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夕食も食べ終わった万事屋の一室。
そんな中、新八一人が真剣にテレビの画面を見詰めていた。
どうやら音楽番組であるらしく、新八が親衛隊を勤めている
お通が出ているらしい。
その姿は真剣を通り越して、何か鬼気迫るものを感じる。
その為か、普段なら騒がしいさの原因でもある銀時と神楽
はお喋りもせず、それぞれが静かに好きな事をやっていた。
が、そのお通の歌が始まった途端、神楽がふと顔を上げ、
先程から新八が見入っている画面へと視線を向ける。
そして、歌に耳を傾け、暫くしてコテンと首を傾げた。
その行動を見ていた銀時も不思議そうに首を捻る。
何か気になる事でもあったのか。
ま、大体にして彼女の歌は不思議なトコだらけだ。
と言うか、子供に聞かれたら親が答えにくい歌詞ばかりだ。
以前新八が掃除をしながらそれを口ずさんでいた為、
ちょっと泣きそうになった。
で、思わず説教したら、お通ちゃんの歌のドコが悪いっ!!!
と逆切れされた。
別に彼女の歌が悪いとは言ってない。
ただ歌詞が問題だ。
おまけにそれが新八の可愛い口から出されると、銀さんの心臓に
かなり悪いんだっつーの。
恋する男のピュアハートを判ってくれ、ぱっつぁん。
そう訴えたら、凄く不思議そうな顔をした。
・・・あれだ。多分ヤツも意味を判ってない。
なので、今でも新八は時折お通の歌を口ずさむ。
・・・いいさ、臆病者と罵れよ。罵ればいいさ!
でもな~、あの目でそれらの歌詞の意味を聞かれてみ?
どんな羞恥プレイよ、ソレ!!
無理無理無理、銀さん、そこんトコはマジで中二ハートだから!!
つらつらと銀時が過去の出来事を思い出している内に、番組は終わったらしく
神楽が新八の袖をチョイチョイと引っ張る。
「ね~、新八ぃ~」
それに気付いた新八が、上気した頬をそのままに、神楽の方へと
視線を向けた。
「なに?神楽ちゃん」
「今のお通の歌、新八が歌ってたのと歌詞が同じだったアル」
なんで?と首を傾げる神楽に、新八は あぁ と頷き、
「今度のはライブで前から歌ってたのだからね、僕もう覚えてるんだ」
「でも本当に歌詞だけだったヨ。これってアレか?発売する時に
曲調変えたアルか?そうやってTW○-MIXして金儲けアルか?」
「神楽、それremixな」
「オイィィィィ!!お通ちゃんはそんな阿漕な事しません!!
って言うかアレか!?音痴ってか!!?音痴って言いたいのかぁぁ!!」
「希望を持つネ、新八」
「そんな生温い優しさはいらねぇぇっ!
いいでしょ、別に迷惑掛けてないんだし」
歌は楽しく歌う事が大切なんです。そう言いながらも、
ちょっと口を尖らせる新八の膝の上に、神楽がゴロンと寝転がる。
「うん、だから別にいいネ」
転がり込んで来た神楽に、新八は拗ねていた表情を訝しげなものへと変える。
「私、今の歌より新八の歌の方が好きネ、だからこれからも
思う存分歌うヨロシ」
ね、銀ちゃん。そう言って笑う神楽に、銀時も答える。
「ま、新八の歌の方が愛嬌があるわな」
「・・・なんですか、それ」
「あ、新八。顔が真っ赤ネ」
「う、煩いな~、もう!!」
そう言って新八は、赤い頬をそのままに、膝にある神楽の頭を
グシャグシャと掻き混ぜる。
なんだヨ、コノヤロー。と言いつつ、神楽も新八の横腹に手をやり、
反撃を開始し始めた。
楽しそうにジャレ合う二人に、銀時は苦笑を一つ零し、
ま、どんな歌詞だろうが、あの歌声が聞けなくなるのは寂しいわな。
もう少し頑張って耐え抜くか、マイピュアハート。とエールを送りながら、
目の前のジャレ合いに参戦すべく、腰を上げるのだった。
「って言うか、今度こそソフトな言い回しの歌詞にしてくんねーかな~。
あ、でも駄目だな。銀さんの優秀過ぎる妄想脳が勝手に変換しちまうから」
そんな銀時の願い虚しく、万事屋には音程の外れた過激な歌が、
今日も楽しげに流れている。
器用モノの不器用さ
「銀さんって器用ですね~」
台所の棚がグラグラしてきた、と言うので直した所、新八に
キラキラした目で見られた。
・・・いや、錯覚とかじゃないから。
銀さん、まだ目はいいから。
序にお頭も可哀想な事になってないから。
何処かの誰か(多分蔑ろにされている一部の自分だ)に説明しながら、
ちらっと横目で新八を見る。
・・・うん、やっぱり間違いない。
だってあんなに歓心した表情で棚を見てるじゃねーか。
どうよ、銀さん、凄いでしょ。
だから労働のご褒美にちゅーの一つや二つかましてくれても
いいと思うよ?
