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その日珍しく仕事があり、帰りが遅くなったので泊まっていってもいいか
と銀さんに聞いたら、微妙な顔をされた。
いつもならこっちが引くぐらい泊まっていけと言うのに・・・
少し変だな。とは思ったものの、時間帯が遅かったのもあるだろう、
仕方ねぇか・・・とばかりに渋々了承してくれた。
・・・変な銀さん。
そうは思ったものの、疲れているのも確かなのでさっさと休みたい。
疑問は明日、元気な時に解き明かそう。と、風呂を沸かし、
順々に入ってもらった。
最後に僕が入り、出てきた時にはもう神楽ちゃんは眠っていた。
何時もならまだ起きている時間だが、やっぱり疲れてたんだな。
僕も早く休もう・・・と思ったんだけど、銀さんは居間のソファに
座ってボンヤリしていた。
銀さんも疲れているだろうに・・・と不思議に思い、声を掛けると
「ん~、一杯ひっかけてから寝るわ」
オマエは先に寝てろ。と言うので、呑み過ぎないように注意をし、
お言葉に甘えさせてもらった。
どれくらい時間がたったのだろう。
不意に目が覚め、僕は辺りを見回した。
まだ部屋の中は暗く、まだ寝られそうだ。
再び目蓋を閉じ、眠ろうとした所で、何かの声が微かに聞こえてきた。
声・・・というよりこれは・・・お経??
野太い男の声で聞こえてくるその音に、瞬間鳥肌が立つ。
だってこんな時間帯に、そんなモノが聞こえてくるなんて!!
慌てて隣に寝ている筈の銀さんを見れば、そこには主のいない布団が。
僕はサッと血が下がる音を聞いたような気がする。
だって銀さんはお化けとかそう言うものが大っ嫌いなのだ!
なのにこんな夜中に、こんな声を聞いてしまったら!!
僕はそれまでの恐怖を忘れ、布団から飛び出した。
そして銀さんの名を呼びながら、和室を出ると・・・
「あれ?どったの、新ちゃん」
寝る前と同じ格好をした銀さんが迎えてくれた。
・・・いや、テーブルの上にあるお酒のビンとコップが増えているか・・・
てか、呑み過ぎるなって言ったじゃないか!
なんだ、その赤い顔は!!
安心と怒りに、僕はカクリと肩を落とした。
それが不思議だったのか、銀さんは微かに首を傾げる。
どうしたのじゃないですよ。と言い掛けたその時、再びお経のような声が
聞こえ、僕は体をビクリと震わせた。
そして辺りを見回すが、ドコにも音の発生するような物はない。
テレビだって消えてるし・・・てか、銀さんは!?
慌てて見ると、キョトンとした顔で僕の方を見詰めていた。
もしかして、これが聞こえてるのって僕だけ?
そう考え、恐怖に固まっていると、
「あぁ、オマエにも聞こえてたのか・・・」
と銀さんが呟き、コイコイと指先で僕を呼んだ。
その表情がとても柔らかく、僕は足早に近寄ると銀さんの腕にしがみ付いた。
「こ、これって何ですか!?」
恐る恐る聞いてみると、銀さんはお酒を一口飲んだ後、
「念仏って言うらしいんだわ、これ」
そう言って、僕の頭をポンポンと撫でてくれた。
その手の優しさと、銀さんの柔らかい表情から、固まっていた僕も
段々と和らいでいくのを感じた。
だってお化け怖い人がこんなにのんびりしてるんだもん、
違うものだよね、これ。
・・・って言うか念仏って?
僕の疑問が判ったのか、銀さんは僕の頭を撫でながら言葉を続けた。
「地方のお盆の習慣らしくてな、初盆を迎えた家へ笛やら太鼓やらを
持った集団が行って供養する事らしい。
庭先で歌枕に合わせて踊るんだと」
で、今聞こえてるのがその歌枕なんだろ。銀さんにそう説明され、
僕は耳を澄ませてみた。
確かに聞きようによっては歌に聞こえるかも知れない。
けど、それがなんで今?
