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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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その日、神楽が酢昆布を噛みながら、定春と共に道を歩いていると、
前方から新八が歩いてくるのを見つけた。

が、その姿が何時もと少し違う。

何時もは背筋をピシッと伸ばし歩いているのに、
今は何故か肩を怒らせ、少し前屈みに歩いている。

しかも、何だか今にも鈍い音の効果音が聞こえてきそうな
歩き方だ。

その新八の姿に、あぁ、なんかあったな。と神楽は
大きな瞳を半分に窄めた。

 

 





「新八~、何処に行くアルカ?」

口にしていた酢昆布を胃の中へと納め、定春を促して
新八の前へと行くと、新八は珍しくも足を止めないまま、

「家っ!」

と言葉を吐き出した。
それに並ぶように、神楽も進行方向を変え、隣に並び
思い浮かんだ原因を口に出してみた。

「・・・また銀ちゃんアルカ?」

そう、新八の怒りの対象は、大抵銀時だ。

偶に・・・本当に偶に自分が原因だったりするが、
それは仕方ない事だと神楽は思う。

だって見本の大人がアレネ。

なのでその時の怒りも最終的に銀時行きだ。

そんな銀時は、日頃から、ダラダラとやる気を見せず、
金もないのにギャンブルをし、酒を呑み、
序に医者に禁じられてる糖分も取る。

その度に新八に怒られているのだが、本人にとっては
何処吹く風・・・寧ろ構ってもらえるのが嬉しいらしく、
ちょくちょくその怒りに火を注いでいる。


だが、今日はその火を思った以上に燃やしてしまったらしい。

新八は足を緩める事もなく、眉間の皺を深く刻んだ。

「全く、今日と言う今日は本当に怒ったからね。
とうぶん帰ってやらないんだからっ!」

「・・・それって家出アルカ?」

「そっ!家出っ!!」

そう言ってズンズンと進む新八に、神楽は呆れながらも
少しだけ口元を緩めた。

進む先は新八の家だ。
お妙と住んでいる、正真正銘の家だ。

けれど、今出てきたところも新八の家だ。
自分と、銀ちゃんと、定春と住んでいる、
新八の家だ。

だって言ったではないか、家出だと。

とうぶん帰らないのだと。

それだけ聞けば哀しい言葉だが、言い換えればアソコを家だと、
帰る場所なのだと言っているようで、なんだか嬉しい。

「よしっ!なら私も付き合ってやるネ」

偶には私達の有り難味を、銀ちゃんに味あわせてやるネ。
そう言って新八の手を取り、勢い良く振り出す神楽に、
一瞬新八の目が丸く開かれる。

が、直ぐにやんわりと細められ。

「だね。今日は二人で家出しちゃおうっ!
あ、勿論定春も」

「きっと銀ちゃん、寂しくて泣いちゃうネ」

「だね~、銀さんあぁ見えて寂しがり屋だから」

いつの間にか新八の怒りも解けたようで、足取りが何時ものソレになる。
そして二人で顔を合わせ、まるで悪戯でもしているかのように
小さく笑い合った。


さぁ、何日ぐらい家出をしてやろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・て、なんでアンタまでウチに来るんですか」

その日の夜、何故かちゃっかり志村家の夕飯に全ての元凶とも
言える銀時の姿があったりして。

「や、だって一人とかってアレじゃん?
やっぱ仲間外れとか良くないと思うんだよね、銀さん。
なので家出してきました」

「アレって何だよ。
素直に寂しかったって言えよ、このマダオが」

「あれ?なんか普通に酷い言葉が聞こえてきたよ?
違うからね、銀さん寂しかったとかじゃ全然ないから。
寧ろ超快適だったんだけどね?やっぱ家出とかって
連れが居てなんぼじゃん?だからさ~」

