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土方さんに貰ったビニール袋を片手に、僕は万事屋へと
向かっていた。
本当、貰っといて良かったよ、これ。
だってなんかもう色々ギューギュー詰めだもん。
最初はマヨとエリザベス(ぬいぐるみ)と駄菓子が詰まった紙袋しか
入ってなかったビニール袋だが、沖田さんが言っていた事は本当だったらしく
巡察している真選組の人に会うと、その度にお祝いの言葉とちょっとした
贈り物を貰う羽目になり、今ではパンパンに膨れ上がっている。
既に許容量はオーバーしている感じだが仕方がない。
だって懐には
絶対何も入れたくないしね。
ちなみに先程会った山崎さんからはミントンのセットを貰った。
・・・この人もお約束を外さない人だよな~。
でも、流石にそれは持つ事も、ましてやビニール袋に入れる事も出来ないので、
後日ミントンをする約束をし、その時に持ってきて貰う事にした。
折角持ってきてくれたのに悪かったな~、と思ったけれど、ミントンの
約束をした為か、山崎さんは嫌な顔一つせず了解してくれた。
良かったけど・・・これからまだ巡察をしなければいけない
山崎さんは本当に良かったんだろうか?
ミントンのラケット片手に巡察の集団に戻る姿を見て、
少しだけ不安になった。
と言うか、それを見ても
誰も気にしない所が不安になった。
なんかもう基本装備扱い?
しかし・・・重いな~。
幾ら一つ一つは軽いものだと言っても、数があるとさすがに重い。
しかもビニール袋だから手に食い込むし。
全く、近藤さんも碌な事しないな!
隊員の人達も、そこまで付き合わなくてもいいのに。
でも、嬉しいのも本当なので、ちょっとだけ頬が緩む。
「あれ?新八君?今日は遅いね~」
持つ手を変えた所で声を掛けられる。
振り向けば、其処には片手を懐に入れ、こちらへと
歩いてくる長谷川さんの姿が。
「お早うございます。今日はちょっと色々あって・・・」
苦笑して言葉を返すと、長谷川さんはちらりと視線を僕の手元へと向け、
「あぁ、お早う。・・・凄いね~、なんかあったの?」
と、問い掛けてきた。
う~、自分で言うの、恥ずかしいんだけどな。
でも、ビニール袋の中には綺麗にラッピングされている物もあるので
(ちなみにそれはスキンヘッドの人がくれた物で、物凄く恐縮してしまった)
素直に言う事にした。
すると長谷川さんは一瞬目を丸くすると、すぐに細めて笑い、
「そいつぁ~めでてぇなぁ。おめでとう」
と、お祝いの言葉をくれた。
その言葉と優しい表情に、僕は嬉しいのだがどこかやっぱり恥ずかしくて
頬が熱くなるのを感じた。
それを誤魔化すように頭を軽く下げる。
「有難うございます」
「そっか~、誕生日か~。俺も何か上げれればいいんだけど・・・」
そう言って苦笑し、首筋を掻く長谷川さんに、僕は慌てて首を振った。
「そんな!お祝いの言葉だけで本当、嬉しいです!!」
って言うかこれ以上は本当、無理。
もう下のほうにあるエリザベスなんて、見たら夢に出てきそうなぐらい
歪んでるから!!
そんな思いを詰め込み長谷川さんに告げるが、納得はしていないようだ。
少し何かを考えるように空中に視線を飛ばしていると、
「あ、そうだ!」
丁度いいのがあった。と。長谷川さんはズボンの後ろへと手をやった。
そしてそこからビニールに入った長細いものを取り出してくる。
「これ、貰ったのはいいけど使わないからどうしようかと
思ってたんだよね」
新八君なら使うでしょ。そう言ってビニールを外し、中の物を広げる。
「これって・・・・」
エコバッグ?