「その地域ではな、七月がお盆なんだわ」
「そうなんですか・・・でもなんでそれが今、ここで聞こえるんです?」
そう聞くと、銀さんはヘニャリと泣きそうな顔で笑った。
「・・・昔の知り合いでな、その地方のヤツが居たんだよ。
そいつはそれが好きらしくてな、近くに来る度見に行ってたらしい。
しかも最後には菓子とかも配られるだと!いい習慣じゃねぇか。
だからよ、その話を聞いた時、見てみてぇなぁ。って言ったら、
是非一度見に来てくれって言われてな」
結局、まだ見に行ってないんだけどよ。銀さんはそう言うと視線を上げ、
窓の外へと向けた。
「何時ごろからか、毎年この日になると歌だけ聞こえてくる
ようになったんだよなぁ」
ったく、律儀にも程があらぁ。そう言って笑う銀さんに、僕は
それ以上何も聞けず・・・
ただ、今ではない、ドコカを見詰めているその視線が
これ以上離れていかないよう、しがみ付いた腕にギュッと力を込めた。
*********************
念仏は私の地域の習慣です。
てか、夜中に聞こえてくるとマジで怖い(笑)
けど、つい見に行ってしまいます。
ちなみに今隣の家に来たので、これから行って来ます。
「全く、弱いんだから、こんなになるまで呑まないで下さいよ!」
繁華街と言っても、そろそろ灯りが少なくって来た夜更けすぎ。
新八は既に力があまり入っていない大きな体に肩を貸しながら
人気のなくなった道を歩いていた。
「あ~、うんうん、大丈夫、呑んでない、呑んでないから」
流し込んだだけ~。ヘラヘラと楽しげに言う銀時に、新八は
深い溜息を吐いた。
飲み屋から電話が来たのは、夕食後にフラリと出掛けてそのまま
帰って来そうにない銀時を待つのも馬鹿らしいと、
そろそろ寝ようと思っていた時の事だ。
既に何回か迎えに行っている新八は、電話の向こうに謝罪と直ぐに行く事を
告げ、急いで万事屋を飛び出して行った。
そして、辿り着いた店で見つけたのは、デロデロに酔っ払った上司の姿。
お金もないのに・・・と怒りを顕にしたが、どうやら今日は
誰かの奢りだったらしい。
潰れている銀時の向こうに見える、同じよな状態の、同じような
モジャモジャ頭はすっぱり見ない事にした。
そして半ば眠りの淵に居る銀時を起こし、店主にもう一度侘びを入れると、
速やかにその場を後にした。
「ちょ、銀さん!もう少しですからちゃんと歩いて下さいってば!!」
段々と重くなっていく銀時の体に、新八は慌てて声を張り上げた。
隣から言葉になっていない声と共に、アルコールの匂いがやってくるが
そんな事を気にしている場合ではない。
だって、ここで寝られても運べないし!!
無理無理無理、肩を貸している今でさえ厳しいのに!!
こんな事なら定春を起こして連れてこれば良かった・・・と一瞬思うが、
直ぐにその案は闇の中へと放り込んだ。
・・・無駄な血は流したくない、
特にこんな理由で自分の血を。
定春を起こした場合に起きるであろう惨劇を予想し、新八はブルリと
体を震わせた。
そしてなんとか声をかけ続け、銀時には少しでも自力で歩いていって
貰おうと決めた時、弱弱しい声が隣から聞こえてきた。
「どうかしました?」
顔を向けそう問い掛けると、銀時は顔を青褪めさせ、新八の肩に廻している
手とは反対の手で、苦しそうに口元を押さえていた。
それを見て、新八は答えを待つまでもなく、近くの側溝へと銀時の体を
押しやったのであった。
「どうですか?少しは気分良くなりました?」
それから暫く落ち着くのを待ち、新八はしゃがみ込んでいる銀時に
問い掛けた。
体育座りで膝の間に視線を落としていた銀時は、その声にゆっくりと
頭を上げると、未だ酔いの冷め切らぬ顔でニヘラと笑う。
「お~、ぱっつぁん!どうした、こんな所で」
こんな時間に未成年がふら付くとは・・・いかんねぇ。いかんいかん。等と
何度となく頷きながら呟くので、新八はとりあえずそのコクコクと動いてる
頭を軽く叩いた。
「原因が何言ってんですか」
ほら、行きますよ。そして銀時の手を取ると、どうにか立たせて
自分の肩へと腕を廻させた。
それをキョトンとした表情で見詰めていた銀時だったが、
次第にクスクスと笑い出した。
「どうしたんですか?」
普段あまり見る事のない銀時の表情に、新八はまともな返答を期待しないまでも、
会話を繋げる為・・・と問いかけてみる。
すると、銀時はいっそう楽しげに笑い、直ぐ隣にある新八の頬へと
自分の頬を摺り寄せた。
「ね、今ね?銀さん、拾われちゃったよね?これ。」
新八に。そう告げてくる銀時に、新八は一瞬目を丸くする。
酔っ払いの思考回路は複雑だ。
どこをどうしたら、『迎え』が『拾う』事になるのだろうか。
って言うかなんで拾われて嬉しいんだ?
