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ソファに寝転んでテレビを眺めていると、台所から新八の慌てたような声が
聞こえてきた。
どうしたんだと視線だけそちらに向ければ、割烹着を脱ぎながら新八が
姿を現した。
どうやらみりんが切れてたのを忘れていたようで、
ちょっとスーパー行ってきます!と言うなり、財布片手に飛び出していった。
それぐらい行ってやるのに・・・そう思ったものの、銀時は起き上がらず
再びテレビへと視線を向けた。
思い浮かべるは先程の新八の姿。
甘えてくれないのは寂しいが、自分達の為に新八が一生懸命なのが嬉しい。
銀時は緩く笑みを浮かべ、新八の帰りを待つ事にした。
「・・・遅くね?」
新八が出て行ってから数十分、銀時は時計の針に目をやり、次に窓の外へと
目を向けた。
みりん一本買ってくるには時間が掛かり過ぎている気がする。
商店街のババァ連中にでも掴まってんのか?
それか、スーパーでちらしに載っていないタイムサービスでも始まったか。
・・・どっちにしろ早く帰って来いって。
銀時は、いっそ迎えに行こうかとも考えるが、もしも行き違ってしまったら
・・・と考え、手にしようとしていた原チャの鍵から目を逸らした。
そしてそのまま台所へと足を向け、手付かずで置かれている本日の夕飯の
材料を目にする。
「・・・偶には手伝いますかね」
銀時はイラつきそうになる自分を抑え、
新八の言っていた夕飯の献立を思い浮かべつつ、包丁へと手を伸ばした。
「ただいま帰りました」
それから暫くして玄関の戸が開き、待ちかねていた新八の声がしたので
銀時は野菜を切り刻んでいた手を止め、顔だけを台所から出して出迎えた。
「お~、遅かったなぁ」
「え、銀さん?何してんですか?イチゴ牛乳ですか?」
てっきりソファでゴロゴロしていると思っていた銀時が台所に居たので、
新八は驚きながらも一番可能性のありそうな理由を口にした。
銀時は新八の言葉に少しだけ口元を下げ、不満を顕にする。
「オマエね、銀さん=糖分ですか?」
「+マダオですけどね・・・て、作っててくれたんですか?」
クスクス笑いながら台所にやって来た新八だったが、銀時の手元を見て
再び驚きの声を上げた。
「ま、偶には・・・な」
「有難うございます、銀さん」
やんわりと微笑み、感謝の言葉を告げてくる新八に、銀時も口元が微かに上がる。
それを見て新八は笑みを深くすると、じゃ、一緒に作りましょう。と言って
割烹着を着け、銀時の隣へと身を置いた。
直ぐ近くに感じられるその温もりに、銀時は穏やかになっていく
自分を感じていた。
「にしても遅かったな」
なんかあったのか?包丁を使っている為、視線は手元から離さず新八に
問い掛けると、あぁ と隣から苦笑する気配を感じた。
それにつられちらりと新八を見ると、何かを思い出したのか今度はクスクスと
笑いを零す姿が見えた。
「・・・何よ」
「いえ、実はスーパーから帰って来る時に土方さん達に会ったんですよ」
新八から出てきた名前に、一瞬銀時の眉尻がピクリと動いた。
「へ~」
「で、また何時もの如く土方さんと沖田さんが・・」
銀時の微かな変化に気付く事無く、新八が楽しげに今さっきあった事を話し出す。
それに出てくる、銀時も知っている名前。
親しげに名を口にする新八。
銀時は舌打ちしたくなるのを抑え、ゆっくりと包丁を下ろした。
「っつ!」
「え?あ、銀さん!!」
突然聞こえてきた銀時の声に、新八は話すのを止め目をやれば、ソコには
左手の指から血を流している銀時の姿が。
「ってぇ~、ったく、オマエが馬鹿なヤツラの馬鹿話すっから手元が
狂ったじゃねーか」
「なんですか、それ!!って言うか、だ、大丈夫ですか?」
指先を押さえ、文句を言う銀時に、新八は慌てて覗き込む。
