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ソファに寝転んでテレビを眺めていると、台所から新八の慌てたような声が
聞こえてきた。
どうしたんだと視線だけそちらに向ければ、割烹着を脱ぎながら新八が
姿を現した。
どうやらみりんが切れてたのを忘れていたようで、
ちょっとスーパー行ってきます!と言うなり、財布片手に飛び出していった。
それぐらい行ってやるのに・・・そう思ったものの、銀時は起き上がらず
再びテレビへと視線を向けた。
思い浮かべるは先程の新八の姿。
甘えてくれないのは寂しいが、自分達の為に新八が一生懸命なのが嬉しい。
銀時は緩く笑みを浮かべ、新八の帰りを待つ事にした。
「・・・遅くね?」
新八が出て行ってから数十分、銀時は時計の針に目をやり、次に窓の外へと
目を向けた。
みりん一本買ってくるには時間が掛かり過ぎている気がする。
商店街のババァ連中にでも掴まってんのか?
それか、スーパーでちらしに載っていないタイムサービスでも始まったか。
・・・どっちにしろ早く帰って来いって。
銀時は、いっそ迎えに行こうかとも考えるが、もしも行き違ってしまったら
・・・と考え、手にしようとしていた原チャの鍵から目を逸らした。
そしてそのまま台所へと足を向け、手付かずで置かれている本日の夕飯の
材料を目にする。
「・・・偶には手伝いますかね」
銀時はイラつきそうになる自分を抑え、
新八の言っていた夕飯の献立を思い浮かべつつ、包丁へと手を伸ばした。
「ただいま帰りました」
それから暫くして玄関の戸が開き、待ちかねていた新八の声がしたので
銀時は野菜を切り刻んでいた手を止め、顔だけを台所から出して出迎えた。
「お~、遅かったなぁ」
「え、銀さん?何してんですか?イチゴ牛乳ですか?」
てっきりソファでゴロゴロしていると思っていた銀時が台所に居たので、
新八は驚きながらも一番可能性のありそうな理由を口にした。
銀時は新八の言葉に少しだけ口元を下げ、不満を顕にする。
「オマエね、銀さん=糖分ですか?」
「+マダオですけどね・・・て、作っててくれたんですか?」
クスクス笑いながら台所にやって来た新八だったが、銀時の手元を見て
再び驚きの声を上げた。
「ま、偶には・・・な」
「有難うございます、銀さん」
やんわりと微笑み、感謝の言葉を告げてくる新八に、銀時も口元が微かに上がる。
それを見て新八は笑みを深くすると、じゃ、一緒に作りましょう。と言って
割烹着を着け、銀時の隣へと身を置いた。
直ぐ近くに感じられるその温もりに、銀時は穏やかになっていく
自分を感じていた。
「にしても遅かったな」
なんかあったのか?包丁を使っている為、視線は手元から離さず新八に
問い掛けると、あぁ と隣から苦笑する気配を感じた。
それにつられちらりと新八を見ると、何かを思い出したのか今度はクスクスと
笑いを零す姿が見えた。
「・・・何よ」
「いえ、実はスーパーから帰って来る時に土方さん達に会ったんですよ」
新八から出てきた名前に、一瞬銀時の眉尻がピクリと動いた。
「へ~」
「で、また何時もの如く土方さんと沖田さんが・・」
銀時の微かな変化に気付く事無く、新八が楽しげに今さっきあった事を話し出す。
それに出てくる、銀時も知っている名前。
親しげに名を口にする新八。
銀時は舌打ちしたくなるのを抑え、ゆっくりと包丁を下ろした。
「っつ!」
「え?あ、銀さん!!」
突然聞こえてきた銀時の声に、新八は話すのを止め目をやれば、ソコには
左手の指から血を流している銀時の姿が。
「ってぇ~、ったく、オマエが馬鹿なヤツラの馬鹿話すっから手元が
狂ったじゃねーか」
「なんですか、それ!!って言うか、だ、大丈夫ですか?」
指先を押さえ、文句を言う銀時に、新八は慌てて覗き込む。
「ん~、まぁ痛ぇけど、そんなに深くはねぇみたいだな」
銀時の言葉に少しだけ安心するものの、やはり流れてくる血を見てしまえば
そのままにする事も出来ず、新八は 救急箱持ってきますね。 と言って
その身を翻そうとした。
「あ、ちょい待ち、新ちゃん」
それを呼び止められ、新八が銀時を見上げた瞬間、微かに開けられた口元に
怪我した指を差し込まれた。