っつうかその前に誰に捨てられた設定??
色々思いはするものの、それこそ酔っ払い相手に何言っても無駄だろう。
なので、一番重要な所だけ、言葉にしてみる。
「別に拾ってないですよ。てかこんなマダオ、自発的に拾いません」
「い~や、拾いました。新八は銀さんを拾っちゃいました~」
歌うように言ってますます擦り寄ってくる銀時に、新八は小さく噴出す。
「なら拾うの止めて元のトコに戻します」
こんな重いの、持ってられないですもん。そう言って銀時の背に廻していた
手を離そうとしたが、反対にギュッと抱き込まれてしまう。
「ちょ、銀さん苦しい!!」
苦しさのあまり、なんとか間に手を入れて離れようとするが、銀時が
それを許さず、抱き締めている腕に力を込めていく。
「無理でぇす。一度拾われたからには、捨てられても追っかけて
離れませぇん。逃げても無駄でぇす。」
「なんすか、ソレ。押しかけにも程があるぞコノヤロー」
「ちなみに今なら一割と言わず、銀さん全部を贈呈しまぁす」
だからきちんと拾って。銀時は新八の言葉を無視すると、
その旋毛に軽く唇を落とした。
新八は小さく息を吐くと、宥めるように銀時の背中を叩いた。
「はいはい、判りました。ちゃんと拾いましたよ~」
だからもう帰りましょうね。新八の言葉に、銀時は小さく笑って頷くと
もう一度その旋毛へと唇を落とし、
「拾われちゃったな~、おい」
と、嬉しそうに呟いたのであった。
そんな銀時を見て、新八はクスリと笑いながらも、
これは朝起きて記憶があったら恥ずかしいだろうなぁ。
と、今後自分がお酒を飲む時は、発言に気をつける事を固く誓ったのであった。
「うぅ・・・頭がヤバイんですけど・・・え、何コレ?
誰があの鐘を鳴らしてるの?」
「いや、誰も鳴らしてませんから。って言うかどの鐘??」
次の日、起こした銀時は昨夜の楽しげな雰囲気とは全く違い、
布団から起き上がるのもままならない屍状態だった。
この調子じゃ、今日は使い物にならないな。と新八は判断すると、
持ってきた水を銀時へと差し出した。
「これに懲りたら、今後は控えてくださいね」
新八の言葉に、銀時は差し出された水を口にしながら、小さく頷いた。
ま、この分じゃ昨日の記憶はないな。
「・・・結構可愛かったのに・・・」
ボソリと呟いた新八に、聞き取れなかった銀時が 何? と問い掛けるような
視線を寄越した。
それに何でもないと首を振ると、遣り残した家事をこなす為、その場から
腰を上げようとした・・・が、不意に銀時の手が新八の手を取った。
「何ですか?」
まだお水いります?と問い掛ける新八に、銀時は違うと軽く手を振り、
「オマエ、今日泊まってく?」
と聞いてきた。新八は突然言われた言葉に、今日何かあったか?と
頭を巡らせるが何も思い浮かばず、
「いえ、帰りますけど・・・何かありましたっけ?」
と、銀時に問い掛けた。すると銀時は 別になんもねぇけどよ・・・
と言葉を続け、
「何時ごろ銀さんの全部を受け取ってくれるのかな~って。」
ニヤリと笑って捕まえていた新八の手に唇を落とした。
「っな!!!」
「ちなみに今すぐでも頑張って答えます」
二日酔いですが、よろしく~。と笑う銀時に、
「それを言うなら不束者だぁぁぁぁぁああ!!!」
と、顔を真っ赤にした新八が痛恨の一撃を加えたのは、言うまでもない。
***************************
拾い物シリーズ(いつの間に??)坂田編です。
「おい、どうした」
「あ、土方さん」
巡察中、道端で蹲っている見慣れた姿を見つけた。
調子が悪いのかと、少しばかり慌てて声を掛けのが悪かったのか、
返ってきたのはきょとんとした顔と声。
この場合、不思議そうにするのはこちらの方だと僕は思いました。
・・・て、あれ?また作文???????