「ん~、まぁ痛ぇけど、そんなに深くはねぇみたいだな」
銀時の言葉に少しだけ安心するものの、やはり流れてくる血を見てしまえば
そのままにする事も出来ず、新八は 救急箱持ってきますね。 と言って
その身を翻そうとした。
「あ、ちょい待ち、新ちゃん」
それを呼び止められ、新八が銀時を見上げた瞬間、微かに開けられた口元に
怪我した指を差し込まれた。
「舐めときゃ治るから」
予想もしていなかった銀時の行動とじわりと広がる血の味に、
新八は指を差し込んでくる手を掴み押しのけようとするが、
直ぐに銀時の空いている方の手が新八の後頭部へと回り、
身動きが取れなくなってしまう。
「ん・・・」
どれだけ時間が経ったのか、漸く銀時が指を抜いてくれた時には、新八の
口の中は血の味でいっぱいだった。
それに眉を顰め、キッと銀時を睨み付ける。
「何考えてんですか、アンタは!!」
「ん~、だってさ、舐めときゃ治るって言うじゃん」
あ、でも血止まってねぇや。しげしげと自分の指を見詰め、そう言う銀時に
新八は顔を真っ赤に染める。
「そ、それなら自分で舐めればいいでしょう!!」
なんで僕に!!叫ぶ新八に銀時は口元を少しだけ下げると、
「だって銀さん、甘いモノ禁止されてるじゃん」
と不満げに呟いた。それに一瞬ポカンとするものの、直ぐに気を取り直して
新八は叫んだ。
「アンタの血は糖分で出来てんですか!!」
「可能性はある」
「どっから来るんですか、その自信!!あ~、もう普通に血の味でしたよ、
錆っぽい感じでいっぱいですよ」
そう言いながら、新八は口元を拭おうとしたが、その前に銀時の指が
新八の唇に触れた。
「銀さん?」
また指を突っ込まれるのかと身構えた新八だったが、そっと撫でていくのが
切った指ではなく、銀時の親指だった事に気付いて不思議そうに首を傾げた。
それに銀時は緩く口元を上げると、 血、ついてる。 と言って
拭った親指を見せた。
それに新八は恥ずかしそうに頬を染めると、誰のせいですか!と今度は自分の
腕でガシガシと口元を拭った。
そして勢いはないが未だ血が流れる銀時の指を見ると、
「救急箱持ってきますから、じっとしてて下さいね」
と言って、今度こそ台所から出て行こうと背を向けた。そして数歩歩いた所で
立ち止まり、
「後・・・手伝ってくれたのに、ごめんなさい」
ポツリと小さく謝罪し、そのまま台所から姿を消した。
その後姿を見送り、銀時はそっと笑みを浮かべる。
「ホント、可愛いね~、オマエは」
俺がそんなに不器用な訳ねぇじゃん。そう言って銀時は流れが収まりつつある
指先を見詰める。
先程新八に言った事は本当で、一見派手に見えるが実はそんなに深くない。
当たり前だ、そう言う風に切ったのだから。
「ま、原因はオマエだけどさ」
だって自分達の、自分の事だけを考えて居てくれればいいものを、
あんなに楽しげに、親しげに他のヤツらの名を口にするから。
他のヤツらの事を思い浮かべるから。
でもこれで・・・と銀時は切った部分に力を込めた。
そして再び流れ始めた血と、それと共に新八の頭から流れ出ていったであろう
名の数々を思い浮かべた。
ざまぁみろ。心の底からそう思う。
きっと今の新八の頭の中は、自分の事でいっぱいな筈だ。
銀時は先程新八の口元を拭った親指に舌を這わせ、
うん、やっぱり甘いわ。と、酷く満足げな笑みを浮かべた。
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『4(よい)2(二人)20(連れ)』と言う素敵キリ番を踏まれた団子様に
捧げます。
『ちょい病み銀さん』との事でしたが・・・こんな感じなのは
如何なもんでしょう(ドキドキ)
少しでも気に入って頂けたら嬉しい限りです。
キリ番申請、本当に有難うございました。
これからもどうぞよろしくお願いします。