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夜も更けた頃、万事屋のソファに座っていた新八は、本日数え切れない
程吐いた溜息の数を、また一つ増やしていた。
本来ならば、今頃は家に帰って、明日に控えているお通ちゃんのライブの為の
準備に忙しかった筈だ。
DVDやCDで曲のお浚いをしたり、発声練習・・・は近所迷惑になるから
布団に潜り込んで。
鉢巻やハッピはもう数日前から準備してあるからいいとして・・・
あ、新しい団扇を作ってそのままにしてたから、忘れないように・・・
って、もう必要ないんだったっけ。
予定していた今夜の予定を思い出し、新八がもう一つ、溜息の数を
増やそうとしたその時、銀時が濡れた髪をタオルで拭きながら
居間へと入ってきた。
「おっまたせ~、新ちゃん」
「銀さん・・・」
「さ、寝よっか」
銀時は拭いていたタオルを肩に掛けると、新八の座るソファまで来て
その体をヒョイと抱え上げた。
「ぅわっ!ちょっ、何すんですか!!」
突然の事に驚き、新八が暴れるが、銀時はそれを無視して布団が敷いてある
和室へと足を向けた。
「もっ、一人で歩けますから!」
「ダメですぅ~。そんな足で歩かせられません」
クイッと顎で指された場所には、白い包帯が巻かれており、新八はグッと
言葉を詰まらせた。
「それに銀さんのせいだからねぇ。オマエは黙って世話されてなさい」
滅多にないよぉ、こんな事。ドコか楽しそうにそう言う銀時に、
新八はまた一つ溜息の数を増やした。
こうなってしまったのは数時間前。
準備の為、今日は早く帰らして欲しいと告げ、序に前々から言ってあった
明日の休みの事を確認すると、新八は万事屋を後にしようとした。
その時、銀時はデスクの椅子に座り、ダラダラとジャ○プを読んで
新八を見送っていて、些か明日の万事屋(特に食事方面)に不安を
覚えたのだが、もし何かあっても被害を被るのはその場に居る
銀時だ・・・と自分に言い聞かせ、今度こそその場を後にした。
そして階段を降りている途中で先程締めた筈の玄関が開く音と、自分の名を
呼ぶ声を聞き、新八は立ち止まって振り返った。
その瞬間、急いで降りてきたらしい銀時とぶつかり、階段から
落ちてしまったのだ。
「本当、悪かったな」
抱えていた新八を布団の上に下ろし、銀時は優しい手つきで包帯の巻かれている
新八の足首を撫でた。
「別にいいですよ。途中で止まってた僕も悪かったんですし」
それに落ちたって言っても、数段でしたしね。そう言って新八は
力なく笑った。
ただ、お通ちゃんのライブに行けないのが辛いだけで。
怪我と言っても軽い捻挫だったので、新八はそのまま帰ろうとしたのだ。
そして予定通り、お通ちゃんのライブにも行こうとしていたのだが、
それを銀時が止めた。
銀時曰く、小さな怪我だろうと軽く見るな。・・・と言う事らしい。
少しだけ、なら自分はどうだ。と言い返したかったが、真剣な表情の
銀時に、新八は負けたのだった。
「だから気にしないで下さい」
アンタらしくないですよ。新八はそう言って銀時の肩に掛けられていた
タオルを手に取り、まだ濡れている髪を拭き始めた。
それに銀時は黙って俯き、少しでも新八が拭きやすいような体勢を取る。
「銀さん、滅茶苦茶お世話すっから。もうトイレでもお風呂でも
ドコでも連れてってお世話すっから。仕事休んで」
「いや、仕事はして下さいよ。てか、そこら辺は遠慮して下さい」
笑う新八に、銀時の頬も緩む。
「本当、いいですからね。大体ワザとじゃないんですし」
銀時を慰めようと言葉を続ける新八だが、それに対して銀時の返事はない。
相当堪えてるのかな?と思いつつ、そのまま続ける。
「そう言えばあの時なんで急いでたんですか?」
何か用でした?拭いていたタオルを取り、髪の乾き具合を確認しながら
新八が問い掛けると、あ~ と銀時が唸る。
「銀さん?」
「あ~、なんかあったと思うんだが・・・忘れた」
新八が落ちたショックと共に。顔を上げ、何時ものように何を考えているか
判らない表情を新八に向けた。
それに新八は一瞬目を丸くすると大きく息を吐き、次にクスクスと
笑い出した。
「なんですか、それ」
「本当、なんなんでしょうねぇ」
「いや、アンタが言うなよ」
乾いた髪を一つ撫で、新八は もう寝ましょ。 と布団の中へと体を入れた。
銀時もそれに一つ頷くと、隣に敷いてある自分の布団の中へと潜り込んだ。
「おやすみなさい、銀さん」
「おぅ、お休み」
言葉を交わして部屋の電気を消す。
暫くすると、新八の寝息が聞こえ始め、銀時はゆっくりと体を起こした。
そして新八の方へと体を屈め、寝ているのを確認する。
寝つきのいい新八は、本当にもう眠りの国に居るようだ。
銀時は新八の顔近くに肘を着くと、性格を現しているかの様な真っ直ぐな髪を
一房手に取り、その感触を楽しんだ。
「オマエ、本当素直な。銀さんが無意味にオマエに怪我させるなんて
ある訳ねぇじゃん。」
ワザとでごめんなぁ。その分しっかりお世話すっからよ。
クスリと笑い、銀時は新八のまるっこい額にそっと唇を落とした。
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ちょっと病み銀。