[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
『合鍵』
それは万事屋に神楽もやって来て、賑やかになった頃。
そしてそれに伴い、新八の家事能力が確実に上がってきた頃。
「あ、そう言えば銀さん、鍵下さいよ」
「ん?何時ものトコにあんでしょ?」
部屋の掃除に精を出している新八を横目に、銀時はソファに寝転んだまま答えた。
「その鍵じゃなくて!合鍵とかないんですか?」
そんなやる気のない銀時の態度に、新八は箒片手に溜息を吐いた。
新八の答えに、銀時は あ~ だの う~ だのと言葉にならない声を出しながら、
ダラダラと新八の方へと体全体を向ける。
そして、
「・・・・・・・なんで?」
と、如何にも不思議そうに問いかけた。
その問い掛けに、新八はもう一度溜息を落とす。
「なんでじゃないですよ。一つしかなかったら不便でしょ?
買い物に行きたくても、出掛けられない時とかあるし」
「なんで?」
「だから、その時誰も居なかったら出掛けられないでしょ?
まぁ神楽ちゃんは大体帰ってくる時間が決まってるからいいですけど、
銀さんは予測出来ないし・・・」
「なんで?」
「だ~か~ら!幾ら盗られる物がないって言っても、鍵かけずに出掛けられないでしょ!
って言うかなんで其処まで聞くんですか!?」
何か言い難い理由でもあるんですか!?・・・とのらりくらりとした銀時の問い掛けに、
新八が切れかける。
そんな新八に、銀時がコイコイと手招きする。
「なんですか、もう!」
怒っててもそこは新八。素直に銀時の傍へとやって来る。
銀時は傍に立った新八の手を、やんわりと握り締めた。
「?銀さん?」
「だから、なんでよ」
再び問い掛けてきた銀時の言葉に、新八はカクリと首を傾げる。
「だから~」
「だって、一緒に出掛ければいいでしょ。そんなの」
「は?」
「一緒に出掛けて、一緒に帰ってくればいいでしょ?
買い物とか、銀さんが帰ってくるの待ってればいいでしょ?」
違う? と今度は銀時が首を傾げた。
そんな銀時に、新八はほんの少しだけ口元が緩むのを感じた。
変な所で寂しん坊で甘えん坊なのだ、この男は。
でも実際はそんな事していられない訳で。
「でも、朝とか二人とも寝てるじゃないですか。
今の所はある鍵をお借りしてますけど・・・」
それだと僕が帰った後、何処にも出掛けられないでしょ?
そう言って新八はソファの傍に膝を着いた。
近くなった距離に、銀時は握っていた手を抱え込むようにしてさらに距離を縮める。
「別に出掛けないし。・・・て言うか、そんなん考えるなら帰んなきゃいいだろ」
心なしか拗ねている様な銀時の態度に、新八は今度こそはっきりと笑みを浮かべた。
そして空いてる方の手で、銀時の頭を優しく撫でる。
「週の半分はここに居るじゃないですか。交通費も馬鹿にならないですし、
どっかのマダオが呑んでくるし・・・」
「・・・・・すんません」
「大体鍵って言うのは・・・家族なら普通持ってるモンでしょ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから合鍵、僕にください。ってか出せ。」
にっこりと笑う新八に、銀時は暫し顔を伏せると、そのままソファから体を起こした。
そしてそのまま新八を引っ張るように、玄関へと足を向ける。
「買い物、行くぞ」
「はい」
「んで・・・まぁアレだ。・・・・・・・・・・・もう一つ、作っとくか」
「はい」
あ~、でもあいつはすぐ失くしそうだよな~
・・・なんて髪をガシガシと搔きながら言う銀時に、
新八は渡されるであろう新品同様の鍵を何時使おうか・・・とちょっとだけ考えた。
・・・自分で言っておきながら、アレだけど。
そんなに使う時がなさそうだ。
**************************************************
[銀新十題]さまからお借りしてきました。
遠くの方で何か音がした。
でも別に危ない感じはしなかったので、そのまま無視。
睡眠不足は乙女の敵アル。
ちなみに空腹の敵でもアルネ。
眠ってる時は平気なのに、なんで起きたらこんなに空腹なのか。
・・・人生とは摩訶不思議アドベンチャーアル。
そんな事を考えてたら、今度は何やら声が聞こえてきた。
それも二人分。
どうやら帰ってきた銀ちゃんに新八が小言を言ってるようだ。
・・・でも言葉の割りに、声が甘ったるいネ。
どうせなら本当に甘い物食べさせるヨロシ、私に。
銀ちゃんは銀ちゃんで・・・あれアルネ。
マダオ丸出し。
でも、普段よりは小さい声。
廊下を歩いていく足音もちょっと小さめ。
・・・・ま、今日の所は許しておいてやるヨ。
まだ眠いし。
ウヒッと笑いながら、もう一度布団の中へと頭を潜り込ませれば、
新八の ぅわっ! と言う声が遠くから聞こえてきた。
次の瞬間、暖かい布団を跳ね除け、二人が向かったであろう和室へと急いだ。
「うるせーゾッ!どうしたアルカ、コノヤロォォォォォ!!!!」
言葉と共にスパン!と襖を開ければ、其処には
「よぉ神楽。ただいまでお早うでお休み~」
と、ヒラヒラと布団に横になりながら片手を振るマダオと、
「あ、神楽ちゃんごめんね、起こしちゃって・・・って言うか寝るなら離せぇぇぇぇ!」
と、マダオに抱き込まれて倒れこんでいる、がなる駄目鏡。
「大体僕、まだ朝食作ってる途中なんです!さっさと離して下さい。で、一人優雅に
睡眠の王国でも永眠の王国にでも逝って下さいよっ!」
「て、アレ?なんか酷い事言われなかった?銀さん、酷い事言われなかった?」
「気のせいですよ、加齢臭」
「え!?なにソレ。なんか凄い胸にキュンvと来たよ?こうズキュンvと」
「キュンvじゃねぇぇ!使用状況が間違ってるよ、アンタ!