コホンと一つ咳を吐いて気を取り直し、既に立ち上がって
呑気に挨拶なんぞしてくる少年、志村新八に向かって
土方は先程の体勢の理由を問い掛けた。
すると、恥ずかしそうに視線を伏せ、首筋を掻きながら
ちらりと袴の裾を上げた。
って、上げた!!!???
思わず視線が普段晒される事のない素肌に目がいき、固まってしまう
土方を余所に、新八はそのまま軽く足をあげ、プラリと振った。
「どうも鼻緒が切れちゃったみたいで・・・」
使い込んでたから、寿命ですかね?気恥ずかしげに告げる新八に、
土方は漸く視線を草履へと移した。
「あ?・・・あぁ、鼻緒・・・」
確かにプツリと切れているらしく、新八の足から離れ、プラプラと
揺れている。
それを見て土方は片膝を着くと、新八の足をそっと掴んだ。
「ぅわっ!ちょ、土方さん!!」
「あ~、本当だ。こりゃダメだな」
突然足を取られた事でバランスを崩しそうになった新八から、焦った
声が聞こえたが、土方はそれを無視して繁々と原因の箇所を見詰めた。
「ちょっ、いいですから離して下さいよ~」
「ん?いや、ちょっと待て。っつうかバランス悪いなら俺の肩に手ぇ
乗っけとけ」
そう言うと土方は新八の足から草履を取り、足袋のみとなった足を
自分の膝へと乗せてそのままポケットを探りだした。
ちなみに乗せられた足は、土方の手によってガッチリと掴まれている。
新八はそんな土方に、離してくれる気がない事を悟ると、
諦めと共に小さく息を吐いた。
「・・・面倒見いいですよね~」
「そうか?」
何でもなさそうに言う土方に、新八は姉と毎日の様に繰り返される攻防戦の末、
屍となった近藤を迎えに現れる姿を思い出していた。
・・・性分なんだろうな、きっと。
ほんの少し涙を滲ませながら、新八は土方の言葉に甘えてそっと肩に手を置いた。
そして待つ事暫し。
だが、土方のポケットから、探していた物が出てくる事はなかった。
「すまねぇ、何時もはハンカチぐらい持ってるんだが・・・」
朝、近藤の血止めに使ってしまって、そのまま忘れていたらしい。
土方は申し訳なさそうに黒い髪を項垂れさせた。
それは手助けできなかった事からか。
それとも、毎朝の様に繰り返されている自分の上司の
行動を思い出したからか。
本当はいい所を見せられなかった悔しさからだが、
新八には判らない。
どちらにせよ土方に非はないのだ。と、
新八は慌てて手を振り、気にしないでくれと告げた。
「どうせもう万事屋に帰るだけですから、このままで行きますよ」
裸足って訳でもないし。そう言って新八は土方の膝から自分の足を
どかした。
土方も 仕方ねぇか。 と呟き、その場に立ち上がる。
そして土方から草履を返して貰おうと、手を伸ばした所で
目の前の人物にクルリと背を向けられ、新八は目を丸くする。
「あの・・・土方さん?」
「ん?おら、早く乗れ」
既に土方はしゃがんでおり、後ろ手でコイコイとばかりに新八を呼んでいる。
その姿に新八は俯きそうになる額に手を当て、そっと息を零した。
「・・・何してんですか」
「なんだ、横抱きがいいのか?」
「いや、人の話聞けよ。
ってかなんで負んぶなんですか!」
「幾ら足袋履いてても危ねぇだろ」
いいから早くしろ。土方はそう言うと、体を少し捩って新八の手を引き寄せ、
近付いた両足の膝の裏に手を廻すと、そのまま勢い良く立ち上がった。
「ぅわっ!!!」
突然の出来事に、慌ててしがみ付いてくる新八に、土方は一つ頷くと
軽くその体を持ち上げ、ちゃんとした負んぶの格好を取った。
そしてそのままなんの躊躇もなく歩き出す。
「うぅ・・・恥ずかしい・・・」
新八は真っ赤になっているだろう自分の顔をその背中に押し付けた。
そしてこの姿のまま万事屋に帰った時の事を予想し、
ガクリと肩を落とした。
「絶対からかわれる・・・」
「誰にだ?」
独り言よろしく、小さく呟いたつもりだったが、密着している為
土方には聞かれたらしい。
新八はウンザリした声で土方に答えた。
「銀さんと神楽ちゃんですよ」
あの人達、こういうのを見逃すほど大人じゃないんです。そう告げる新八に
