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僕が抱えてる不満には、ちょっとした特権がついている。
その日、銀さんは飲みに行くようなので、僕は万事屋に泊まる事になった。
やっぱり神楽ちゃん一人だけにしておけないしね。
女の子だし、まだ子供だし。
そんな事を、買い物帰りに公園で見かけた長谷川さんに、
世間話がてら言ってみた。
そしたら、銀さんを飲みに誘ったのは長谷川さんらしく、
気まずそうな顔をされた。
なんでも、パチンコで大勝ちしたらしい。
なら、飲みに行かずに他の事に使えばいいのに・・・
大体銀さんはあまり強くないのだ。
その後の世話だって、面倒臭いことこの上ないのに・・・
そんな考えが思わず顔に出てしまっていたらしい。
長谷川さんは苦笑し、
「ごめんな~。ちょっとだけ銀さん借りるわ」
しかしアレだね。そう言って僕の頭に手を乗せ、優しく数度撫でた。
「新八君も、ちゃんと男の子なんだね~」
その言葉から、『子供なのに偉いね~』なんて声になってない言葉も
聞こえてきそうだった。
ちょっとムッとなったけど、そう言う長谷川さんの顔が、
何故だか嬉しそうだったので、
「長谷川さんも、あんまり飲んじゃ駄目ですよ」
と、言うだけにした。そしたら、照れ臭そうにますます撫でられた。
なんだか僕まで照れ臭くなった。
桂さんに会った時も買い物帰りだった。
白昼堂々と、通りで声を掛けられた。
・・・警察ってナニしてんだろう。
そう思ったが、無視する事も出来ず、少しの間立ち話をする。
最初はそんなでもなかったけど、段々と手にした荷物が重くなってきた。
・・・やっぱりお米二袋は無茶だったかもしれない。
って言うかビニール袋って、手に食い込むんだよね。
でも、今日買っておかないと、もうお米ないし、安かったし・・・
と、ビニール袋を持ち直した所で、桂さんがソレに気付き、
謝ってきた。
いや、いいですよ。確かにエリザベスの素晴らしさを
長々と語られたのは辛かったですけど。
けれど、これで話は終わりだろう、と頭を下げて帰ろうとした所、
お詫びに片方持ってあげよう。と言われた。
なんて律儀な指名手配犯なんだろう。
でも、帰り道で真選組と出会わないとも限らない。
大体ここだって人通りのある場所なのだ。
あまり姿を晒していても良くないだろう。
それに僕だって男だ。これぐらい一人で持てなくてて、
主婦業が勤まるか!!(アレ?)
そう思って遠慮すると、桂さんはフワリと笑い、
「キミはいい子だな」
と言って、やんわりと頭を撫でられた。
なんだかちょっとだけ、くすぐったかった。
そう言えば土方さん達もそうだ。
朝、万事屋に向かっている時に会ったので、とりあえず挨拶をした。
土方さんも、一緒に居た山崎さんも、ドコとなく疲れている風だったが、
きちんと挨拶を返してくれた。
こんな朝早くに、なんでそんなに疲れてるんだろう。
夜通しで仕事だったのかな?
そう思ったが、あまり詳しく聞くのもアレだったので、
毎日ご苦労様です。とだけ告げた。
すると、まず山崎さんが満面の笑みでもって頭を撫でてきた。
そう言って貰えると、疲れが取れるよ~。・・・等としみじみ言う姿が
おかしくて、思わず笑ってしまった。
そしたらますます撫でられた。可愛いな~、もう!・・・て、
なんかもうペット扱い!?