広げられた物から視線を上げると、微妙な顔をした長谷川さんが居た。
「ん~、なんか道端で配ってたんだよ。奥様にどうぞ~☆・・・とか
言われてね」
ははは、と乾いた笑いを上げる長谷川さんに、何も言えなくなる。
グラサンの奥で何かがキラリと光った気がしたが、気のせいにしとく。
さすが僕。
伊達に今日、
一つ大人になった訳じゃない。
「有難うございます。早速使わせて貰ってもいいですか?」
にっこりと笑みを浮かべると、グラサンを直す振りをしながら
そっと涙を拭いて頷く長谷川さんから視線を外し、その中に
ビニール袋の中身を移していく。
うん、大きさもあるし、なんと言っても持ち手がビニールじゃないから
手が痛くならないや。
「買い物の時も使わせて貰いますね」
まぁこの袋が一杯になる事はないと思いますけど。そう言って笑うと、
銀さんも仕方ねぇなぁ。 と長谷川さんも笑ってくれた。
うん、やっぱり笑ってくれてた方がいいや。
こっちも気まずくならなくて済むし。
「うん、新八君が使ってくれるなら貰った甲斐もあるってもんだな」
じゃあ、引き止めて悪かったね。長谷川さんはそう言うと
僕の頭を優しく一撫でし、その場を後にした。
その背中が少し嬉しそうで、僕の足取りも再び軽いものとなった。
うん、エコバッグって凄いや。
何時もより遅くなってしまった時間に漸く万事屋へと辿り着いた。
銀さん達、起きてるかな~?・・・起きてないよね、きっと。
これまでの労力と、これから使うであろう労力を思い浮かべ、
一つ重い息を吐き、階段を登ろうとした所で、僕は店から顔を出した
お登勢さんに捕まった。
やばっ!今月の家賃、まだだったよ!!!
慌てて頭を下げようとしたが、その前に店の中へと連れて行かれてしまう。
「あの~・・・」
そこで家賃をもう少し待って貰えるようお願いしようとすると、
お登勢さんは苦笑し、
「全く、銀時も仕方ないヤツだね。どうせ家賃はまだなんだろう?
それは直接アイツに言っとくから」
アンタにはコレだよ。そう言ってカウンターに置いてあった紙袋を
僕の方へと差し出してきた。
「・・・え?」
「えっ・・・て。ここに来るまで色んなヤツに貰ったんだろう?
それと一緒さ」
お登勢さんは小さく笑うと、僕が持っていたバッグを顎で指し、
空いている手にその紙袋を乗せた。
「誕生日だろ?おめでとう、新八。
アンタ、良くやってくれてるからねぇ。大したもんじゃないけど、
アタシからの誕生日プレゼントだよ。」
柔らかい笑みでそう告げてくるお登勢さんに、僕は目をパチクリ
させてしまう。
だってまさかお登勢さんまで知ってるとは思わないよ!!
僕の疑問が判ったのか、お登勢さんはタバコに火をつけ、一つ息を
吸うと
「何日か前から上は大騒ぎさ。気付かない方が馬鹿だよ」
全く、煩いったらありゃしないね。そう言って笑い、細い煙を
吐き出した。
言われて耳を澄ませば、確かに聞こえてくるバタバタとした音と、
着慣れた声達。
どれだけ大きな声で話しているのか、時折聞こえてくる言葉の
数々に、僕もそっと笑みを零した。
***************************************
後一話でお終いです!漸く辿り着きました~(笑)
「・・・何やってんでィ、アンタ」
どうやら今日の回収要請員は、土方さんと沖田さんらしい。
派手な音と共に現れた車から降りた途端、挨拶もなしに不審げな視線と
言葉を贈られた。
それを贈られた僕はと言えば、手には近藤さんから貰った紙袋と
エリザベスのぬいぐるみ。
・・・ここまでは多分普通だ。・・・多分。
けれど首には何故か万国旗が掛けられていて、足元には
未だ倒れたままの真選組局長・オプションで血塗れのハンカチ数枚だ。
・・・本当、何やってんだろう、僕。
ちなみに桂さん達は車の音を聞いて、さっさとこの場から
立ち去っていった。
・・・・・・・・・・・・・・ちっ!
