神楽がボソッと呟いた。
けれどそれを聞き、銀時は微かに頷いた。
・・・そうだな、関係ねぇな、そんなの。
あるのは、目の前の現実だけだ。
あれは一瞬の事だった。
敵に囲まれたあの時、目を離したあの一瞬。
慌てて声を掛ければ、『大丈夫です』との返事。
悔しそうな神楽の声が、静かな病室に響く。
「ウソばっかネ。全然大丈夫じゃないヨ」
「・・・そうだな」
全てが片付いたと思った時、倒れこんだ新八と流れた血の赤さ。
あぁ、あれも目に入った瞬間、物凄く痛かったっけ。
「ウソついちゃダメって何時も言うネ。
なのに自分がウソつきやがって・・・馬鹿丸出しネ」
「・・・そうだな」
担ぎ込んだ病院。
傷は思ったよりも浅くて、命に別状はないと言われたけれど。
待っている時間、時計の針の音が酷く耳に痛かったな。
こうしている今も、色々痛いけれど。
「・・・なぁ、神楽」
視線を動かさず呼び掛ければ、何アルカ。と、視線も寄越さず答えられた。
それに、 こんな時に言うのもあれだけどな・・・と続け、
「もし・・・もしもの話だが、絶対そんな事にならねぇようにするがよぉ。
けど、もしこの先新八が俺等より先に死ぬ事があったら・・・」
お前、殺していいか?
静かな病室で、ポツリと、けれど確りと問い掛けると、漸く隣から
視線を感じた。
けれど俺の視線は動かない。
ただ、ただ、眠る新八を見据えて言葉を続けた。
「俺やお前が新八より先に逝く事ぁよっぽどの事がねぇ限り、
あり得ねぇだろ?」
新八を残して逝くなんて、本当あり得ねぇ。
俺も・・・そしてきっとお前も、何があろうが、何をしようが
絶対残してなんか逝かない。
絶対に、帰ってくる。
・・・けど・・・
「こいつは時折、テメーよりも他人を大事にしやがる」
そう、それこそ自分よりも強い俺や神楽を。
もう目を離しはしない。
そんなに簡単には逝かせない。
そうは思うが・・・考えたくない『もしも』があるかもしれない。
今日よりも酷い事が起こってしまうかも知れない。
そん時は・・・
「俺は死ぬよ?新八が死んだら、俺も死ぬ。
無理なんだよ、もう。こいつがいないとさ。だからよ、
その時はお前も連れて行って良いか?なんかお前だけ残したら
新八、心配しそうだしよぉ」
あ、勿論定春もな。そう言うと、隣から感じていた視線が
また外れるのを感じた。
「・・・その前に怒られるネ。なんで来たかって」
「そうだな。でもこればっかりは仕方ねぇよ、俺は共に逝く」
お前はどうするヨ。そう聞けば、少しだけ嬉しそうな声が返って来た。
「仲間外れは良くないネ。仕方ないから一緒に逝ってやるヨ」
「そっか・・・」
その答えに、俺も漸く口元が緩んだ。
「ま、そんな事にならねぇよう、頑張るけどな」
けれどもし・・・もしも誰かの手にかかってお前の命が消えたなら。
その時、俺は躊躇い無く神楽を殺すだろう。
定春を殺すだろう。
そして最後に、自分を殺すだろう。
お前の命を消したヤツなんか知るもんか。
憎いけどな、最悪だけどな。
出来ればこの手でぶっ殺してやりてぇけどな
そんな事してる暇ねぇよ。
お前がいない所なんて、一瞬でも居たかねぇんだよ。
余分なヤツなんかいらねぇ。
俺達だけでいい。
俺達だけが いい。
お前はきっと怒るだろう。泣きもするだろう。
だけど最後は・・・なぁ?呆れてもいいから
『仕方ないですね』
って笑って迎えてくれ。
俺はお前が居れさえすれば、もう何処でもいいんだよ。
麻酔が切れ始めたのか、それとも俺の考えが判ったのか、
ベッドの中の新八が眉を顰め・・・けれど呆れたように笑った気がした。
**********************
色んな意味で幸せ坂田(え?)