「既に神楽ちゃんが居ますから大丈夫です。
ってか皆出て来たら、家出じゃなくて
夜逃げみたいじゃないですかっ!」

「お、上手いね~、新ちゃん。
じゃ、それで」

「それでじゃねぇぇぇぇっ!!!!」


****************
坂田が一人で居られる訳がナイ(断言)

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夕飯の後片付けも終わり、明日の朝食の仕込みも済ませた新八は、
身に着けていた割烹着を畳みながら居間へと戻ってきた。

「じゃあそろそろ僕、帰りますね」

そう言って割烹着を置き、ダラリとしながらテレビを見ている
銀時に告げる。

「あ?何、帰るの?」

「えぇ、もうやる事済ませましたし」

新八の言葉に、銀時は ふ~ん と言いつつ、チラリと視線を
窓へと向けた。

窓の外は暗く、風が強いのか時折カタカタと揺れている。

「暗いよ?」

「そりゃもう夜ですしね」

「なんか寒そうだし」

「まぁ冬ですからね」

「送っていって欲しかったりする?」

「そんな無謀且つ夢の様な事は願ってません」

きっぱり言い放つ新八に、銀時が んだよそりゃ~。 と言いながら
ヘニョリとソファに倒れこんだ。

新八はそれにクスリと笑みを浮かべると、フワフワしている髪を
軽く撫でる。

「いいですよ、本当。外寒そうですし、銀さんに送ってって貰ったら
神楽ちゃん一人になっちゃうし」

だから銀さんも呑みに行かず、ちゃんと寝て下さいよ。そう釘を刺しながら
ポンと最後に軽く叩き、新八は荷物を手に玄関へと向った。

「ってかそれ言ったら新八も同じじゃね?
外は寒いし、帰り一人になっちまうし」

ノタノタとソファから起き出し、新八の後に続きながら告げる
銀時に、新八は困ったように眉を下げた。

「や、そう言われても・・・」

「それにオマエ一人だと、変なの寄って来るみてぇだし」

「それは今現在も込みですか?」

「今現在はなしの方向でお願いします」

ってか変なの扱い!?そう嘆く銀時に、新八は小さく溜息を吐いた。


とりあえず三十路手前の癖に、僕の袖を掴んで着いて来てる時点で
見た目十分変な人です、銀さん。


そうツッコミたいが、そうしてるとどんどん帰宅する時間が
遅くなる気がする。

とりあえず離してくれる様言おうとした所で、風呂場の方から
パタパタと言う足音が聞こえてきた。

「新八、もう帰るアルカ!?」

ヒョコリと銀時の体から顔を覗かせれば、頬を赤く染め、ホコホコと
温かそうな神楽が・・・


「って神楽ちゃん!髪の毛しっかり拭いてきてよ!」

折角温まったのに、風邪引いちゃうよ!?そう言うと、新八は
銀時の横を抜けて神楽の元へと行くと、肩に掛けられたタオルを
手にワシャワシャと神楽の髪を拭き始めた。

それを擽ったそうに肩を竦めながら受け止めていた神楽だったが、
何かに気付いたようにハッと顔を上げ、新八と視線を合わせた。

「ん?何、強かった?」

その行動に新八が不思議そうに首を傾げると、神楽はフルフルと
首を振って答え、ちらりと玄関に視線を向けた。

「外、真っ暗ネ」

「へ?・・・あぁ、もう夜遅いからね」

「なんか寒そうヨ」

「・・・まぁ冬だしね」

なんだかさっきも同じ様な会話をしていたなぁ・・・と新八が
苦笑して答えていると、神楽が再び新八へと視線を合わせてきた。

「送ってけないから泊まってくヨロシ」

「・・・・・・・は?」

神楽の提案に、新八が思わず目を丸くしていると、後ろの方で軽く手を
叩く音が聞こえてきた。

それに振り返る前に、新八の脇にさっと銀時の手が差し込まれ、
そのまま抱え上げられてしまう。

「ちょっ!何すんですか!」

ワタワタと足をバタつかせ振り返ってみれば、そこには感心したように