「舐めときゃ治るから」
予想もしていなかった銀時の行動とじわりと広がる血の味に、
新八は指を差し込んでくる手を掴み押しのけようとするが、
直ぐに銀時の空いている方の手が新八の後頭部へと回り、
身動きが取れなくなってしまう。
「ん・・・」
どれだけ時間が経ったのか、漸く銀時が指を抜いてくれた時には、新八の
口の中は血の味でいっぱいだった。
それに眉を顰め、キッと銀時を睨み付ける。
「何考えてんですか、アンタは!!」
「ん~、だってさ、舐めときゃ治るって言うじゃん」
あ、でも血止まってねぇや。しげしげと自分の指を見詰め、そう言う銀時に
新八は顔を真っ赤に染める。
「そ、それなら自分で舐めればいいでしょう!!」
なんで僕に!!叫ぶ新八に銀時は口元を少しだけ下げると、
「だって銀さん、甘いモノ禁止されてるじゃん」
と不満げに呟いた。それに一瞬ポカンとするものの、直ぐに気を取り直して
新八は叫んだ。
「アンタの血は糖分で出来てんですか!!」
「可能性はある」
「どっから来るんですか、その自信!!あ~、もう普通に血の味でしたよ、
錆っぽい感じでいっぱいですよ」
そう言いながら、新八は口元を拭おうとしたが、その前に銀時の指が
新八の唇に触れた。
「銀さん?」
また指を突っ込まれるのかと身構えた新八だったが、そっと撫でていくのが
切った指ではなく、銀時の親指だった事に気付いて不思議そうに首を傾げた。
それに銀時は緩く口元を上げると、 血、ついてる。 と言って
拭った親指を見せた。
それに新八は恥ずかしそうに頬を染めると、誰のせいですか!と今度は自分の
腕でガシガシと口元を拭った。
そして勢いはないが未だ血が流れる銀時の指を見ると、
「救急箱持ってきますから、じっとしてて下さいね」
と言って、今度こそ台所から出て行こうと背を向けた。そして数歩歩いた所で
立ち止まり、
「後・・・手伝ってくれたのに、ごめんなさい」
ポツリと小さく謝罪し、そのまま台所から姿を消した。
その後姿を見送り、銀時はそっと笑みを浮かべる。
「ホント、可愛いね~、オマエは」
俺がそんなに不器用な訳ねぇじゃん。そう言って銀時は流れが収まりつつある
指先を見詰める。
先程新八に言った事は本当で、一見派手に見えるが実はそんなに深くない。
当たり前だ、そう言う風に切ったのだから。
「ま、原因はオマエだけどさ」
だって自分達の、自分の事だけを考えて居てくれればいいものを、
あんなに楽しげに、親しげに他のヤツらの名を口にするから。
他のヤツらの事を思い浮かべるから。
でもこれで・・・と銀時は切った部分に力を込めた。
そして再び流れ始めた血と、それと共に新八の頭から流れ出ていったであろう
名の数々を思い浮かべた。
ざまぁみろ。心の底からそう思う。
きっと今の新八の頭の中は、自分の事でいっぱいな筈だ。
銀時は先程新八の口元を拭った親指に舌を這わせ、
うん、やっぱり甘いわ。と、酷く満足げな笑みを浮かべた。
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『4(よい)2(二人)20(連れ)』と言う素敵キリ番を踏まれた団子様に
捧げます。
『ちょい病み銀さん』との事でしたが・・・こんな感じなのは
如何なもんでしょう(ドキドキ)
少しでも気に入って頂けたら嬉しい限りです。
キリ番申請、本当に有難うございました。
これからもどうぞよろしくお願いします。
「明日は家に帰りますね」
もう寝るだけとなった時間帯、ソファに座った新八が隣に座って
ガーゼに薬を塗りこんでいる銀時に向けて告げた。
なんでも捻挫に良く効くとかで、銀時が何処かから調達してきたのだ。
他にも新八の代わりに家事をしてくれたり・・・
幾ら銀時の不注意で負ってしまった怪我だとしても、自分にだって
責任があるのだ。
薬や家事を代わってくれるのは有難いが、流石に家の中の移動まで
抱きかかえられるのはどうか・・・と断るのだが、銀時はそれを許さなかった。
『俺のせいだろ?』
だから世話させろ。真剣な表情でそう言われれば、強固に断るのも気が引け、
これで少しでも銀さんの気持ちが晴れるのなら・・・と、
結局銀時のやりたいようにやらせていた。
意外と世話好きなのかな?