そんな僕を助け出してくれたのは土方さん。
少し乱れた髪を直しつつ、
「気ぃつけてけよ」
と言って、優しく数回頭をポンポンと叩いてきた。
見慣れない柔らかい笑みとその手に、少しだけ心があったかくなった。
そして今、酔っ払って帰ってきた銀さんの世話をしていたら、
布団の上に座り込んだ銀さんにチョイチョイと手招きされた。
近付けば銀さんはニヘラと笑い、
「ありがとな~」
と言って、僕の頭をワシャワシャと撫でてきた。
その顔は幸せそうで、嬉しそうで。
遅くなった銀さんを怒っていた筈なのに、どうしてもその顔を
見てると怒りが持続せず、釣られて僕も笑ってしまった。
そんな僕にますます銀さんの顔はしまりなく緩み、
最終的には頭を抱え込まれて、更に掻き回された。
本当にさ、不満なんだよ。
だって子供扱いだよね、頭撫でるのって。
だけど、撫でくる人達が凄く嬉しそうだから、
イヤだなんて言えなくて。
・・・ま、イヤと言うより恥ずかしいんだけどね。
でも、あんなに嬉しそうな顔を見れるなら、
少しぐらいは我慢しようと思う。
この人達のあんな顔が見れるのは、恥ずかしさを我慢している
僕だけの特権なのだ。
**********************
皆で新ちゃんを可愛がればいいさ。
「子供はいいね~、遊ぶ事が仕事で」
ポツリと呟く銀時の前には、白い紙の束が置いてある。
それをペラペラと適当に手で捲りながら、先程お供の巨大な犬を
従え、外へと飛び出していった神楽の姿を思い返す。
楽しそうに飛び出していったその姿。
本来なら自分だって外に出る筈だったのだ。
神楽ほど意気揚々とは行かないまでも、少しぐらいは足取りも
軽く行っていた筈だったのだ。
だって今日も仕事はなくて
天気も良くて
何より新台入れ替えで
「なんで大人は遊んじゃいけねぇんかなぁ・・・」
「・・・普通は仕事がありますしね」
呟く声に、返事が返ってくる。
何時もより低めに感じるその声は、新八だ。
だってそれ以外、万事屋にはいない。
お茶の入った湯呑みを机の上に置くのを見ながら、つい不満を零す。
「でもたまの休みぐらいはさぁ~」
「たまの?」
更に低くなり、心なしか空気も冷えてきた気がして、銀時は新八から
視線を逸らした。
「あ・・・いやいや、あの・・・スンマセンでした。
銀さん、ちょっと調子こきました」
「ですね」
反省代わりにさっさとチラシ、作ってください。そう言って新八は
銀時の前にある紙の束を指した。
「でもよ~、これって何時でも出来んじゃん?けどよ、新台入れ替えは
今日しか・・・」
チラリと強請るように新八を伺えば、ニッコリと笑顔を送られ、
「銀さん、子供がなんで気軽に遊べるかって言うと、仕事云々もありますが、
そこに金銭が絡んでないからだと思いますよ?」
特にウチでは。さっくりと銀時の願いは断ち切られた。
だが銀時も負けてはいられない、必死で反論した。
「ばっか!オマエ判ってないね~。金銭どうこうじゃねーんだよ。
あの銀玉にはな~、一発一発、俺の夢と希望が込められてんだよ!」
「僕には欲と金の塊にしか見えませんけどね。
って言うかなんでお金ないのにそんなに行きたがるんですか?」
「ないから行くんじゃねーか!もしかしたら連チャンに次ぐ連チャンの
嵐という可能性があったらスゲー!!」
「欲丸出しじゃねーか!!
しかも可能性うすっ!!!」
いいからさっさとやって下さい!そう言って新八は洗濯終了を告げる
アラームに気付き、そちらへと足を向けた。
それを見、銀時は少し腰を浮かす。
新八が洗濯を取りに行ってる間に・・・
そう思っての事だったが、居間を出てく寸前に新八が銀時へと
視線を向けられ、ギクリと身を固める。
新八はすぅっと表情を潜めると、
「銀さん。もし抜け出したら銀さんの大好きな銀玉・・・
・・・・・・・・・埋め込みますよ?」
無表情でそう宣言した。
「・・・いやいや、ナニを言っているのかな、新八君は。
そんな大人気ない事、銀さんがする訳ないじゃない?
そんなみっともない事、する訳ないじゃない!?
でも・・・あの参考程度に聞いておきたいんですが・・・どこに?」
大量の汗を掻きつつも、なんとか笑みを貼り付けそう聞いてみると、
新八は視線を銀時の腰辺りに落とし、
「・・・アナログと銀玉をコラボさせたげます」
口元を緩くあげた。
「本っっっ当、スンマセンでしたぁぁぁぁっ!!」
新八の言葉に、勢い良く頭を下げる銀時。
情けなくてもなんでもいい。だって新八はやれば出来る子なのだ。
行けば、確実に執行される!!