頷いている銀時が。

「神楽ぁ、オマエ本当天才な。
って事で新八は今日お泊りって事で」

送ってけねぇから仕方ねぇわ、コレ。銀時はそう言い、新八を抱えたまま
居間へと戻っていく。
その足取りは軽く、新八の暴れ具合など屁でもないらしい。

「当たり前ヨ。神楽様を舐めるんじゃないネ。
大体私が送ってったら、銀ちゃんが一人になってしまうヨ。
それはそれでいい気味ネ」

「アレ?なんか酷い事言われてない?銀さん」

「や、その前に送ってもらわないからね?
立場逆だから、それ」

鼻を鳴らし後に続く神楽に、二人のツッコミが入る。
それにニシシと笑い返し、神楽は言葉を続けた。

「だから誰も一人にならないのが一番ネ」

その言葉に、新八はキョトリと目を見開いた。そして小さく苦笑すると、
仕方ないなぁ。と呟き、未だ自分を抱え上げている銀時の手を
軽く叩き、降ろすよう促す。

「ま、外も暗いしね」

「もう夜ヨ。子供は寝る時間ネ」

居間の床へと降ろされながらそう言えば、神楽が重々しく答えを返した。

「それに寒そうですし」

「もう冬だからな。言っとくけど冬場の風邪は馬鹿にしちゃ~いけねぇぞ?」

二人の方を向きながら呟けば、銀時が言い聞かせるように返してくる。

「どっちも心配で一人になんか出来ませんし」

「「オマエもな」」

困ったように告げれば、二人から即答された。

それに新八は小さく噴出すと、銀時も釣られたように口元を上げ、
神楽は満足げに笑みを浮かべた。


そして新八は、帰る為に向けていた足を、泊まっていく為のものへと
変更したのだった。

 

 

 

 

 

その後風呂も済ませ、和室に三人分の布団を並べて
それぞれが横になった所で、新八が小さな声を上げた。

「どうしたネ、新八。やっぱり銀ちゃんの隣はイヤアルカ?
でも私もイヤだから我慢するヨロシ。
年頃の乙女に加齢臭の移り香なんて、
シャレにもならないヨ」

「おいぃぃ!!何さらっと酷い事言ってんだ、テメーは!」

「や、僕もこの年そんな移り香はイヤだけどさ。
それよりも姉上が・・・」

そう言った所で、新八の声の意味を悟り、銀時達も小さく声を上げた。
・・・が、直ぐに ま、いっか。 と寝る体勢を整い始める。

「安心しろ、新八。アイツは一人じゃねぇ。
常に強制的+αだ」

「一人な筈なのに、
何故か一人じゃない不思議ヨ」

「・・・や、それ、もっと心配なんですけど・・・」

*************************************
次の日、+αで殴り込まれます。

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その日、新八は何時もより遅い時間に万事屋への道を歩いていた。

しかし、早くはないと言っても、流石に吐く息は白い。
その上道にある水溜りには氷が張っており、視界からも
寒さが入りこんでくる。

そんな中の楽しみといえば・・・

「あ、あった」

えいっ!と小さく掛け声を掛けながら、新八はまだ割られていない
氷の上に足を振り下ろした。

微かな音と割れる感触に、知らず知らずのうちに頬が緩む。

流石に道の真ん中にあったり、大きかったりするものは
割られているが、隅にある小さいものはまだなんとか無事だ。

新八はそれらを見つけては小走りに近寄り、割っては楽しんでいた。

だがそれも万事屋に近付くにつれてなくなって行く。
既に割られている氷を見付けては、なんとなく物足りない感じに
陥っていると、不意にある場所が新八の頭に浮かんできた。

「・・・あそこならまだあるかも」

どうせ今日は遅れると言ってあるのだ。少しぐらい寄り道してもいいだろう。
新八はそう判断すると、少しだけ万事屋への道から足を反らした。

 