「なんだ、近藤さんはまだ起きてないのか」
ってかなんでこんなトコで寝てんだ?と不思議そうにしながらも
土方さんが近寄り、その体を抱き起こそうとしていた。
が、隠した筈の灰皿が目に入ったらしい。
一瞬手が止まるのを僕は見た。
・・・ちなみにそっと視線が逸らされるのもしっかり見た。
うん、正しい判断だと思う。
だって僕のウチ、まだ灰皿ありますもん。
「いつもすまねぇな。・・・で、付き添っててくれたのは
有難ぇんだが・・・本当、何してたんだ?」
近藤さんを車の中に押し込め、タバコを吸いながら土方さんが
怪訝な表情で問い掛けてきた。
・・・聞かないで下さい、泣きたくなるから。
まさかこんな朝っぱらから、危険分子と名高い二人のテロリストに
誕生日を祝ってもらってました~☆・・・なんて言える訳もなく、
僕は乾いた笑いを零すしかなかった。
「・・・なんか泣きそうなツラですぜィ?まるで押し掛けマジシャンに
強制的に微妙にショボイマジックショーを見せられた感じでさァ」
「何、その妙に具体的な状況!!!
どっかに隠しカメラでもあるんですか!?」
思わず周囲を見回す僕に、沖田さんは軽く肩を竦める。
「イヤですねィ。そんなのありませんぜ。
警察の観察眼を舐めちゃぁいけやせん。
舐めるなら他の所にして下せぇ。てか舐めろ」
「ドコも舐めねぇよ!
ってか警察のセクハラに今まさに泣きそうだよ!!」
「だってよ。土方さん、いい加減にしなせぇ、その舐めるような視線。
俺が一般市民代表で抉り出してやらァ」
「おいぃぃぃぃ!!なんで俺ぇぇ!?
明らかにお前がしてんじゃねぇか!!!」
「うわっ。聞きやしたかィ?新八。この人、
今人に罪を擦り付けやがったぜィ?」
怒鳴る土方さんに、心外そうな表情をして沖田さんが僕の隣へと
やって来てそう告げた。
・・・きりがないよね、本当。
僕は少し大袈裟に溜息を吐くと、首に掛かっていた万国旗を外し、
風呂敷の中へと仕舞う。
・・・うん、一応誕生日プレゼントだしね、持って行かなきゃ。
高杉さんのだけならまだしも、僕の指紋もばっちりだからね。
「とりあえず僕に擦り付けなければいいですよ。
ってか、もう行ってもいいですか?」
エリザベスは・・・さすがにもう風呂敷には入らないか。と諦め、
腕に抱えたまま、まだ怒っている土方さんに聞いてみる。
隣で 酷ぇでさァ。 と文句を言ってる輩は無視だ。
一度『酷い』という言葉を辞書で引いてみろ。
すると、土方さんはハッとこちらを見て怒気を収めると、
「あぁ、有難うな。・・・てかそのままで行くのか?」
そう言って訝しげに僕の腕の中のエリザベスを見た。
確かに変だよね。僕、もう子供じゃないですもんね。
判ってますよ、えぇ、そりゃぁもう!
でも絶対懐には入れねーぞ、
コンチクショー。
力強く頷くと、土方さんはふと視線を上に向け、次に
少し待て。 と言って車の中へと体を突っ込んだ。
そしてゴソゴソと何かを漁ると、マヨネーズが数本入ったビニール袋を
携えて戻ってきた。
「オラ、これ使え」
「え?あ、いや有難いですけど・・・中身、入ってますよ?」
徐に差し出され、僕は暫し戸惑う。
けれどそんな僕を無視して、土方さんは腕の中からぬいぐるみを奪うと
ビニール袋の中にポイッと放り込み、そのまま手渡された。
「なんでィ、マヨ普及してマヨ人口増やすつもりですかィ?
これ以上新八に不幸を背負わせてどうするつもりでィ。
ただでさえ眼鏡なのに」
「おいコラ。眼鏡を不幸の元にしてんじゃねーよ!!」
「てかマヨも不幸の元にすんじゃねーよ!!!
これは・・・その、アレだ。・・・誕生日だろうが、今日は」
だから持ってけ。そう言って土方さんは照れ臭そうに顔を逸らした。
・・・お約束を外さない人だなぁ、この人。
だけどこれは使いようがある。
万国旗なんかよりもよっぽど利用価値がある。
なので素直に礼を言い、頭を下げた。
・・・が、ある疑問が沸き上がる。
近藤さんならまだしも、
何で僕の誕生日を知ってるんだろう?
そう思っていると、下げた頭にポンと何かが乗せられた。
僅かに顔をずらし見てみれば、隣に居た沖田さんが何かを乗せていて。
「これは俺からでィ。ちなみに真選組の奴等は皆知ってますぜィ?