・・・アレ?なんでかな、急にキラキラがなくなったよ?
おかしいな、新八君。こっちも見てくれなくなったよ?
じゃあ、それは夜にでも取っておいてあげるから、その代わり糖をよこせ。
・・・アレ?今の聞こえてなかった?
なんか新八君、サカサカ降ろしてた物を棚に戻し始めたよ?
そん中に糖分に当たるモノ、あったよね?
おーい、新八君の愛しの銀さんが何か訴えてますよ~。
「本当、銀さんってなんでも無駄に器用ですよね~」
・・・スルーかよ、ぱっつぁん。
しかもなんかさっきと似た言葉だけど、微妙に棘があるように
思えるのは、銀さんの思い違いかな?かな?
「僕だとこうはいかないんですよね」
ってそれも無視かよっ!!何、この仕打ち!
労働の報酬は愛ある精神的攻撃ですか!!
違うから、銀さんMじゃなくてSだから!!
「僕も銀さん・・・とまではいかなくても、もう少し器用だったらな~」
そう言ってしみじみと銀時が直した棚を見上げ、次に今日の昼飯の支度
へと取り掛かる新八。
それをしゃがみ込んでいじけていた銀時が見上げる。
「別に、オマエはそのままでいいんじゃね?」
「そうですか?でも器用な方がいいじゃないですか」
あ、今度は答えがあった。
なんですか、新八君。キミは銀さんからのラブトークは一切遮断出来る
機能でも付いてんですか。
・・・器用過ぎるだろう、それは。
ま、いいけどね。確かに俺は器用だし。
お陰で器用に殺して、器用に生き抜いてきたしね。
今では器用に折り合いつけて、ダラダラ生きてますってなもんさ。
だけどな、やっぱり何処かで折り合い付けれてねーもんもあって。
不器用にも生き足掻いてる部分もあんのよ。
馬鹿だとは思うけどな。
持ち前の器用さで誤魔化しとけばいいのにとも思うけどな。
でも失いたくは無い・・・と思ったりもしてんのね。
だからか知らねーけど、オマエの不器用な手がスッゲー好き。
その手で造られる、たまに煮崩れしている煮物が好き。
不器用ながらも一生懸命繕ってくれるその表情が好き。
背ければ楽なのに、それをしない不器用な視線が好き。
曲げない、折れないその心が好き。
だからな?