新八は、自分の世話を少し楽しそうにやっていた銀時を思い出し、
クスリと笑った。
今だって自分で出来るのに、甲斐甲斐しく包帯を交換をしてくれようとしている。
けれど、そうやって世話になるのもそろそろ終わらせなければ。
万事屋に泊まる様になって既に四日。
さほど酷くもなかった捻挫は、腫れも引いてそんなに痛みもない。
「・・・まだ居た方がよくね?」
そう思っていると、クスリを塗り終えた銀時がソファから下り、新八の足元に
跪いてポツリと呟いた。
そしてそっと新八の足を持つと、自分の座り込んだ膝の上に置き、優しく
ガーゼを当てる。
冷たい感触に、一瞬ピクリと足を動かすが、直ぐに銀時の大きな手で
優しく撫でられ、新八は入ってしまった身体の力を抜いた。
「大丈夫ですよ、もう。それに・・・」
ゆっくりと撫でられ続けるそれに、新八は自分の頬が熱を持っていくのを
自覚した。
「・・・あんまり甘やかされると、癖になっちゃうし・・・」
俯き、恥ずかしそうにそう告げる新八に、銀時の眉尻が少しだけ上がる。
そしてそれまでよりも殊更優しく、新八の足首を撫でた。
「ば~か、癖になって困るのは捻挫の方だろうが」
そう言って銀時は傍らに置いてあった包帯に手を伸ばし、丁寧に巻いていく。
なんてな、俺は困んないんだけど。
大体怪我させたの、俺だし。
って言うか治るの早くね?折角関係ねぇ薬塗ってたってのによぉ。
腫れの引いてしまった新八の足を、忌々しげに睨む銀時。
それに気づかず、新八は でも・・・ と、帰宅の意思を告げてくる。
銀時は尖りそうになる声を抑え、
「完治するまで居ればいいさ。で、もし癖になったとしても、
銀さん的には全然OKよぉ~」
銀さんの器の大きさを舐めんなよ。そう茶化すように言う銀時に、新八は
笑いを零す。
「そんな事言ったら、図に乗りますよ」
「お~、乗れ乗れ。乗りまくりやがれってんだ、コノヤロー」
なんですか、それ。笑う新八に、銀時は適当に返事をしながら、
丁寧に丁寧に、気を抜けば折ってしまいそうになる細い足首を
気にしつつ、包帯を巻きつけていく。
癖になれよ。
甘えて、甘やかされて。
俺がいないとどうしようもないぐらいに。
癖になれよ。
捻って、捻られて。
ドコにも行けないほど、酷くなれ。
俺がオマエを壊し始める前に。
「・・・癖になっちまえよ、なぁ?」
ポツリと呟き、銀時はゆったりと口元を上げて、愛しげに包帯の巻かれた
新八の足を撫で上げた。
*****************
『ちょい病み銀さん』を気に入ってくれた団子様へv
夜も更けた頃、万事屋のソファに座っていた新八は、本日数え切れない
程吐いた溜息の数を、また一つ増やしていた。
本来ならば、今頃は家に帰って、明日に控えているお通ちゃんのライブの為の
準備に忙しかった筈だ。
DVDやCDで曲のお浚いをしたり、発声練習・・・は近所迷惑になるから
布団に潜り込んで。
鉢巻やハッピはもう数日前から準備してあるからいいとして・・・
あ、新しい団扇を作ってそのままにしてたから、忘れないように・・・
って、もう必要ないんだったっけ。
予定していた今夜の予定を思い出し、新八がもう一つ、溜息の数を
増やそうとしたその時、銀時が濡れた髪をタオルで拭きながら
居間へと入ってきた。
「おっまたせ~、新ちゃん」
「銀さん・・・」
「さ、寝よっか」
銀時は拭いていたタオルを肩に掛けると、新八の座るソファまで来て
その体をヒョイと抱え上げた。
「ぅわっ!ちょっ、何すんですか!!」
突然の事に驚き、新八が暴れるが、銀時はそれを無視して布団が敷いてある