でも、そんな事にはならないよう必死に生きてきますよ。
「おぅ、相変わらず暇そうなツラしてるアルネ、お前ら」
巡察に出た瞬間、すぐさまサボりに行こうとする沖田を捕まえ、
どうにか職務を全うしている土方に、軽い口調が掛けられた。
その瞬間、土方の眉がピクリと動く。
・・・・・またか。
見なくても判る声の主に、げんなりとした顔で肩を落とす土方を余所に
隣にいた沖田がこれまた軽い口調で返事を返す。
「おいおい、聞き捨てならねぇなァ。暇で辛気臭ぇツラしてんのは
お前らと土方さんだけでィ」
「いや、辛気臭ぇのは当たってるがな?
寧ろ疲れきってるツラだと思うがな?
誰のせいだと思ってやがるよ、おい。
てか暇してねぇよ、思いっきり仕事中だよ!!」
どこ見て言ってんのぉぉ!!!と、怒鳴り返せば、何時の間に傍に来ていたのか、
神楽と沖田の二人に同時に鼻で笑われた。
な、殴りてぇぇぇぇえええええ!!!!
って言うかなんでこんな時だけ仲良しぃぃぃ!!!?
心底そう思うが、ここで暴れてしまったら、どさくさに紛れて
総悟が逃げ出す可能性がある。
折角どうにか捕まえてここまでやって来たのだ、一時の感情で
それを無にするのは虚しすぎる。
土方は思わず握り締めてしまった拳をなんとか解き、微かに震える手で
タバコを取り出した。
それを口元に持っていき、火をつけた瞬間、神楽と共に居た新八の
目が煌いた。
それに気付いた土方が、訝しげな視線を送ると、新八はハッとした様に
視線を下げ、恥ずかしそうに頬を染めた。
「?どうし・・・」
「どうしやした?セクハラビームでも送られやしたかィ?
最悪だなぁ、おい。目ん玉抉り出せよ、土方ぁ」
「ちょっ!何言ってんのぉぉぉお!!
ってかその指を近づけるなぁぁぁぁ!!!」
人差し指と中指を立て、所謂チョキの形の手をじわじわと近づけて来る沖田
の手をガッチリと掴み、顔を背ける。・・・と、
「んだよぉ、そんな腹の足しにもならない目ん玉なんかいらないネ。
どうせなら慰謝料寄越せヨ」
徐に土方の懐へと手を伸ばす神楽。
「なんの慰謝料!!?ちょ、本当誰か警察呼んで・・・って
俺かぁぁぁぁああ!!!!」
使えねぇ!!と、土方は叫びつつ、それでも二人の手を振りほどき距離を取る。
その目は瞳孔が開ききっており、警戒心バリバリだ。
「「ちっ!」」
そんな土方の様子を見て、二人は盛大に舌打ちをしながら各々の手を
降ろした。
・・・本当、なんでこんな時だけ仲良いんだよ、
テメー等はよぉぉお!!
血管がプチプチ浮き上がるのを感じながらも、二人から視線を
外さないでいると、不意に新八が視界の中に入り込んできた。
「もう、何やってんですか、二人とも!」
「いや、新八がエロ方のセクハラビーム受けたみたいだったもんで
その元凶をぶっ潰してやろうと・・・」
「いや、受けてませんから、そんなの。
ってかエロ方って誰?
エロリストといい、
どんだけその言葉が好きなんですか」
「言葉だけじゃなく
そのものも好きでさァ」
「んな事爽やかに断言しないで下さい!!!」
アンタの方がセクハラじゃん!!!腰に手を当てそう怒ると、次に新八は
神楽へと視線を移した。
「神楽ちゃんも!他人の懐に手を突っ込もうなんてしちゃダメでしょ!!」
「何言ってるネ。自販機を見付けたらお釣りの所に手を差し入れ、
酔い潰れてるヤツみたら懐に手を入れろって銀ちゃんが言ってたネ」
「それ、明らかに犯罪だからぁぁぁぁ!!!!!」
「それに人類みな兄弟ネ。助け合うのが当たり前ヨ」
「一方的に助けられてるだけだからね!?