って言うかこの状況で言われるのって凄いイヤダァァァァァァ!!」
そう言って、賢明に自分を拘束している銀時の腕を離そうと暴れる新八。
しかし銀時は余裕の態度で悠々と寝転んでいて。
・・・今まで大人しくしてるなんて、大人になったアルな、グラさん。
でもそろそろイイと思うアルヨ。
とりあえず言葉にするのは面倒臭いし、腹も減る。
ツッコミは体力勝負アルからね。どうせ減るなら拳に訴えたほうが楽アル。
って事で・・・と、そろそろ拳を輝かせようとしたその時、銀時の視線が神楽へと向いた。
そしてニヤリと笑うと、新八を抱え込んでいる腕とは反対の手が チョイチョイ と小さく動いた。
それを見た神楽の目が少しの間見開き、次にニンマリと笑む。
温かい布団から飛び出て、少し体が冷えてきてたアルヨ。
考えてみれば、まだ寝ている時間ネ。
お腹は寝てると減らないアルヨ。
って事で・・・・
「銀ちゃん、お帰りでお早うで静かにしろヨ、ゴルァァァァァァ!!!」
と、二人のお腹目掛けてダイブ決行。
・・・なんだか定春14号の最後と同じ声が聞こえたけど、きっと気のせいネ。
「・・・神楽、お前ねぇ、今なんか銀さんから大事な何かが抜け出しそうだったよ?」
そう言いながらも、ちょっと口元が上がってる銀ちゃん。
「僕は人生から抜け出されそうでしたよ、強制的に。って言うか駄目でしょ、人に向かってダイブしちゃ」
溜息を吐きながらも、優しく頭を撫でてくる新八。
仕方ないから、今日は朝ごはん、少し遅くても我慢してやるネ。
だからもう少しだけ、皆で睡眠時間延長するヨロシ。
ウヒヒッと笑って、神楽は今度こそ眠りの世界へと舞い戻っていく。
それは先程の布団の中よりも、暖かくて。
これだから二度寝はやめられないアル。
ガチャガチャと少し大きな音が玄関からした。
それが何度か聞こえた後、漸く扉が開く音が聞こえる。
・・・が、その音はどこか控えめだ。
いや、早朝だからって気にしてくれたんでしょうけどね、
最初の鍵を開ける音が全然控えてませんでしたから。
新八は一つ息を吐くと、朝食作りを中断して玄関へと足を向けた。
そして玄関でブーツを脱ぐのに悪戦苦闘している大きな背中を見、
また一つ息を吐く。
今度のものは心なしか大きめだ。
その途端、大きな背中がビクリと動いた。
「お早いお帰りで何よりです、銀さん」
「し、新ちゃんこそお早いご起床で~・・・」
ギギギと音が聞こえるかと思うほど、ゆっくりと首を向ける銀時。
その顔には動きと同じように、ぎこちない笑顔が張り付いている。
「も、もしかして起こしちゃったかな~?」
銀さん、静かにしてたつもりだったけど~・・・等とほざく目の前の
マダオに、
「気にしないで下さい。もう起きてましたから。昨日は寝るのが遅かったんですけど
やっぱり習慣ですかね。何時もの時間に起きちゃいました。
睡眠時間、足りてないですけどね。朝食作んなきゃとか思うと起きちゃうんです。
やっぱり若いからですかね、寝不足なのに不思議ですよね~。」
だから起こしちゃったとか気にしないで下さい。・・・との言葉達と共に
笑顔を送る。
瞬間、銀さんの顔色が悪くなり、大量の汗が滴り落ちてくる。
それがちょっと面白くて、本当に笑ってしまったのだが、銀さんは真っ青のままだ。
そんなにビクつかなくてもいいのに。
ここは銀さんの家なんだから、いつ帰ってきたって銀さんの自由なのに。
僕の嫌味だって、別に聞かなくてもいいのに。
「・・・ごめん、新八」
そんな風に謝らなくてもいいのに。
遅くまで待ってたのは僕の勝手だし、早起きして朝食作ってるのも僕の勝手だ。
(まぁこれは神楽ちゃんの為ってのも入ってる訳だけど)
なのに銀さんはきちんとココに帰ってきてくれる。
・・・ま、ここは銀さんの家だから、帰ってくるのは当たり前だけど
でも、寝てるかもしれない僕らに気を使ってくれる。
僕の嫌味を聞いてくれて、
勝手に待ってた僕に謝ってくれる。
そんな銀さんだから・・・
「・・・・仕方ないですね~、もう。」
そう言って、さっきまで銀さんが戦っていたブーツへと手を伸ばし、脱がしてあげる。