土方は あ~、確かにな。 と同意した。
「安心しろ、向かってるのはそこじゃねぇ。屯所だ」
「え?」
土方の言葉に驚き、顔を上げれば確かに万事屋へと行く道ではない。
「・・・なんで?」
不思議そうに問い掛ける新八に、土方は小さく笑うと、
「落し物はまず警察に届けなきゃなぁ?」
「・・・僕、物じゃないですけど」
「落ちてた事には変わりねぇ」
「いや、座ってただけですけどね?」
「で、落とし主が半年現れなかったら、拾ったヤツのもんになる」
半年後は真選組隊士だな。視線をちらりと向け、ニヤリと笑う土方に、
新八は遠くの方からド○ド○の曲が流れてくるのが聞こえた気がした。
その後、半時も待たずに真選組屯所に現れた銀時に
無事引き取られたのだが・・・
「いいから!ちゃんと書いとかなきゃダメなんだよ!!」
「うるせーよ!ってかなんで『万事屋 坂田銀時』??」
書くなら僕の名前でしょうが!!と、サインペン片手に迫ってくる銀時相手に
熱い攻防を繰り広げていた。
「ばっか!こう言うのは所有者の名前を書くんだってぇの!!」
「馬鹿はオマエだぁぁぁぁぁあ!!」
「っち!やっぱペンだと消えちまうか・・・
・・・いっそ墨でも入れるか?」
「ぎゃぁぁぁぁあ!!
助けて、お巡りさぁぁあん!!!」
「ばっ!!待てって、
まだ名前書いてねぇぇぇええ!!!!」
・・・その後、暫くの間、志村新八が一人で外を出歩く事はなかったと言う。
**********************
ちなみに場所は太ももでv(最悪だぁぁぁ!!)
本日、何時もの様に万事屋へと向かっていた僕、志村新八ですが・・・
今現在、真選組屯所に居るのは何故なんでしょう。
「そいつは俺がお招きしたからでさァ」
屯所内の一室で、呆然としている新八に向けて、その室内の主である
沖田が、実に爽やかな笑顔でそう答えた。
「お招き・・・僕、招かれたんですね、アレで」
沖田の答えに新八は乾いた笑みを浮かべ、そして大きく肩を落とした。
ここに来るまで・・・確かに新八の足は万事屋へと向いていた。
その隣に突然車が横付けされたと思ったら、次の瞬間にはその車内へと
引きずり込まれていた。
慌てて見れば、そこには楽しそうな顔の沖田が、がっちりと自分を
ホールドしており、運転席では
「ごめん、ごめんよ~、新八君んんん!!!」
と、泣きながら謝り続けている山崎の姿が。
謝るぐらいなら加担すんなよ。
とも思ったが、彼の置かれた状況も痛いほど判ったので、何も言わずにおいた。
・・・でも、今度ミントンに誘われても、絶対断ろう。
地味に報復を決め、新八は早々に抵抗するのを諦めたのだった。
とりあえず茶菓子でも持って来まさァ。沖田はそう言うと部屋から出て行った。
残された新八は、一人になった部屋の中を興味深そうにキョロリと
見回す。
すると、軒下に吊るされたテルテル坊主が目に入った。
「沖田さんが作ったのかな?」
見れば何個か連なっており、新八はクスリと笑みを零す。
そう言えば昨日は七夕だったっけ。もしかしてその為に?
新八は沖田の罪のない子供らしさを見れた気がして、益々笑みを深めた。
「何笑ってるんでィ」
そこに沖田が茶菓子やら急須の乗ったお盆を片手に帰って来た。
新八はそれを受け取りながら、先程まで見ていたテルテル坊主を指差した。
「あれですよ。もしかして沖田さんが作ったんですか?」
「勿論でさァ。中々の力作でね?」
沖田は吊り下げてあるテルテル坊主の所まで行くと、その中の一つを
ヒョイと掴んだ。
「・・・・・あの・・・一つ聞いてもいいですか?」
「ん?なんでィ」
「いや・・・あの、なんでテルテル坊主に土方さんの顔写真が・・・」
恐る恐る聞いてみれば、沖田はキョトンとした顔で新八を見返してきた。
「テルテル坊主?何言ってんでィ。これは土方のヤローに
確実に訪れるであろう未来予想図でさァ」
「おいぃぃぃいい!!何不気味なモン軒下にぶら下げてんですか!!」
「あぁ、確かに土方さんのツラは
不気味極まりねぇな」
「ってそこじゃねぇよ!!
