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その日、僕はぼんやりと買い物帰りの道を歩いていた。
理由は先程行き会った沖田さんの言葉。
「アンタはどっちかってぇとMかと思ってやしたが、
中々どうして・・・結構なSだったんだねィ」
・・・や、結構なSって何?
重い買い物袋を手に持ち、ポテポテと万事屋への道を歩いていく。
沖田さんが言うには、僕の突っ込みは時にS丸出しらしい。
・・・そうか?
大抵ツッコム時は無心なので、あまりよく判らない。
そう言えば、
「無自覚Sですかィ、俺も見習いてぇや」
と言われてしまった。
や、S王子に見習われても全然嬉しくないから。
あぁ、でもそうしてくれれば僕のツッコム度合い
が少しは減るんだろうか。
それなら少し嬉しいかも。
って、違う違う。
とりあえず今考える事はそこじゃない。
チラリと視線を手に落とし、もう一度考え直してみる。
大体Sって言うのは人を苛めて楽しむ、沖田さんや銀さんのような
人の事だと思う。
言っとくけど、僕にはそんな趣味はない。
寧ろ弄られる方が多いと思うんだけど・・・
ま、ツッコミ時は違うけどね。
確かに激しいかもしれないけど、そこまでしないといけない
ボケばかりなのだから仕方が無い。
それにこうして家事に追われてる姿は、どう見たってSじゃないだろう。
どちらかと言うと、属性・オカンだ。
・・・あ、認めちゃったよ、僕。
でもなぁ。と掌に食い込んできた買い物袋を持ち直す。
実際のところ、家事は嫌いではない。
汚い部屋よりも、綺麗な部屋の方が気持ちがいい。
洗濯物が綺麗に洗われ、干されてるのが気持ちいいし、
限られたお金で生活出来た時の達成感は、結構物凄い。
何よりご飯は暗黒物質よりも、
食べられる方が断然いい。
こう考えると、やっぱり僕は人を苛めるよりも、誰かの世話を
やきたいほうなんだと思う。
そうだよ、僕全然Sなんかじゃないって、うん。
全く、沖田さんもどこ見てんだか・・・と自分の出した結論に
満足すると、既に辿り着いていた万事屋の階段を
気分よく登っていった。
が、その気分もほんの少しの間だった。
だって玄関に見慣れたブーツが脱ぎ捨てられてるんだもん。
全く、今日は買い物に付き合って貰おうと思ってたのに、
知らないうちに姿を眩ませやがって。
僕は行儀悪いのを承知で、少し歪んでいたブーツを足で直し、
玄関へと上がった。
そして居るであろう銀さんの名を呼びながら居間へと向かう。
あ、やっぱり居た。
まぁブーツがあるんだから、居るのは当たり前だけどね。
僕はソファでぼんやりとしている銀さんに近付くと、
何処に行っていたのか問い質した。
が、返って来たのは曖昧な答えで・・・
ってか言葉にも出してないよ、この人。
どんだけダラけてんだ、一体っ!
人が重い思いをして帰って来たって言うのにっ!
僕はそのまま銀さんの前まで行くと、ギロリと見下ろした。
途端、ビクリと体を震わせて視線を逸らす銀さん。
その行動は、『怒られるような事してきました~』と
言ってるも同然で、少しだけ心が擽られる。
なんと言うか・・・ちょっとだけ可愛いのだ。
ちなみにそれを神楽ちゃんに言ったら、本気で視力測定を
やり直して来いと言われた。
うん・・・気持ちは判る。
僕も最初はそう思ったし。
でも可愛く見えるんだから仕方ないじゃないか。
それにそう思えば、少しは心広く受け止められるし。
・・・あれ?もしかして僕、無意識のうちに
マインドコントロールでもしてた?
・・・まぁいいや。
怒ってばかりよりは精神的にいいんだし。
でも、今は話が別だ。
やはり言うべき時は、きちんと言っておかないと。
僕は緩みそうになる口元を引き締め、もう少しだけ
怒る事に決めた。
「アンタ、甘味屋に行ってたでしょ」
腰を曲げて銀さんの首筋に鼻を埋め、香りを嗅いでそんな事を
言ってみる。
途端、固まっていた銀さんの顔が、ポカリとしたモノに変わる。
あ、驚いてる。可愛いな~、やっぱり。
あ、ダメダメ。
やっぱり躾はちゃんとしないとっ!
僕は大きく息を吐き出すことで、口元の緩みを誤魔化し、理由を
告げてみた。
それを納得したような顔で聞く銀さん。
や、嘘ですけどね、それ。
単に沖田さんに聞いただけですから。
でも信じてくれてるなら丁度いい・・・と、僕は序に怪我の事も
言ってみた。
変な所で大人な銀さんは、怪我をしてもそれを隠そうとする所がある。
そんな所は大人じゃなくていいのに。
今みたいに、わかり易くしてくれてた方が、全然いいのに。
ま、怪我なんてしない方がいいんだけどね。
でも、してしまうのが銀さんなのだ。
ならばせめて、少しでも早く癒してあげたい。
少しでも痛みを軽くしてあげたい。
だからちゃんと言ってくださいね。
僕には丸判りなんですから、そう言うと銀さんは困ったように苦笑してしまった。
全く・・・だから今はそんな大人な顔はいいんですってっ!
僕はムッと唇を尖らすと、ツンと顔を背けた。
そしてとっておきの秘密兵器を取り出す事にする。
「折角お団子が安かったから買ってきたのに、銀さんはなしですからね。」
そう言って背を向ければ、焦ったような声が後ろから聞こえてくる。
序に謝罪の言葉も。
ちらりと盗み見れば、銀さんのあまりの必死さ加減に
僕はとうとう我慢しきれず、笑みを浮かべてしまった。
うん、やっぱりその方がいいですよ。
そうやって何時も判りやすい、可愛い銀さんで居てください。
それが見えたのか、銀さんもホッとした顔へと変わった。
あ、でも今はあげませんからね、お団子。
夕飯の後です。と言えば、銀さんは哀しそうな、でもちょっと嬉しいそうな?
そんな微妙な顔を浮かべていた。
その情けない顔に、僕はますます笑みが零れてしまった。
・・・やっぱり沖田さんの言うことは、ちょっと当たってるのかも。
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SはSでも『躾』のSと言う事にしといてあげて下さい。(それもどうよι)