近藤さんが隊内カレンダーに付け加えてやしたから」
「燃やしちまえ、そんな下心見え見えのカレンダー。」
そう吐き捨て、乗せられた紙袋を落とさないよう気を付けながら
頭を起こす。
中を見ると、色んな駄菓子が入っていた。
「旦那に取られねぇよぉ、気ぃつけろよ?」
ニヤリと笑って告げられ、僕は苦笑を返す。
ちょっと楽しんでるだろ、おい。
うん、でも気を付けよう。
だってこれ、僕のだもん。
「土方さん、沖田さん、有難うございます」
笑って礼を言うと、土方さんには頭をクシャリと撫でられ、
沖田さんには軽く肩を小突かれた。
「おめでとさん、新八」
改めてそう言われ、走り去っていく車は
来た時よりも少しだけ優しい音がしていた。
・・・てか、来る時もそうしとけよ。
*********************
今回はこのお二人です。
なんか誕生日過ぎたって言うのにまだ終わりません(泣)
もう少しだけお付き合い下さい~ι
屯所に連絡を入れた後、再び倒れてしまった近藤さんの横に座り、
新たに風呂敷から取り出したハンカチを頭に当てる。
・・・うん、本当に何枚合っても困らない・・・て言うか、
何枚合っても足らねぇなぁ、オイ。
ボーっと血の滲んでくるハンカチを見て時間を潰していると、
不意に影が翳ったのに気付いた。
「ん?何をしているんだ?こんな所で」
聞き慣れた声に顔を上げると、其処には通常ならこんな朝っぱらから
往来に居てはいけない人が・・・
いや、別に天下の往来なんだから、誰が居てもいいんだけどね?
それでもやっぱり例外はあると思うんだ。
って言うか、なんでこの人まで!!!?
僕は頬を引き攣らせながら、僅かに腰を浮かせた。
「・・・お早うございます、桂さん。・・・と、高杉晋助・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さん?」
「おいおい、なんだぁ?その取ってつけたような『さん』付けは」
ギロリと睨まれるけど、仕方ないでしょうが。
アンタ、自分が何したのか判ってます?
あぁ、でもつい年上の人に対して尊称をつけてしまう自分が悲しい。
むぅっと口を尖らせば、高杉・・・さんは小さく舌打ちした。
「この場合は驚いて苗字呼び捨てか、
憎々しげにフルネーム呼び捨てだろうが」
「そっちかよ!!
何ソレ、どんだけ呼び捨てにされたいんですか、アンタ!!」
「まぁまぁ、落ち着け二人とも。それに高杉、新八君は今時珍しく
礼儀を弁えた少年なんだ。年上の、しかも初対面に等しいお前を
呼び捨てになぞ出来る訳がなかろう。ん?・・・だがエリザベスの事は
呼び捨てにしていたな?」
どういう事だ、新八君!!と、仲裁に入った筈の桂が真剣な表情で
詰め寄ってくる。
いや、どう言う思考回路してんだよ、指名手配犯。
僕は一先ず落ち着こうと息を吐き、その場に立ち上がる。
「最近は先輩と呼ばせて貰ってますよ。ってか、お二人とも
こんな朝っぱらからこんな所で何してるんですか」
初対面も何も、知り合いたくなかったTOP3に悠々ランクインしてしまう
指名手配犯二人に問い掛ける。
「いや何、昨夜ばったり会ったのでな、呑みに行ったのだ。
この近くに俺の隠れ屋的呑み屋があってな。
あ、銀時には秘密にしといてくれ。あいつはすぐたかるから」
桂さんの言葉に、隣で高杉さん(本人が呼び捨て希望したので
敢えて尊称付き)が あ~、確かに。 と嫌そうに頷いた。
隠れ屋的呑み屋・・・って、その前にきちんと隠れてろよ、テロリスト。
って言うかたかる銀さんも銀さんだけど、その言い方だと
・・・割り勘か、あんた等はきっちり割り勘なのか!?
思わず細かいトコまできっちり計算して出し合ってる姿や
レジを前に「俺が」「いやここは俺が」と言い合ってる姿を
想像してしまい、脱力する。
僕、テレビとか見すぎかな?