和室へと足を向けた。
「もっ、一人で歩けますから!」
「ダメですぅ~。そんな足で歩かせられません」
クイッと顎で指された場所には、白い包帯が巻かれており、新八はグッと
言葉を詰まらせた。
「それに銀さんのせいだからねぇ。オマエは黙って世話されてなさい」
滅多にないよぉ、こんな事。ドコか楽しそうにそう言う銀時に、
新八はまた一つ溜息の数を増やした。
こうなってしまったのは数時間前。
準備の為、今日は早く帰らして欲しいと告げ、序に前々から言ってあった
明日の休みの事を確認すると、新八は万事屋を後にしようとした。
その時、銀時はデスクの椅子に座り、ダラダラとジャ○プを読んで
新八を見送っていて、些か明日の万事屋(特に食事方面)に不安を
覚えたのだが、もし何かあっても被害を被るのはその場に居る
銀時だ・・・と自分に言い聞かせ、今度こそその場を後にした。
そして階段を降りている途中で先程締めた筈の玄関が開く音と、自分の名を
呼ぶ声を聞き、新八は立ち止まって振り返った。
その瞬間、急いで降りてきたらしい銀時とぶつかり、階段から
落ちてしまったのだ。
「本当、悪かったな」
抱えていた新八を布団の上に下ろし、銀時は優しい手つきで包帯の巻かれている
新八の足首を撫でた。
「別にいいですよ。途中で止まってた僕も悪かったんですし」
それに落ちたって言っても、数段でしたしね。そう言って新八は
力なく笑った。
ただ、お通ちゃんのライブに行けないのが辛いだけで。
怪我と言っても軽い捻挫だったので、新八はそのまま帰ろうとしたのだ。
そして予定通り、お通ちゃんのライブにも行こうとしていたのだが、
それを銀時が止めた。
銀時曰く、小さな怪我だろうと軽く見るな。・・・と言う事らしい。
少しだけ、なら自分はどうだ。と言い返したかったが、真剣な表情の
銀時に、新八は負けたのだった。
「だから気にしないで下さい」
アンタらしくないですよ。新八はそう言って銀時の肩に掛けられていた
タオルを手に取り、まだ濡れている髪を拭き始めた。
それに銀時は黙って俯き、少しでも新八が拭きやすいような体勢を取る。
「銀さん、滅茶苦茶お世話すっから。もうトイレでもお風呂でも
ドコでも連れてってお世話すっから。仕事休んで」
「いや、仕事はして下さいよ。てか、そこら辺は遠慮して下さい」
笑う新八に、銀時の頬も緩む。
「本当、いいですからね。大体ワザとじゃないんですし」
銀時を慰めようと言葉を続ける新八だが、それに対して銀時の返事はない。
相当堪えてるのかな?と思いつつ、そのまま続ける。
「そう言えばあの時なんで急いでたんですか?」
何か用でした?拭いていたタオルを取り、髪の乾き具合を確認しながら
新八が問い掛けると、あ~ と銀時が唸る。
「銀さん?」
「あ~、なんかあったと思うんだが・・・忘れた」
新八が落ちたショックと共に。顔を上げ、何時ものように何を考えているか
判らない表情を新八に向けた。
それに新八は一瞬目を丸くすると大きく息を吐き、次にクスクスと
笑い出した。
「なんですか、それ」
「本当、なんなんでしょうねぇ」
「いや、アンタが言うなよ」
乾いた髪を一つ撫で、新八は もう寝ましょ。 と布団の中へと体を入れた。
銀時もそれに一つ頷くと、隣に敷いてある自分の布団の中へと潜り込んだ。
「おやすみなさい、銀さん」
「おぅ、お休み」
言葉を交わして部屋の電気を消す。
暫くすると、新八の寝息が聞こえ始め、銀時はゆっくりと体を起こした。
そして新八の方へと体を屈め、寝ているのを確認する。