あぁ、もう可哀想だから止めたげて下さいよ」
と言うか本当、不気味なんで障子閉めてください。力なくそう頼む新八に、
沖田は肩を竦ませると大人しく言う事を聞き、新八の向かいへと
腰を下ろした。
「中々壮観な眺めなんですがねィ。
やっぱ本物じゃねぇと情緒がねぇか」
「言葉だけなら普通に聞こえますけど、
明らかに怖いですからね、それ」
で、今日はなんなんですか。新八は一つ息を吐きそう言うと、沖田の持ってきた
湯呑みにお茶を汲み、一つを沖田の前へと置いた。
「いや、暇だったんでねェ」
「僕の人生はアンタの暇潰しの道具か、コラ」
それならサボらず仕事して下さいよ。そう言いながらも新八は アレ? と
首を傾げる。
沖田はサボるときでも堂々と隊服を着ている。
だが今は・・・
新八の視線に気付いたのか、沖田はお茶を一口飲むとニヤリと口角を上げた。
「幾ら勤勉な俺でも、休みの日ぐらい仕事から離れたいんだけどねィ」
そう、目の前に居る沖田は隊服ではなく私服なのだ。
と言う事は沖田の言葉どおり、本当に休みなのだろう。
・・・一部ウソが混じっていたけれど。
「ならのんびりするとか、予定入れるとかすれば良かったじゃないですか」
自分を巻き込んだりせず。呆れ顔でそう告げると、
「のんびりすんのは性にあわねぇよ。それに今朝急に決まった休みでねィ。
予定入れる暇もなかったんでさァ」
「どの口が言ってんですか、ソレ。
って言うか、真選組ってそんなに急に休みが決まったりするんですか?」
こうなったら遠慮はいらない。と、新八は半ば開き直って
お茶菓子として持ってこられた団子を手にしながらそう問い掛けた。
沖田も同じように団子に手を伸ばし、
「ま、仕事柄休みがなくなったり・・・とかあるからねィ。
その代わりの休みが・・・てのだったら急に貰えたりもしますが・・・」
今回は違いまさァ。そう言い、手にした団子に齧り付いた。
「じゃあ今回はどうして貰えたんです?」
「七夕の短冊にお願い事を書いてみたんでさァ」
「・・・・・・・・・・・・・は?」
沖田の言葉に、思いっきり眉を顰める新八。
それを見て おいおい酷ぇな、その反応。 と笑い、沖田は懐から
紙を一枚取り出し、新八に手渡した。
「ほら、これでさァ。書いてあるだろ?」
「っておぉぉおおいぃぃ!!!これ、短冊違う!
何コレ、何で近藤さんがウチの塀に登ってカメラ構えてるの!!?」
「写真と言う名の短冊でさァ。
ちなみにコレに願い事を書いて笹に吊るしといたらあ~ら不思議。
妙に低姿勢な近藤さんが
願いを叶えてくれやした」
「いや、それ違いますから。
脅迫ですから、コレ」
大体休みが願い事って・・・と言って、新八は受け取った写真を
裏返してみた。
「・・・もしかして今朝の山崎さんも・・・」
「あぁ、アレも願い事の一つでさァ。ちょっと足が欲しかったんでねィ」
その分の短冊も見ますかィ?笑顔でそう告げてくる沖田に、新八は
力なく首を振った。
「もしかして僕用の短冊もあるんですか?」
「用意しようとは思いやしたがね。願い事は自分の手で叶えるもんだと
思い直しやしてねィ」
用意したようなしなかったような・・・。沖田の言葉に、どっちだよ。
とツッコミそうになる・・・が。
別にそんな事しなくても、皆お祝いぐらいしたいのに。
と、苦笑した。
あぁ、でもこの人は、そう言う事が苦手そうだ。
だからこそ、こういう変化球で来たのだろう。
近藤さん達も大変だな。と、新八は笑みを零すと、
自分への変化球が来る前に・・・と、素直な言葉を沖田へと贈った。
**********************
沖田ハピバ話。
彼は素直に祝われてくれなそう(笑)
別にヤバイものではありませんが、高杉スキーにはヤバイかもしれません(笑)
苦情とか言う気満々の方はご遠慮下さい。
そして高杉を普通に、真っ当に愛してる方。
超逃げて。
では、心の広い方だけどうぞ~。