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※「鈍いにも程がありましたぁぁ!!」の続きです。
銀さんが変になった。
・・・や、それは元々か。
「アンタは一体何したいんですかっ!」
何か言いたい事でもあるんですかっ!いい加減銀さんの
異様行動に痺れを切らした僕は、呑んで帰って来た銀さんを
待ち構えて問い質した。
お酒が入ってるってのはちょっとアレだけど、
今夜は神楽ちゃんが僕の家に泊まりに行ってるから
丁度いいし、何よりノラクラとはぐらかすのが上手いこの人の事だ。
もしかしたらお酒のせいでうっかり口が滑るかもしれない。
そう思っての行動だったのだが、唐突過ぎたのか
ソファでダラリと腰を降ろしていた銀さんは何の事か判らず、
キョトンとしている。
や、それもそうか。
「・・・とりあえずお水です」
「ん、あんがと」
コホンと一つ咳を零し、持って来た水を渡すと
感謝の言葉と共にコクリと頭を下げ、銀さんがコップを受け取った。
・・・ちょっと可愛いぞコノヤロー。
だが、そんな事で絆されていては、今夜寝ずに待っていた
意味がない。
もう一度覚悟を決めて問いかけようとしたその時、
一瞬早く銀さんの口が開く。
「で、なんで新ちゃんがいんの?」
今日泊まってくって言ってたっけ?そう言って首を傾げる
銀さんに、少し苦笑する。
「言ってなかったですけど・・・ダメでしたか?」
「ん~ん、大歓迎。
あ、でも大ピンチ」
「大ピンチ?」
銀さんの前にしゃがみ込み、見上げたまま首を傾げると
再びコクリと白いモコモコが頷いた。
「銀さん、新八のせいで大ピンチ」
その言葉を聞いた瞬間、体中の血が一瞬にして下がるのを感じた。
え?何で・・・?
もしかして僕の気持ちに気付いてる?
気付いた上で、どう対処していいか判らなくてピンチって事?
震えそうになる指を互いの手でギュッと掴み、
序に膝も押さえ込んで目の前の銀さんから目を逸らした。
そう考えると、銀さんが変になった理由がつくような気がする。
だってあれ程僕を悩ませていたスキンシップがなくなったのだ。
それも全く・・・と言う訳ではなく、何時もの様に手を伸ばしたものの、
直ぐに慌てたようにその手を引っ込める・・・と言った具合に。
それは、僕の気持ちに気付いて。
それでもってそれに答えられない、理解できない、と言う事だろう。
だから僕に触れない。
僕の気持ちにも触れない。
それは僕の願っていた、大人の反応だ。
でも・・・思わず視線の先が滲んでいく。
例え願っていた事だとしても、やっぱり辛い。
けれどそれを銀さんに気付かせたくないので、ギュッと唇を噛み締めた。
「・・・て言うか新八がピンチ?」
俯いた僕の頭の上から、そんな言葉がポツリと落ちてきた。
その言葉に、少しだけ・・・と言うかかなりカチンと来た。
うっせぇよ!!んなの判ってんだよ!
既に頭がいっぱいでどうしようもないんだよ!!
ってかここまで大人の対応してきたんだから、
最後まできちんと対応しろよ!
見逃せよ、そこら辺は!!
今度は違う意味で震えだした手をギュッと握り込む。
だが、上から落ちてくる言葉は止まる事を知らない。
「うわ~、マジヤバクね?
だって今、深夜に二人きりじゃん?
しかも俺、ちょっと酔ってんじゃん?
ヤバイ、マジこれヤバイよ」
・・・いや、アンタの頭がヤバイよ。
何?この人、僕に襲われるとでも思ってんの!?
そりゃ僕も男だけど、想像でもやめてくなんい?
一応恋に夢見てる年頃だからね?僕。
引くから、本当。
幾ら好きな人だと言っても、さすがにコレはない。
と、一言言ってやろうと思わず顔を上げた僕の視界に入ってきたのは・・・
「・・・なんですか、コレ」
何故だか神妙な顔をして腰に巻いてあるベルトを差し出している
銀さんだった。
「ベルトです」
「いや、それは見れば判ります。
ってかなんで差し出してんですか?くれるんですか?これ」
もしかして思い出の品というヤツだろうか。
そう思い聞いてみると、銀さんはフルフルと頭を振って答えた。
「じゃなくて、これで銀さんを縛って下さい」
・・・すみません、
幾らなんでもそんな思い出はいりません。
その時の僕はとんでもない顔で引いていたのだろう。
銀さんは慌てたように身を乗り出してきた。
「ちょ、勘違いすんなよ!?
銀さんそんな趣味ないからね?
寧ろ縛るほうだから。
身も心も縛り付ける方だからぁぁ!!」
「や、どんな趣味だろうと別にいいですけどね。
僕を巻き込まなきゃ。
と言うか、それなら何なんですか?」
呆れたようにそう言えば、再び真面目な顔になった
銀さんが口を開いた。
「だから、オマエを巻き込まない為だろうが」
・・・はい?