「ここならまだ誰も来てないよね」

新八は視線を地面に下ろしながら、公園の中へと足を踏み入れた。
と、その時

「何してんでィ、新八」

「え?沖田さん?」

声を掛けられた方に顔を向ければ、ソコには隊服に身を包んだ沖田が
のんびりとやってくる所だった。

予想もしてなかった人物に声を掛けられた事に、新八の目は
大きく見開かれる。
それを面白そうに沖田は眺めると、

「おいおい、目ん玉が零れ落ちそうですぜィ。
落ちないように支えてやろうか?」

と言って二本の指を立て、新八へと向けてきた。

「や、それ支えるって感じじゃないですよね?
明らかに潰す感じですよね?
ってか何でこんな時間に、こんな所に居るんですか?
体調でも悪いんですか?」

「・・・本当に潰してやろうか、おい」

指を避けながらも真剣な表情で言う新八に、沖田の目が一瞬据わる。
それに慌てて手を振ると、新八はここに居る理由を簡単に述べた。

勿論、氷を求めて・・・とは言わず散歩という事にして。

「で、沖田さんは何してるんですか?」

朝から会うとは思わなかったのでそう聞くと、沖田はあ~・・・と
言葉を伸ばし、次に 俺も散歩でィ。と答えてきた。

とりあえずお互いの言葉に何処と無く納得出来ないまでも、
ここに居る理由が同じならば・・・と、二人は並んで
公園の中へと足を向けたのであった。

 

しかし、沖田と会話しながらも、新八は時折視線を地面へと走らせていた。
もしあったらさり気なく踏みに行こうと思っていたのだ。
だが、そんな思いも虚しく、見つける氷は既に溶けているか
割られているか・・・だ。

ここならばまだ人も来て居ないだろう・・・と当てにしていただけに
少し哀しくなる。

思わず溜息が出そうになったその時、隣に居る沖田が小さく
溜息を吐いたのが判った。

驚いて視線を向ければ、本人は気付いていないのか、何かを探すように
視線を走らせる姿が。

これは・・・もしかして仕事中だったのかな?

考えてみれば沖田は真選組の、しかも隊長格だ。
一般人に言えない仕事の内容もあるだろう。
だから散歩と言うことにしていたとか?
それならば、こんな時間に沖田が居る事も、散歩と答えた時に
感じた違和感にも納得がいく。