さらばだ、新台!
あ・・・でも入れ替えの次の日ってのも実は狙い目だよな~。
力なく紙に手を伸ばし始めた銀時に、もう逃げる気はないだろう
と確信した新八は、今度こそ洗濯機の元へと足を進めた。
・・・が、単調作業は飽きるもので。
早々にチラシ作りに飽きてしまった銀時は、何気なく部屋を掃除している
新八に目をやる。
本当、ウチの奥さんは働き者だね~。さっきから全然座ってねぇじゃん。
っつーか掃除機かける姿も中々クるモンがあるね。
だって見てよ、あの尻。まぁなんとも可愛くプリプリと・・・
あ、駄目だ。やっぱ見んな、あれ銀さんのだから。
って言うか今って何気にチャンスじゃね?
神楽が帰ってくるまでにはまだ時間あるし、銀さんのアナログスティック、
進化中だし。
ならば・・・とばかりに、銀時は新八の名を呼び、コイコイと手招きをする。
「なんですか?銀さん」
「ん~・・・つーかよぉ」
傍に来た新八の腰に腕を廻し、ギュッと引き寄せるとそのまま自分の
膝の上へと乗せた。
慌てふためき、なんとか離れようとする新八に、銀時はニヤリと笑うと、
「金の掛かんねぇ大人の遊び・・・しねぇ?」
そう告げて廻した手を怪しげな動きへと変える。
その言葉と動きに、暴れていた新八の動きが止まる。
そして、
「・・・銀さん?」
新八は離れようと銀時の胸元へと置いていた手を下へと移動させ、
「・・・遊びだったんですか?」
「へ?」
ポツリと呟かれた新八の言葉に、不埒な動きをしていた銀時の手が止まる。
「しかもお金の掛からない、お手軽気分で手を出したんですね」
「あ、あの・・・新ちゃん?」
「銀さん?とりあえずでいいですから・・・」
逝って詫びろ。笑顔で言うと、進化の真っ最中であるモノを
容赦なく退化への道へと誘った。
その後、暫くの間妙に腰を引かせた銀時が、真面目にチラシ作りに
励んでいる姿が万事屋で見られたという。
*******************************
新台入れ替えでは何度となく泣かされた記憶があります。
・・・朝から並んであの仕打ちはないと思う(涙)
そんな恨みが坂田氏に行きましたv(待てι)
一緒に巡察していた筈の総悟がいなくなった。
いや本当、どんな技よ、ソレ。
こんな時だけ本気だしやがって。
苛々しながらも、一応携帯で山崎に連絡し、探すように命じる。
ほっといてもいいんだかな。
寧ろほって置きたいんだがな。
一応これも仕事だ。蔑ろにする訳にはいかない。
けれど、苛々は増すばかりで、土方はフィルターギリギリまで吸っていた
タバコを持っていた携帯用灰皿に押し付け、新しいものを取り出した。
そして火をつけようとした所で、不意に視界に見慣れた姿が入ったのを
感じ、視線を上げる。
するとそこには、気に入らない野郎が居る万事屋の眼鏡の少年が。
どうやら買い物帰りらしく、膨らんだビニール袋を片手に持っている。
・・・違和感ねーな、アイツ。
それまであまり接点を持っていなかったが、数日前の柳生との一件で、
少しだけあの少年の事を知る事となった。
剣の腕はまだまだだが、それは身近にいる存在と比べてだ。
未熟ではあるが、筋はいい方だと思う。
何より細いながらもキッチリと真っ直ぐな筋を持っている事が判る。
その燐とした姿は、中々好ましい・・・
・・・だが、チラシ片手にそんな凛々しいツラしてどうすんだよ。
視線の先の新八を眺め、土方は笑いを噛み殺す。
すると、歩いていた新八がこちらに気付いたようで、一瞬呆けた顔になり、
次に笑って軽く頭を下げてきた。
それに答えるように片手を上げると、新八は足早に土方の下へと
やって来る。
「こんにちは、お仕事中ですか?」
「あぁ、まぁな。オマエは・・・まぁ見りゃ~判るか」
「はい」
土方の言葉に新八は苦笑し、持っていた袋を上げた。
「でも今日はちょっとお店に行く時間が遅くなっちゃって、
狙ってた特売品を買えなかったんですよ」