想像してた指名手配犯と哀しいほど違うんですけど。
って言うか警察は何してんだよぉぉぉぉお!!!
・・・・あぁ、ここで倒れてたっけ。
とりあえずまだ意識が戻らなそうなので、そのままにしておく。
だって、幾ら朝っぱらから堂々と歩いてる人達であっても
テロリストだしね。
こっちは意識ないストーカーだけど、真選組局長だしね。
ここ、まだウチの近くだしね。
流石に近所で殺傷沙汰は避けて欲しい。
「しかし良い所で会った。」
念の為・・・と、近藤さんを隠すように立ち位置を直していると、
不意に桂さんがそう言い、懐から何かを取り出した。
それは・・・
「ステファンのぬいぐるみ??」
「エリザベスのぬいぐるみだ」
そう言い直すと、僕の方へ差し出してくる。
「今日が誕生日なのだろう?おめでとう、新八君」
柔らかい笑みを浮かべた桂さんにそう言われ、僕は驚きながらも
それを受け取った。
「ちなみに手作りだ。どうだ?細部までリアルに作ってあるだろう?」
そう言われ、思わず受け取った手に力が入る。
あ、良かった。中はフカフカだ。
中までリアルに作られてたらどうしてやろうかと思っていたが、
杞憂だったらしい。
僕はホッと息を吐くと、それを抱き締めお礼を言った。
すると、それを見ていた高杉さんが、
「なんだ、オマエ誕生日なのか?仕方ねぇなぁ。ちょっと待ってろ。
今鳩出してやる」
と言って何やらゴソゴソとしだした。
「いやいやいやいや。え?なんでそうなるんですか?
ってか、本当は誰ですか?」
「鬼○郎なんつったら目ん玉一つ抉り出して仲間入りさせてやるぜぇ。
って、なんだ?万国旗の方がいいのか?
っち!注文の多いガキだなぁ、おい」
「誰も注文してねぇよ!!
大体なんでそんなもの常備してんですか!!!」
「そうだぞ、高杉!!そんなに何でもかんでも懐に入れてるんじゃない!!」
「入れてたからお前も俺もあん時助かったんじゃねぇか。
それにテメェも変なモン懐から出しただろうが、たった今」
「変なモンじゃない!エリザベスだ!!」
「変なモン以外の何物でもねぇな。
大体なぁ、俺達ゃ仮にも指名手配されてるだろうが。
色々準備しとかなくてどうするよ、あぁ?
行き成り懐から鳩が出てきたらビビルだろうがよ。
そうなりゃぁ隙が出来て、こっちとしちゃぁ斬り放題ってもんだろうが。」
まぁ、そんなもんなくても斬りたくなりゃぁ斬るがな、俺は。
ニヤリと笑う高杉さんに、一瞬血の気が引くが、よく考えると
違う意味で引く。
だって、鈍く光る刃が走り、血が舞い、
序に鳩も舞って万国旗がたなびく
阿鼻叫喚図。
・・・何、その血みどろマジックショー。
って、何アンタも納得してんですか。
いや、無理ですから。
確かに逃げる時、エリザベスが懐から出てきたらびっくりするけど、
本物は入りませんから!!
それはもう単なるおかしな二人羽織状態ですから!!!
いやしかし・・・と、真剣に検討し始める桂さんと、
どこか楽しげに何かを仕込みだす高杉さん。
それに一々ツッコミながらも、ふと爽快に晴れ上がった空を見詰めた。
・・・なんで朝っぱらからこんなに疲れてるんだろう、僕。
喉の痛みが気になりだした誕生日の朝でした。
・・・ってかもうどうなってもいいから早く来いよ、警察共。
************************
すんません。ホント、色々すんませーん!!(土下座)
欲望が押さえつけられませんでしたぁぁぁぁ!!!
その上もう少しだけ続きますι
その日、起きるともう姉上が起きていて近藤さんを締め上げていた。
・・・ある意味凄い眠気覚ましだよな、この光景。
そう思いながらも近付き声を掛けると、爽やかな朝に似合う笑顔で
「あら、お早う、新ちゃん」
と告げ、笑顔に不釣合いな勢いで締め上げていた近藤さんを
庭へと投げ飛ばした。
「・・・お早うございます、姉上」
引き攣りながらも挨拶を返し、ご飯を作る為台所へ行こうとしたが、
不意に呼び止められ、振り返る。
すると、恐れ多い事に姉上が朝ごはんを作ると言い出し、
僕は一瞬意識が飛んだ。
って、飛ばしてる場合じゃない!!