ならば、自分が一緒に居ては邪魔だろう。

そう思い、新八が声を掛けようとした所で、今度は前方から
聞き慣れた声が掛けられた。


「何やってるネ、二人とも」

見ればソコには傘を差した神楽の姿が。
不思議そうに見てくる神楽に、再び新八の目が大きく開かれる。

「神楽ちゃんこそどうしたの?僕、まだ起こしてないよ?」

そう、大抵銀時と神楽は新八が起こすまで、ずっと寝こけているのが
基本なのである。
なのに既に起きてて、しかも外を出歩いているとは・・・

驚く新八に、神楽はフッと鼻で笑うと、

「甘いネ。何時までも人に起こして貰うような神楽様じゃないヨ。
ちゃんと自分で起きたヨ、寒くて」

そう自慢げに胸を反らした。

「や、それ自慢する所じゃないからね?
ってかそんならお布団の中に入ってた方が良かったんじゃない?」

「全くでィ。んで永遠に布団から出てくんじゃねぇよ。」

「出来るモンならそうしてるネ。
でも起きたら布団無かったヨ。きっとアレネ。
アソコには布団返しが居るネ」

「・・・居るとしたら枕返しね。
ってか居ないから、普通に蹴っちゃっただけだから、神楽ちゃんが」

「蹴ってないヨ。だって布団、壁に減り込んでたアル」

「・・・どんな寝相でィ」

ポツリと呟く沖田に、新八は押入れの惨状を思い浮かべ、
カクリと肩を落とした。

「だから体を温めようとそこら辺走り回ってたネ。
氷割りながら」

中々楽しかったアル。にししと笑ってそう言う神楽に、
新八と沖田の目が開く。


「「マジでか!?」」


慌てて見回せば、確かに無事な氷はなさそうだ。
・・・って、

「「え??」」

先程出た自分以外の声に、二人は顔を見合わせる。
そして視線を合わせた所で、漸くそれぞれの本当の理由が
判り、新八と沖田は気まずそうに視線を反らした。

どうやらお互い、同じ目的でここまで来ていたらしい。

「・・・帰りますか」

「そうですねィ」

しかし、それが判ったとしても、今更どうしようもない。
二人は力なくそう告げると、公園の外へと足を向けた。
不思議そうな顔の神楽を残して。

 

 

 

 

「・・・ちなみに沖田さんはどのルートでここまで?」

「少し遠回りしながら来ましたねィ。勿論全部木っ端微塵でさァ」

「って事は・・・あっちの道はまだですか?」

「あぁ、まだだねィ。・・・・行きやすか」

「・・・行って見ましょうか」

そう言って互いに笑ってみせると、再び並んで歩き出したのだった。

*********************************
つい割りたくなる不思議な習性。

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冷たい雨の降る午後、新八は買い物帰りの道を急いでいた。

買い忘れた物をを買いに行っただけなので、荷物は軽いが
雨が足元に滲みこんできて、流石に冷たい。

パシャパシャと足音を立てつつ、新八は近道の為、普段あまり通らない
裏道へと足を向けた。

細い道をどれだけ歩いたのか、表通りと違い、人のあまり通らない
この道で、自分の足音と傘に降り注ぐ雨音。
それに加え、もう一つ、誰かの足音らしきものが存在している事に
新八は気付いた。

別に裏道だろうが自分以外誰も通らないと言う訳ではない。
寧ろ、午後とは言え薄暗いこの道、自分以外の誰かが居るという事は
少しだけ心強いかも・・・

そんな事を思い、新八は何の気なしに後ろを振り向き、次に
ピキリと固まってしまった。

別に足音だけで誰もいなかったとか、そう言うオカルトなモノではない。
現に人は居て、段々と新八の方へと歩いてきている。


しかし、人にも色々な人が居るわけで・・・ 


あ~・・・アレだよね。僕、安心してる場合じゃなかったんだね。
寧ろ深夜の道を一人で歩いてて、背後の足音に警戒する女性の
心境にならなきゃいけなかったんだよね。
や、別に女性じゃなくてもいいんだけどさ。
物取りとかの可能性もあるし。
本当、物騒な世の中になっちゃったよね。
・・・でもさ・・・

 

「あ?んな所に突っ立ってんじゃねぇよ」

 

テロリストに遭遇し、尚且つガンつけられる程
物騒じゃなくてもいいと思うんですけどぉぉ!!!


雨の中、傘も差さずに歩いてきた人物は、そんな新八の心境を無視して
邪魔臭そうに包帯で覆われていない方の目で睨みつけてきた。

その鋭い眼光に、新八は無意識に足を一歩引いてしまう。
それにより開いた道を、高杉は何事も無かったかのように進んでいく。

通り過ぎる瞬間、新八はハッと我に返り、急いで傘を降ろして
自分の顔が隠れるように持ち直した。

もう遅いかもしれなないが、念の為だ。
それにホラ、僕って地味だし、何処にでもある顔だし。
うん、気付いてないって、絶対。
ってか気付くな。地味でいいから気付くな!!