寝つきのいい新八は、本当にもう眠りの国に居るようだ。
銀時は新八の顔近くに肘を着くと、性格を現しているかの様な真っ直ぐな髪を
一房手に取り、その感触を楽しんだ。
「オマエ、本当素直な。銀さんが無意味にオマエに怪我させるなんて
ある訳ねぇじゃん。」
ワザとでごめんなぁ。その分しっかりお世話すっからよ。
クスリと笑い、銀時は新八のまるっこい額にそっと唇を落とした。
*******************
ちょっと病み銀。
買い物に来たスーパーで、新八は珍しい人物を見掛けた。
どちらかと言うと彼は駄菓子屋や公園でよく見掛けるのだが・・・
新八は不思議に思いながらも、とりあえず挨拶しようとその見知った
後姿に近付いて行った。
「こんにちは、沖田さん。」
何見てんですか?そう言って商品棚を真剣に見ている沖田に声を掛けると、
お、メガネ君。 と振り返り、新八に向けて軽く片手を上げた。
「アンタ、人の名前覚える気があるんですか」
返ってきた言葉に新八はカクリと頭を垂れるが、何時もの事と諦め、
沖田が手にしていたモノへと目を落とした。
そこには所謂消臭剤。
目の前の人物からは想像も出来なかったモノなだけに、新八は目を丸くし、
沖田とモノとの間に、数回視線を走らせた。
「別に俺が使うんじゃねぇぜェ」
感情が諸に出てしまっている新八の表情に一瞬笑みを零す沖田だったが、
直ぐにその笑みをニヤリとした黒いモノへと変貌させた。
「土方さんに使うんでさァ」
あの人ァタバコばっか吸ってるからねェ。そう言って沖田は
序にもう一本買っとくか・・・と、更にもう一つ手に取った。
「こう見えてもあんなかじゃ一番年若いんでねェ。
気を使うんでさァ」
親切気に言う沖田に、新八の目は胡散臭いものを見るように半目になっていった。
それに気付いた沖田が、 なんでィ、その目は。 と不満を口にしたので、
新八は小さく息を吐き、沖田が手にしたモノとは違うモノを指差す。
「気を使うんだったらこっちだと思うんですけど?」
指されたモノに沖田は目をやるが、緩く首を振る事でそれを否定する。
「判ってねぇなァ、新八は。ソコは黙って理解してやらねェと」
あの年頃は難しいからねィ。そう言って物凄く楽しげに手にしている
モノを見る沖田に、新八は心の中で少しだけ土方にエールを送った。
「あ、序に新八にも買ってあげまさァ」
「え?いいですよ、そんなの」
告げられた言葉に、新八は慌てて両手を振るが、沖田は構わずにもう一本
手に取ると、それらを片手に抱え、空いた手で新八の手を掴んだ。
「そんな遠慮すんねェ」
「いや、本当遠慮とかじゃなくて・・・」
「あんなでっけー犬やら酢昆布妖怪やら甘党やらが居るんでィ、
臭いだって色々混じるだろう?これだって一応消臭剤には変わりねェんだから
いいじゃねぇかィ。」
沖田の言葉に、新八は、それもそうか・・・と少しだけ納得してしまう。
その様子を見て、これ以上新八が拒否らないと踏むと、掴んだ手を
引っ張り、そのままレジへと足を向けた。
「じゃ、そう言う事で。他に買うもんはねぇですかィ?」
「あ、はい。えっと・・・有難うございます?」
とりあえず、買って貰えるとの事なので、律儀に礼を言う新八。
・・・完全に納得していないのか、少しだけ疑問系ではあったが。
沖田はそんな新八にフッと笑みを零すと、
「礼なんて、俺とオマエの仲で言いっこなしですぜィ」
「え、どんな仲!?」
「・・・昼間の時間帯にはちょっと・・・
未成年もいますし」
「おいぃぃぃ!!ホント一体どんな仲ぁぁぁぁ!!?