訳が判らず首を傾げると、銀さんは差し出していたベルトを
握り締め、乗り出していた体を元に戻した。
そしてソファに横たわり、ベルトを掴んだままの手で顔を覆って
バタバタと暴れだr。
「ちょ、銀さん?」
「あ~、もうマジヤバイ!オマエ可愛すぎ!!
しかも俺、理性弱すぎ!!」
「は?」
「どうするよ、もう。だってコレ、シャレになんねぇって。
深夜に新ちゃんと二人っきりって!
ただでさえ二人っきりってのがヤバイのに、深夜って!!
なんかもう告る前に
手が出そうなんですけど!」
キャーキャーと暴れる銀さんに、僕の頭は真っ白だ。
えっと・・・これは嫌過ぎてそれを告げる前に
殴りたくなってくる・・・って事かな?
「いやいや、でもそんなんダメだから。
新ちゃんの事大事にしたいからね、銀さん。
新ちゃんを守るのが銀さんの仕事だから。
って事で新八、これで銀さんを縛ってください」
幾分落ち着いたのか、緩々と首を振って銀さんが体を起こし、
再びベルトを僕の方へと差し出してきた。
僕は訳が判らないものの、その真剣な表情についベルトを
受け取ってしまった。
しまったのだが・・・
「えっと・・・別に僕はいいですよ?」
うん、例え殴られても、それはそれできちんと終われそうだ。
それに大事にしたいって言われただけで、もう十分だし。
そう告げると、クワッと銀さんの目が見開いた。
「ばっかやろぉぉ!!
もっと自分を大事にしやがれ!
言っとくけどアレだよ?銀さん凄いからね?
こう見えてちょっとS入ってるから!!」
「いや、Sなのは知ってますけど・・・」
「それによぉ・・・」
銀さんの剣幕にちょっとビビッていると、ポンと肩に両手を
乗せられた。
そしてそのままグイッと抱き込まれてしまう。
「え?ちょ、何?銀さん!?」
慌てて引き離そうとするが、何分相手は銀さんだ。
大きい体はビクともせず、そのまま肩口へと顔を埋められた。
「・・・俺は大事にしたいよ。
だって大好きだもん、新八の事。
だからこんな勢いに任せて手ぇ出したくねぇんだよ」
耳元でボソボソと言われ、くすぐったさに首を竦めるが、
それ以上に銀さんの言葉が僕の心臓を締め上げた。
え、何コレ。もしかして銀さん・・・
僕はウリウリと肩口に顔を埋めている銀さんの背中を
ポンポンと叩き、問い掛けた。
「ね、銀さん。なんでベルトで銀さんを縛らなきゃいけないの?」
「そりゃオマエがここに居るからだよ」
「居ちゃダメでした?」
「ううん、居て欲しい。出来ればずっと」
「・・・なんか矛盾してません?」
「仕方ねぇだろ。男の理性はあってないようなもんなんですぅ。
特に新八を前にした俺にとっては。」
ブツブツと文句を言う銀さんに、僕の口元は段々と笑みを浮かべていく。
もしかして・・・ねぇ、もしかして銀さん。
心に浮かんできた事を確実にする為、僕は最後の質問を
銀さんに投げかけた。
「僕の事、好き?」
「うん。ってか寧ろ愛してる」
でも無理強いは嫌だし~、いやそれも好きだけどね。なんて
物騒な事も言っているが、それは無視だ。
へへへっと笑みが零れ、僕はギュッと銀さんの体を抱き締めた。
それが気持ちよかったのか、銀さんの声が段々と眠そうなものへと
変わっていく。
それに慌てて、僕は銀さんの名前を呼んだ。
「ね、銀さん銀さん。
僕もね、銀さんの事大好きで愛してんですよ?」
知ってました?そう聞くと、首元でニヘラと笑う気配がした。
「マジでか」
その言葉と共に、ずしりと抱き締めていた体が重くなった。
「銀さん?」
不思議に思い、名を呼んでみても答えはなし。
力を振り絞って銀さんの体を起こしてみると、
そこにはなんとも幸せそうな顔で寝こけている銀さんが居た。
それがなんとも間抜けで可愛らしくて。
僕は呆れるやら嬉しいやらでどうしようもなかった。
うん、ロマンの欠片もない告白だったが、ある意味僕等らしくて
いいのかもしれない。
あ、でも・・・
「僕の一世一代の告白、忘れてたら承知しませんからね?」
どうか記憶に残っていますように。と願いを篭めて、
間抜け面の鼻先にチュッと軽く唇を落とした。
次の朝、目覚めた銀さんは、夕べの事が本当にあった事か。
それとも自分の妄想か判断がつかず、
悶々と悩んでいたりして・・・
・・・うん、当分禁酒ね、銀さん。
***************
一応完結。