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とある夜、何時ものように呑んでいい気分で
家への道を歩いていると、そんな気分も吹っ飛ぶ顔に
出くわした。
「おぉ、銀時ではないか」
とりあえず見なかった事にしようと思ったが、
奴は空気を読まずそんな風に気軽に声を掛けてくる。
・・・いや、気軽に声を掛ける立場じゃないよね、お前。
ってか気軽に出歩ける立場でもないよね、お前。
本当、空気読めよ。
死活問題だろ、そこ等辺。
テロリスト語ってるんだから、もっと真剣に読んでいけよ。
んで、さっさと捕まっちまえよ、もう。
だが、奴はそんな俺の醸し出す空気さえ読めないようだ。
普通に近寄ってきて、普通に話し出した。
酔っ払いと言えども人が多く行きかう往来で。
とりあえず、ちゃんと空気が読める俺としては、
問答無用で奴の襟首を掴んで、さっさと人気のない所へ
移動する事にした。
酔ってても俺、ナイス判断。
・・・あれ?でも無視しときゃ良かったんじゃね?
「で?何か用かよ、ヅラ」
「ヅラではない、桂だ」
「はいはい、お約束お疲れ~。
ってかいい加減ウゼェんだよ、その言い回し。
もう何回やったと思ってんだよ、飽きてんだよ、もう」
「そう言う俺の方こそ言い返すのに飽きたわっ!
いい加減普通に呼べ、普通にっ!」
「いや、今更普通に呼ぶのは
ぶっちゃけ気持ち悪ぃ」
「・・・それもそうか」
人の殆ど居ない川原を歩きながら、俺の言葉にヅラが
深く頷く。
・・・いいのか、それで。
まぁ俺としてはいいんだけどよ。
で、何の用だ?と聞き返すと、別に用はない。と返って来た。
「顔を見たら挨拶するのが礼儀だろう」
「いや、お前の立場から言うと、知り合いならなお更
無視してそっとしておくのが礼儀だろ」
テロリストと顔見知りだなんて、世間体が悪いにも程がある。
ってかコイツ、もしかして今みたいな調子で新八達にも
声掛けてるんじゃねぇだろうな。
嫌な予感しかしないが、一先ず確かめておこうと聞いて見ると、
至って普通のことのように あぁ。と頷きやがった。
「お前と違って新八君は礼儀正しいからな。
ちゃんと挨拶を返してくれるし、
世間話にも付き合ってくれるぞ?」
「いや、付き合わせんなよ。
オマッ、新八が変な目で見られたらどうすんだよっ!」
「何を言う。お前が傍に居る時点で
もう遅いだろう、それは」
「どういう意味だ、コラ」
「そのままの意味だが?
と言うか現に見てる方だしな、お前は」
ヅラの言葉に凄んで見せれば、シラッとした顔で言い返された。
テメェ、失礼な事言うんじゃねぇよ。
確かに見てるかもしれないけど、変な目では見てないから。
しいて言うなら恋する目で見てるから、俺は。
「・・・それが変な目だと言うんだ」
と言うか見てるだけだから余計に変なんだ。そう続けるヅラに、
俺は首を傾げる。
「いや、見てるだけでも十分いけるけど?」
「いくんじゃない。ってか何処に行く気だ、貴様は。
そうではなく、きちんと言葉にも出せと言うことだ。
そして華々しく散って、新八君に全うな幸せを返してやれ。」
「何で散ること前提ぃぃ!!?
ってかそんな事出来る訳ねぇだろうがぁぁ!!!
オマッ、銀さん舐めんなよ!?
そんな事出来てたらなぁ、とっくの昔に幸せになってんだよぉ。
寂しく一人で呑みに行ったりしてねぇんだよ。
もっと熱々のラブラブになってんだよぉぉ!!
あ、今でもそうだけどね?言葉なんかなくても全然
気持ちとか通じ合ってるけどね、新八と俺はっ!」
「・・・妄想・乙」
「じゃねぇんだよっ!
言っとくけどアレだから。喉が渇いたな~て思いながら
新八の名前呼べば、普通に出てくるから、お茶。
『アレどこだ?』って言えば、ちゃんと欲しかった物が
出てくるから、凄いから、新八は。
何故だか糖分だけは出てこないけど。
だからいいんだよっ!言葉に出さなくても全然いいんだよっ!
ってか言葉に出せば手も出していいんですかね、
この場合ぃぃ!!」
「すいませ~ん、ここに犯罪者が居るんですけど~」
「本物が言うんじゃねぇぇぇ!!!」
なんて事があったのが、昨日の夜だ。
昼過ぎ、布団の上で痛む頭を抱えながらボーッと思い出す。
そんな俺の目の前を、
「あ、やっと起きた。全く、自分の限界ってのを
覚えてくださいよね。」
なんて言いながら、箒片手に新八が横切っていく。
そして窓を開けながらも、何か食べられますか?なんて
聞いてきてくれる。
・・・幸せってこう言う事、言うんじゃね?
それに曖昧に返事しながらも、思考は昨日の事に。
大体言葉にしなくてもこんだけ幸せなんだ。
・・・なら言葉にしたら、もっとすっげぇ幸せが俺を
待ってんじゃね?
やべぇ、二日酔いでも俺、ナイス思考力。
だが、ここで一つ問題がある。
あ、新八の返事とかじゃないから。
そんなの決まってるし、それ以外認めないから、銀さん。
では、何かと言うと・・・俺だな、うん。
だってそんな事言うキャラじゃないじゃん、俺。
ってかそんな事言ったら、羞恥で死ねるね、マジで。
それにホラ、なんて言うの?
そんな言葉じゃ表しきれないほどのモノなのよ、
銀さんの想いってのは。
・・・ま、恥ずかしいってのが一番なんだけどよ。
もういいよ、チキンって呼べよ、もう。
適当な事ならベラベラいけるけど、
こう言うのは苦手なんだよ、チキショー。
あぁ、でもすっげー幸せは欲しい。
なんて思ってる俺の視界に、ふとカレンダーが入り込んできた。
ってかもう四月かよ、早ぇなぁ、おい。
・・・て、待てよ。
え?これいけんじゃね?
だって今日、年に一度の嘘つきデーじゃん。
やべぇ、俺ってマジで神に愛されてるわ。
いや、新八にも愛されてるけど。
ってか新八だけでいいけど。
でも、これってマジでチャンスなんじゃね?
素直に言う事は出来ねぇけどよ、今日と言う日に肖って、
『嫌い』→嘘です=なら本当は・・・
って王道的法則が成り立つんじゃね!?
よし、これならいける。多分いける。
待ってろ、ものっそい幸せっ!
今すぐ俺が掴み取ってやっからっ!!
「新八ぃぃ!!!」
俺は心で決めた勢いのまま、新八の名を呼ぶ。
すると少し立ってから、トタトタと言う足音と共に、新八が
和室へと顔を出してきた。
「なんですか?ご飯ならもう直ぐ用意・・・」
そう言う新八の言葉を、手を上げて遮る。
そして一つ、大きく息を吸うと、覚悟を決めて口を開いた。
「新八、実は銀さん、ずっとお前の事・・・・
大好きなんですけど」
ってか嘘でも新八に嫌いなんて言えるか、コンチキショー!!!
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全てにおいて恥ずかしい男・坂田です(笑)