って言うか僕らが未成年だぁぁ!!」
「まさかこんな人の多い所でそんな事言わせようたァ。
とんだ羞恥プレイでィ」
「こっちの台詞だぁぁぁぁ!!!」
少しだけ、挨拶した時の自分を責めたい新八であった。
その日の夕方。
「・・・・・・・・・・・・・・・え、何コレ」
居間に置かれた消臭剤(加齢臭用)を見付けた銀時が、その場で一時間程
固まり、その後泣きながら新八に捨ててくれと訴えかけたという。
「勿体無いなぁ、使えるのに」
シュッ シュッ
「だから使うなって言ってんだろうがぁぁぁぁ!!!」
*******************
某CMを見て。
実際アレ使われたら、悲しいと思う(笑)
「新八ぃ~」
台所で今夜の夕食の予定を冷蔵庫と相談しつつ考えていた
新八の背中に、神楽の声がかかる。
それに顔だけ向けて答えると、神楽が台所へと入ってきて
新八の腕を掴んだ。
「な、何?神楽ちゃん」
「いいから!・・・あれ、どうしたネ」
連れてこられたのは居間の前。
少しだけ開けられた襖から言われた通り覗き込めば、そこには
ソファに座り、呆けている銀時の姿が。
「なんか朝からあんな感じネ。何かあったか?銀ちゃん」
「いや、昨日の夜は何時もと変わらなかったけど・・・」
新八を見上げて問い掛けてくる神楽に、少し考えながらそう答える。
そんな二人が覗いているとは知らず、銀時が大きく溜息を吐いた。
「・・・辛気臭いヨ。一緒に居るの気まずいネ」
銀時の姿にムッと眉を潜めながらそう言う神楽だが、それが心配から来ている
ものだと判り、新八は口元を緩ませた。
銀時は結構自分の中に色んなものを溜め込んでしまう方だ。
きっと理由を聞いても、本当の事など教えてくれず、曖昧な言葉で
誤魔化されるのがオチだろう。
変な所で大人になってしまうのだ、あの人は。
そして子供扱いするのだ、自分達を。
ならばせめて・・・と新八は思う。
「・・・元気出して欲しいね」
何があったか知らないけどさ。そう言って苦笑する新八に、神楽はチラリと
視線を送ると、
「・・・元気溌剌な銀ちゃんなんて怖いアル」
でも、あれよりはマシネ。そう言って笑みを浮かべた。
新八も笑ってそれに同意すると、覗き込んでいた顔を戻し、ん~、と首を
傾げる。
「でも銀さんの元気が出るようなのって・・・」
「糖ネ」
「・・・だよね」
返ってきた言葉にカクリと肩を落とす。
けれどそれは万事屋の財布的にも、銀時の身体的にも無理だ。
二人は揃って首を傾げた。
「あ、私凄いアル!閃いたヨ!!」
「え、本とっ・・・って神楽ちゃん!!?」
突然手を叩いてそう言った神楽は、むんずと新八の腕を握り、襖を良い音で
開けた。
そしてそのまま意味の全く判っていない新八の手を引き、銀時の前まで
やってくる。
「・・・あ?何やってんの、お前等」
突然やって来た二人に、銀時は顔を上げて問い掛けるが、神楽は満面の笑みを
浮かべたまま、オロオロとしている新八を銀時の前に立たせた。
そして自分は新八の後ろに回ると、そのまましゃがみ込み、
「銀ちゃん、元気出すヨロシ」
そう言って新八の袴の裾を勢い良く捲り上げた。
「ちょ、神楽ちゃ・・・えぇぇぇぇっ!!!?」
突然の事にアタフタと両手で袴を抑えるが、神楽の手は捲り上げたままだ。
そのまま新八の肩口からヒョコリと顔を出し、
「・・・まだダメアルカ?」
と、目を見開いたまま固まっている銀時に問い掛けた。
その声に漸く我に返った銀時だったが、視線は目の前の新八の足から離れない。
「あ・・・いやダメっつぅか最高なんだけど。
寧ろ一部派手に元気になりつつあるっつぅか・・・
え?何これ。夢?」
ソロリと伸びてくる銀時の手を、新八がパチリと叩く。
「僕の方が夢であって欲しいですよ、この状況。
って言うか神楽ちゃん、そろそろ離して~!」
顔を真っ赤にして叫ぶ新八に、舌打ちしながらも渋々手を放す神楽。
それを見て銀時も舌打ちをした。
「神楽ちゃん、女の子が舌打ちなんてしちゃダメでしょ!