「はい、立って下さい・・・・ってうわっ!おもっ!ってか酒臭っ!っつーかつめたっ!!」
手を掴んで引き上げたと同時に圧し掛かってくる体を、受け止めてあげる。
「あんた、冷え切ってるじゃないですかっ!風邪引いたらどうするんです!?病院代勿体ねーだろ!!」
そう言って冷たい頬を両手で包んで温めてあげる。
「・・・何にやついてるんです?」
「んにゃ、別に~。ただいま、新八君!そしておはようア~ンドおやすみなさい~」
「はいはいお帰りなさいませ。で、お早うございますアンドご愁傷様~」
「え、何ソレ!最後なんか違うよね!?爽やかな朝に似つかわしくないよね!??」
「気のせいじゃないですか?それより僕朝食作ってんですから、さっさと自分で歩いてくださいよ。」
「え~、やだ~銀さんもう歩けない~」
「うわっキモ!その言い方本当キモっ!!」
広くない廊下を二人で言い合いながら歩いていく。
ブツブツ文句を言う銀さんに、仕方ないな~・・・なんて思って肩を貸して。
けれどそれは、歩き辛くない程度に体重を乗せられていて。
甘いな~、本当。・・・等と少し笑ってしまう。
「銀さん、朝ごはんはどうします?今日は卵焼きもついてますけど?」
僕らに甘い銀さん。
そんな銀さんだから、それ以上に甘やかしてあげたくなるのだ。
~場所~
「・・・太陽が・・・痛い・・・」
小鳥が囀り、冷たいがそれが余計に空気の綺麗さを強調しているような早朝。
太陽もまだ出たばかりで、そんな空気を暖める事もせず、ただ眩しさを主張している。
これだけなら普通に爽やかな朝の風景であるが、そんな風景をぶち壊しているのが
道をフラフラと歩いているマダオオーラ全開の男、銀時。
「・・て違うから、銀さんそんなぶち壊してないから。
寧ろ銀さんが居る事でかなり爽やかさが倍増してるから。」
あ~、でもデビュー気分も倍増・・・等と呟きながら道沿いにある壁に手を着き
暫し止まる。
「やっぱアレだ。飲み過ぎは駄目だ。飲んでいいけど過ぎは駄目だ。
うん、よし一つ学習した。大丈夫、銀さんやれば出来る子だから次は大丈夫。
・・・て、あれ?なんかこんな感じ前にもあったような・・・なんだったっけ
デザイア?」
違うな~なんだっけな~あ~もう面倒くさいな~。そう言いながらチラリと
周辺に目をやる。
そう言えばちょっと前までは、休みたくなったら何処でも休んだものだ。
其処が墓場だろうが路地裏だろうが関係ない。
出来れば屋根とかあれば嬉しいのだが、結局はそんなに関係ない。
何処でも、何処だろうとも、関係ないのだ。
お登勢に借りたあの部屋だって、好きな時に、好きなように帰っていた。
気分次第では、何日も帰らない事だってあったのだ。
なのになんでこんなに一生懸命歩いているんだろうか。
なんでまっすぐあの場所に向かっているんだろうか。
「・・・ここで寝ちゃおうかな~」
そう考えているのに、そう声に出しているのに、何故か足は前に進みだす。
少しでもあの場所に辿り着くように、ゆっくりと、フラフラしつつも確実に
足は歩むのを止めない。
「なんだかな~・・・本当面倒くさい」
溜息を一つ、白い息と共に吐き出す。
けれど口元は緩やかに上がっていて。
「頭痛いし、気持ち悪いし、寒いし・・・」
でもきっとあそこは暖かい。
昨日は確か新八が泊まっていった筈だ。
出掛けるときにちょっと小言を貰った。
飲み過ぎるな、早めに帰って来い。
・・・お前は何処の奥様ですか。
いや、勿論万事屋のだけれども。
寧ろ銀さんのなんだけれども。
神楽もしたり顔で言っていた。
駄目ネ。マダオにそんな事言っても無駄ネ。
・・・お前ハ何処の反抗期娘ですか。
いや、勿論万事屋のだけれども。
寧ろ銀さんと新八のだけれども。
この分だとまた小言を貰う事になるだろう。
この分だとまたしたり顔で何か言われるだろう。
けれど、それでもアソコは暖かいのだ。
だから、どんな時でもアソコに帰っていくのだ。
「あ~、もう本当ダルイ。」
そう言いながらも、銀時の足は少しだけ速度を上げた。