「別に銀さんが居るから不便じゃねーだろ、不器用でもよ」
不器用なまま、そのままのオマエでいて欲しい。
そう告げると、野菜を洗っていた新八の視線が漸くこちらを向く。
「それってやっぱ僕の事、不器用って思ってるんですね」
酷いな~。と言いつつも、新八は笑っていて。
そして濡れていた手を軽く布巾で拭くと、袂へと手をやり何かを取り出す。
そして取り出した小さな袋を破ると、その手を銀時の口元へと
持ってきた。
「はい、あーん」
「あーん?」
言われたとおり口を開けば、小さな塊を放り込まれ、銀時の口の中に
甘い味が広がった。
「棚、有難うございました」
目を丸くする銀時に、新八はそう言ってふんわりと笑った。
・・・やっぱオマエはそのまんまがいいよ。
十分、無駄に器用だよ、本当。
これ以上器用になんかなられたら、俺の心臓がいかれちまう。
それと誰か、この熱くなってきた頬の冷まし方を教えてくれ。
おれはそう言うトコは、器用に出来てないのよ、本当。
頼み込んで、半ば脅して雇ってもらえたその後、初めて貰ったのは
少し使い込んだヘルメットだった。
『ヘルメット』
「あの~・・・これは・・・」
ある日、万事屋へと出勤すると、銀時がホイッとヘルメットを投げてきた。
「あん?見りゃ~判んだろ。メットだよメット。ヘルメット~」
そう言って銀時は首を緩く廻した。
「何時までも俺の貸してやれねーしな。だからソレ。オマエ専用」
俺のお下がりで悪いけど。銀時の言葉に、新八は手にしたヘルメットに
視線を落とす。
「お下がり・・・」
「そ。それな~買ったはいいけど、なんかこう・・・
収まりが悪いっつーかよ。あ、違うぞ!?違うからな!?
天パーとかの性とかじゃ全然ねーからっ!!」
・・・いや、誰もそんな事言ってませんから。
そう思いつつも、じっと渡されたヘルメットを見詰める。
序にそっと撫でてみたりする。
そんな新八の行動に、銀時は眉を顰める。
「んだよ。別にどこも壊れてねーぞ。
って言うか銀さんの髪はヘルメットか貫通しませんからっ!
寧ろグラスハートの如き繊細さだからっ!!」
「誰もそんな事思ってねーわっ!!
どんだけその天パーが弱点なんすか、アンタはっ!!!」
って言うかそれだけ繊細な髪だったら、そんな天パーには
ならないだろう。・・・と言うツッコミは止めておく。
・・・が、未だ銀時はブツブツと文句なのか言い訳なのか
判らない言葉を吐き続けている。
別に羨ましくなんかない・・・だの。
サラサラ黒髪なヤローには判らない・・・だの。
だからそんなにキャラが弱い・・・だの。
・・・よし、明日から気合入れて髪の手入れをしよう、僕。
固く誓った所で、再びヘルメットに視線を落とす。
それを見て銀時が漸くぼやくのを止め、一つ息を落とす。
「んだよ、新品じゃなきゃイヤだってか?
ドコのボンボン様ですか、コノヤロー」
人が折角家捜しまでしたってのによ~。銀時のその言葉に、新八は
勢い良く顔を上げた。
「態々探してくれたんですか?」
「ん?あぁ、まあな。・・・ま、でもそんなにアレだったら
その内ちゃんと新しいの買ってやるから、それまで・・・」
「いいです!!」
我慢しろ・・・と続けようとした銀時の言葉を、新八が大きな声で止める。
その迫力に、銀時が目を丸くすると、新八はハッと我に返ったように
慌てて下を向いた。
そして手にしていたヘルメットをギュッと抱き締める。
「あの~・・・新ちゃん?」
「えっと・・・ごめんなさい。あの・・・僕姉上しか居なくって」
その挙動不審さに、銀時が思わず声を掛けると、新八は何やらモゴモゴと
説明し出した。
・・・って言うかヘルメットの話でなんで姉上!?