つぅかなんでアンタまでしてんだコノヤロー」
「仕方ないアル。最終手段ネ」
新八のお説教を無視して神楽は前に出ると、銀時の左足に跨り、チョコンと
背中を銀時の胸元へと預けた。
「え、何してんの?銀さん、座椅子代わりですか?」
コノヤロー。と、神楽の頭に手をやり、グリグリと撫で回す銀時に
や~め~ろ~よ~。と言いつつもどかない神楽。
銀時の手をなんとかどかすと、クルリと顔を向け、
「工場長自ら甘えさせてやるから、元気出すヨロシ」
そう言ってニコリと笑い、次に新八の方を見て銀時の右足を軽く叩いた。
新八はそれを見ると袴を直していた手を腰に当て、小さく息を吐き、
仕方ないな~。と呟きながらも、大人しく銀時の右足へと腰を下ろした。
そして神楽と同じように背中を預けると、困惑顔の銀時を見上げ、
照れ臭そうにニコリと微笑んだ。
突然やって来て、自分の足へと腰を下ろしている二人に、
銀時は緩みそうになる顔を伏せ、唸りながら後ろ髪をガシガシと掻くと、
「・・・もう元気溌剌だよコンチキショー。」
そう言って力いっぱい目の前の二人を抱き締めたのだった。
「で、一体どうして凹んでたんですか?」
答えてくれるか判らないが、聞いてみるだけは・・・と、新八は
銀時に問いかけてみた。
すると銀時は それがよぉ~。と、また大きく溜息を零し、
「この間溜まってたジャ○プ出したじゃん?
あの時にさぁ、銀さんの夜のバイブル的なモノも一緒に出しちまった
みたいでさぁ~、ドコにもないのよ」
かなり使えるヤツだったのにさぁ。そう嘆く銀時に、神楽と新八は視線を
交し合うと、スクッと立ち上がり、
「神楽ちゃん、警察に電話して。痴漢が居るって」
「それより弁護士ネ。乙女のハートはガタガタヨ。
慰謝料、搾り取ってカスにしてやるネ」
「は!?ちょ、何ソレ?慰めてくれてたんじゃねぇのかよ!!
つぅかオマエ等が勝手に乗ってきたんだろうがぁぁ!!」
「ただで触らせるほど安くないんで、僕ら」
「最悪アル、加齢臭うつったよ。
クリーニング代も寄越せヨ、コラ」
「なにこの鬼っ子デュオ!!え?ちょ、待て待て待て。
話せば判る、判るからその無駄に燃えてる拳は仕舞って、神楽ぁぁぁ」
その日、銀時の叫び声ともろもろの破壊音が万事屋から
響き渡り、暫くの間止まなかったと言う。
********************
そろそろ原稿時の癒し用にと、撮り溜めしておいたアニ銀を
HDDから移動しようとした所・・・消えました、全て。
わ、私の動乱編その他諸々がぁぁあ(号泣)
故障っぽいので、どうにも、誰にも八つ当たりできず、
悲しんでます(現在進行形)
そしたら、姪が「元気出してね」と言ってパンイチ姿を
披露してくれました。(なんでだ?/笑)