そんな事になったら意識所か魂が飛んでいってしまう、
永久に!!
僕は慌てて遠慮したが、どうやら姉上は殺る気満々らしい。
どうしよう!!と泣きそうになったその時、何時の間に復活してきたのか
近藤さんが傍に来ていて、
「いや~、朝からお妙さんの手料理が食べられるとは・・・
近藤勲、天にも昇る気持ちです!!」
と叫び、姉上の足蹴りにより本当に天に上った。
・・・どうやら先程から同じような事を繰り返していたらしい。
近藤さん、本当に有難う。
貴方の犠牲は無駄にしません!!
その隙を付いて急いで朝食の支度をしてしまう。
だって僕はまだ天に昇りたくない。
なんとか出来上がった朝食を見て姉上が心底残念そうな顔をしたが、
すぐに笑顔を取り戻すと一旦自室へと戻り、何かの包みを持ってきた。
そしてそれを僕へと差し出して来たので、不思議に思いながらも
受け取り、中を見させてもらった。
出てきたのは新しい単の着物と袴。
どちらも涼しげでこれから着るのに丁度良さそうだ。
でも、なんで?
その時の僕は本当に不思議そうな顔をしていたのだろう。
姉上は 仕方ない子ね。 と苦笑しながら、
「今日は新ちゃんの誕生日でしょ?」
と教えてくれた。そして今度こそ本当に優しげな笑みを浮かべると、
「お誕生日、おめでとう」
そう祝いの言葉を贈ってくれた。
―――こうして僕の誕生日は始まったのである。
「今夜は仕事で都合がつかないけど、明日はお休み貰ったから
一緒にお買い物にでも行きましょうね」
姉上に送り出される時そう言われ、照れ臭いながらも嬉しくて、
自然と足取りが軽くなる。
軽くなる・・・が、突如その足が重くなった。
と言うか、何かに捕まれた!!?
びっくりして下を見れば、其処にはボロボロになったゴリラ・・・じゃなくて
先程僕の命を、ある意味身を挺して救ってくれた近藤さんが。
「こ、近藤さん!!?どうしたんですか、こんな所で・・・」
・・・って、あぁ・・・さっき姉上に塀の外に蹴り飛ばされてたっけ・・・
「え~っとあの・・・・・・・すみません」
とりあえず謝りながら、倒れて僕の足を掴んでいる近藤さんの横に
しゃがみ込んだ。
そして懐からハンカチを取り出し、未だ流れ出ている頭の血を拭き取り、
傷口部分を軽く押さえる。
あ、なんか一枚じゃ足りなさそう・・・
上半身を起こした近藤さんに、当てたハンカチを任せ、僕は新しいハンカチを
今度は風呂敷から取り出した。
ちなみに僕は常に何枚か予備を持ち歩いている。
が、最近それじゃ間に合わないので、いっその事タオルでも持ち歩いて
やろうかと考えてたりする。
「いや~、すまなかったね、朝から」
血を流しながら豪快に笑う近藤さんに、苦笑が漏れる。
「今日は助かりましたけどね。でもそう思うなら
自重して下さいよ?本当」
「いやいや、やはりここは街を守る者として、愛する人を守る一人の男として
だね、お妙さんの身を守ろうと・・・」
「あ、近藤さん。携帯持ってます?」
「ん?あぁ持ってるけど、どうするの?」
頬を薄っすら染めながら語りだした近藤さんにそう問い掛け、手を出すと
人好きのする笑顔で近藤さんが懐から携帯を取り出し、渡してくれた。
それをニッコリと笑って受け取ると、
「ストーカーを捕まえて貰おうと思って」
そう言って既に覚えてしまった屯所の番号を押していく。
「ちょ!ストーカーじゃないから!