行き成りの話の方向転換に、首を傾げる銀時。
けれど新八の話には続きがあって。
「で、お下がりとかあんまなくって・・・あってもちょっと・・・
ってなのばかりで・・・だから、その・・・」
これがいいです。そう言う新八をちょっと覗けば、微かに見える
嬉しそうな表情と、赤い頬。
そんな新八に、銀時の頬もちょっと熱を帯びる。
「そっか~・・・なら、ま、いっか。銀さんも探した甲斐、あったわ」
声はあくまで普通に、けれど確実に今の自分はにやけているだろう事を
理解している銀時は、新八の頭に手を乗せ、こちらを見ないように
固定してグリグリと撫で回す。
「ついでによ~、名前でも書いとけや。
もうこれ以上お下がりにならねーだろ、ソレ」
そう言う銀時に、新八は 痛いです!・・・等と文句を言いながらも、
そこから逃げようとせず、
「はい!有難うございます、銀さん。」
と嬉しそうに銀時に告げた。
そして日々は過ぎ、貰った時よりもまた少し使い古されたそのヘルメットは、
薄くなる度に新八の名を刻まれ、今日も二番目の主が来るのを待っている。
****************************************
[銀新十題]さまからお借りしました。
「強くなります、いつかアンタの背中を護らせてもらえるぐらい」
そう宣言した小さな背中。
・・・判ってないね~、オマエ。
『背中』
それは紅桜の一件の後、桂と共に脱出して来た銀時に新八が告げた言葉だ。
どうやら先に行かせたのが響いていたらしい。
でも自分の力量が判っているだけに文句も言えず、その結果出たのが
この言葉だ。
全く・・・らしいと言えばらしいけどよぉ。
今は忙しそうに家事をこなしているその背中を、ソファに
横たわりながら銀時は見詰めた。
先程までは部屋の掃除をしていた。
ついでに 邪魔です! と小突かれた。
で、今は干していた洗濯物をよせている。
手伝おうかと言ったら 邪魔です。 と断られた。
どうしろってんだ、コノヤロー。
滅茶苦茶寂しいじゃねーか。
心の中で文句を言いつつ、その背中を見つめ続ける。
大体コイツは判ってない。
俺の背中を護るだと?
そんな事の為に、俺はお前らを背負ったんじゃねーぞ。
気持ちは嬉しいんだけどな、違うんだよ。
そんな強さを、オマエに望んでんじゃねーんだ。
闘う事を知らないなら、知らない方がいいんだよ。
そんなもん、知らないで居て欲しいんだよ。
でも巻き込んじまうんだよな、俺は。
で、結局頼っちまうんだよ、俺は。
知らないだろ、俺はもうお前らが・・・
って言うか、オマエが居なきゃダメダメなのよ?
あの時先に行かせたのだって、単なる俺の我が侭。
だって怪我なんかしたら、誰が俺の面倒見るんだよ。
厭だよ?銀さん、オマエの居るこの場所が好きなんだから。
大体さ~。もうかなり強いじゃん、オマエ。
俺はダメだね。待つとか出来ねーもん。
なのにオマエは待っててくれるじゃん。
そりゃ~怪我とかしてきたら怒るけどさ。
でも根気良く待っててくれるじゃん。
それってかなり凄い事だと思う訳よ。
そう言う意味じゃ、オマエは強い。
多分俺なんかよりもずっと、な。
それによ~・・・
「銀さん」
新八の背中を見ていた筈が、行き成りその本人のドアップへと
変わる。
どうやらかなりボーッとしていたらしい。
既に洗濯物も畳み終えたらしく、その手にはお茶の入った湯呑みがあった。
「もう、目を開けて寝てたんですか?」
妙な特技持ってますよね~。と笑いながら新八はテーブルの上に
湯呑みを置いた。
その手を掴み、クイッと引き寄せる。
「ぅわっ!ちょっ、危ないでしょうが!!」
そのまま銀時の胸元に倒れ込んで来た新八を、しっかりと抱き込む。
「大丈夫大丈夫~。銀さんが新ちゃんに怪我なんてさせる訳ないでしょ」
そう言って、軽い音を立てて新八の鼻先に唇を落とした。
一瞬にして赤くなり、何か言いたそうに口をパクパクさせる新八に
もう一度唇を寄せる。
俺の我が侭ばっかりだけどよ。
オマエの気持ちも嬉しいけどよ。
・・・うん、やっぱコレだわ。
背中合わせもいいけどさ、向かい合ってる方が断然いいって。
だって顔、見れた方が安心じゃん。
やっぱ顔、見れた方が幸せじゃん。