片方搾取される一方の片道通行だから。
・・・てか、それも銀さんが言ってたの?」
低い声で新八が問えば、コクンと神楽が頷く。
それを見て、新八は そう・・・ と小さく呟いた。
・・・新八のメガネが怪しく光ったのは、多分土方の見間違えでは無い。
そんな新八に沖田は一つ息を吐くと、軽く肩を窄めた。
「ならどうしたんでさァ。土方さんのツラ見て照れるなんて・・・
それ程のもんでもないでしょうに、この程度のモン」
「いや、確かにそうだろうけどよ」
なんか腹立つわぁ、マジで。そう頬を引き付かせるが、総悟の疑問も
もっともだ。・・・と、土方は目の前の新八へと視線をやった。
すると、新八は焦ったように手を振り、
「いや、別に意味はないんですけどね?その~・・・」
と、視線を上へとやった。
思わず他の三人の視線も上がる。
しかしあるのは青い空と、土方の口元から登るタバコの煙のみで・・・
と、そこで漸くある事が土方の頭を過ぎった。
そして、
「もしかして・・・これか?」
と、タバコを吸うと、以前やったように口を窄めて頬を軽く叩いた。
そして出てきた煙の輪っかに、新八の頬が柔らかく緩んだ。
「おぉ!ドーナッツネ!!」
「なんでィ、こんなのが見たかったんですかィ」
そう言いながらも、沖田の目も浮かんでいく輪っかを追って行く。
自分からやりだした事ではあるが、三人の視線を集めてしまった事に
土方は僅かながらも恥ずかしさが出てくる。
・・・まぁ満更でもねぇがな。
だが流石に往来でやり続けるのも・・・と、普通にタバコを吸い込んだその時、
「・・・僕もやってみたいなぁ」
と言う新八の呟きが耳に入った。
それに土方の目が少し見開く。
タバコに興味があるようには見えなかったが・・・と、意外な思いで
見ていると、新八は苦笑し、
「でも不器用だから、そんな綺麗には出来ないですよね」
と続けたので、土方も苦笑を浮かべる。
どうやら目の前の少年は、タバコよりもその煙の方に興味があったらしい。
「バッカ、その前に未成年だろうが」
笑って軽く新八の頭を掻き混ぜると、判ってますよ。とムッと口を
尖らしながらも、名残惜しそうに消えていく輪っかを見送る姿に、
土方は一瞬悩む。
そして、
「ならやってみるか?」
と新八に提案した。
「え?」
「喫煙は認められねぇがな。・・・ホレ」
そう言って頬をチョイチョイと指差す。
その意味が判らず、カクリと首を傾げるが、直ぐに理解し、
新八は嬉しそうに笑みを深めた。
が、戸惑うように土方の顔を覗う。
「えっと・・・本当にいいんですか?」
「あぁ、構わねぇぞ」
土方も柔らかく笑い、煙を口に含んだ。
新八は覚悟を決めると、その頬にオズオズと指を近づけ、ポンポンと軽く
指を当てた。
「わ、出来た!」
出てきた輪っかに嬉しそうに笑う新八。
それを見て神楽が ずるいネ! と拳を握り締めた。
「新八、私にもやらせるヨロシ!」
「って待て待て待て!!!
オマっ!それ思いっきり拳じゃねぇか!!!
輪っかが出る余地もねぇよ!!!」
「そうだぜィ、チャイナァ。ここは俺に任せろィ」
そう言って沖田がチャキッと刀を煌かせる。
「任せられるかぁぁぁあ!!!!
何それ、お前!!
普通に刺す気満々じゃねぇか!!!」
「安心して下せェ、土方さん。きっちりでかい輪っかを
アンタの頭上に掲げ上げてみせまさァ」
「それ天使の輪っかぁぁぁ!!!!」
「あ、私もそっちの方がいいネ!」
「ってホントなんでこんな時だけ仲良しぃぃぃ!!!?」
「ちょ、じっとしてて下さいよ、土方さん。
輪っかが崩れちゃうじゃないですか~」
「その前に俺の人生が崩れ落ちるわぁぁぁ!!!!」
その後、暫くの間巡察中に喫煙する土方の姿は見られなかったと言う。
**********************************
大人を弄り倒す子供達が大好きです。
「あ、マヨネ」
巡察の最中、タバコが切れたので近くの自販機で買い、一服しようと
した所で、不意に耳に入ってきた声があった。
一瞬振り向きたくなるが、つい先日の事を思い出し、なんとか押し止まる。
ってかマヨネってなんだ、マヨネって!!
なんか中途半端な略語になってんじゃねぇかぁぁあ!!
って、アレ?この場合『マヨ』+『ネ』??