そんな祈りが通じたのか、高杉の足音はそのまま新八の横をすり抜け、
遠くなっていく。

「・・・良かった~」

流石にこんな所で顔を突き合わせたくない。
と言うか何処だろうと出会いたくなど無い。

が、とりあえず気付かれなかったようなので一安心・・・と。

新八は緊張しすぎて固まった肩をホッと撫で下ろしたが、次の瞬間、
前方に過ぎていった筈の足音が、勢い良く戻って来るのが聞こえ、
再び体を強張らせた。

そして逃げる間もなく、斜めに差していた傘が上げられ、
誰かが横に入り込んでくるのが判る。

恐る恐る視線をやれば、そこには先程真剣に祈りつつ見送った
高杉の姿が・・・

「やっぱり銀時のトコのヤツじゃねぇか。
地味過ぎて眼鏡がなかったら気付かなかったぜ」

「って何処で判断んん!!?」

新八はつい勢いに任せ、それまでの緊張が無かったかのように
突っ込みを入れてしまう。

それに気付き急いで口に手を当てるが、高杉は雨に濡れてしまった着物の
水気を払うのに気がいってるらしく、少しも気にしていないようだ。

パンパンと着物を叩きながら、

「だから眼鏡しかあるめぇよ」

と、至って簡潔に答えを返してきた。

「や、こんな眼鏡、何処にでもありますからね?
限りなく普通の眼鏡ですからね?
ってかこれがなかったら気付かなかったのかよ
コンチキショー!!」

気付かれたのはイヤだが、その気付かれ方はもっとイヤだ。

「大体なんでこんな所に居るんですか!」

「何でって・・・雨降ってるのに傘がなかっただからだろ?」

「そうじゃねぇよ!僕の傘に入ってる理由じゃなくて!!」

「そこの表通りに出るまでで勘弁してやらぁ。さっさと行け。
寒い」

新八の叫びを無視し、顎で歩けと指示する高杉に思わず溜息が出る。

・・・なんでだろう。さっき気付かれない様に緊張してた時も
妙に疲れたけど、今のほうが何倍も疲れてる気がする。

しかも現在進行形で。

「・・・そりゃぁそうでしょうよ。ってか傘、持って出なかったんですか?」

再び出て来そうになる溜息を押し殺し、新八は渋々足を動かした。
それに続いて高杉の足も動く。

「オメー、テロリストが傘さして歩けってぇのか?」

そいつぁ粋じゃあるめぇよ。新八の問い掛けを鼻で笑い飛ばす高杉。
どうやら彼には彼なりのポリシーがあるらしい。だが・・・


それなら知り合い・・・?の傘に入れてもらって寒さに震えているのは
粋なんだろうか・・・


そんな考えが頭に浮かぶが、とりあえず言葉にはしない。

ツッコミが担当な僕だけど、命までは掛けていないし。

「ってか、もしあれだったら送ってきますよ?」

依然止みそうも無い雨に、ついそんな事を提案してみると、
呆れた視線が返って来た。

「・・・オメー、俺の立場を知ってて言ってんのか?」

「・・・ですよね~」

うっかりしてた、本当に。
さっきの緊張感は何処に行った、僕!
順応が早すぎるにも程があるだろぉぉぉ!!!
ってかアンタも早すぎだぁぁ!!!
何当然の様な顔して隣に居るの!?
せめて傘を持つぐらいしろよ。
・・・て、するわけないよね。
寧ろしたら怖いよね、それ。


「すみません。じゃあ、そこまで・・・」

「あぁ」


とりあえず小さい声で謝罪し、これまでの人生の中で
一番のドキドキ感溢れる相合傘
に、新八はそっと息を吐いたのであった。

********************************
この後、相合傘がトラウマに(笑)

 

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既に日付も超えようとした時間、新八は呑み屋から連絡を受け、
昼間とは違った賑わいを見せる街並みを歩いていた。

幾らこの街で働いていると言っても、流石にこの時間帯には
慣れていない。

見渡す限り大人ばかりで、新八は少しだけ顔を俯かせ足早に歩いていると、
不意に路地を曲がってきた人と肩がぶつかってしまった。

「あ、すみません!」

慌てて振り返り謝れば、なんだか迫力のある美人・・・

「いや、こちらもすまなかった・・・と、新八君か」

・・・訂正、なんだか見覚えのある指名手配犯が居ました。

 