な、新八。
俺の背中を護るのもいいけどよ、
俺の幸せ護るのを最優先でお願いします。
いや、もうマジで。
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[銀新十題]さまからお借りしました。
聞こえない声が、今も時折追いかけてくる。
言の葉
突然意識が覚醒し、目を見開く。
逸る鼓動を抑えつつ、耳を澄ませばそこには無音の世界。
いや・・・と、視線を見慣れた天井から横に移せば、
微かに聞こえてくる寝息の主が。
・・・あぁ、そう言えば今日は泊まっていったのだ。
起こさなくて良かった。
銀時はそれを確認すると、漸く息を一つ吐いた。
そしてゆっくりと体を起こし、立て掛けた膝に頭を乗せ、掌を見詰める。
それは先程まで、紅く濡れていた筈の手だった。
けれど今は何も汚れていない。僅かに汗に濡れているようだったが
普通の手だ。
当たり前だ。濡れていたのは夢の中の事。
けれどそれは確かにあった、昔の事で。
その中で、何度も何度も、刀を振るった。
幾度も幾度も、その紅い血を見に浴びた。
そして、数え切れないほどの命を失ってきた。
その光景が、今でも時折銀時の元にやって来る。
『お前のその紅く染まった手で 何を護れるのか』と。
「ん・・・銀さん?」
名を呼ばれ、視線を落とせばそこにはボーッとしたままこちらを見ている
顔が。
「わりぃ、起こしちまったか」
「ど・・・したんです・・・か?」
「いや、ちょっとな・・・なんでもねーよ」
眠たそうにゴシゴシと目を擦る新八に、もう少し寝てろ。 と言って
頭を撫でようと伸ばそうとした手が、一瞬固まる。
別にその手は紅くなど染まっていない。
先程のは夢で。
ちゃんと確認もした筈なのに。
なのに、手を、伸ばせなかった。
が、次の瞬間。その手を掴まれ勢い良く引っ張られる。
バランスを崩した銀時が、そのまま新八の元へと倒れこむが、どうにか
もう片方の手を伸ばし、ギリギリの所で自分を支える事に成功した。
「ちょっ、お前なにっ・・・・!!!」
すぐさま体を起こそうとするが、両腕を銀時の首に廻され、
今度は新八の肩口に顔を埋める形となった。
先程といい、どうやら新八はほぼ眠っているようで、力の加減が
全くされていない。
ギューッと力いっぱい抱き締められ、次にポンポンと頭を撫でられた。
「しん・・・ぱち?」
「だ~いじょ~ぶですよ~。」
「へ?」
新八の行動に頭がついて行かない銀時に、歌ってるかのような調子で言葉が
掛けられた。
「だ~いじょ~ぶ。怖いの来たら、僕が護ってあげますから~」
そう言って、再度銀時の頭が ポンポン と撫でられた。
それが数回続いたと思うと、今度は小さな寝息が銀時の耳に聞こえてきた。
どうやらこのままの状態で新八は眠ってしまったらしい。
しかも、銀時が身を起こそうとすると、ギュっと手に力が入る始末。
「・・・マジでか?」
そんな新八の行動に、思わず笑いが零れる。
「寝てても男前だね~、新ちゃんは」
銀時は、外れない腕をそのままに、ゆっくりと自分の体を横たえて
新八に体重が掛からない体勢へと持っていく。
そして丁度いい体勢になると、そっとその背に腕を廻し、新八の首元に鼻を
押し当てた。
暖かい。
戸惑うこの手を引き寄せ。
本当ならば、この腕にすっぽりと包み込めてしまえる程の体が。
今は自分を包み込んでくれて。
大丈夫と、告げてくれるキミのその声が。
護ると言ってくれるその言葉が。
どうしようもなく、暖かい。
銀時は、廻した手にキュッと力を入れた。
寝ている彼を起こさないように、けれど確かな力で、離れないように。
『お前のその紅く染まった手で 何を護れるのか』
今もまだ、遠くで聞こえない筈の声が聞こえる。
それに銀時は緩く笑い、
違うさ。『護る』だけじゃなく『護られてる』んだって、俺。
手が紅く染まってたからって、それがどうした。
忘れてねーよ、そんなもん。
だからこそ、触れるのにも躊躇しちまうんじゃねーか。
だけどよ・・・・忘れてねーけどよ。
「離せねーんだよ、もう」
ごめんな。
それは誰に対しての言葉だったのか、自分自身判らなかったけれど、
ほんの少しだけ 涙が出た。