一瞬悩んでいると、第二段が容赦なく耳に入ってきた。
「おいコラ、シカトしてんじゃねーよ。可愛い女の子が
声掛けてやってるんだから、咽び泣いて金を置いていくヨロシ。
それが真のマヨヨ?」
「っておぉぉぉい!!それを言うなら
真のマヨラーだろうがァァァ!!!」
てかそんな事誰がするか!!と、先程の決心も忘れ、つい振り向いてしまう。
と、ソコには予想通りの二人が・・・
「いや、アンタも何処に
突っ込んでんですか」
「馬鹿アル」
半目でこちらを見ながらそんな事を吐き捨てる二人に、土方は
ヒクリと頬が引き攣るのを感じた。
しかし、ここで怒鳴りつけるのも大人気ない。
ってか関わり合いたくない。
先程叫んだ自分を遠くの彼方に放り投げ、土方は気持ちを落ち着かせるように
持っていたタバコを開け、一本に火を着けた。
「・・・何か用か?お前ら」
保護者はどうした、保護者は。本来ならば決して顔を見たい相手ではなかったが、
大抵見かける時は三人一緒の為、聞いてみる。
と言うか、この鬼っ子達を相手にするよりまだマシな気がする。
すると、半目だった二人の目が、クルリと丸くなる。
そしてカクリと首を傾げたと思うと、二人顔を見合わせ、再びカクリ。
「おい・・どうし・・・」
「やだな~、土方さん。僕等二人で万事屋ですよ?」
「そうアル。私が万事屋の工場長・グラさんネ。で、こっちが万事屋メガネ・
ぱっつぁんヨ」
「いや、万事屋メガネって何?
なんか店名っぽくなってない?それ」
あはは・うふふ。と言う笑い声まで聞こえてきそうな顔で、そう言い合う二人に
土方は一瞬身を引き、そして煙と共に小さく息を吐いた。
・・・また何かやったのか、あの天パ。
存在を消されてんじゃねぇか!!
数日前の事を思い出し、土方は呆れたように肩を落とした。
実際には何もやらないが故に、何かやられた訳だが、
そんな事を土方が知る由も無い。
まぁ何処でもいいからさっさとココから離れてくれ。と、力なく手を振るが、
目の前の四つの目は、未だ真ん丸くこちらを見詰めていた。
しかも何故だか、目がキラキラだ。
先程の胡散臭い笑顔も怖いが、こちらも怖い。
「・・・・なんだ?」
訝しげに見詰め返すと、神楽が期待の篭った目で問い掛けてきた。
「お前、ドーナッツ作れるアルカ?」
・・・・・・・・・はい?
驚きのあまり、口元に持ってきたタバコがポロリと落ちそうになる。
って何て言った、このチャイナ。
ドー・・・ナッツ?あれ?何語だ、コレ。
俺の知ってる単語か?
ってか俺に向ける単語か?
自分では判らないが、多分とんでもない表情をしたのだろう。
期待の眼差しを送る神楽の横で、新八が小さく噴出しながら土方の名前を呼んだ。
「土方さん、神楽ちゃんが言ってるのは、煙のワッカです」
ほら、こういうの。そう言って新八はタバコの煙を指し、次にクルリと
輪を描いた。
「あぁ、アレか・・・」
そう言って軽く上を向きながらタバコを吸い、そのまま口の中に煙を
溜めて唇を尖らすと、空いている手でポンポンと頬を叩いた。
すると、綺麗な輪になった煙が、次々と土方の口元から飛び出てくる。
「「おぉぉおおぉぉ!!!!」」
それを見ていた二人が歓喜の声を上げ、新八に至っては軽く拍手まで付けてきた。
「・・・別に珍しいもんでもねぇだろ」
二人の喜びように、少し照れながらぶっきら棒にそう告げると、
神楽と新八は勢い良く首を振ってそれを否定した。
「そんな事ないネ!私、初めて見たヨ。」
「そうですよ!僕達の周りに世間の白い目にも負けず、
タバコを吸い続けてる人なんてそうそういませんもん!」
「と言うかたかが煙に金を使うヤツなんかいないネ!」
「お金出して害を買ってる様なもんですもんね!!」
「・・・・あ、そう」
本当、凄いな~。そう言う二人に、土方はヒクリと頬をヒク付かせた。
キラキラと目を輝かせてはいるが、既に何処の部分を
褒められているのか判らない。
と言うか、
褒められているのかすら判らない。
とりあえず、霞んできた視界を再び上げ、土方は請われるまま
次の輪っかを吐き出したのであった。
**************************
なんと言われようが止められません、タバコ(涙)