「なんだ、銀時を迎えに行くのか?」

ならば途中まで送っていこう。そう言う桂に連れられ、新八は
先程よりもゆっくりとした足取りで呑み屋へと向った。

「しかし新八君。幾ら迎えと言っても、未成年がこんな夜遅くに
出歩いてはいけないだろう。危機感がなさ過ぎるぞ?」

「いや、その台詞はそのまま桂さんにお返ししますよ。」

「その上ここは繁華街だ。未成年が居ていい場所ではない」

「・・・その台詞も一部変えてお返しします。
ってか桂さん、自分の立場判ってますぅ!?
何堂々と街中歩いてんですかっ!」

幾らか声高にそう言う新八に、桂は器用に眉を上げると、

「だから変装をしているのだろう」

と言って、ユルリと艶やかな色合いの袖を振った。

「ちなみに今はヅラ子と呼んでくれ」

真面目な顔で言う桂に、新八は大きく息を吐き出した。

「じゃあヅラ子さん・・・」

「ヅラじゃない、桂だ」

「・・・面倒臭ぇなぁ、もう。
それよりですね、本当いいですから。僕一人でも大丈夫ですから」

送ってくれなくていいですよ。そう言う新八に、桂は
そうもいくまい。と、返事を返した。

「大人として、こんな夜道を子供一人で歩かせる訳にはいかんだろう。」

変な所で律儀な桂に、新八はクスリと苦笑する。

「まぁ出歩く理由を作ったのも、その大人の人なんですけどね?」

「あれは大人の前に『馬鹿な』がつく大人だ。
一緒にするものではない。」

そう言い切る桂に少しだけ同意したくなるが、目の前にいる大人も
結構『馬鹿』が付く大人だ。

現に今だって、指名手配犯なのに女装姿で堂々と歩き回っている。

・・・ま、似合ってるんだけどね。
そこがまた怖いと言うかなんと言うか・・・

背丈が高いだけに、迫力のある美人に仕上がっている。

そう言えば自分の上司の女装も中々似合ってはいたな・・・と、
今頃呑み屋のテーブルで潰れているだろう銀時を思い浮かべた。

・・・まぁタイプは違うけどね。
しかも無駄に迫力あるけどね。
ってかなんで変装に態々女装を選ぶんだろう。
そんなに自信があるのかな?

新八はソロリと隣を歩く桂に目を向けた。

・・・確かに他の変装よりはマシ・・・か。
未成年の僕よりも、今の桂の方がこの場所には合っている気がする。
けれど・・・

「それなら僕だって子供の前に男です。
その姿の方に送ってもらうなんて、ダメだと思いません?」

意識返しのつもりか、ニンマリと悪戯っ子のように笑って告げる新八に、
桂は一瞬目を丸くすると、次にクスリと苦笑を浮かべた。

「確かに・・・そうだったな。
では新八君の行く呑み屋の近くまで、送っていって貰えるだろうか?」

「それならいいですよ。女性の一人歩きは危ないですから」

そう言って笑いあい、明らかに未成年な少年と
異様に迫力のある美人の不釣合いな二人は、
見た目とは裏腹に、仲良く夜の街へと消えていった。




 

「だが、やはり子供がこんな時間に出歩いてはいけないぞ?
遅くても夜八時には就寝しなければ・・・」

「だから子供扱いし過ぎですって!
ってかそれって何歳設定!?
僕の年齢、知ってますぅぅ!!?」

***********************
この後妙な噂が流れて、坂田大ショック(笑)

 

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無駄語りご案内
銀魂の新八受け中心、女性向けブログです。 BL、やおいなどの言葉を知らない方、また、知っていて嫌気をを感じる方は、ご注意を。 また、出版社様、原作者様、その他関係者様方とは一切関係ありません。
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