そう言って小さく息を吐く新八に、土方は それであのツラか・・・
と思わず納得していた。
あのどうしようもない野郎が上司なのだ。
それはある意味死活問題なんだろう。
「オマエも大変だな・・・」
「はは・・・いい加減もう慣れました」
乾いた笑いを零す新八だったが、そう言えば!・・・と、突然姿勢を正し、
キリッとした視線を土方へと向けてきた。
そして、
「先日は本当に有難うございました」
と、丁寧に頭を下げた。
その言葉に、土方は直ぐに柳生との一件かと当たりをつけると、
「別にいい。あれは俺の喧嘩でもあったんだしな」
そう言って視線を逸らし、軽く腕を組む。
けれど新八は頭を上げると、ニコリと笑い、それでも有難うございました。
と再度礼を告げた。
素直に向けられる感謝の念に、土方は少し照れ臭いものを感じる。
日頃鬼の副長と恐れられているのだ、そういったモノには慣れていない。
とりあえずこの慣れない雰囲気をどうにかしようと、先程から手に持った
ままのタバコを口元へと運んだ。
そして火を着けようとライターを探している所で、
「あ、そうだ」
ちょっと待って下さいね。と言う新八の声に止められた。
まさか目の前で吸うなとか言うんじゃねぇだろうな。
副流煙がどうとか・・・あ、そりゃ拙いか。
まだコイツちっこいし。
微妙に酷い事を考えている土方の前で、新八はビニール袋を肘に掛け、
ゴソゴソと自分の風呂敷を漁って、小さな紙袋を取り出した。
そしてその紙袋を はい とばかりに両手で土方へと差し出す。
「・・・なんだ?」
「あの時言ってたじゃないですか。今度マヨ、奢りますって」
忘れちゃったんですか?と、小さく首を傾げながら聞いてくる新八に、
いや、覚えているが・・・と答えつつ、目の前の紙袋を見詰める。
「これ・・・か?」
幾ら懐具合が悪かろうが、こんな小さいのはないだろう。
と言うか、こんなミニサイズのマヨがあったのか?
マヨの事で俺の知らない事があったって言うのかぁぁぁ!!?
幾分違った方向に思考が行くも、とりあえず再度問い掛けてみると、
「はい、これです」
と言うにこやかな笑顔と返事が返ってきた。
「とりあえず開けて見て下さいよ」
戸惑う土方の手に紙袋を乗せると、新八はニコニコとソレを開ける様に
促す。
それに押され、恐る恐る袋を開けてみると、
「これは・・・」
「はい、マヨネーズ型ライターです」
確かに形は愛しのマヨだ。けれどその中身は違う。
・・・が、その中身も愛煙家の土方には無くてはならないもので。
「本当は、ちゃんとしたマヨネーズを贈ろうと思ったんですが、
土方さんてほぼ一本を一食に費やしちゃうじゃないですか。」
確かに、それが自分のスタイルだ。
寧ろそうでないと気が治まらない。
「幾ら好物だとしても、お礼に体を悪くするものを態々贈るのも
どうかと思いまして。
これならタバコを吸う度に見れて、少しはマヨネーズの方を
我慢出来るかな~と」
駄目ですかね? 心配そうに問い掛ける新八に、土方は
ポンとその頭に手を乗せる。
そして袋からマヨ型のライターを取り出すと、カチャリと火を着け、
咥えているタバコへと火を着けた。
「我慢出来るかどうかは判らねぇが・・・気に入ったぜ」
有難く使わせてもらう。そう言って口元を緩く上げ、新八の頭を
緩くかき回した。
その後、マヨネーズの摂取量は減らないまま、タバコの量が格段に
増えた土方が居たという。
***********************
・・・寧ろ見る度にマヨが欲しくなると思う(笑)
傘に落ちてくる音がしなくなってきたと思ったら、段々と
周囲が明るくなってきたのが判った。
神楽は傘の合間から、ちらりと空を見上げる。
そこには少しながらではあるが、確かに晴れ間が広がっていて、
もう雨は終わりなのだと言う事が判った。
周囲の人達も次々に傘を閉じ、それぞれの行き先目指して歩いている。
けれど神楽は傘を差したまま。
雨が降ろうが天気になろうが、神楽には関係ない。
