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「おぅ、相変わらず暇そうなツラしてるアルネ、お前ら」
巡察に出た瞬間、すぐさまサボりに行こうとする沖田を捕まえ、
どうにか職務を全うしている土方に、軽い口調が掛けられた。
その瞬間、土方の眉がピクリと動く。
・・・・・またか。
見なくても判る声の主に、げんなりとした顔で肩を落とす土方を余所に
隣にいた沖田がこれまた軽い口調で返事を返す。
「おいおい、聞き捨てならねぇなァ。暇で辛気臭ぇツラしてんのは
お前らと土方さんだけでィ」
「いや、辛気臭ぇのは当たってるがな?
寧ろ疲れきってるツラだと思うがな?
誰のせいだと思ってやがるよ、おい。
てか暇してねぇよ、思いっきり仕事中だよ!!」
どこ見て言ってんのぉぉ!!!と、怒鳴り返せば、何時の間に傍に来ていたのか、
神楽と沖田の二人に同時に鼻で笑われた。
な、殴りてぇぇぇぇえええええ!!!!
って言うかなんでこんな時だけ仲良しぃぃぃ!!!?
心底そう思うが、ここで暴れてしまったら、どさくさに紛れて
総悟が逃げ出す可能性がある。
折角どうにか捕まえてここまでやって来たのだ、一時の感情で
それを無にするのは虚しすぎる。
土方は思わず握り締めてしまった拳をなんとか解き、微かに震える手で
タバコを取り出した。
それを口元に持っていき、火をつけた瞬間、神楽と共に居た新八の
目が煌いた。
それに気付いた土方が、訝しげな視線を送ると、新八はハッとした様に
視線を下げ、恥ずかしそうに頬を染めた。
「?どうし・・・」
「どうしやした?セクハラビームでも送られやしたかィ?
最悪だなぁ、おい。目ん玉抉り出せよ、土方ぁ」
「ちょっ!何言ってんのぉぉぉお!!
ってかその指を近づけるなぁぁぁぁ!!!」
人差し指と中指を立て、所謂チョキの形の手をじわじわと近づけて来る沖田
の手をガッチリと掴み、顔を背ける。・・・と、
「んだよぉ、そんな腹の足しにもならない目ん玉なんかいらないネ。
どうせなら慰謝料寄越せヨ」
徐に土方の懐へと手を伸ばす神楽。
「なんの慰謝料!!?ちょ、本当誰か警察呼んで・・・って
俺かぁぁぁぁああ!!!!」
使えねぇ!!と、土方は叫びつつ、それでも二人の手を振りほどき距離を取る。
その目は瞳孔が開ききっており、警戒心バリバリだ。
「「ちっ!」」
そんな土方の様子を見て、二人は盛大に舌打ちをしながら各々の手を
降ろした。
・・・本当、なんでこんな時だけ仲良いんだよ、
テメー等はよぉぉお!!
血管がプチプチ浮き上がるのを感じながらも、二人から視線を
外さないでいると、不意に新八が視界の中に入り込んできた。
「もう、何やってんですか、二人とも!」
「いや、新八がエロ方のセクハラビーム受けたみたいだったもんで
その元凶をぶっ潰してやろうと・・・」
「いや、受けてませんから、そんなの。
ってかエロ方って誰?
エロリストといい、
どんだけその言葉が好きなんですか」
「言葉だけじゃなく
そのものも好きでさァ」
「んな事爽やかに断言しないで下さい!!!」
アンタの方がセクハラじゃん!!!腰に手を当てそう怒ると、次に新八は
神楽へと視線を移した。
「神楽ちゃんも!他人の懐に手を突っ込もうなんてしちゃダメでしょ!!」
「何言ってるネ。自販機を見付けたらお釣りの所に手を差し入れ、
酔い潰れてるヤツみたら懐に手を入れろって銀ちゃんが言ってたネ」
「それ、明らかに犯罪だからぁぁぁぁ!!!!!」
「それに人類みな兄弟ネ。助け合うのが当たり前ヨ」
「一方的に助けられてるだけだからね!?
