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お団子、饅頭、チョコレート。
パフェにケーキにわらび餅。
あぁ、後忘れちゃいけない牡丹餅オハギ。
一つ刀を振るう度に、呪文のように唱えてた。
三色団子に大福もち、桜餅。
クッキーにマドレーヌに・・・あぁ、後なにがあったっけ。
ま、いいや。
とりあえずこれが片付いたら甘味だ、甘味。
あ、それと酒な。
生き残って良かったと思える事を、とりあえず俺に。
ついでにあいつ等にも・・・って、やっぱやめとこ。
精々匂いぐらいだな、やってもいいのは。
だってあいつ等、酒と甘味は邪道だとか抜かすし。
ったく、ざけんなってぇの。
これ以上の黄金コンビはいねぇぞ?
ぶっちゃけ翼君と岬君ぐらいのコンビだからね?
・・・まぁ翼君と岬君って誰?って感じだけど。
ってか本当、誰?
ま、いっか。
とりあえずこれが終わったら甘味だ、甘味。
お団子、饅頭、チョコレート。
刀を一振りする度に、心の中で唱える呪文。
「・・・やべぇな、こりゃ」
人気のない路地裏で、壁に寄り掛かったまま一人呟く。
片手には木刀を持ったまま、もう片方の手で
赤く滲みだした腹を押さえる。
それを見つめながら、荒い息と共に一つ溜息。
「こんなに汚したら、新八に怒られるってぇの」
ったく、マジで勘弁しろよ。
ただでさえ今回の仕事、置いてきた事に怒ってたってぇのに。
想像しただけでゾッとする。
今回の仕事は妙に嫌な感じがして、本当は受ける気もなかった。
だが、新八達に気付かれてしまったのが運のつき。
いや、依頼者にとっては運がいいのか。
何しろあいつ等は本当にお人よしだから。
困ってる奴がいたら、後先考えずに突っ込んでいきやがる。
新八達は、俺の方がそう言う性分だと言うがそんな訳ねぇ。
そりゃ余程困ってる奴が目の前にいて、
俺以外誰も居なかったら・・・仕方ねぇかとも思うが、
そこに新八達が絡んでくるようなら別だ。
どんなに困っていようが、俺しかいなかろうが、
新八達に危害が向かうようなら、そこで終いだ。
俺はなんて言われようが、新八達を一番に取る。
だが、今回のように新八達が気付いたら、もう駄目だ。
俺が見捨てようとも、新八達は見捨てない。
自分を顧みず、なんとかしようと行動し始めるだろう。
なら、俺のする事は一つだ。
新八達が見捨てられないなら、あいつ等に危険が来る前に、
俺がかたをつける。
それだけだ。
「あぁ、もう本当、やってらんねぇなぁ」
なんか腹痛ぇし、着物は汚れるし、置いてきた新八怖ぇし。
でも・・・と、俺は木刀を握る手に力を込める。
「これが終われば、暖けぇ布団だ」
きっと凄ぇ怒られるけど・・・って、よく考えりゃ理不尽じゃね?これ。
ま、いいや。で、それが終わったら暖けぇ風呂があって。
んで、またブチブチ怒られながらの怪我の手当てが待ってて。
「本当、無茶ばっかりして」
なんてうっすら潤んでる目で笑う新八が居て。
「今度は私も連れてくヨロシ」
なんて偉そうに笑う神楽が居て。
我関せずで寝ている定春が居て。
依頼料で買った食料で、新八がメシを作ってくれて。
それを三人で騒ぎながら食って。
そして、またいつもの生活が始まるんだ。
「なら、さっさと終わらせますか」
ぐっと足に力を入れて、寄り掛かっていた壁から身を起こす。
そして一歩一歩、前へと歩き出す。
「布団に風呂、新八に神楽に定春」
足を一歩踏み出す度に、唱える呪文。
「説教・・・は本当勘弁だけど、新八のメシは最高」
刀を一振りする度に、唱える呪文。
あぁ、これで生き残らなくてどうするよ、俺。
言葉と共に思い浮かべるあいつ等の顔に、気力も何もかもが
蘇る。
昔唱えていたものよりも、よっぽど強力なこの呪文。
さぁ、さっさと帰ろうか。
坂田の全ての理由。