でも・・・神楽は目の前にあった大きめの水溜りをパシャリと蹴った。
「雨の日はあんま遊べないネ」
神楽の育った星とは違い、ここの子供達は雨が降ると外で遊ばない。
勿論、急に晴れたからと言って、すぐ遊べるものでもない。
この水溜りの様に、遊ぶのを邪魔するものが、出現するからである。
「・・・つまんないネ」
神楽はもう一度水溜りを蹴った。
そして怨みの篭った目を空へと向け、次いでその目を丸くした。
その視線の先には、大きな虹。
あまり見かけないその光景に、暫し神楽は歩くのを止め、じっと
その光景を眺めていた。
「・・・・・あっ!」
どれぐらいそうしていたのか、不意に以前遊び友達から聞いた話が蘇った。
その子曰く、虹の根元には宝物が埋まっているらしい。
「・・・どうせ今日は誰も遊んでないネ」
神楽はニッと笑うと、水溜り等関係ないように大きく足を踏み出し、
虹に向かって歩き出した。
「宝物、宝物・・・う~ん、ナニアルカ?酢昆布は入ってるネ、うん。」
神楽は視線を上に向けたまま、ひたすら虹に向かって歩いていく。
考えるのはその根元にある宝物の事だ。
「後は・・・あ!ご飯を忘れちゃいけないネ!!」
さっきまでつまらなかったのだが、今はなんだか冒険のようで
少し楽しい。
おまけに辿り着けば宝物も手に入るのだ。
神楽の足取りは、一層軽くなっていく。そして・・・
「あれ?神楽ちゃん?」
不意に声を掛けられ、視線を空から戻せば、そこには見慣れた景色が
広がっていて。
「・・・新八?」
「どうしたの?今日は早いね、帰ってくるの」
ニコリと笑う新八がそこに居て。
「お、なんだ。帰ってきたのか?」
「銀ちゃん・・・」
少し視線を上げれば、家の階段から降りてくる銀時が居て。
神楽は思わず、もう一度空を見上げた。
それに釣られるように、銀時達も空を見上げる。
「あ、虹だ」
珍しいですね~。と笑う新八に、そうだな。と微かに微笑む銀時。
そんな二人に、神楽は勢い良く抱きついた。
「ぅわっ!突然どうしたの、神楽ちゃん!」
「おいおい、オマエ今撥ねようとしたろ?人身事故起こす気だっただろ?」
「うるさいネ!それよりドコか行くアルカ?」
「え?いや晴れたから買い物にでも行こうかと思って・・・」
なら私も着いてってやるネ。そう言って神楽は二人の腕にしがみ付いた。
酢昆布には劣るけど、まぁコレで我慢してやるネ。
神楽は不思議そうな顔をしている二人に、ニッと笑いかけた。
***************************
坂田家が幸せならそれでいい(笑)
「銀さんが嬉しいのってどんな事ですか?」
仕事もなく、何時のようにソファに座ってダラダラとテレビを見ていたら、
畳んだ洗濯物を抱えた働き者の少年にそう言われた。
「あぁ?ナニよ、突然」
視線をテレビから外さず答えれば、いいから、なんですか?と再び
問われた。
オマエね~、どれだけの時間俺と一緒に居んのよ。
そんなの決まってるだろ~が。勿論・・・
「糖ぶ・・・」
「糖分関係意外でお願いします」
言いかけた言葉をばっさりと切られた。
あ・・・だよね。伊達に一緒に居る訳じゃないよね。
「ん~・・・じゃあ新ちゃんがべったりしてくれたら嬉しい」
とりあえず怒らせるのを覚悟で答える。
って言うか今ピ○子いいトコだからさ、銀さん集中してるから。
ちょっとだけ邪魔しないでおいて下さいな。
そんな事を思いつつ言ってみれば、案の定新八は無言で立ち去った。
うわ・・・シカトっすか。一応本音でもあったんだけどね。
まぁいいや、後でフォローしよう。今はピ○子だ。
そう思っていたら、新八が直ぐ傍に来るのを感じた。
どうやら洗濯物を仕舞いに行ってただけらしい。
そして ちょっと失礼しますね。 との言葉と共に、直ぐ目の前に
新八の顔が・・・
っておぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!ナニコレ!?