お早うからお休みまで。そしてお休みからお早うまで
きっちり見守ってるだけだからぁぁぁああ!!!!」
「思いっきりそのまんまじゃねぇか!!!」
ペシリと新しく取り出したハンカチを微かに腫れだした頬に当てると、
近くにあった多分姉上への贈り物だったであろう紙袋を手渡し、
序に手を取って立たせる。
「もう・・・いい加減体壊しますよ、本当」
それだと姉上が犯罪者になってしまう。それだけは避けなければ。
そんな想いから思わず言い聞かせるように口に出すと、
近藤さんは嬉しそうに笑って
「心配してくれて有難う」
新八君はいい子だな~。と、僕の頭を撫でてくれた。
・・・こう言う所があるから心から憎めないんだよね。
大きな手に苦笑していると、頭から離れていった手が
手渡した紙袋の中へと消えた。
「そうだ。はい、これ」
そう言って出てきたのは少し小さめの・・・けれど厚みのある袋で。
僕はコトリと首を傾げた。
そして一つの心当たりに突き当たり、そっと眉を顰めた。
「あの、近藤さん。幾ら僕に渡されても姉上は受け取らないと思いますよ?」
「え?・・・あぁ、いや違うよ?これは新八君に」
僕の言葉に一瞬目を丸くするが、直ぐに目を細めて笑うと はい。 と
その紙袋を僕の手の上に置いた。
今度は僕が目を丸くする番だ。
思ったよりも柔らかいその感触の贈り物に、再び首を傾げる。
何だろう、まさか僕から懐柔していく作戦とか?
そう言えば局中法度にも妙なのがあったっけ・・・
そんな思いからつい胡散臭げな目で、手の上の物を見詰めていると、
「誕生日、おめでとう」
と言う思いもしなかった言葉が頭の上から聞こえてきた。
思わず顔を上げると、照れ臭そうに笑う近藤さんが。
「いつも世話になってるからね。
まぁたいした物じゃなくて悪いんだが」
沢山合っても困らないと思ってね。そう言われ、中を見させてもらえば
其処には色々な柄のハンカチが。
確かにこれは、何枚合っても困らない。
と言うか、今既に二枚血まみれになってるし。
血液って中々落ちないんだよね~。
でもやっぱり嬉しくて、
「有難うございます」
と、頭を下げた瞬間、頭上から何かが落ちてくる音と物凄く鈍い音が聞こえた。
そして視界の隅に、後頭部から新たな血を噴出しながら倒れてくる
近藤さんの姿が。
・・・そう言えばまだここは危険地帯(志村家近くの脇の道)だった。
僕はゆっくりと頭を上げると、まだ僕が持っていた近藤さんの携帯で
先程途中まで押した屯所の番号を最後まで押した。
「あ、お早うございます、志村です。いつもの
回収要請お願いします。」
ちなみに近藤さんの傍に落ちていた、見覚えのあるような灰皿は
そっと近くの電柱の影に押し込んだ。
うん、道にこんなのが転がってたら
危ないモンね。
****************************
一万打リクを少しお休みして、新ちゃん誕生日話です。
ちょっと続きます。
「・・・僕の人生、ドコで間違っちゃったんだろう」
深い溜息を吐いて僕は目の前の鏡を見た。
そこにはイモいお下げ・・・っていやいや、一見クラスでは目立たないが
磨けばキラリと光る何かを持っている原石美人なお下げの女の子が・・・
って、ハズいな、これ。
痛いね、僕!!!
でもこうして自分内会話でもしてなきゃぁやってられないのが
事実だから仕方ない。
僕は本日何度目になるか判らない溜息を、もう一つ吐き出した。
現在、僕は何故かかまっ娘倶楽部(控え室)に居ます。
・・・本当、ドコで間違ったんでしょう?