片方搾取される一方の片道通行だから。
・・・てか、それも銀さんが言ってたの?」
低い声で新八が問えば、コクンと神楽が頷く。
それを見て、新八は そう・・・ と小さく呟いた。
・・・新八のメガネが怪しく光ったのは、多分土方の見間違えでは無い。
そんな新八に沖田は一つ息を吐くと、軽く肩を窄めた。
「ならどうしたんでさァ。土方さんのツラ見て照れるなんて・・・
それ程のもんでもないでしょうに、この程度のモン」
「いや、確かにそうだろうけどよ」
なんか腹立つわぁ、マジで。そう頬を引き付かせるが、総悟の疑問も
もっともだ。・・・と、土方は目の前の新八へと視線をやった。
すると、新八は焦ったように手を振り、
「いや、別に意味はないんですけどね?その~・・・」
と、視線を上へとやった。
思わず他の三人の視線も上がる。
しかしあるのは青い空と、土方の口元から登るタバコの煙のみで・・・
と、そこで漸くある事が土方の頭を過ぎった。
そして、
「もしかして・・・これか?」
と、タバコを吸うと、以前やったように口を窄めて頬を軽く叩いた。
そして出てきた煙の輪っかに、新八の頬が柔らかく緩んだ。
「おぉ!ドーナッツネ!!」
「なんでィ、こんなのが見たかったんですかィ」
そう言いながらも、沖田の目も浮かんでいく輪っかを追って行く。
自分からやりだした事ではあるが、三人の視線を集めてしまった事に
土方は僅かながらも恥ずかしさが出てくる。
・・・まぁ満更でもねぇがな。
だが流石に往来でやり続けるのも・・・と、普通にタバコを吸い込んだその時、
「・・・僕もやってみたいなぁ」
と言う新八の呟きが耳に入った。
それに土方の目が少し見開く。
タバコに興味があるようには見えなかったが・・・と、意外な思いで
見ていると、新八は苦笑し、
「でも不器用だから、そんな綺麗には出来ないですよね」
と続けたので、土方も苦笑を浮かべる。
どうやら目の前の少年は、タバコよりもその煙の方に興味があったらしい。
「バッカ、その前に未成年だろうが」
笑って軽く新八の頭を掻き混ぜると、判ってますよ。とムッと口を
尖らしながらも、名残惜しそうに消えていく輪っかを見送る姿に、
土方は一瞬悩む。
そして、
「ならやってみるか?」
と新八に提案した。
「え?」
「喫煙は認められねぇがな。・・・ホレ」
そう言って頬をチョイチョイと指差す。
その意味が判らず、カクリと首を傾げるが、直ぐに理解し、
新八は嬉しそうに笑みを深めた。
が、戸惑うように土方の顔を覗う。
「えっと・・・本当にいいんですか?」
「あぁ、構わねぇぞ」
土方も柔らかく笑い、煙を口に含んだ。
新八は覚悟を決めると、その頬にオズオズと指を近づけ、ポンポンと軽く
指を当てた。
「わ、出来た!」
出てきた輪っかに嬉しそうに笑う新八。
それを見て神楽が ずるいネ! と拳を握り締めた。
「新八、私にもやらせるヨロシ!」
「って待て待て待て!!!
オマっ!それ思いっきり拳じゃねぇか!!!
輪っかが出る余地もねぇよ!!!」
「そうだぜィ、チャイナァ。ここは俺に任せろィ」
そう言って沖田がチャキッと刀を煌かせる。
「任せられるかぁぁぁあ!!!!
何それ、お前!!
普通に刺す気満々じゃねぇか!!!」
「安心して下せェ、土方さん。きっちりでかい輪っかを
アンタの頭上に掲げ上げてみせまさァ」
「それ天使の輪っかぁぁぁ!!!!」
「あ、私もそっちの方がいいネ!」
「ってホントなんでこんな時だけ仲良しぃぃぃ!!!?」
「ちょ、じっとしてて下さいよ、土方さん。
輪っかが崩れちゃうじゃないですか~」
「その前に俺の人生が崩れ落ちるわぁぁぁ!!!!」
その後、暫くの間巡察中に喫煙する土方の姿は見られなかったと言う。
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大人を弄り倒す子供達が大好きです。