何の祭り!?なんで新八が俺の膝に跨ってんの!!?
夢!?妄想!?ドッキリ!?
なんなんだ、ジーザス!答えてみやがれぇぇぇぇっ!!!
あまりの出来事に、自分でも目が真ん丸くなってるのを感じる。
そんな俺の心境に気付いてないのか、目の前の新八は アレ?
とばかりに首を傾げている。
って、こんな状況でそんな仕草って、オマッ!!
痛恨の一撃にも程があるだろう!!
「銀さん、嬉しくないんですか?」
「いやいや嬉しいも何も・・・滅茶苦茶嬉しいわ、コノヤロー」
「なら笑ってください」
新八はそう言うと、ムニッと俺の頬に手をやり、摘み上げた。
いやいやいや、嬉しいけどここは笑うよりも、男前な顔で
次のステップに進めるトコでしょう。
・・・って言うか今のこの顔で男前気取っても、
笑える事山の如しなんだけど・・・
「銀さんってあんまり笑わないですよね・・・知ってます?
笑うかどには福来るって」
「ひや、ひっへるへど・・・」
喋る声も、男前とは程遠いものになってるので、
両手でもって新八の手を掴んで下ろさせた。
そうすると、手と一緒に新八の視線も落ちる。
それを追うように顔を覗き込むと、ポツリと新八が呟いた。
「やっぱり土方さんの言うとおりなのかな・・・」
オィィィィィィィ!!なに、その悲しそうな顔!!
マヨラームッツリがナニ言いやがった!!?
ナニを言い包められたんだ、コノヤロー!!
俺の思いが通じたのか、新八がポツリポツリと話し出す。
「相変わらず仕事もなくってついてない・・・て話してたら、
あんな死んだような目をしたヤローのトコにそう易々と仕事なんか来るか、
福も裸足で逃げ出すだろうが。・・・って。
それで僕も あぁ、そうだな。ってちょっと納得しちゃって」
「・・・て、納得すんなよ、ソレ」
「それで、死んだ目は蘇生不可でも、笑えれば少しは
マシになるかな~と・・・」
「いや、死んだようなだからね?死んでないから。
まだ銀さん、全盛期だから」
「でも笑うと良い事ありますよ?現にその時、土方さんにお昼奢って
貰えました!」
「おぉぉぉぃぃい!ナニ餌付けされてんの!!?」
「なら給料寄越せや、コラ」
「本当、スンマセン」
とりあえず新八に頭を下げながらも、多串くんは処罰決定。
会う度に遠くから石ぶつけてやる、全力で。
「ね、だから銀さん。少しでもいいから笑ってくださいよ~」
福が来ますよ、福が。そう言って笑う新八に、こっちの口元も上がっていく。
馬鹿だね~、オマエは。
そう言って新八の肩に手をやり、自分の懐へと抱え込む。
「銀さん?」
「俺はいいのよ。笑わなくてもじゅ~ぶん」
だって、そんな事しなくてもやって来てくれたのだ。
笑わなくても、傍に居てくれるのだ。
それに・・・
「ただいまヨ~」
玄関から、元気な声が聞こえる。
そして向かってくる足音。
「あ~!!ナニやってるネ、オマエ等!!!」
私も入れるヨロシ。そう言って神楽はソファに上がり、
横から二人に飛びついてきた。
「うわっ!危ないよ、神楽ちゃん」
「ったく、仕方ねぇなぁ」
慌ててしがみ付いて来る新八から片手を離し、それを神楽の背へと
廻す。
この温もりも、オマエが来てからやって来た幸せ。
「で、ナニアルカ、これ」
楽しそうに笑う神楽に、
「ん~・・・銀さんに笑顔を!!・・・みたいな?」
照れ臭そうに笑う新八。
この両手にある幸せ。
とりあえずこれ以上の福はいらねぇわ、銀さん。