事の発端は・・・まぁ話せば長くなるが、ぶっちゃけると短いので
ぶっちゃける。
様はお登勢さんの限界が突破したのだ。
正しくは上司が仕事をしないからだ。
早い話、金がないのだ。
その結果、僕まで巻き込まれてこの状況。
銀さんと二人揃ってかまっ娘倶楽部に身売りされた訳だ。
強制的に僕の人生、捻じ曲げられた訳だ。
全く、なんでこんな目に・・・
自然と数が増える溜息の合間を縫って、背後から声が掛けられる。
「おいおい、オマエも男なら腹ぁ決めろ。」
顔を上げれば、原石美人の後ろに見慣れてるけど
見慣れていない姿が・・・
「あぁ、銀さんだ」
うん、僕が道を間違えてしまったのも強制的に曲げられたのも、
確実に銀さんのせいだ。
そう言う思いがポロリと口から飛び出れば、
「うん?銀さんだよ?」
と両サイドに上げられた銀髪を揺らしながら、肯定された。
若干意味が通じてないような気もするけど、気のせいだ。
・・・よし、自覚あるみたいだから責任取って週一の甘味デーを
月一にしてもらおう。
勝手にそう心に決めていると、 それよりも・・・ と腕を取られ、
その場に立たされた。
「なんですか?」
「いや、なんかよぉオマエの帯、緩くね?」
そう言って帯との間に手を入れられたり、合わせ目を確認された。
「別にいいですよ、これで。きっちりし過ぎるとキツイですもん」
「バッカ!何甘っちょろい事言ってんだ!!いいか?店に出たらそこは
戦場だ!帯の緩みが心の緩みを呼び、更には
客の手を呼び込むんだぞ!!
危ねぇだろうが!!」
「ならまずその手を出せぇぇぇええ!!!!」
呼んでねぇんだよ!と、さり気なく合わせ目から入れられた
銀さんの手を叩き落す。
「酷ぉい、パチ恵ったら乱暴ぉ。パー子、お仕事のアドバイス
しただけなのにぃ」
そう言って叩かれた手を摩りながらクネクネする銀さん。
・・・なんでだろ?銀さんの事それなりに尊敬して
付いて来たって言うのに
全く聞きたくないよ、そんなアドバイス。
ってか知りたくなかったよ、そんなアドバイス。
じっとり睨みつけていると、銀さんに体を回され、帯を解かれた。
「ちょ、本当いいですって!」
ギュッと締められ、思わず体が揺れる。
するとパシンとお尻を叩かれた。
「いたっ!」
「いいから。オラ、ちゃんと立っとけ!」
パチ恵の操は俺が守る!!と言いつつ、ギュウギュウと締められ続ける。
や、そんな帯で守るぐらいなら、端から巻き込むなよ。
そう思った瞬間、止めとばかりに締められ、つい声が出てしまった。
「あっ!・・・や・・銀さん、キツ・・ィ」
それと同時に背後の銀さんの動きがピタリと止まったのが判った。
僕はチャンスとばかりに急いで帯の間に指を挟み、少しでも
緩くなるように試みる。
このままじゃ手も入らないけど、食料も入らないってぇの!
折角客の金で料理が食べられるかもしれないのだ。
どうせやるなら、少しでも多くのものを得てやる!!!
毒を食らわば皿までじゃ、コノヤロォォォオ!!!
必死で帯を緩めていると、それまで止まっていた銀さんが
漸く動き出した。
「や・・・・え~っとアレだアレ。あ~~~~・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・男なら我慢しろ?」
そう言ってチャッチャと帯を綺麗に結んでくれた。
僕は何故か出来た銀さんの間に首を傾げながらも、とりあえず
鏡に背中を向けた。
うん、やっぱり僕がやるより銀さんがやった方が綺麗だ。
本当、無駄に器用だよね。ドコで覚えて来るんだか・・・
今度きっちり聞き出してやろう。
帯の形を確認し、僕は満足げに頷くと今度は目の前に居る
銀さんへお礼を言う為、顔を向けた。・・・が、
「・・・なんで鼻血出して前屈み?」
銀さんの姿に、思わず目が半目になる。
「いや、あの・・・男故に我慢が効かなかったと言うか・・・」
「そんな我が侭坊主は切り捨てちまえ」
とりあえず僕は姉上譲りの笑顔と共に、日頃の家事及び
バーゲンセールで鍛えぬいた足を勢い良く振り抜いた。
その日、仕草が妙に女らしいと好評だった銀さんが、
店のおニィ・・・じゃなくオネェさん達に熱心に転職を
進められたのは言うまでもない。
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一万打お礼企画・第六弾
もんちょ様からの再リクで
「家賃を払うために、オカマバーで短期バイトをするパー子とパチ恵」
と言うことでしたが、如何でしたでしょうか?
あまり美人な表現が出来ませんでしたが(寧ろ皆無状態ι)
少しでも気に入って頂けたら嬉しい限りですvv
再びの企画参加、本当に有難うございましたv